サブカル研コミュ回です。
「さて……何から話そうかな……」
「そうですね……」
由紀子が唸る。初対面だし、何を話したもんかと時生も考える。少し沈黙が続いていると、虎次郎から助け舟が入る。
「由紀子自身のとか、大島先輩がまずなにやってるかってのを紹介したらどうだ?こいつ……時生はここについていろいろわかってないしな」
「ああ……それがいいかな……まず、私はこの学園の道具科で、魔道士の杖の研究をしてるの」
「杖?」
「そんなものいる?って感じだよね……」
魔法の学習とかもそうだし、ヤンキーとかも杖なんていうのは使っている印象は時生にはなかった。
「杖はこの学校特有でもあるんだけど……杖を持つことで自身に”魔法使い”としてのミームが付与されて、けっこう魔法の強化がされるの」
「へえ!じゃあなんでみんな使わないんですか?」
「ああ……そのミームだけじゃちょっと弱くてね……うちの高校は杖を制度化することで”魔法学園在中”っていうミーム付与を重ねてるの。だからうちの高校特有……って感じ。わたしは……その杖の材質や大きさ。使う木の種類によってのミーム付与の変化を研究してる」
「ちなみにけっこう結果出しててな。その実績もあってかなり由紀子はこの高校でもエリートなんだぜ?」
「すごいですね!」
やっぱり魔法学園は凄い。こういうところから魔導技術が造られて、バブルになっていくのか。そこを垣間見たのもあって時生はちょっと興奮する。
「え、じゃあなんでこの部活に……?」
「……恥ずかしい話なんだけどね、わたし、その……」
目を逸して、顔を少し赤らめながら言う。
「魔法少女に、ちょっと憧れがあって……かれらが持ってるステッキを作れないかなって、思ってこの学園に来たんだよね……」
「な、なるほど」
「だからサブカルチャー研究部に来て、色々手伝ってる……ってわけ。もともと杖の研究をい始めたのもそれがあって、ね」
「……由紀子先輩みたいな人にこのステッキがくればよかったのに」
「いやいや、いいんだよ……」
身近にこんな人がいたのを知って、今更ながら兄とその上司を恨む。こういう人のほうが適切だろうが。少し憤るが、それを彼女はたしなめる。
「それもあって、絶対に……リバースエンジニアリングして、自分用のを作る。そのために、手伝ってほしい、な……」
「わかりました。お願いします」
「んで、大島のほうはどうなんだっけ?」
「あー……えーっとね」
話が終わったところで、虎次郎がまた話題を出す。本当にこの辺なんでヤンキーやってたの?ってくらい気が利くな、と時生は思った。
「大島先輩は……今やってる召喚魔法編纂プロジェクトで……高校生唯一招聘されてる」
「召喚魔法!?って、あれですか?異世界からなんか呼び出すっていう……」
「いや……それもあるけど……悪魔だとか、そういうのを呼び出すっいうのもやってるらしいよ……?」
「えっ。悪魔って実際いるんですか?」
「いないよ……だからまずは魔界を観測することから始めてるらしいよ?地獄観のミームで造られてても不思議じゃないし……」
「それは……凄い。二人ともそんなのやってるのになんでこんな部活に……」
「こんな部活って言うこたねーだろ。俺たちは助かってるんだから」
「あっ……すいません……」
雰囲気からは底知れぬ実力にびっくりして、失礼なことを口走ってしまい虎次郎に咎められる時生。由紀子は少し苦笑しながら続ける。
「彼は……ね。これは本人も当然のように言ってて、なんも恥ずかしがってないんだけど……」
「はい」
「なんでも、理想の彼女を召喚したいらしい、よ?そういうラノベを読んだらしい……ね」
「嘘でしょ!?そんなモチベでこの学園のトップに立てるんですか!?」
「実際なっちゃってるからね……ほんとにすごいよね……」
「え?マジですか……」
マジだぞ!!、と解析している大島のほうから言葉が飛んでくる。その不純な動機でエリートになれるものだろうか、と考えたが、そういえばこんな性転換ステッキを作ったのも大魔術師だったなということに思い当たり、納得してしまう。
「この世界は変態のほうが強くあれるんだろうか……」
「それは……無いと思うよ?たまたま。この学校作った才門慶は人格者として知られてるし……」
「あれ?才門慶って確か二十年下の教え子に手ぇ出したんじゃなかったっけ」
「……たぶん、人格者も、いるから……」
由紀子の必死のフォローも、虎次郎にインターセプトされる。悲しいことにこの場にいる虎次郎と時生は性転換して今男だし、由紀子は魔法少女に憧れがある。変態でなくとも強くあれるということをこの身をもって証明できる者はいなかった。
そんな話をしていると、急にサブカル研のドアが荒っぽく開かれる。
「す、すいませーん!!遅れました、ってあれ?」
「知らない顔……由紀子、新入部員か?」
「そうだね……祐希くん、こっちに来てくれる?」
「あ、はい、わかりました!」
そこにいたのはリュックを背負った青年だった。けっこう女顔で、背は普通より低めの160弱ぐらいで、たぶん今の自分と同じぐらいかなと時生は感じた。
さっぱりとした印象を受ける祐希と呼ばれた青年が、こちらの方へ来る。
「えーっと、わたしは望月祐希っていいます!、そちらの二人は……?」
「宮地時生です」
「龍岡虎次郎、サブカル研にはお世話になってる外部の生徒だ。よろしく」
「よろしくおねがいします。それで、由紀子先輩……」
「ああ、あれね……用意は出来てるから、少し待ってね……」
由紀子は部室の棚から、何やら取り出す。それは見てくれはチャチい変身ベルトのようだった。
由紀子はそれを祐希に渡す。
「ありがとうございます!」
「いやいや、大丈夫……調整はしといたから、頑張ってね」
「はい! で、お二人には申し訳ないんですけど、今日は放課後色々あるので……」
「おう。また機会があったら話そうな」
嵐のように彼はリュックにそれを入れ、部室を去っていく。それを見ていた虎次郎が、おずおずと口を開く。
「……まさかとは思うんだけどな、もしかして……」
「ああ……うん……彼はね、まさしく虎次郎くんと時生くんの逆ね……」
「そっか、そっかあ……ご愁傷様だな……」
虎次郎は天井を仰いで遠い目をしているが、時生は何がなんだかよくわかってなかった。まあ踏み込むほどのことではないだろう。
それからも数十分か話し込んだ後、三人の元に大島がステッキを戻しに来る。
「ふう。ありがとうな!!時生くん!!」
「ど、どうもです。それで、何かわかりましたか?」
「ああ!わかったことがある。君のセカンドフォームの性能だ!!」
★
「聞いといてよかったですね。セカンドフォームの内容」
「使わないのが一番ではあるけどな……」
日が暮れてきたころ、時生と虎次郎は学校を出ていた。歩きながら話す。
「しっかし個性的な人たちでしたね……」
「それはそうだな。ああそうだ、あの人たちわりと戦闘もできるんだぜ?」
「そうなんですか!?」
「しかも強いしな……でも、うちの高校の番長の問題だ。俺たちだけで解決しなきゃ……いや、したい」
「……はい」
そうしていると、虎次郎の持っていたスマホが震える。彼は取り出し画面を見ると、少しいつものようにニヤッと笑った。
「どうしたんですか?」
「前哨戦の日程が決まった。舞由野にたむろってるヤンキーを、一部のやつらが独断で先に襲ってしまおうとしているらしい。そいつらの喧嘩を両成敗、一気に潰して戦力を削ってしまおう」
「それは……」
「明日だ。初めての戦い、気張ってけよ?」
時生も、身を引き締める思いになって、少し緊張が走る。そうか、ついにこの魔法を人に向けるのか。
「あ、ちなみに俺はできるだけ手出さないつもりだから。頑張ってな」
「え!?」
次回、ミドル戦闘です。