鼻詰まって寝れぬ。
頭が全く回らぬ〜
集中力持たぬ。ぬ、ぬ、ぬ、ぬ〜。
今日は建国祭一日目。
午前中は音楽の演奏会が行われ、午後からはガビルとベスターの研究発表が行われた。
リムルは人間の貴族達に今日、一日中付き添っていた。
ルミナスも混じっていたが西方聖教会は人間の国として認知されているから致し方ない。
そのためミリムやアインズたちが何を行なっていたかは知らない。
警戒のため藍闇衆の中でも実力の高いものを見張りとしてつけていたのでそこまで心配はしていない。
特に問題報告されていないので何事もなく建国祭を楽しんでくれているだろう。
むしろ問題なのは人間達の方でアインズのことについてものすごい勢いで尋ねられ、、、いや問いただされた。
ヒナタにガゼルはもちろんのこと、エルメシアやルミナスまでもがすごい剣幕で尋ねて来た時は流石にリムルもたじろいでしまった。
というより天災級のミリムよりも見た目が異常なアインズの方が恐怖心+興味心を引きつけてしまうのだろうか?
ミリムに対する苦情は一言も聞いていない。
アインズに関して聞かれたリムルはみんなに一々説明することが面倒であったため今日の夜説明すると流してしまった。
今晩のパーティは前日の御座敷スタイルとは違って洋風な部屋で立食形式で行われることとなった。
これは前日からいる方々を退屈させないためでもあり、ただ単純に御座敷のキャパオーバーでもあった。
立食パーティには様々な国の重鎮たちが参加していた。
その中でも一際注目を集めていた数国。
まずブルムンド王国の国王夫妻、それにファルメナス王国の国王ヨウムとその妻であるミュウラン。
どちらも小国であったり、新国家であったりと歴史ある国の大貴族からは軽視されがちな国だ。
しかしそんな国の王が今回の建国祭開催国である魔王リムルと仲良さげに会話しているのだ。嫌でも会場の注目を集めてしまうだろう。
さらに注目を集めるのは武装国家ドワルゴン国王ガゼル・ドワルゴと神聖法皇国ルベリオス法皇ジル・リラ・ルベリオス。
両者とも建国以来、一度も交流がなく武力衝突はしてはいないもののいつ戦闘が起きてもおかしくない雰囲気だっただけにこの建国祭に同時出席するというのは奇跡みたいなものだと各国の貴族たちは考えていた。そのため当然各国の話題の中心となっていた。
ちなみに銀髪メイドも色んな意味で注目を集めていた。
そしてその神聖法皇国の西方教会聖騎士団長ヒナタ・サカグチ。
それにイングラシア王国自由組合総帥ユウキ・カグラザカ。
知っているものは彼らが異世界人であると知っているので大した驚きではないが知らない人たちからすれば
他国の騎士団長と組合の総帥に交友関係があること自体驚きであるのだ。
次に魔王陣営。
人間サイドからは旧魔王カリオンに旧魔王フレイを従え勢力を伸ばしつつあるため、
次は自領が支配されるのではないかと人間たちから恐れられている魔王ミリム・ナーヴァ。
当然本人はそんなつもり全くなくミッドレイにシュナの料理の素晴らしさを熱弁している。
そこまで語彙が豊富でないため同じようなことをずっと言っているのだがミリム信者のミッドレイには関係ないようだった。
最後は当然アインズ達ナザリック陣営の者たちだ。
国王であるアインズはあの見た目故に人間の貴族からは忌避され、大商人たちからも恐れられている。
アウラとマーレはダークエルフの子供という珍しい種族なだけに好奇な目で見られている。
本人達は全く気にしていないようだがその気になればここにいる奴らの大半を一瞬の内に始末できる。
そのことに気がついている一部の実力者が彼女らに恐怖するとともに警戒している。
アルベドは異種族ではあるが当然のように多くの男性の視線を釘付けにしており、様々な貴族連中に声をかけられている。
しかし当人からすればアインズ以外の者など利用価値があるかないかの基準でしか存在しないため適当にあしらう。
シャルティアは護衛当番でありアインズの近くにいるため特に周囲の視線を集めてはいないようだ。
パーティが始まり各々が挨拶などを済ませ、なんとなくひと段落したあたりで多くの視線が魔王リムルに集まる。
その視線が意味することは皆共通しており「いいから早く、あのおっかない集団の説明をしろ」ということのみである。
リムルはその視線に居心地が悪くなったためそろそろ説明しないといけないかと思い、飲み物片手に話を始める。
「みなさん、ジュラ・テンペスト国の建国祭1日目はいかがでしたか?
楽しんでもらえたでしょうか?我が国では2日目、3日目と今日以上に盛り上がるイベントが目白押しです。
明日は闘技場の予選試合がございます。
そして最終日には闘技場の決勝に加え我が国最高の施設、迷宮のお披露目会がございます。
今日の演奏会や研究発表は明日、明後日も定刻通りに行われますので気に入られた方はぜひ足を運んでみてください。」
とリムルは今後の予定を今ここにいる建国祭の出席者たちに伝える。
一部は闘技場や迷宮に興味を示したがそれ以上に「あいつらの説明はまだか?」の視線が多くてリムルは辟易してしまう。
「そしてさらに皆様にご紹介させていただきたい者がございます。」
と言ってリムルはアインズを呼び、自分の隣に来させる。
「彼は魔導国の国王であるアインズと言います。私の国、テンペストとは同盟関係にあります。
見た目は怖いですが基本的に温厚で理知的です。ですので皆さん心配なさらないでください。
ほらアインズからも何か言ってくれ」
と言いアインズの背中を叩く。
アインズは少し嫌がりながらも前に出る。
2人のやり取りからはとても仲が悪いようには思えない。
ただそうではないのだ。
会場にいる全ての人はあの怖い骸骨がリムルたちと同盟関係にあることは当然理解した。
しかし皆その国名に聞き覚えがないのだ。
だから皆の頭は「いや、魔導国ってどこ!?」というフレーズで埋め尽くされる。
ただそんなツッコミ思考も次のアインズの自己紹介で霧散してしまう。
「私は魔導国 国王アインズ・ウール・ゴウンである。
先ほど盟友リムルから紹介された通りだ。
貴国らとは特に敵対するつもりもない。だが決して友誼を結ぶつもりもない。
この建国祭の期間は我々のことは特に気にしてもらわなくて構わない。」
アインズは配下たちの前で常日頃から王様ロールプレイを行っていたため、
人前に立って偉そうな口調で話すことに慣れていた。
いや、慣れているはずだった。
しかしここにきて各国の本物の王侯貴族がいるということに緊張してしまい、
無意識の内にスキル<絶望のオーラⅠ>を発動させてしまう。
この時発動させてしまった<絶望のオーラ>がレベルⅠだったことは不幸中の幸いだろう。
しかしアインズがこのオーラを出した途端にヒナタやガゼルなどの実力者は警戒体勢に入る。
それ以外の者達は恐怖により足がすくんでしまう。
ただアインズやリムル、ミリムにルミナスはそれどころではなかった。
《告。進化条件(タネノハツガ)に必要な人間の魂(ヨウブン)を確認、、、、、認識しました。
個体名アインズ・ウール・ゴウンに対する世界からの恐怖を確認、、、、、、認識しました。
規定条件が満たされました。これより魔王への進化(ハーベストフェスティバル)が開始されます。》
真なる魔王として覚醒するためには人間の魂1万が必要。
アインズはすでに帝国と王国の戦争で18万の魂を得ているため覚醒条件突破。
そしてそれ以前に実力は真なる魔王であるリムル並かそれ以上。
魔王クラスの実力を保持しているため覚醒条件突破。
では後は何が足りなかったのか。
それはアインズに対する世界の認識であった。
アインズは異世界から来た者であり、この世界の認識外の存在。
しかしこの世界の人間、特に世界の中心となる各国の王侯貴族がアインズ・ウール・ゴウンという名前を認識。
そしてアインズのミスにより漏れ出た<絶望のオーラⅠ>により各国から脅威であると認識された。
もともとアインズは覚醒魔王になるための条件をほぼクリアしていた。
後は世界からの脅威認識のみという状態だった。
要するにアインズは丁寧に自己紹介をし、そしてその結果で真なる魔王として覚醒してしまったのだ。
《告。個体名アインズ・ウール・ゴウンの魔王への進化(ハーベストフェスティバル)が開始されます。
その完了と同時に系譜の異形種への祝福が配布されます。》
アインズは聞いたことのない声に終始戸惑っていた。
さらにアインズはこの体になって初めての睡魔に襲われていた。
襲われると言ってもその度に<鎮静>が発動してしまうのでほんのひと時の睡魔なのだが、
この睡魔→鎮静→睡魔→鎮静の件が何度も行われるため煩わしくて仕方がない。
(「リムルはこっちを見て心配そうな顔をするし、
あそこにいる銀髪メイドはものすごく驚いた顔でこちらを見てくるし一体なんなのだ、これは?
それにアルベドたち守護者もこちらをなぜか見てくるし、、、。」)
などと考えているとリムルが話かけてきた。
「アインズ!色々聞きたいことはあるけどとりあえずは後だな。体の方は大丈夫か?」
「体?体は特に問題ないと思うが、、、強いていうならばこの体で初めての眠気を感じることくらいだな。」
「それだよ!それ!耐えられるのか?俺もあの時はすぐ意識を失っちまったぞ?」
「いや、眠気が来た途端に<鎮静>されるから今はまだ大丈夫だが、鎮静機能がなくなれば少しまずいやもしれん。」
「そうか、その体の特性が羨ましいな。
というかアインズがその眠気感じるってこと自体がまずいぞ。
次は仲間達に同じやつが来るぞ?
アルベドさん達に別室に移ってもらえるように頼んでくれないか?」
「何?私以外にもこの眠気が来るのか?
わかった、今すぐ伝えよう。悪いが他の部屋を貸してもらえないか?」
「あぁ、今すぐ準備する。」
リムルとひとまず話が終わり守護者達に声をかけようとしたその時だった再び世界の言葉が聞こえる。
《告。魔王への進化(ハーベストフェスティバル)が開始されました。
身体組織が再構成され新たな種族へ進化します。
、、、、失敗しました。
個体名アインズ・ウール・ゴウンより複数の種族を認識。
それぞれの限界レベルの上限を解放、、、、、成功しました。
全ての身体能力が大幅に上昇しました。
種族スキル<不死の祝福>、<種族スキル不浄なる加護>と
職業スキル<不死のオーラ>、<アンデッド作成>、<アンデッド支配>、<アンデッド強化>、<アンデッドの副官>を統合します。
、、、、成功しました。7つの能力統合成功により究極能力(アルティメットスキル)『不死者之王(アルシエル)』が誕生しました。》
ここで世界の言葉が一旦途切れる。
いや厳密に言えば聞こえている。聞こえているはずなのだが何と言っているのか聞き取れない。
《究極能力(アルティメットスキル)『不死者之王(アルシエル)』の*********************************。
*************************************。
******************************。
***********************************************************************************************。》
リムルとミリムそれにルミナスの3名はそのことを不審に思うもどうすることもできない。
そしてアインズは訳のわからない声のことをひとまず保留にし、アルベド達に状況を説明し部屋を移ってもらう。
各国の貴族連中は何が何だか困惑しているようだが先程の恐怖がまだ残っており何も言い出すことはない。
ヒナタやユウキ、それにガゼルやエルメシアといった実力者らもまだ警戒しているものの特に何かをしてくることはなかった。
おそらく後でリムルが酷く絞られることになるのだろうが、、、。
アインズの配下達を別の部屋に移したとほぼ同時に再び世界の言葉が対象者に聞こえる。
《告。個体名アインズ・ウール・ゴウンの魔王への進化(ハーベストフェスティバル)が完了しました。
続いて系譜の異形種への祝福の授与を開始します。》
別室で待機していたテンペスト国の者がリムルに耳打ちをする。
それを聞いたリムルはアインズに近づき別室の状況を知らせる。
「このアナウンス通りお前の仲間達も始まったっぽいぞ。
4人とも突然意識朦朧になり始めて、数分もしないうちに眠ってしまったそうだ。」
「そうか、、、状態異常耐性やそうしたことに関するアイテムを持っていても効果がないのか。」
「普通みんな耐えられねぇんだよ。アインズの体絶対におかしいぞ?」
「そう言われてもな。というか他の人たちに説明しなくて大丈夫なのか?」
「あ!そうか!はぁ、、、まぁ後で話聞かせてもらうからな。
とりあえず俺は事態収拾のために色々やらなきゃいけないから少し待っていてくれ。」
「ああ、なんか悪いな。頼んだ。」
アインズの体に何も異常がないことを確認したリムルは何が何だか分からない
と言った感じで呆然としている各国のお偉いさん方に事情をおそろしく掻い摘んで説明する。
「すみません、ちょっとしたトラブルが起きてしまいました。
アインズのあのオーラは決して皆さんに害を為そうとしたものではないんです。」
とリムルが説明しているとガゼル王から質問を受ける。
「ではあの殺気はいったいどのように説明するのだ?」
「彼のあの殺気、、、オーラは常に出ているものなんだ。」
「常にだと?」
「あぁ、あのオーラはアインズの種族特有のもので常に出ているものなんだ。
ただ今日みたいに人の多い場所だとみんなが耐えられないだろ?
だから無理を言って抑えていてもらったんだ。」
「ならばなぜこのような場にアインズ殿を呼んだのだ?」
「みんながアインズについて知りたがっていただろう?
だからきちんと説明する場が欲しかったんだが、今は建国祭の最中。
だから今日みたいな人が集まる時にしか説明できなかったんだよ。
それにアインズは初めに言ってただろ?
“だが貴国らとは特に敵対するつもりはない。だが友誼を結ぶつもりもない。
この建国祭の期間は我々のことは特に気にしなくて構わない。“
って。あれは皆のことを想っての発言だったんだよ。
少し口下手だけどそこは勘弁してくれよ?」
「なるほどな、あの発言にはそうした意図があったのか。
口下手が過ぎる気はするが、、、まぁこちらに被害はない。
だから我が国は特に問題にするつもりもない。きっと他国もそうであろう。」
「そうか、悪いな。皆さんもすみませんでした。ありがとうございます。」
と横槍が入っても面倒なのでガゼルと2人で話をさっさと済ませてしまう。
ガゼルが率先してアインズについての疑惑を晴らそうと質問してくれたことも
早期解決の一助となったためリムルはまたガゼルに借りができてしまったなぁと少し遠い目をしたのだった。