SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
かつて、私を光に導いてくれた女の子がいました。
その子は、母の命令をただただ遂行するだけだった人形のような私を暗闇から救い出してくれた恩人で、私の道を照らしてくれた太陽のような輝きを持っていて。暖かく、包み込んでくれた。
傷つく出会いもあった。心身ともにやつれ果ててしまいそうな、そんな戦いを何度も経験した。
でも、その度にあの子が私のことを助けてくれた。あの子が、いつも私のすぐそばにいてくれた。それだけで、どんな戦いにも勇気を出して臨むことができた。
あの子と一緒なら。あの子がいてくれるのならば、苦しくても、辛くても、死にそうになっても、挫けてもまた、戦うことができる。一体,何度同じことを思ったことだろう。
それに、私はあの子のおかげでたくさんの友達を得ることができた。仲間を得ることができた。いつでも笑顔で話ができる、そんな友達を作ることができた。
その友達の中には、なかなか会うことができなくなっちゃった子達もいる。でも、とても仲のいい友達として、これからもずっとずっと、変わらない友情というものを育むことができる物だと思っていた。
私と一緒にいてくれる子も、いつまでも一緒にいてくれる物だと。そう思っていた。
あの日が、来るまでは。
なのはと同じ、時空管理局員フェイト・
もちろん、ただの勉強ではない。執務官という、時空管理局内での重要な役職につくための試験勉強だ。彼女は、以前にも二度ほどその試験に挑んで、惜しくも落ちてしまっていた。次こそは合格しなければという意気込みを持って入るのdが、これがまたとても難しい試験であるのだ。
そもそも執務官というのは、現代日本で言うところの検察と警察を併せ持った役職のことである。その大きすぎる権限に比例して、試験が難しくなるのは仕方のないことなのだ。そんな、大人ですらも狭き門だという試験を、彼女は中学生であるというのに受けている。はっきり言えば常人の神経ではない。
でも、それでもやらなければならない。もう二度と、自分のような不幸な人間を産まないために。彼女は、自分にできることを追求することをやめられない人間であったのだ。
彼女は、普通の人間ではない。クローン人間であった。
元となったのは、アリシア・テスタロッサという、一人の少女。昔の、とある事故によって若くして亡くなってしまったその子を生き返らせたい。そんな、母親の狂気によって生まれたのが、彼女。フェイト・テスタロッサであった。
娘を亡くし、娘に似ても似つかないクローンに絶望した彼女の母親。もう二度と戻るはずのない愛娘を求めた彼女の狂気は増していく。そして、手を出してはならないものにも手を出した。
ジュエル・シード。それは手にしたものに幸運を呼び、願いを叶える青白い石。正しい力の使い方を知らないと暴走してしまう危険な石。
彼女は、そんな宝石を母の命令で集めていた。優しかったお母さん。でも、いつからかおかしくなって、自分に暴力を振るうようになったお母さん。そんな母親がもとにもどって、また自分に笑いかけてくれる。そんな日を夢見て。彼女は戦った。
そんな夢、夢のまた夢であるというのに。それは、別人の記憶であったというのに。
あの時、すずかの家の猫の純粋な願いを叶えてしまったジュエル・シードを封印するために向かった時。自分と高町なのはは出会った。
それから何度も戦って、協力もして、話しをしようとしてくれて、悲しいことも、どうしようもなく落ち込んだこともあった。けど、それでも最後にはなのはと友達になることができた。
母からの信頼を失って、母から自分の正体を告げられ、立ち直れなくなりそうになった。でも、なのはがいてくれたから自分は再び立ち上がることができた。
そして、事件の最後。彼女の母は、自分のオリジナルである少女。アリシア・テスタロッサの遺体とともに消えていった。
あの時にも、自分は立ち直れなくなりそうなほどショックを受けた。でも、なのはがいてくれたから、私はまた立つことができた。
そして、二度と自分のような悲劇を生まないようにと、執務官という役職を目指して努力を続けている。
なのはや、友達のアリサ、すずかからは一緒にゲームをしようと誘われたものの、試験勉強に忙しいからという理由で固辞していた。本当は、三本しか手に入れられなかったのだが、偶然抽選で当たったもう一本があるからと、でも彼女はそれを受け取らなかった。
確かに、ゲームなんて面白そうなもの。したいと思う。でも、そんなものにうつつを抜かしている時間はないと彼女自身知っていた。だから、彼女は机に向かった。ゲームの世界に向かった友達と違って
である。
今頃みんなはゲームの世界を楽しんでるのだろうかと、その日何度目かとも知らずに、時計に目をやったフェイト。未練がましいものだ。ゲームというものには興味も関心もないと思っていたのに、中学生という年齢がそうさせるのか、これがDNAに刻み込まれた習性というものなのかは分からないが、とにかく気になって気になって仕方がなかった。
いやちがう。なんだか、胸騒ぎを感じるのだ。
胸の奥がサワサワするかのような気持ちの悪さ。これは、あの時と同じ。なのはが、とある次元世界で大怪我を負った時の、あの時と同じ気持ちだ。
嫌な予感、虫の知らせ。とにかく多くの言葉があるのはわかっているのだが、なんだか、とても心がざわついているのが聞こえてくるかのよう。
なんだ、いったいこのざわつきは。いったい、なんなんだ。
おさまれと念じてもおさまってくれない。勉強の邪魔だと言っても、むしろ体の方から離れていってしまう。
なんだ、いったい自分の体に何が起こっているのだ。
いったい、何が。
『フェイト!』
「アルフ?」
その時だ。彼女の使い魔である赤毛の大型犬、アルフが突然彼女の勉強部屋に入ってきたのは。
アルフは、光とともに人間の姿に変わってから言う。
「フェイト……」
アルフは、そう言うと一度黙り込み、フェイトの両肩を掴んだ。なにか、言い淀んでいるようだ。まるで、言ってはならぬ言葉を必死に押さえ込んでいるその顔に、フェイト何かが起こったことを察した。
「何があったの、アルフ……」
もしかしたら、先ほどから感じていたあのモヤモヤの正体がこれなのではないか。そう感じたフェイトは、はっきりとした口調でアルフに聞く。
そして、アルフは決心がついたような面持ちで、ついにその口を開いた。
「……落ち着いて聞いておくれ」
「……」
「今、テレビのニュースで……」
「……え?」
アルフのその言葉を聞いた瞬間だった。フェイトの身体は、その衝撃に耐えきれなくなり、自重すらも支えきれず、崩れ、落ちる。
「フェイト、フェイト!!」
長年つれそってきた相棒の叫び声を耳にしながら、彼女はアルフの言葉を反芻するかのように思い返す。
デスゲームとなったSAO。なのはたちがプレイしているゲームだ。
自主的なログアウトは不可能で、ゲームがクリアされるまでその意識が現実に戻ることはない。
そして、もしもゲームオーバーにでもなろうものならその瞬間、プレイヤーの脳が、焼かれる。
なのはが、アリサが、すずかが、死ぬかもしれない。私の大切な仲間が、友達が、恩人が、死ぬかもしれない。理不尽に、才能も、現実の強さも何にも関係なく、殺されてしまうかもしれない。
そんな事実、信じたくなかった。だから、彼女は放棄したのだ。考えることを。だから、彼女はただ選択したのだ。
「そんなッ、アリサ……すずか……なのはぁぁぁぁぁ!!」
意味もなく、叫び続ける。そんな、誰の得にもならない行為を。
この日、彼女は共に歩むはずだった人を、失った。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
あの日の、友が囚われた。あの悪夢で、いったい何度、飛び起きたことだろう。何度、汗だくで自分を包む布団を掴んだことだろう。
でも、そのたびに思うのが、その悪夢の内容がまだ閉じ込められた時のそれで終わっていてよかったと言うもの。
もし、これが友達の誰かが死ぬ光景であったとするのなら、きっと自分の心はーーー。
やめとこう。そんなことを想像するのは。もし考えてしまったら、それが夢に出てくるかもしれないから。
「おはよう、フェイト」
「リンディ義母さん……」
ベッドの上で汗だくになっているフェイトに声をかけたのは、この家の家主であり、身内が誰もいなくなった彼女を引き取ったリンディ・ハラオウンだ。
リンディは、彼女に目覚めのホットココアを手渡しながら聞く。
「また、あの夢を見たの?」
「……はい」
「そう……」
リンディは、それ以降何も言わなかった。彼女の気持ちが、痛いほどわかるからだ。自分にとってもなのはは良き友人であり、自分とフェイトを引き合わせてくれた恩人の一人のような存在。そして、この世界を守った英雄である。そんな彼女がこんなにも理不尽な事件に巻き込まれてしまうなんて想像もできいなかった。
あの事件から数日、現在彼女たち二人を含めた数名の地球に縁のある時空管理局職員が臨時で有給をとっている。昨今人手不足が声高に言われている時空管理局において、一斉に有給をとったことに関してはかなり問題視されたことであるが、子供達のメンタルのサポートのためには致し方がないという上層部への、リンディや多くのなのはたちと一緒に戦った局員の必至の嘆願が実った形である。
しかし、突然精神的な主柱を失ったフェイトの心労は計り知れないものがあるだろう。何せ彼女は、この地球の友達四人のうち、三人を失ってしまったのだから。
いや、失うという言葉を使うにはまだ早すぎるというのもわかる。だがしかし、事件の首謀者である茅場晶彦のいうゲームクリアが一体いつになるのか分からない今、彼女たちの帰還までフェイトの精神力が持つかどうか、五分五分、いやそれ以下なのかもしれない。
「リンディ義母さん……」
「何? フェイト?」
フェイトが、砂糖多めのココアを飲み干した時、急に口を開いた。必要量を何十倍も超えた砂糖がはいったココアに対してなんの反応もしなかったことから、心ここに在らずといった感じか。
そんな彼女の言葉を聞き逃さないように、リンディは耳を向ける。しかしーーー。
「……」
彼女は、何も言葉を発することができなかった。
きっと、彼女自身何を言っていいのか分からないのだろう。
それか、言って仕舞えば全てを終わらせてしまうかもしれない、そう考えているのか。
なのはのいない世界で生きれるだろうか。
なのはが死んだら、私は生きていけるのだろうか。
アリサやすずかが死んで、なのはだけが帰ってきた時に、ほっとしないだろうか。
なのはが死んだら、私もーーー。
そんな、後ろ向きの質問しか頭に浮かばない。最低だ。自分は。どうにかして死ぬ方法を考えている。
とくに最後から数えて二つ目のやつなんて、アリサとすずかを、友達をどうでもいいとしかおもっていないような考えで自分が嫌になる。
怖い。怖い。怖い。でも、その怖さがうまく表現できない。考えれば考えるほどに、自分が最低な人間になっていく。そんな気がしてならない。
「……出かけましょうか」
「え?」
リンディが言った。でも、今日は確か大事なーーー。
「いいのよ。こういう時は出かけて気分転換しないと……ね」
「はい」
フェイトは、そんなリンディに連れられて久しぶりに閉ざされた一室から出ることになった。天気は、少しだけ澱んでいた。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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〜いろんな著作物から以降はいらない
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タイトルはそのままでいい