俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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今日もなんとか更新です。
よいお年を。


その11/魔道具技師たち

目の前にあるのは、御剣区内でもかなり、いや、一番大きいといってもいいであろう建物。

なにせ普通の三階建ての高校だというのに、専用の魔法戦練習場が三つ備えられている上、専用の実習室が何十とあるという。それも当然、この市だけではなく全国から魔法に憧れ、適性を持った子女子息が集まってくる場所なのだから。

 

その場所の名を、”才門大学附属高等学校”といった。

異世界魔法戦争で活躍した大魔術師・才門慶とその門下の魔術師が創立した全国有数の魔法学園。

特にこの高校の行事の一つである”才門体育祭”はテレビとネット、その両方で中継されるほどの人気を誇り、他の都道府県でも知らない人はいないだろう――

 

「ここですか」

「ここだな」

「めっちゃ気後れするんですけど」

 

もともとそんな場所とは縁遠い環境で生きていた蒼色の髪の少女・時生はものすごく怖じ気づいていた。連れてきた桃色髪の少女たる虎次郎は苦笑しする。ちなみに、他の高校を訪れるのもあり、今日の彼らの服装はミケに用意してもらった慧海高校の女子制服である。赤いリボン、紺のブレザー、チェックのスカートが印象的だ。

 

「え、だって、ここ、偏差値70とかじゃないでしたっけ……俺みたいな凡人が入ってもいいんですかね……?」

「まあ、魔法戦闘科とかは倍率クッソ高いらしいけど……まあ、案外いざ戦っても勝てるもんだしな」

「え、そうなんです?」

 

時生は困惑する。戦闘経験ゼロの彼にとってはただのヤンキーが魔法エリートに対して殴り勝てるとはまったく思えなかった。

 

「あいつら、簡単にいうなら魔法至上主義なんだよ。スキルとトレジャーをわりと軽視してる。だからその二つを使って何が起こってるかわからないうちに倒せばいい」

「へ、へえ……そういうもんなんですか」

「もっとも、そういうのに気使ってる奴らにはまあ分が悪いけどな。身体強化魔法は苦手な傾向があるからそこを突けばワンチャン?って感じだ」

 

あけすけな論評に、さすがに戦い慣れてるヤンキーは違うな、と改めて虎次郎のことを見直す。

 

「んじゃ、入るか」

「あ、そうだ。学校の、どういう所に行くんですか?」

「ああ、それはな……」

 

虎次郎は、いたずらを想いついたときのようなにやっとした笑顔を持って言う。

 

「――サブカルチャー研究部だ」

「それ本当に大丈夫なんですか!?」

 

 

 

 

そういうことでやってきた学校内。教室が並ぶような所は一緒だが、新しめの学校なのもあり白く綺麗な所が時生には印象的だった。

ちょっと才門高校の生徒に奇異な目で見られながらも、気にしたものかと虎次郎はずんずん進み、二階の奥の奥にある部屋、そこにノックをする。

 

「こんにちは。虎次郎です。例の二人目の魔法少女連れてきました」

 

そういうと、横開きのドアが向こうから勢い良く開かれる。

開いたのは青年。頭が良さそうに見える黒縁メガネに、痩せ気味。白衣を着て指ぬきグローブをつけたその彼はカッコつけて大きく腕を広げながらテンション高く言う。

 

「おおおお!!!来たか虎次郎君!!!変わりなく今日も可愛いな!!」

「……変わらないっすね、大島先輩」

「つれないなぁ!!飛び込んできてくれてもいいのだよ!!」

「……とりあえず中入ってもいいですか?」

「もちろんだとも!!さぁ、中へ、レディ!!」

 

中に入る。そこは時生が知る理科室に似ていて、大きな机が九つ、廊下側の壁にはなにかの資料が多く入っている。

 

入ってきた入り口から対角線に奥、そこにいた女性が振り返る。

まず目を引くのがその身長。軽く175cm強はあるんじゃないかという高さに、元男の時生としては目が行ってしまうグラマラスな体。出迎えてくれた彼と同じように白衣を着ている。ただ、肩にかかる黒い髪はかなりぼさぼさで、目の隈が酷い。

 

「こんにちは……虎次郎さん……」

「おお。おつかれ、由紀子さん」

「その子が……新しい……?」

「ああ。二人目の魔法少女」

 

おお、と言っておっとりと笑う由紀子と呼ばれて女性。虎次郎は時生のほうに向き直って、二人を紹介する。

 

「えーっと……紹介するな。こっちの中二くさい白衣の先輩が大島一浩先輩。んで、こっちの背高い女子が千葉由紀子さんだ」

「よろしくな!!新しい魔法少女!!」

「よろしく……」

「よろしくお願いします……キャラ濃いですね……」

 

かたやハイテンション中二白衣、かたやローテンションでおっきい女性。サブカルチャー研究部なんて部活に所属しているから当然なのかもしれないが、その個性の強さに驚く。そんな時生にいつものにやり顔で虎次郎が言う。

 

「あ、ちなみに二人とも将来財団に就職できるぐらいには有能だからな?あんま侮んなよ」

「えっ」

「はっはっはっ!!意外か?俺も意外だ!!」

「そこまでできる人でもないよ……生活能力とかはダメダメだしね……」

 

意外なほどの実力。素で驚いてしまう時生と、謙遜する二人。サブカルチャー研究部なのに超優秀な人材……?と軽く困惑する時生。

 

「さて!!この部活について説明しておこうか!!」

「あ、お願いします」

 

大島が声をかける。あいもかわらず声は芝居ががっている。

 

「このサブカルチャー研究部は、単なるアニメ同好会などではない!!れっきとした魔法研究部だ!!」

「あ、そうなんです?」

「まあ参考までに見ることもあるがな!!現代文化を反映したトレジャーの解析、スキルの使用検証がこの部活の内容だ!!」

「なるほど」

「この才門附属は中世的魔法観を軸として四元素を基本とした魔法授業を行っているため!!少々異端である!!」

「少々どころかものすごく異端だね……」

 

大島の解説に、由紀子がツッコミを入れる。虎次郎がさっき言っていた通りにスキルやトレジャーを軽視する傾向があるなら、まあ異端扱いされるのにも納得できる。

 

「それでもって!!虎次郎君などのサポートを行ってる次第だ!!そっちは解析結果を知れる!!こっちは解析データが取れる!!ウィンウィンってやつだ!!」

「正直虎次郎さんたちがいないと……この部活成り立たないんだけどね……」

「……それじゃあ、どうやってこのサブカル研究部と虎次郎さんは出会ったんですか?」

 

慧海高校のヤンキーである虎次郎とこの魔法学園の研究部。ぱっと見縁なんてなさそうに見える。

 

「ああ……それはね……」

「部長!!だな!!」

「おう。ここの部長」

 

三人が口を揃えて言う。この人達をあわせる部長っていうのは何者なのか。

 

「その部長さんっていうのは今はいないんですか?」

「そうだね……今日もたぶんふらふらしてる……」

「そうだな!!あの人はどこにいるかわからん!!」

「本当に謎だよな……銀髪赤目、性別不詳、さらにこの学園入学当初からの”規格外”なんだっけ?」

「そうだね……正直半神半人って言われてもわたしは納得するかな……」

「三年ずっと戦闘実習学年一位らしいな!!」

「なんすかそのわけわからん人」

 

三人が笑う。どうやらその化け物じみたなにかに縁をつないでもらったらしい。

 

「まあ、それもともかくとしてだ!!ステッキの解析をするから、渡してはもらえないだろうか!!」

「わかりました」

 

デイリーフォームでブレスレット化しているそれを大島の方に受け渡す。大島は手に持ったそれをまじまじと見つめる。

「大丈夫ですか?」

「おう……大丈夫だ!!【鑑定】!」

 

そう宣言すると、大島のブレスレットを持つ手の上に、なにかが書かれた水色のホログラムのようなものが浮かび上がる。

 

「それでは俺は解析に入る!!少し待っていてくれ!!」

「じゃあ……少し話でもしましょうか……」

 

大島は部屋の奥のほうに向かっていき、時生と虎次郎は由紀子のほうに招かれるのだった。

 




・部長
たぶん本編にはあまり介入しない。そういう性格。
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