SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO 作:牢吏川波実
「ど、どうしよう! コギャル霊さんが家出なんて!」
「ま、気が向いたらそのうち帰ってくんだろ」
「そんな猫じゃないんだから……」
スマホのカメラ機能を利用して花子から事情を聴いた上原達は、その日の放課後になって≪いつもの公園≫の前に来ていた。
小川の心配そうな声に、上原はスマホを空中や地面に向けながら呟く。
いつも、というほど彼女は家出しているわけじゃない。しかし、響の幽霊友達連中は、気まぐれでどこかに出かけるという事が頻繁にある。
死んだ後に出会った幽霊友達に会いに行ったり、集団で遊園地にピクニックに行った事だってある。
だから、いつかは帰ってくるだろう。そんな、まるで野良猫か何かのように扱われているコギャル霊が不憫なような気もしないが、そこで山田が言う。
「でも、帰って来なかったら……」
と、響の生者友達唯一といってもいい男性メンバーである山田がもしかしたらあるかもしれない展開を口から解き放った瞬間、上原も、スマホの画面から目を外して考える。
いや、考えていなかったわけじゃない。ただ、そう言う可能性も脳裏によぎったことは確かだ。特に今回の事件で一番ショックを受けている幽霊がコギャル霊なのは確実。
もし帰って来なかったら、その時は―――。
「悪霊化して、“コギャル”から“オオギャル”になったりして!」
「アホの山田は放っておいてだ」
上原は聞かなかったことにした。
なお、彼が場の空気を読んで少しだけ明るくしてみようと思ってその言葉を発したのか、それとも天然でその言葉を口にしたのかは、彼の名誉のために書かないことにしておこう。
「確かに、戻って来なかったらそれはそれで問題になる。でもさ……」
「え?」
上原は、周り、特に公園の入り口を眺めてから言った。
「あたしたちには、幽霊は見えないでしょ?」
「ッ……」
そう。自分たちは誰一人として霊感を持っていない。唯一霊と会話する能力を持っていた響以外には。
もちろん、スマホという手段はあるにはある。これのカメラ機能を利用して、幽霊の姿を見たり、声を聞いたりするのだ。
しかしだ、正直この力もいつまで当てにできるか分からないし、狭い視野の中でどこにいったのか点で見当もつかないコギャル霊を探すなんて、正直難易度が高すぎる。
しかし、心霊ブロガーである上原は、たとえどれだけ人が密集している状況であったとしても幽霊の姿を、カメラを通して、という条件はあるものの見つけす特技を持っているのでそれをもってすればまだかろうじて可能性は残されているのかもしれないが。
「ここにいる地縛霊の姿も見えないし……」
といって、彼女は公園の入り口を見た。彼女たちには何も見えない。しかし、実際にはこの場所にはいるのだ。幽霊が。
響の、幽霊友達の中でも古株と言ってもよい霊が、そこで目を光らせているのだ。けど、自分たちにはソレを見ることもできない。それが、自分たちが無力である証拠だった。
『その通りだな』
とても野太いボイスの、おそらく男性の幽霊がこの場所にはいる。今の自分たちには見えないが、しかし響がいたころはここにいる幽霊とも自由に会話できて楽しかった。今ではスマホを使用しないと会話も、姿を見ることもできないなんて、寂しすぎる。
『まぁ、元々俺は見えないのだがな』
「それはそうですけども……」
と、地縛霊は突っ込んだ。そう、実はここの地縛霊。響から見ても姿形は見えず、声だけしか聞こえてこないのだ。
その理由は、地縛霊によると生前の自分の姿をはっきりと思い出すことができないから、だそうだ。
少し前に、とある二人組の会話によって部分的に思い出したことによって手だけは出すことができるようになったが、意識すればその手も消すことができるため実体のない霊には変わりない。
そもそも、彼が何故この公園の入り口で地縛霊として存在しているのか。彼の過去に何があったのか。それは、いまだに解明されることのない大きな謎の一つなのだ。
因みに、公園のすぐ横に『通り魔殺人事件現場』を知らせる立て看板が置かれているのだが、これは彼と関係はないらしい。
『でも、わたしこのままコギャルのおねーちゃんと会えなくなるのやだ……』
「幼女霊……」
そう言ったのは、地縛霊の傍らにいた小さな幼稚園児くらいの年齢の幽霊だ。
彼女もまた、一体なぜそんなに若くして亡くなったのかは定かではないが、しかし死後の幽霊ライフに関してはいろいろとエンジョイしている響の友達の一人。
かつて、とある電車の中で響が出会った幽霊で、一人で電車にいるのは寂しいと、降りる人たちの服の袖やズボンの袖を片っ端からつかんでは転ばせていたというある種危険な霊。
そんな彼女をこの場所、つまり地縛霊がいて一人には決してさせない場所に連れて来たのも響の発案、ではなく彼女の友人である上原や江角の発案だった。
けど、響が幽霊たちとのつながりを作ってくれたおかげで彼女はこの場所にやってくることができた。響が作ってくれた、つながりによって。
そのつながりの一つが、今、途切れようとしている。
『何とかならないの?』
「あたしたちだって、何とかしてやりたいけどさ……」
「正直あまり方法が……」
そう探し出すにも情報も方法も乏しすぎる。せめて幽霊を自由に見ることができる人間がいれば。
「井上さんの親戚の勇希君は?」
という小川。彼女が今あげた勇希は、井上成美の親戚であり、まだ小学生の男の子だ。
その子は元々の体質であったのか、それとも響と出会ったことによって力が付いたのかは不明だが、携帯を通さずとも幽霊の声があいまいにではあるが聞こえるようになったのだ。
「でも、声を聞けるってだけじゃ……」
「それにさ、ほら井上さんがああなって勇希君も……」
「あ、そっか……」
そう、その勇希の親戚であり、自分たちの友達である井上成美も今回の事件に巻き込まれて昏睡状態に陥っている。故に、勇希もまたそのことに関しての心労がたたっているはずなのだ。小学生の男の子にこれ以上の精神的負担はかけてはならない。
だが、そうなるとやはり、自分たちには彼女を探す方法なんてものはないだろう。
「せめて、このまま成仏してくれれば……」
「上原さん、それは!」
ボソッ、とつぶやいたその言葉に山田は当然反応した。
成仏。もちろん、幽霊たちだって永遠の存在ではない。いつかは成仏し、天国へと行くか、それか生まれ変わらなければならないのだ。それは当然、生者である自分たちも同じことである。
しかし、だからと言っていきなり成仏なんて、そんなの。
「でもさ、悪霊化してどっかの霊能力者に倒されるくらいなら……成仏してくれた方がまだましだよ……」
「……」
この発言に、誰も、何も、言う事はできなかった。
そもそも、彼女たちは悪霊化した幽霊、さらに自分たちに危害を加えるような悪霊にはさほどあったことがない。それは全て、響という純粋無垢な天然ボケ人間がいてくれたおかげなのは確かだ。
彼女がいたからこそ、彼女の幽霊友達に悪霊となった幽霊はいない。
でも、彼女がいない今、いや、彼女がいないという事実こそが、誰かを悪霊化に導く決定打となりかねない。
嘘か誠か、世間にはそういった悪霊を退治することのできる霊能力者と呼ばれている人間も多数存在しているらしいと、上原のオカルトサイトにも何度か投稿があったし、上原が所属している≪コミュニティ≫でも、そんな事例を実際に目撃した事例があるとかないとか。
実のところ、上原はそのブログのインフルエンサーぶりを買われ、数多くの学校で作られた≪情報コミュニティ≫に所属していた。今日はこんな事件があった。こんな特ダネを発見した。はたまた、この学校にはこんな人物がいる、など。
もしかしたら、そのコミュニティに所属している人間に霊感を持ってる人間がいるかもーーー。
いや、過度の期待はやめようか。そんなことしても、何にもならないと言うのに。
だが、彼女は知る由もなかった。その情報コミュニティの集団の中に、≪霊感≫を持った人間がいると言うことを、彼女自身が自分の所属している学校の秘匿性を守るために、誰にも教えていなかったから。
もし知っていたならば、きっと彼女に頼ることができたはず、それなのに、なのにーーー。
「無駄なのかな……私たちが何かしようとしても……」
「そうかもね、あたしたちのあのドタバタの中心はいつも響だった……」
「その天海さんがいなくなると、俺たちにはどうしようもなくなるんだね……」
結局のところ、この話は事実の再確認をしただけで終わってしまった。自分たちにできることは何もない。自分たちに幽霊たちの問題にかかわる権利なんてない。
そもそも、かかわったところで何の報酬もない。それでも、何とかしてあげたいと思えるのも、全部響と出会ったおかげ。
彼女の、たとえどんな幽霊とでも仲良くなろうとする気持ち。そして何とかして幽霊たちが抱える問題を解決しようとする必死の表情を見て、何のつながりも持っていなかった彼女たちもまた、幽霊たちの問題を解決したい。そう願うようになった。
でも、たとえ願ったとしてもつかみきれるものじゃないのが現実。
その願いは、黄昏時の夕日の向こうにチリとなって消えていくだけで、結局叶うわけがない、どうしようもない。なにも、しようがない。そう、悲しんでいた時だった。
「お~い! 君たち!!」
「え?」
「あの人は……」
夕日の向こうから一人の白髪の男性が現れた。
「天海さんのお父さん!?」
天海朝陽。怖がりで有名な天海響の父親である。
「はぁ、はぁ、はぁ……よ、よかった。まだ帰ってなくて……」
「どうしたんですか? そんなに慌てて」
朝陽は、一度深呼吸をして息を整えてから言った。
「実は今日、日時指定の手紙が届いたんだ」
「え?」
「手紙?」
彼女たちが、すでに朝陽によって開封済みだった手紙の封筒を受け取るのと同時に、山田が聞いた。
「一体、誰からの手紙なんですか?」
「なんだか、少し古そう……」
確かに、材質からして昔の物であるのは確か。きっと、はるか昔に書かれて、郵便局に保管されていた物なのだろうが、一体誰からの手紙なのか。
「お、驚かないでくれ……これは……」
一体、誰からの―――。
「『これは?』」
「ぎにゃぁーー!!」
と、上原と付属する形で地縛霊まで聞き、さらにそれが運悪く上原の起動されていたカメラ機能によって拾われてしまったのがいけない事だった。
「ちょ、大丈夫ですか!? 天海さんのお父さん!!?」
「おい地縛霊!」
『む? 俺のせいなのか?』
朝陽は、言葉を発する前に気絶してしまった。
こと、ここまで怖がりの人間が霊感体質の女性と結婚したのだ。それは、ストレスで髪が白くなるのも分かる。
果たして、その手紙の送り主が誰だったのか、そしてその内容が何であるのかは、彼の目覚めを待つしかないのであった。
ここで、勝手に手紙の中身を見ようと誰も考えない辺り響の純粋さに毒されているような感じがする三人であった。
タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。
-
ヴァルキリーズfeatボーイ
-
プロジェクトSAO
-
アルティメットカオス
-
無への逃走
-
肯定あるいは否定
-
フィクションスターズ
-
〜いろんな著作物から以降はいらない
-
タイトルはそのままでいい