発狂しそうです。
アインズ様の<鎮静>の能力?私にもください。
6-1 多忙なリムルと苦慮するアインズ
リムルは大慌てだった。
建国祭の準備は優秀な仲間達のおかげで着々と進められていた。
しかし問題はあった。
まずは魔王になり、ジュラの森を手中に納めたことで大森林内の各部族が挨拶に来たのだ。
リムルが魔王ということで恐る恐る挨拶にくる兎人族などは今後自分が悪いスライムだと言う誤解を解けば良いし、
自分のことを見定めるような目で見てくるものたちもシオンやディアブロを軽く宥めるだけだからまだいい。
しかし初めから交戦的な奴らは本当に疲れる。
時間がない中でこうした奴らを相手にするのは本当に骨が折れる。まぁスライムだから骨はないのだけれど。
だから牛頭族と馬頭族が来たときはシオンが割とうまく対処してくれて本当に助かった。
なんやかんやあって魔王就任によって発生したイベントの謁見式はなんとかなった。
しかし気づけば前夜祭まであと数日。まだまだやることが山のようにあるのだ。
リムルはジュラ・テンペスト連邦国の王であり、尚且つ魔王だ。
一国の王として人間の国と、そして魔王として他の魔王たちと関係を深めていきたいリムルは建国祭に様々な者を呼んだ。
そこまではいい。しかし人と魔物という本来ならば敵対する者同士をいっぺんに集めてしまったためにやることが多すぎたのだ。
特にリムルが苦悩していたことは礼儀作法。この人と魔物が争い合う世界で世界共通のマナーなどはなく、その国ごとに異なっている。
建国祭まで残り1週間。前日には前夜祭が行われ、武装国家ドワルゴンからはガゼルたち、その他にもミリムなどが来ることが決まっている。
「わぁーまじでなんでこんなに色々な国招待しちまったんだ!覚えることが多すぎる!!!!覚えきれねぇ!!!!」
とリムルは思いつきで開催を決意した少し前の自分に対して恨み言を吐く。
しかしいくら文句を言ったところでもうどうしようもない。
リムルは極力覚える努力をし、あとは未来の自分とラファエルさんに丸投げするのだった。
ブルムンド王国の国王夫妻と自由組合王国支部の支部長フューズととても建設的な話をした翌日。
武装国家ドワルゴンのガゼル王がやって来た。
ペガサスに乗ってガチガチの鎧を身に纏っていた前回とは異なりきちっとした正装で大勢の部下を連れて来ていた。
大国としての他国の貴族連中に対して武装国家の武威を見せつけなければならないのだろう。
「来てやったぞ、リムルよ。今回は久々の馬車旅で俺も疲れたわ。」
と文句を言いつつドカリと椅子に腰掛けるガゼル。
そんな様子ながらも王者然とした態度は崩さないのだからたいしたものである。
リムルもそんなガゼルを参考にしようと見ているとテーブルに並べられた茶菓子に片っ端から手を出している。
どこをどうしたらそこまで器用なことができるのだろうかと呆れながらもしっかり
「おい、俺の分の菓子も取っといてくれよ」と釘を刺す。
しかしガゼルはそんなこと知ったことかと言った感じで菓子を頬張る。
「細かいことをいちいち気にするな。こんな些事に気を取るなどお前もまだまだだな。」
と指摘してくるガゼルに対し(お前こそ人のお菓子とっておいてよくそんなでかい態度でいられるな)と内心さらに呆れるリムルであった。
しかし呆れると同時にガゼルの疲れた様子から街道の馬車移動がやはり大変であることを再確認したため
魔導列車作成もよりも街道整備に気合いを入れねばと考える。
そんな呆れながらも今後について考えると言う割と器用なことをしていると、ガゼルから話しかけられる。
「お前に聞きたいことがある。日向坂口(ヒナタ・サカグチ)と戦って引き分けたというのは本当か?
あの女がお前と引き分けあっただけでお前と和解するなどとても信じられん。
どうせお前が勝ったのに殺さなかったのであろう?」
「すげーな、なんでそこまでわかるんだよ!
でもまぁ勝ったには勝ったけど辛勝だし、ほんと勝った気なんてしなかったんだけどな」
とリムルが日向との戦いを思い出し苦い顔をしていると
「信じられん、あの女には俺でも部が悪いのに。」
とガゼルは自分の予想が当たっていたこととリムルが日向に勝ったことの両方に心底驚いていた。
「まぁ俺が勝てたのは90%以上でスキルのおかげだしな、第一俺の実力じゃうちの幹部たちに勝てるかどうか分からないぞ。」
リムルは究極能力(アルティメットスキル)『暴食之王(ベルゼビュート)』などの効果もあり自分では把握しきれないほどのスキルや魔法を使える。しかしリムル自身はその能力について認知していないのだ。認知していなければ当然使用できない。そこを究極能力(アルティメットスキル)である『智慧之王(ラファエル)』ことラファエル先生が効率的に運用してくれているのだ。
その莫大な演算処理能力を使用して未来予知紛いのことができるほどに。
そんなラファエルさんフル稼働させて日向に辛勝なのだ。
とても勝ったなんて思うことはできない。
「やはりお前は変わったやつだな。お前の実力というのはそのスキル含めたものだろう?なぜ己とスキルを切り離して考えるのだ?」
と言いガゼルは呆れながらも笑っている。
しかしこれがリムルの隠さざる本音なのだから仕方がない。
まぁ掘り下げても何も面白くない話なのでリムルもガゼルに合わせて笑っておく。
当然、苦笑いの方ではあるが。
「それで今回は一体何を考えている?」
とさっきまでのふざけた様子とは異なり真剣に尋ねてくるガゼル。
心なしか<英雄覇気>まで漏れ出ている気がする。
しかし尋ねられているリムルには何も思い浮かぶことがないためただただ戸惑う。
「なんのことだ????」
「なんのことだ?ではないわ!!今まで我らのことを魔物の近親種と言い距離を置いていた西方教会から国交の打診があったのだ。どうせお前が何かしたのであろう!」
そんなリムルの様子にイラッと来たのかガゼルは本題を告げた。
以前リムルは日向にガゼルも巻き込んじゃえ的なことを言っていたなと思い出した。
しかし思い出したはいいがどう説明すればいいか分からず遠い目をしてしまう。
そんな様子のリムルを見てガゼルはスキル<思考読破>を使いリムルに何かやましいことがあると察する。リムルはもうどうにでもなれと事の顛末を説明することに決めた。
当然だがルミナスのことは隠しながら。
黒幕が七曜の老師であることを伝えなんとか納得してもらう。
「なるほどな、しかし全く勝手に巻き込みおって。」
と文句を言う割に満更でもない表情をするガゼル。
「だから、まぁよろしく頼むよ」
「好き勝手しおって。まぁこの際だからこの件はまぁいい。
それよりもせっかくの祭りだ。楽しませてもらうことにしよう。」
散々リムルに文句を言ったことで様々なストレスが発散されたのであろうかガゼルは先程までの話はもうどうでも良いという感じで話を切り替えた。
リムルは調子のいい王様だなと思うがそのことをわざわざ伝えて再びガゼルの怒りをくらうアホではない。
「まぁ日向もこの建国祭に招待しているから詳しいことが話したかったら俺に言ってくれ。向こうに時間作ってもらえるように言ってみるから。」
「そうか、わかった。」
「あぁ!そうそう。それともう一つ言っておかなきゃいけないことがあったんだ。
今回人間の国以外も招待していてさ、パッと見、魔王よりも魔王している見た目のやつとかいるけど怒らなきゃ温厚なやつだからあんま警戒しないで普通に接してあげてくれ。」
とリムルが伝えるとガゼルはこめかみを抑えてため息をつく。
「はぁ、、、全く。あまり問題が起きそうな事案を持ってこないで欲しいんだが。
魔王じゃない魔王など正直意味もよく分からんが、、、まぁ良い。わかった。」
こめかみを抑え、ため息つくガゼルだったが去っていく足取りは軽く見えるのであった。
アインズは悩んでいた。
悩みの種は当然、前回リムルと通信で会話した際に招待されたジュラ・テンペスト連邦国の建国祭についてだ。
書状を送られて正式に招待されたわけではない。とはいえ向こうの国王直々のオファーだ。忙しくなければ、普通断る選択肢はないだろう。
そして丁度よくバハルス帝国とリ・エスティーゼ王国の戦争が始まり、衝撃的なことにアインズの超位魔法<黒き豊穣への貢(イア・シュブニグラス)>で王国は即降伏。
エ・ランテルを手中に納め、バハルス帝国は恭順と計画がとんとん拍子で進み今は思いの外、時間があった。
ならばなぜ同盟国の建国祭に行くことを躊躇うのか。
その理由は単純であった。ただただナザリックの者たちを外の世界に出すことが怖いのだ。他者がこれだけ聞けば過保護な親心と思うものもいるかもしれない。しかしそうではない。
逆なのだ。ナザリックという組織は基本的に人間という種族を蔑視している。
確かにペストーニャなどの例外もいるにはいるがそうした者は圧倒的マイノリティだ。
そんなメンバーをリムル主催の建国祭に連れて行けばどうなるのか。
それはもう火を見るよりも明らかだ。絶対問題を起こす。
だからアインズは出席するかどうかを本気で、かれこれ3時間近く悩んでいた。
しかしこれ以上1人で悩んでいても仕方がないため、デミウルゴスに相談することにした。
「お呼びでしょうか、アインズ様?」
デミウルゴスがアインズに呼ばれいつもの執務室にやってきた。
「守護者統括を兼任している忙しいなか悪いな、少し相談があってな。」
「いえ、とんでもございません。アインズ様のご期待に添えますよう精一杯努めさせていただきます。相談、でございますか?」
「ああ、先日同盟を結んだ国について覚えているか?」
「はい、覚えております。」
「その国から建国祭の招待をされた。」
「建国祭でございますか?」
「ああ、なんでも向こうもこちらと同じで国ができたのはつい最近みたいでな。
各国から友好国を招き国のお披露目をするのだと言っていた。」
「なるほど、しかし異世界の国である我々とはあまり関係がないように思えますが、、、。」
「確かに異世界間でテンペスト国以外と国交を深めるつもりはない。
しかし向こうにアルベドたちが既に行ってしまっているからな。
これはリムルなりの配慮であろう。」
「なるほど、そういうことでしたか。
ならば招待をお受けすれば良いのではないでしょうか?」
とアインズが何に悩んでいるのか未だに把握できずデミウルゴスらしくないふわふわした返答をしてしまう。
「しかし話はそう簡単にはいかないのだ。リムルの国は我々と根本的に国の目標が違う。
我々の目的は世界征服であるがリムルらは国の発展を主軸に活動している。
そのためにリムルは人間、魔物関係なく手を取り合っていける世界を目指しているらしい。
そのことについて異世界人である我々がどうこういう問題ではないが、我々が建国祭に出席するかを私が悩む理由ではあるのだ。」
「なるほど、そういうことでしたか。確かに我々は基本的に人間を下に見るものが多いですからね。そのことが原因で向こうの人間を過って殺してしまってはリムル陛下の政策の邪魔になるということでしょうか?」
「まぁ、、、そういうことだ。」
とアインズは返答に間が空いてしまう。
(ほら!そういうとこ!こっちが一方的に虐殺するみたいな前提で考えているとこ!
向こうの人間はこっちの奴らと違って強者もいるって言うのに、、、。
いつもデミウルゴスは冷静だから忘れがちだけど、本質は残忍で冷酷なんだもんな。
はぁ、、、仕方ないか。)
「しかしだからと言って同盟国からのせっかくの招待だ。
断るのもあまり良くないだろう。
だからデミウルゴスにはテンペスト国に行くメンバーの選抜を任せたい。」
「なるほど、かしこまりました。メンバーの選抜を行うにあたり一つお願いがございます。
今、テンペスト国には視察をおこないに、アルベドがいます。
とはいえアインズ様の護衛として他の守護者もお連れいただきたく思うのですがよろしいでしょうか?」
「そこは現守護者統括であるお前に任せよう。
ナザリックの防衛に差し支えない範囲でなら構わない。
それとあまりの大軍は用意しなくて良い。」
「よろしいのでしょうか?異世界の者とはいえ各国の貴族が参列するのでしたらナザリックが武威を示すべきかと愚行いたしますが、、、。」
「相手国は我らの国がどこにあるのかもわからないのだ。
後のリムルの心労になりそうなことは控えよ。」
「失礼いたしました。早急に軍と護衛を準備したいと思います。それでは失礼いたします。」
デミウルゴスが出て行った後アインズはリムルに連絡を取り支度をするのだった。
トマス2世さん誤字報告ありがとうございます。