俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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年末ですね。なので短めです。
今日もよろしくおねがいします。


その10/第二形態について

なんやかんや、時生は帰宅した。あのあと、文人は軽い雑談をしながら駅まで送ってくれた。

 

「ただいま……」

「おかえり」

 

玄関まで母が出迎えてくれる。ちなみに父親は単身赴任中なのでこの家は二人暮らしだ。もともとは兄含めて四人も住んでいたが、今では家は随分ともてあます広さになっている。

 

「どう?魔法少女としての生活は」

「いや……まあ、悪くはないかな。仲間ができたから」

「そう。良かったね」

 

喋る白猫、中身ヤンキーな桃色ロリ、そしてちょっと敬愛が重すぎる青年。今までモブという感じで暮らしてきた時生にとっては、あまりにも濃い三人。アジトの非日常感や特訓など、なんだか物語の中にいるような気分で、楽しかった。それは事実だと思う。

 

「そういやさ、魔法少女になってもなんか別に驚かなかったよね。反応が薄いって感じ。何でなの?」

 

靴を脱いで廊下に上がり、ふと疑問に思って時生が聞く。時生の母は腕を組んで、少し唸ってから答える。

 

「……少しは驚いたけど、まあこういうこともあるかなって思った。この魔法がある世界、何が起こってもおかしくないからね」

「へえ……」

「昔ちょっと考えたことがあってさ。まあどんな形になっても時生は時生だし、そう接しようって決めてたんだよね」

「というと?」

「例えば、なんかの事故で足が無くなるとか、酷い火傷で顔が誰だかわからなくなるとか。まさか魔法少女になるとは思わなかったけど……」

 

そう言ってくすくすと時生の母は笑う。どんな形になっても、言い方を変えてみれば愛してくれるということ。そう宣言されたようで気恥ずかしくなりながら、そのありがたさに心が染みる。

 

「お風呂湧いてるから。入ったら?」

「……うん!」

 

 

 

 

次の日の昼。朝からグラウンドでの魔法練習を虎次郎とともにこなし、アジトに戻ってきた時生。時生がソファに座り、ミケが例の猫ハウスでだらけている。文人は学校らしい。

そして虎次郎については。

 

「なんか……意外ですね。そういうのできるんですか」

「まあここに住むようになったからな。さすがにこういうのも必要だろ。節約だ節約」

 

運動用長ジャージ、上はTシャツ。そこに黄色い無地のエプロンと三角巾。虎次郎は台所でフライパンを振るい、炒飯を作っていた。

炒め終わったそれを二つの皿に移し、リビングのテーブルの方に持ってくる。

 

「おお……」

「まあ簡単なもんだけど、自炊始めたてにしては上出来じゃねーか?」

「いただきます……!」

 

時生がスプーンで口をつける。具は玉子とネギだけの簡易なもの。しかし男らしく味付けは濃い目で、それでいてパラパラと仕上がっている。当然こういうのは時生の男の感性としてはドストライクである。

 

「うまいです……!」

「おう。それはよかった」

 

虎次郎はニカっと笑う。虎次郎自身も炒飯を頬張り、飲み込む。その顔は美味しさと自画自賛もあってか幸せそうで、時生から見ても可愛らしかった。まあ、そういうことは本人には言えないが。

 

 

「それで、今日は別のところに行くんでしたよね?」

「おう。前から言っていた”魔道具技師”のところに行く。そのステッキを見てもらうのと、あとは顔合わせだな」

 

魔道具技師。例のデイリーフォームを発見した人。おそらく頼れる人なんだろうなあと時生は期待をする。

 

「あっちとは結構連絡しててな。ステッキ同士の差異を見ればわかることもあるかもしれないらしい。あと……セカンドフォームについて、だな」

「セカンドフォーム……そういえば、それってなんなんですか?」

 

炒飯を頬張りながら訪ねる。助けてくれたときに使ってくれた巨大な鉄骨が印象的だ。それを使いこなすことができれば、時生自身もさらに強くなれるかもしれない。

 

「その魔道具技師いわく、強化形態ってものらしい。魔法少女は負けそうになったりする……ピンチになると都合よく覚醒するもの。その性質が反映された、と言っていたかな。現に俺が覚醒してのも襲われたときだ」

「めっちゃいいじゃないですか!使い方わかれば、強くなれるかも……」

「……そううまくいかないのが、このステッキに仕組まれた悪意なんだよ」

 

うまい話には裏がある。いい話を聞いたと喜ぶ時生に対し、虎次郎は苦い顔だ。

 

「まあ、使った瞬間わかる。あれにはこう……なんとも伝えづらいんだがな、人格を矯正する効果があるんだよ」

「人格を矯正……?嫌な響きですね」

「わかりやすいのが口調かな。なんというか……女の子っぽくなる」

「口調?」

「少なくとも、俺っていう一人称は使えなくなる」

 

なんて言えばいいかな……と悩みながら虎次郎は話し続ける。

 

「こう……無意識に”俺”っていう言葉で考えようとしてるんだけど、脳と口に出力される言葉が”あたし”になるんだよ。あれは正直体験しないほうがいい気持ち悪さだ」

「うええ……」

「正直、俺はお前に体験してほしくはない。けど、使わざるを得ない場合もあるし、その条件とかをしっかり把握しておきたいのが現実だ」

「なるほど……」

 

そううまい話はない。改めてこのステッキの悪質さを感じて気落ちする時生だった。

 

「あ、おかわり食べて大丈夫ですか?」

「え……いや、いいけど。よく食うな……」

「運動もしたんですし、お腹すいてたんですよ」

「……魔法少女って、太るのか……?」

 

 

 

 

 




・太るの?

ぽっちゃりな魔法少女はメジャーじゃない。つまり太りません。
が、もし、もとの体に戻れたときは……どうなんでしょうかね。はい。

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