SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「一課長、全国各地からトラブルの報告が多数上がっています!」
「タンクローリーの横転事故、トンネルの崩落、そして怪物の出現……こんなことが、立て続けに起こるなんて……」
警視庁の中でも一番巨大な会議室。そこは、東京都のみならず、全国各地のSAOプレイヤー移送作戦合同対策本部となっていた。
その中心部にほど近い場所で、捜査一課長である大岩は、47都道府県すべてから送られてくる情報に目を通していた。
最初は順調に進行ししていたはずの移送作戦。しかし、作戦開始からしばらくしてから次から次へと送られてくるトラブルに、一課長は困惑しながらも、そんな様子を見せることなく鋭い目で資料を一つ一つ見ていく。
しかし、考えれば考えるほどおかしな話だ。確かに、一年間365日どこかで事件が発生しているというのは分かる。だが、だからと言ってここまで大きな事故や事件が連発するだろうか。
どれもこれも、ひとたび起これば全国ニュースで一週間、いやそれ以上の期間コメンテーターや専門家を慌ただしくさせるような事件ばかり。
さらに、全国各地で現れているという怪物、怪人の話も。送られてくる情報によると、かつてスーパー戦隊や仮面ライダーが倒した敵と同種であるということは分かる。しかし、その倒した敵がなぜよりにもよって今日、この日に現れるというのか。
何者かの策略を疑うほど。しかし、そんなことに思いを巡らせている暇なんてない。自分は、この状況下においてどのような判断を下すべきなのか。
送られてきたどの事故も、一朝一夕には解決できない事件ばかり、しかもそのほとんどがSAOプレイヤー搬送中の救急車の近くで発生している。一つの判断を誤れば、一つの命、いやそれ以上の命が失われる可能性だってある。
どこから手を付けるべきなのか。いや、そもそも自分たちでどうこうできる問題であるのか。
大岩は、全ての事件事故に目を通したのち考えるように目を伏せた。こんな姿を見せれば、その場にいる捜査員たちを不安にさせることはわかっている。しかしそれでも欲しかったのだ。この事件を解決させる手がかりを考える時間。集中力が。
しかし、考えれば考えるほど、自分には≪たった一つ≫しか解決する方法を持ち合わせていないということが身に染みてわかる。
そう、この方法を使えば全国各地の事故、そして事件を一気に解決させることができる。だが、安易にその方法を用いていいのか。
確かに、≪彼≫からは何かがあったときのために自分たちも準備をするとは聞かされていた。しかし今がその時であるのか。
誰かに頼る。何かに頼る。それは敗北ではない前進だ。大岩はわかっている。しかし、だからと言って安易に≪彼ら≫の手を借りれば、いったい何人の警官が無力感を悟ることだろう。この作戦に参加している人間の何パーセントが自分たちが無意味な存在であると誤解することだろう。
特に、若い人間にとってはその反応が露骨に現れるかもしれない。
この判断は自分たち警察の存在意義にもかかわる。後に自分たち警察に特大のブーメランとして襲い掛かって来るやもしれない。
だが、それでも。
大岩は、すっと立ち上がると近くにあった≪ある場所≫への直通の電話を取った。
決めたではないか。この作戦の全責任は自分がとると。
宣言したではないが。今できることの全力を注ぐと。
今が、その時だ。
「警視庁。SAOプレイヤー移送作戦総合責任者……大岩です」
果たして、大岩が連絡した相手は―――。
誰もが絶望に沈む交差点。それでも諦めるということを知らない一人の老紳士が必死に考えを巡らせる。だが、浮かんでは、可能性を自分で消していき、浮かんでは消していきを繰り返しながら、彼はついに行き止まりに達してしまった。
この状況を、普通の方法で打破することはできない。という、最悪の行き止まりに。
この、普通の方法で、というのはいわゆる超能力、つまり特務エスパーを派遣してもらうという方法。
だが、救急車一台を、それも長距離間で移動することのできる超能力者は限られている。特にこと今回の作戦においては、車での移動が困難な場所に対してその貴重な特務エスパーが各地に派遣されているため、今呼んでもいつ来るか分かった物ではない。
ほかにも様々な普通ではない方法を考えるが、全てが希望的観測。確実な方法なんて浮かび上がってこなかった。
これ以上、一体何を考え付けばいいというのか。しかし、それでも考えなければならない。そう、何故なら自分たちは今、人の命というとても大きく、重いものを背負っているのだから。その重たいものを守るためにやるべきことはすべてやりつくした。それでも、まだ足りないというのか。まだ、人の命を救うには足りないというのか。
いや、もしかしたらそれが当たり前なのか。それだけの苦労をしなければ人間の命を救うには足りない。それが、人の命の重さ。
たとえるのならば、そう―――。
ー人の命は、地球の未来ー
『おい、あれ!?』
「え?」
「ッ!」
それは、救急車だった。今まさに自分たちがさかのぼってきた道を、たった一台の救急車があたかも自分たちを追ってきたかのようにバックで走ってきていた。
しかし、それは事態を好転させるものではない。今更救急車が一台来たところで何が変わるというのか。そう、警官たちが口々に言っていた時だった。まるで、目が輝いた子供のようにソレを見る杉下右京は言う。
「いえ、あれはただの救急車ではありません!」
「え? どういうことっすか、右京さん!?」
「よく見てください亀山君! あの大きさを!」
「大きさ?」
大きさとはどういう意味なのだろうか。確かに少しだけ大きいと思えるのだが、しかしこの距離から見てみてもとても遠くの位置にある救急車は、普通の大きさにしか見えない。
「ん? 普通の大きさ?」
その時、亀山は気が付いた。そう、普通の大きさだ。今、自分たちの目の前にあるSAOプレイヤーを乗せた救急車とほぼ同じ大きさに《見える》救急車が遠くの方で見えているのだ。そう、それはただ単に遠近法によってとても普通の大きさの救急車に見えているだけで、実際には相当大きい可能性がある。というか、よく見るとその救急車が走っている場所。三車線ある道のどの車線でもない。上り下りの合わせて六車線の真ん中を突っ走っていないか。
なんにせよ、それが非常識な大きさの救急車であることは分かった。で、あるのならば問題はその正体だ。
「なんすか、あのバカでかい救急車……」
「……亀山君」
「はい?」
「僕たちが出会って、もう何年になりますかねぇ……」
「へ?」
こんな時に一体何を聞いているのかと、疑問に思った亀山。しかし、彼は律儀にも答えた。
「えっと、確かあれは二十三年前……2000年の事だったような……」
そう、この二人の出会い。というよりも亀山薫が特命係に来るそのきっかけになった事件。ある店で出くわした指名手配犯を捕まえようとして、逆に人質にされるという失態を犯してしまった。その年が彼の言う通り2000年の出来事であったのだ。
「その通り、つまり……彼らが活躍をしたその一年後に、僕たちは出会ったわけですねぇ……」
「彼らって、一体……」
と、その時だった。
『緊急車両が通ります! パトカーと救急車は道の端にいてください!』
大音量のスピーカーから鳴り響いたのは女性の声だった。
とはいえ、パトカーや救急車は緊急車両という部類であるはずなので、どことなく矛盾しているような気もするのだが、とにかく右京を含めた捜査官たちはパトカーと救急車を道の端に止めた。
すると、再び巨大な救急車はゆっくりとバックしていくと、その巨大な扉がゆっくりと開いていき、スロープへと早変わりし、地面の上にゆっくりと降りた。
『現在、急患を乗せた緊急車両が走行中、またこの先の交差点においてタンクローリー横転と爆発による二次災害の恐れがあるため、この道路を封鎖します。運転手の皆さん≪ピンクエイダー≫内に避難してください』
この指示の元、最初は戸惑っていた車の運転手たちも、徐々に徐々に女性のいうピンクエイダーという巨大救急車の中に搭載されていく。その内部は、亀山もみたところトラックも含めて何十台も搭載することが可能であるようだ。
「すげぇ……」
「亀山君、我々も交差点に入る車を止めていきましょう」
「は、はい!」
このままの調子で車がのいて行けば、交差点まで彼らを邪魔するものはなくなる。しかし、ところてん方式に車が移動していれば、また交差点がふさがれてしまいかねない。そのため、右京たちは交差点まで走り、再びの交通規制を行うことにした。
その交差点までの途中、亀山が右京に聞いた。
「右京さん! 教えてください、あの救急車は何なんですか!」
「あれは、99マシン。我々が出会う一年前に活動していた……スーパー戦隊の秘密メカです!」
「99マシン……そういえば、どこかで聞いたことがあるような……」
99マシン。それは、特命係の二人が初めて会ったその年の前の年、1999年に活躍したあるスーパー戦隊が使用していた巨大ロボットにも変形が可能なメカの総称だ。
スーパー戦隊のメカは、十年ほど前にあったレジェンド大戦の際、ザンギャックという凶悪な宇宙人と戦う際にすべて破壊されたと聞いていた右京。
しかし、彼らの知らないところで、実は秘密裏に再建がなされていたロボットたちがあったのだ。とくに急務だったのは、人命救助を目的としたある戦隊のメカ。そう、それこそが99マシン。そして、その99マシンを操っていた戦隊の名前、それが―――。
「だ、だれかぁ……」
「助けてくれぇ……」
一方、ここはタンクローリーの横転現場。タンクローリー自体の整備ミスか、あるいは道に落ちていた何かに足を取られたのか定かではないが、大量の石油を搭載したタンクローリーが交差点のど真ん中で横転、炎上していた。今だその背部にあるタンクが燃え広がっていないところを見るに、そのほかの車から漏れたガソリンに火が引火したと考えるべきだろう。
幸か不幸か、そのためにいまだにタンクローリーの運転手である男性、そしてその事故に巻き込まれた数台の車の運転手は生きながらえていた。まさに、奇跡とたたえることのできる物だ。
しかし、その奇跡もあとほんの僅か。引火した火が、ゆっくりとタンクローリーの方に向かっていたのだ。それを見た運転手たちは、皆自分の愛車をその場に残して逃げ去っていく。しかし、事故に巻き込まれて押しつぶされそうになっている車の運転手は身動きが取れず、タンクローリーの運転手に至ってはほとんど虫の息といっても過言ではない状態にあった。
事故に巻き込まれた運転手は考えていた。また、あの時のように誰かが助けてくれないだろうかと。
彼は、かつてとある戦隊にその命を救われたことがある。親兄弟と、とある高層ビルのエレベーターの中に閉じ込められた。そのビル周辺は火災によって非常に恐ろしい煙がエレベーターの中に充満していて、それを吸い込まないようにと幼かった自分たち兄弟は、床に這いつくばるような形で救助の手が伸びるのを待っていた。
でも、待てども待てども誰も来ない。当たり前だったのかもしれない。あたりが火災に巻き込まれているその中で、助けに来れる人間なんて誰がいるのか。
子供ながらに、絶望を覚えた瞬間。もう、ダメだと本当に思っていたその時だった。
『大丈夫ですか! 大丈夫か!!』
黄色い人だった。エレベーターの天井の扉を開けて、黄色い服を着た人が僕たちのところに来てくれたのだ。そして、変形して開かなくなったその扉を破壊して、赤い人が、桃色の人が来てくれて、僕たち家族は助かった。
あの時の、自分たちを助けてくれた人たちの大きな手を、背中を、彼は忘れたことはなかった。彼らのように、自分も誰かを助けることのできる人間になりたいと何度も願った。結局就職したのは普通機械メーカーであったが、でもそれでも満足だった。
順風満タンな人生であると胸を張って言えた。妻と、子供と、そして一軒家と、誰もが憧れる家庭を持つことができた幸せ者だ。そう、思っていた。
でも、その幸せを手に入れたつけが来たのかもしれない。
けど、自分の命はいい。せめて、後ろの座席にいる妻と子供の命は助けたい。だから、助けて。誰か。妻と、子供の命を救ってください。そう願っていた。それが、彼の最後の思考になるはずだった。
しかし、彼らは再び手を伸ばした。
「大丈夫か!!」
オレンジ色の防護服を身にまとった、戦士たち。
「我々はレスキューです……スグに助け出します!」
「わ、私のことは……もう、助からない……せめて、妻と、子供だけでも……」
額から流れ落ちる血。きっと、頭を強く打ったのだろう。徐々に視界がおぼろげになってくるのを感じる。直感した。自分の命が残り少ないということを。
しかし、男は言う。
「何弱気なことを言ってんだ! 子供も奥さんも、アンタも生き残る! 俺たちが絶対に助け出して見せる!」
「あ、あなた……は?」
その時、彼はみた。自分のことを見下ろしている男性の顔。あの時見た、あの赤い人間の顔の向こうに見えたソレに似ている。仮面だったのか、ゴーグルだったのかはわからないがそれによって若干は見えにくくなっていた物の、今でもはっきりと覚えている。彼の姿を、彼の顔を、そして彼の勇気を。
「巽マトイだ!」
彼の、名前を、永遠に覚えているのであった。
「では、お願いします」
「任せてください!」
右京と亀山は、飛び上がっていく自衛隊の飛行機をずっと見続けていた。
何とか、間に合った。作業が開始してからもののニ十分ほどで渋滞は完全に解消し、自分たちが護衛していた救急車をこの空き地にまで誘導することに成功した右京たち。その数分後に自衛隊のヘリが到着し、何のトラブルもなく泉こなたをヘリコプターに乗せることができた。あとは、自衛隊と一緒に乗った救急隊員に任せれば万事オッケーであろう。
色々なトラブルがあった物の、とりあえずこの場所での自分たちの任務は終わったようだ。
「間に合ってよかったですね、右京さん……」
「えぇ、彼ら、救急戦隊のおかげですね」
「救急戦隊?」
「えぇ、救急戦隊ゴーゴーファイブ……二十三番目に生まれたスーパー戦隊ですよ」
救急戦隊ゴーゴーファイブ。それは、消防士、研究者、消防ヘリコプター隊員、警察官、救急隊員の五名の兄弟によって結成されたスーパー戦隊だ。この世に災厄をもたらす悪の一族、災魔一族と戦いながら、地上で発生する天平地位に巻き込まれた人々を救助してきた、人の命のために戦い、そして人の命に一番寄り添った戦隊。
そんな彼らは、災魔一族との戦いを終えた後、それぞれの職場に戻っていった。だが、こと今回のような緊急事態に際しては≪一人≫を除いて全員があつまり、人々の命を守ってきていたのだ。
「……」
その時、99マシンピンクエイダーが彼らの背後をゆっくりとしたスピードで横切ろうとしていた。杉下は見た。その運転席に座っている一人の桃色の装備を着た女性を。
ゴーゴーファイブ、ゴーピンク。おそらく、自分の記憶が正しければ巽マツリという女性が変身しているのであろう。
杉下はそんな彼女に向けて手をゆっくりと上げた。
「……」
それを見たゴーピンク、マツリは敬礼で返す。まるで、最初からそう決められていたかのように。
ギリギリだった。ピンクエイダーに搭載できる車の量と、渋滞に巻き込まれていた車の量はほぼ同一、後本の数台でも詰まっていたら、もっと長い時間あの場所で足止めを食らっていた事だろう。
では、どうしてその事態を解消することができたのか、その決断を下したのは誰か。
杉下右京である。彼の迅速な決断によって、パトカーが引き返した事。結果的には立ち往生をくらってしまった形にはなった。だが、そのおかげで一部の車が渋滞に入る前にストップしたのだ。
彼の、最後まで諦めない気持ちが起こしたほんの少しの奇跡、それを確実にしたゴーピンクの活躍、そして横転現場で命懸けのレスキューに挑む者たち。生きたい、生かしたいが起こした奇跡であった。
かくしてひとまずの作戦を終えた彼、彼女たち。後に聞くと、タンクローリーの事故も、火がタンクローリーの中に搭載してたガソリンに引火する直前に運転手を全員助け出したことにより、負傷者こそ出た物の、死者は一人も出なかったそうだ。
こうして、二つの交差点を舞台にした大小さまざまな事件の幕が下りる。
そして、ここから人類の作った悪魔のゲームに対する、人間たちの新たな反撃の幕が上がる。
救急戦隊ゴーゴーファイブ
出場!!
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
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タイトルはそのままでいい