歪な愛   作:糸守

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骸骨以外は泣けます。私の作品上はですが。


2-4 黄金の化物

「すまないな、急に」

イビルアイが連れてこられたのはこれまで朝の情報交換の場としていたモモンの宿だった。しかし今回はロビーではなくモモンの部屋に通された。

(え、え、え、え、え、まさか今から?

何も準備してない、、どうしよう、、、、、)などと混乱していると

 

 

「遠慮せず立ってないで座ってくれ、」

「は、はい」と小さく返事してベッドに座るイビルアイ。

「えっとできれば話しやすいようこっちに来て欲しいんだが、、、」

急にベッドに座るイビルアイに対して不思議に思い声をかけるモモン。

「え、?あ、ああ」

自分の考えていたようなことではないと知り落ち着いた反面、少し残念な気持ちになるイビルアイだったがモモンの言葉を聞いて一気に落ち着きを取り戻した。

いや取り戻さざるを得なかった。

 

 

「先日話したことなんだが、、、」

「ああ、あのことか」

「私なりにあの王女を調べさせてもらったが、、、」

「正直なところわからなかった。」

「というと?」

「彼女の見ているものがわからない。

正直あまり関わりたくないと感じた。

ただこれはあくまで私の直感がそう言っているだけだ。

何か明確な証拠があるわけではない。

 

 

だから関係を深めない方がいいと思った。がそういうわけにもいかないのだろう?」

「そうだ、ラキュースはただの冒険者ではなくこの国の貴族でもある。

それにもう十分関係は深まっている。」

「そうであろうな、、ならば大変ではあるだろうがなるべくあの王女と会う時は近くにいてやった方がいいと思う。」

「ああ、そうするつもりだ」

「まぁなんだ、チームメンバーに隠し事をしたままっていうのも辛いだろうし、困った時がくればいつでも相談に乗るから言ってくれ。

それともう少し私も調べてはみるつもりだ」

「!!!ありがとう、、、」

(これはまたモモン様と二人で話せる口実に!!!最悪だった気分が少し良くなった?気がする。はは、私はこんなにも現金な女だったのか、、)

など気分が上がったり下がったりを繰り返しているとモモンが

 

 

「これから打ち上げなのだろう?時間を使わせてしまって悪かったな、」

「いや気にしないでくれ、そ、その、、モモン様と話せるのは嬉しい、、も、モモン様はいつまでこの王都に?」

「今日一晩泊まったらエランテルに戻るつもりだ」

「そ、そうなのか、、な、なら今夜私たちと打ち上げしないか?」

「ありがたいが今日はこれから少し予定があってなすまない。」

「そ、そうか、では私はこれで。改めて今回はありがとう。」

イビルアイが部屋を出たことを確認するとモモンは今回最後の仕事に取り掛かるのだった。

 

 

 

 

「おい、どうしたんだ?こいつ。戻って来てから急ににやけたり落ち込んだりして」

「さ、さあ?」

「脈なし?脈あり?」

「なんかよくわからない表情だな」

「ま、とりあえず暗くなって来たしそろそろ打ち上げ始めましょうか。」

「おう、そうだな、酒飲むか」

「それじゃあとりあえず今回の依頼達成お疲れ様!乾杯!」

「「「乾杯」」」

 

 

〜2時間後〜

「しっかしよーイビルアイ、どうだったんだ?

さっきモモンに呼ばれてただろ?何の話してたんだ?いけそうか?」

「無理無理」

「もし成功したらモモンはロリコン」

「ちょっとそれは失礼よ。」

適度に酔った蒼の薔薇の面々がイビルアイに絡む

「でもよあいつの側にはあんな美人がいるんだぜ。

それにあんだけいい男なら女なんていくらでも寄ってくるんじゃないか?」

この言葉にイビルアイは突然声を荒げる

「そそそそそそんなことは、、、、ナーベは何もないって、、、言ってたぞ!!」

「おいおい嘘かもしんねーだろ、今頃宿でやることやってんじゃねーのか?」

ガガーランの言っていることを想像でもしたのか

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」

と顔をつっ伏せて嘆き始めるイビルアイ 。

 

 

「そうでもないっぽいわよ?」

「そうなのか?」

「ええ、モモンさんに聞いたらナーベさんは大切な友人の子って言ってたわよ。

そんな人に手を出すような人には思えないし。

ただナーベさんは完全に惚れてるっぽいけど。」

「へーそんな関係なのか、あの二人。てかそしたらモモン自身は結構な年だな。

つってもあれだけの美人に惚れられていて同じパーティでなおかつ二人ってもうくっつくのは時間の問題じゃないか?」

そんなことをガガーランがいうと

「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」

と再び死にそうな声を出しイビルアイは黙ってしまった。

 

 

「ほら、そんなに苛めないの。

いくら望みが薄いからって私たちくらいは応援してあげなきゃかわいそうじゃない。」

この言葉が最後の決め手となり「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙」

とイビルアイは座っていた椅子から落ちてそのまま倒れ伏してしまった。

「お前こそもうちょい気を使ってやれよ、今のは流石にきついぞ」と言いつつ笑うガガーランと他の2人。

ラキュースはラキュースでやってしまったと思うものの特に気にせず笑うのだった。

 

 

 

 

それからしばらくして

「はぁ、本当に疲れた、、、このアンデットの体になって疲労なんて感じないはずなのにな、、、

こんな疲れない体質なのに疲労を感じるなんてそんな特異体質この世に私しかいないだろうな。しっかしこの惨状、、、」

そこには酒を手に倒れる4人の姿があった。

「こんなになるまで飲むなんて今回の依頼、そこまで盛り上がるようなことではないと思うのだが、、、」

などと軽く思いながら4人に片付け毛布をかける。

「さて、私はどうするか、、、モモン様に会いたいな、、、散歩にでも行くか」

と思い、外に出るともう日を跨ぎそうな時間のためか人一人見当たらない。

 

 

しばらく何も考えず歩いているとどこからか鎧の擦れる音が聞こえる。

気になってそちらのほうに行ってみるとモモンが一人で歩いていた。

(モモン様!!!なんて奇跡!!!せっかくだし声かけてもいい、、よ、な、?)

などと浮かれていたがモモンのどこか深刻そうな雰囲気にその気持ちは一気に霧散する。

それと同時に(こんな時間に一人でどこに行くのだろうか)という疑問が頭に浮かんだ。

声もかけず後ろからつけるなんてダメだと思いつつも体は勝手に<不可視化>の魔法をかけて動いていた。

 

 

しばらくつけていると(なんでこんな遅くに王城に?あ、門番に話しかけた。)

少し話したらすんなりと門番はモモンを中に通したので「そんなんでいいのか、王国軍」と思いながらついていくとある部屋に入っていった。

その部屋を見た途端イビルアイはいてもたってもいられなくなり一度王城を出てすぐ<飛行>の魔法を使いさっきの部屋、ラナーの部屋のバルコニーまで向かった。すると中から話声が聞こえ、自身が考えていたような真っピンクのことではないことに安心したが中から聞こえてくる話に愕然とした。

 

 

 

「ラナー様、失礼します。あの、お客様がお見えになっています。

このような時間なので追い返そうとしたのですが、、、」

「わかりました、通してください。」

「!?よろしいのですか?」

「追い返せないような方なのでしょう?問題ありません。」

「かしこまりました。」

「それでどちら様なのですか」

「アダマンタイト級冒険者、漆黒のモモン様です」

侍女の言葉を聞いたラナーは珍しく本心から驚いた。

 

 

コンコンと部屋がノックされ次女が中に入ってくる。

「失礼します、ラナー様、モモン様をお連れいたしました。」

「ありがとう、下がってくれて構わないわ」

「で、ですがこのような時間に殿方とお二人というのは、、」

「構いません。」

「ですが、、、」

一向に引こうとしなかった侍女だが

「いいから下がってください。モモン様がそのような不埒なことをする方とでも?」

という言葉がきっかけとなり

「い、いえ。し、失礼します。」というと侍女は慌てて部屋を出た

「失礼しました、モモン様」

「いや構わない」

「今お茶入れますね、そちらにおかけください。」

「いやそのような気遣いは無用だ。」

 

 

「はぁ?わかりました。それで今夜はどのようなご用件で?」

「ああ少し聞きたいことがあってな、それとその作り笑いやめていいぞ。」

「聞きたいことですか?私にお答えできることなら」

とモモンの後半の言葉は完全にスルーして話を続ける。

が次のモモンの言葉に驚き思わず笑顔がなくなってしまう。

「まず今回の件お前はどこまで把握していた?帝国までか?それとも法国もか?」

「あら、バレてしまっていたのですか。私が把握していたのは帝国までです。

法国も関わっていたのですね。私には戦闘のノウハウがありませんのでどこの国が強いかなどは漠然としかわかりませんの。」

「そうか。今回帝国が王国を属国にしようと画策していることに気がついていたか?」

「はい、帝国と8本指の一部が何やらしていることは知っていました。」

 

 

「そうか、それで無視をしていたと」

「はい、本当ならこのまま無視して王都を早く占領でもしてもらおうと考えていました。」

「ならばなぜこのタイミングで手を出した?あの男か?」

「ええ、私は彼らが何かを企んで実行しようとも全く興味ありませんの。

ただ今回は私の物に手を出されたので」

「お前の者、、、か」

「はい、私の物です。」

「お前は、お前の狙いは帝国に占領され捕虜となりその男と暮らすことか?」

「まぁほんとにすごいですね、正解です。

このまま王国が存在続けたら私の願いが叶わないのです。

それとあなたも先ほど私のクライムに何かしましたよね?」

モモンは最後の問いには答えず逆に問いを投げかける。

「そうか、お前にとってその男以外どうでもいいということか。」

この問いにラナーは間髪入れず「はい」と肯定した。

 

 

「それでは今回帝国が裏にいると知った上でラキュースら、蒼の薔薇に依頼をしたと?」

「ええ、そうですね。彼女は本当に使えるので死なずに済んでよかったです。本当にありがとうございます。」

「使える、か。ラキュースは友人ではないのか?」

「ええ、友人ですよ。」

「ならば聞き方を変えよう。<死者復活>を使えないラキュースは友人か。」

「ええ、使えない友人ですね。モモン様が何を求めているのかはわかりませんが私にとって友人なんてどうでもいいのです。

クライム以外、私の中での基準は使えるか使えないかなので。

あくまで家族、友人、敵は私に対しての相手の立場。概念でしかないのでそんなことどうでもいいのです。」

この言葉にモモンは一気に殺気立つが抑制のおかげで気分は最悪ではあるものの王族殺しというレッテルは貼らずにすんだ。

 

 

「その考えは生来のものか?」

「ええ、そうです。なので私に何を言っても何も変わりませんよ」

「そうか、わかった。」

「それとモモン様、あなたも昼間私のクライムに何かしたようですが何をされたのですか?お答えによっては許しませんよ?」

ととても王女とは思えない殺気を向けてくるラナーに先ほどまでのモモンの殺気が霧散してしまう。

モモンは先程無視した質問に2度も無視することは流石にできず返答する。

「ああ、大したことはしていない。お前に聞かれたくない話題があったのでな、記憶をいじらせてもらっただけだ。」

「まぁそれは気になりますね。内容もそうですが、モモン様は魔法もお使いになられるのですか?」

と張り付けたような笑みで尋ねてくるラナーにモモンはそっけなく

「そういったマジックアイテムがあるだけだ。」と一言いい部屋を後にした。

部屋を出たモモンは部屋の外で待機していた侍女に連れられ王城を後にする。

その際モモンの胸中には怒りや殺意に加えあの王女へ気味の悪さからくる寒気などで言葉では表せないほどに不機嫌だった。

 

 

ラナーのラキュースに対する考えを聞いたあたりでイビルアイ二人の会話を聞くことに耐えきれずイビルアイは<飛行>を使用して急いで人気のない場所に向かった。

もう声を抑えることが難しかった。こんな感情久しく抱いていなかった。

涙なんて下手したら数百年ぶりかもしれない。

それほどまでに今の出来事はイビルアイの精神に大きな影響を与えた。

「そんなことあるか。あり得ない。

ラキュースが今までどれほどお前のことを心配して、忙しい中時間を作って会っていたと思ってるんだ?

それが使えるからって理由だけで今までラキュースと関わっていたのか?

あいつはお前のこと本当に、本当に自慢の友人だと言っていたんだぞ、、、、、、。其れにモモン様のあの殺気、、本気で怒っていた、傷ついていた。

きっとモモン様は薄々かもしれないけど気がついていたんだ、あの黄金の化物を。

それを知った上で私には今後のことも考えて、それとなくアドバイスをくれて裏で色々してくれて今回も傷ついて損で大変な役回りばっかしてくれて、、、、、、、。

それなのに私は今だって耐えきれず逃げ出して、あの王女のことだって本当は心の中ではどこか引っかかっていたのに何もないから、知りたくないからと放置して、、、、、、、、結局モモン様に裏で支えてもらって。

私は何年経っても、いくら実力がついて強くなっても昔と同じで弱いままだ。

もう嫌だ、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、モモン様、、、、、、、、、。」

王女への怒り、自分に対する失望、モモンが自分を気にしてくれ、優しくしてくれることに対する喜び、様々な感情や思いが入り混じり涙は止めどなく溢れた。




人間の涙、人外の涙。本当に信じられるのはどっちなんでようね。
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