SAO/UNLIMITED プロジェクトSAO   作:牢吏川波実

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メインシナリオ第二章 花は必ず、咲き誇る
メインシナリオ 第二章 プロローグ


 その日の私は、久しぶりに出会う二人の友達と一緒に学校に向かっていました。

 

「おはよう、さやかちゃん。仁美ちゃん!」

「おはようまどか!」

 

 一人は、美樹さやか。とても元気で活発で、大の仲良しの女の子。ちょっと調子に乗りすぎると失敗するのがたまに傷のどこにでもいる普通の女の子。

 

「おはようございます」

 

 もう一人は、志筑仁美。とてもいいところのお嬢様であるらしく、私やさやかちゃんのような普通の女の子が付き合うにはもったいないとも思ってしまうようなきれいな女の子。

 そんな二人が、私の友達。私は、それを誇りに思っていました。

 

「まどか、リボンは?」

「え? あれ……」

 

 私は、さやかちゃんに指摘されて気が付きました。確かに私は家を出る時まではいつもの可愛い赤色のリボン二つで髪を括っていたはず。それなのに、どうして外れてしまっているのだろう。どこかに、落してきてしまったのだろうか。

 

「でも、その髪型もとても可愛いですよ」

「そうかな?」

 

 という仁美の言葉である。まぁ、いつも通りの自分じゃなくてもいい。今日くらいは少しだけイメチェンという事で良しとしよう。それに、その髪型も悪くないと自分でも徐々に思うようになってきた。

 

「ほら、二人とも。早く行かないと学校に遅刻するよ」

「あ、うん!」

 

 その言葉で私は思い出した。そうだ。自分たちはいま登校中だったのだ。早く自分たちが通っている学校。見滝原中学校に行かなければならない。そして、授業を受けなければ。

 そう、いつも通りの授業を。

 先生が恋バナをして、のろけ話を聞いて、二人と屋上で昼ごはんのお弁当を食べて、世間話をして、授業が終わったらモールのフードコートでファストフードを食べて。

 それで、帰ったらパパや弟のたっくんにただいまって言って、宿題をして、たっくんと遊んで、晩御飯を食べて、お風呂に入って、夜遅くに帰ってくるママを出迎えれたら一番いい。

 それが、私の日常。そんな日常を、私はとても愛おしく思う。

 そんな日々を守りたい。そんな日々をみんなで一緒にこれからもずっとずっと、続けていけたらいい。そう私は思っていた。

 そう、思っていたのに。

 

「え?」

 

 自分の、足が止まった。どうしてだろ。全然、前に進めなくなってしまう。まるで、足がボンドか何かで固められてしまったかのようだ。

 一体どうしてしまったのだろう。自分は。

 

「どうした~まどか」

「あ……あ……」

 

 おかしいのはソレだけじゃないらしい。どうやら、声も出なくなってしまっているようだ。それに、手も動かない。何もすることもできず、何も話すこともできず、自分はまるで彫像にでもなってしまったかのようにその動きを全て止めてしまった。

 

「さやかさん。早く学校に行かないと……」

「あ、そだった……まどか、それじゃ先に行ってるから!」

 

 まどかは、自分の耳を疑った。なんと、友達二人はこんな状態に陥った自分を放って先に学校に行くというのだ。そんな、どうして、そんな絶望にも似た感情をいだいたまどかを尻目に、二人はゆっくりとその背をまどかな見せていつもの道を歩いていく。いつも、私たち三人で歩いていた、あの石道を。

 

「ま……で……」

 

 待って、行かないで、さやかちゃん。仁美ちゃん。

 私はそう声を出そうとした。でも、出なかった。出るはずもなかった。

 二人は遠ざかっていく。ゆっくりと、ゆっくりと。暗闇の中をゆっくりと、ゆっくりと。

 私は、手を伸ばそうとした。でも、その手は絶対に動きはしない。

 いや、伸ばしても無駄であろう。だって、二人は自分がもう届くはずのない場所にまで行ってしまったのだから。

 行かないで、どこにも、行かないで。そんな願いも聞き入れられず、二人は去っていく。

 そして、彼女は独りぼっちになってしまった。

 どうして、二人は行ってしまったのだろう。私たちは、親友だったんじゃないのか。自問自答が繰り返される中、まどかはある事に気が付いた。

 自分の頭の上に、何かが乗っているという事に。

 一体、何なのだろう。まどかは、それに≪手を伸ばした≫。

 自分の手が動くようになっていることに気が付くことも無く、まどかは、重い万力のように頭に乗っかっているソレに触れた。

 そして、彼女は気が付いた。

 そうか、足が動かなくて当然じゃないか。

 声が出せなくて当然じゃないか。

 手が動かなくて当然じゃないか。

 彼女たちが離れて行って当然じゃないか。

 だって、今の私の心は。

 彼女たちと一緒には、いないのだから。

 

「ッ!」

 

 瞬間、彼女の意識は完全に覚醒した。

 まるで、恐ろしい怪物にでも追いかけられた後かのように、彼女は肩を大きく揺らしながら呼吸をする。

 とても、恐ろしい夢だった。でも、何が一番恐ろしいかと聞かれれば、彼女は簡単にこう答える。

 例え、ゲームの中だったとしても悪夢が見られるという事だと。

 そう、ここはゲームの中。SAOという、本当だったら普通のゲームだったはずの世界。その最初に自分が足を踏み入れた町、はじまりの街の中にある、一つの宿の中。そこに、彼女の仮の肉体は存在していた。

 とても古い宿、(ふう)に造形された建物だ。木製であるのか、あたりからは古臭い木の香りが漂ってくる。内装も、ベッドが一つと、今にも壊れそうな椅子とテーブルがあるくらいで、殺風景な部屋。

 本当だったら、もうちょっと豪華な部屋にでも泊りたいなとは思っていたけれど、でも今自分の所持金があまりないためにこんなところにしか泊ることができないのだ。

 まどかは、ベッドから起きると、おもむろにメニュー画面を開き、今の自分の所持金、レベル、そして日付を見た。

 所持金は、雀の涙程度。もう、これ以上この宿に泊まることはできない。

 レベルは、2。この宿に泊まるためにお金を稼いでいるうちに一つだけ上がったけれど、この世界で生きるにはまだまだ弱すぎる。

 そして日付は、11月13日。あの日から、もう一週間も経ってしまっている。けど、いまだに自分がいるこの第一層というエリアがクリアされたという情報はもたらされていない。

 

「一週間……か」

 

 あの日、彼女を含めた、多くの人間の人生は崩壊を始めた。

 最初は、ちょっとした興味本位だった。それは、数多くのにわかゲーマーと似たような物。

 たまたまこのゲームを手に入れて、たまたまゲームをプレイしていただけのはずだったのに。

 もちろん、最初は目の前にあるすべての景色に感動して、実際にはそんなことがないはずなのに涙も流しそうになるぐらい楽しかった。それは、間違いない。

 それで、武器を手に入れてすぐに草原に出ることなんてせずに、しばらく。というよりもかなり長い間はじまりの街と呼ばれた街中を散策していた。それだけでも十分だった。楽しかった。まるで、外国にでも来たかのように胸が弾んで、ドキドキとして、気が付けば17時を回ってた。

 こんな美しい世界を、友達は堪能できないなんて、残念だなと思うまどかは優しすぎだった。でも、その優しさは、ある意味では正解であり、そして後に大外れであることを彼女は知ることになる。

 その街で一番大通りであろう場所に差し掛かった時。事件は起こった。

 突如として自分がログインしてきた場所に飛ばされたまどかは、衝撃的な事実を知る。

 このゲームからログアウトが出来なくなったという事。

 自分たちがゲームをプレイする時にかぶったナーヴギアは、人を殺す力を持っているという事。

 既に、多くの人間が現実の世界でも死んでいるという事。

 自分達はゲームがクリアするまで現実の世界に戻れないという事。

 そして、この世界でのゲームオーバーはすなわち、現実世界の死に繋がるという事も、教えてもらった。

 正直言えば、あまりにも現実感がなくて、信じることはできなかった。

 でも、ゲームオーバー=死、というのは何となくではあるが実感することが出来ていた。その理由は、黒鉄宮という建物の中にあった、とても大きな碑石。

 彼女が、街中を探検していた時に立ち寄った時には、そんな物、存在していなかったはず。それなのに、その碑石は茅場晶彦のいうチュートリアルが終わったその時には、黒光りした質感をまがまがしく己に見せつけていた。

 

「……」

 

 その碑石というのが、≪今≫の私の目の前にある物。

 そこには、一人一人のプレイヤーの名前がアルファベット順に刻み込まれていた。勿論、彼女の名前、≪Ame≫の名前も、そこにある。

 でも、いくつかの名前には二本の線が引かれている。ほら今も、一つの名前の上に線が引かれた。

 

「ッ……」

 

 それを見た瞬間に、曇った彼女の表情。当たり前だ。なぜならば、その名前に線が引かれたこと、すなわち、誰かが死んだという事なのだから。

 そう、この碑石は現在生存しているプレイヤーの名前と、誰が、どこで、どうやって死んだのかを表すための物。碑石であるのと同時に、墓石でもあるのだ。

 たった一週間。でも、その一週間の間に、千人に達する勢いでプレイヤーの名前に線が引かれた。現実世界の不慮の事故が原因で死んだ人間、モンスターと戦って死んだ人間、もしくは、これからの人生に悲観して自死を選んだ人間。死因は様々だ。でも、問題となるのは死因じゃない、死んだ数とスピード。

 この調子で行けば、一万人いるプレイヤーはたったの二か月半で全員が死んでしまうことになる。もちろん、そうはならないという事を彼女は知っている。何故なら、このSAOに囚われたプレイヤー全員が戦いに出るような人間ではないという事を知っているから。自分もまたそうである。

 怖いのだ、戦うという事が。自分が死ぬかもしれないという状況に、そして死んでしまうという事が、怖いのだ。

 でも、それは人間の本能の一つとしては正しい防衛本能であるのかもしれない。

 私たち人間は、いつだって危険と隣り合わせで生きている。だから、その危険から逃れる方法という物を知っている。そして、危険という物に巡り合わない方法も。

 だが、今回はその危険に巡り合わない方法という物が裏目に出た。結果、プレイヤーの大半はゲーム攻略には向かうことなくこのはじまりの街から一歩も外に出ることなく閉じこもり、その日を待つことにした。ゲームがクリアされるという、果てのないその未来に向けて。

 臆病者なのかもしれない。でも、それをなじることは決してできない。自分だってそうなのだから。

 自分だって、死ぬのは怖い。だって、死んでしまったらもう家族に、父に、母に、弟に、会えなくなるのだから。友達と、笑いあうことも、できなくなるのだから。

 家族の暖かさを、友達の暖かさを知っていた彼女ら、たった一歩、当たり前に踏み出すべきその一歩を踏み出すことが出来なかった。

 今までは、である。

 でも、なんとなく、本当になんとなくその碑石に刻み込まれた名前を見ていたらふと、思うことがあった。

 確かに、この碑石に刻み込まれた多くの人間ははじまりの街でただ待っているだけの傍観者に過ぎないのかもしれない。

 でも、同じようにこの碑石に記された人間の中に、今も、ゲーム攻略のために危険な旅を続けているプレイヤーがいる。何もしない、何もできない自分たちのためなんかじゃない、己が早く、あの暖かい家庭に、笑ってくれる友達に会いたいがために、頑張っている人たちがいるのだ。

 『私も、誰かのために戦いたい。誰かの役に立ちたい』そう考えた時、彼女はもう傍観者を止めた。

 自分もまた、勇気を出さなければならない。誰かのために戦わなければならない。自分のために戦わなければならない。家族や、友達とまた会うために。

 決意を込めた少女は、冒険者として走り出した。ついに、今まで踏み出すことのできなかったその一歩を歩くことが出来た。

 苦難の旅路になるかもしれない。でも、それでも彼女は走り出す。

 もう、暗闇に手を伸ばすのは嫌だから。

 こうして、愛用のリボンを現実世界に置いてきた一人の女の子、鹿目まどか改めエイミーの挑戦が、今始まる。




プレイヤー№ 68 鹿目まどか(エイミー【Ame】)≪原作:魔法少女まどか☆マギカ≫

タイトル、また変えようと思ってます。今度はシンプルに。でもそんな頻繁に変えていいものかと思ったので、ちょっとアンケートとります。なお、前提としてSAO、あるいはソードアート・オンラインを頭につける事としてます。よろしければお答えください。

  • ヴァルキリーズfeatボーイ
  • プロジェクトSAO
  • アルティメットカオス
  • 無への逃走
  • 肯定あるいは否定
  • フィクションスターズ
  • 〜いろんな著作物から以降はいらない
  • タイトルはそのままでいい
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