俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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ついに戦闘回です。きりがいいところで区切るため短め。


その13/初戦闘(前篇)

魔法文明が発達し始めて十何年か。そのあおりを受けて、従来の町工場なども潰れたところがいくつもある。御剣区内にある青葉廃工場もその一つだ。

普段そこでたむろっている舞由野のヤンキーたち。今どきみないような変形学生服であるボンタンを履きこなし、夜だというのにサングラスをする。それはまさしくチンピラという他無い、ある意味希少な存在であった。

その中で金のモヒカンをしたリーダー格の男が、声をあげる。

 

「それじゃあ、対慧海高校、決起集会始めっぞ!!!」

 

叫ぶと、うぇーい!!と二十人近いヤンキーが叫び、一気に飲み物を開ける。ちなみに開けた飲み物は未成年らしくサイダーの缶である。

騒ぎたて、楽しむ傍ら、武器たるバットだとか火炎瓶だとかをしっかり用意して、近くに置いておくのは忘れない。不意をつかれるのが一番ダセえというモヒカンの言。実際スキル持ちでもなんでもないヤンキーなら数の差があるゆえ不意をつかれなければやられないし、いい選択ではあった。

 

 

――瞬間、超高速で向かってくる蒼い星。それがチンピラの一人の脇腹に突き刺さって吹き飛ばす。

 

 

相手が、魔法少女たちでなければ。

 

 

 

 

時刻は、少し前へと巻き戻る。

魔法少女衣装に身にまとった時生、デイリーフォームで革ジャン装備の虎次郎、そしてこのチームの情報担当・文人が裏路地に潜んでいた。

 

「……本当に、大丈夫なんですかね」

「大丈夫だ。お前の力を見せつけてくればいい。それに文人もいるしな」

「ッス。とりあえず廃工場に近づいて来るであろう慧海のヤンキーを潰すッスよ」

 

乱闘中に割って入るのと、どっちがいいか考えたンスけどね、と文人が語るが、結局のところの作戦はこうだ。

まず、裏路地から通りがかった慧海のヤンキー少数を不意打ちで潰す。星型弾ならおそらく余裕だろう、とのこと。

そしてそのまま廃工場に行き、文人と時生で先制攻撃。イレギュラーが発生したら虎次郎が割って入る。

 

「……やっぱ怖いか?」

 

虎次郎が優しい笑みを浮かべる。たぶん、虎次郎はここで時生に自信をつけさせたいと思っている。だから今回は後方にいることにしたんだろう。そんなことが時生もわかってるからこそ、ここで頑張らないといけないと、自分に言い聞かせる。甘えないように。

 

「……頑張ります!」

「そうか?なら良かった。これが俺達の変身解除をするための戦い、その初めての戦闘だ。どうなっても俺がなんとかするから、気張ってけ。あと、文人は強いからな。信用しろよ?」

「わかりました!」

 

ステッキを、強く握りしめる。大丈夫だ、信じろ。

 

「……来るっす」

 

文人が告げる。なんでわかるんだろう。いや、余計なことを考えてはいけない。行く。

例のヤンキーが、表の道路に見える。虎次郎が、叫ぶ。

 

「ゴー!!」

 

瞬間、文人がどこから取り出したのかトリモチのようなものを投擲する。それを踏んだ先頭のヤンキーが前にこけ、周りの仲間っぽいのが気遣う。

よし、いまだ。狙いを確かに、正確に!

ステッキ上部、宙に浮いた星型弾が時生の意思に従って超高速回転、そのまま横に一回転して、投射する!

 

「シュートッ!!」

 

前にコケたヤンキーの脇腹に星型弾は突き刺さり、霧散すると同時にトリモチと仲間の一人ごと吹っ飛ばす。

残りはおそらく後三人、合計五人って文人がそう言っていた。こちらを伺った瞬間に第二投だ。ステッキを握る手の汗がヤバい、いやそれはどうでもいい!

再度生成された星型弾、間髪を入れずにもう一発!!

 

「シュート!」

 

放った一撃は、こっちに向かおうとしていたヤンキーのみぞおちにしっかり突き刺さる。

リロードに時間がかかる。後二人、ステッキの星は回転を始めてる。大丈夫。こういうときは。虎次郎の言ってた通りに。

 

『引き撃ちは長射程の基本だ。下がりつつ狙え……え、知ってる?FPSゲームでもそうだった?そうなのか……』

 

あの時はちょっとしょんぼりしてて可愛かったな、って違う違う。下がりながら、時間を稼ぐ。もっと速く回転が完了すればいいのに。

もう一発。裏路地に入りかけてたやつに。狙え。腹なら致命傷にはならないはず!

 

「シュート!」

 

しっかり狙い通りに入る。吹っ飛ぶ。よし、いける。大丈夫だ。自分自身に言い聞かせる。最後最後、って……

その時、時生の目に入るのは、最後のヤンキーが魔法を使っている姿。金属性に連なる硬化魔法をボールに付与し、身体強化で投げるこのあたりのヤンキーの常套手段だ。

リロードが終わらないうちにそれが投げられる。それが、蒼の魔法少女の胸に――

 

「〜〜っ!!!」

 

刺さらない。間一髪、身体強化で体をひねって避ける、が体勢が、だめだ、転ぶ。まずい!

前に向かって地面に倒れる。虎次郎が叫ぶ。

 

「文人っ!!!カバー!!」

「了解ッス!!」

 

文人はどこからか取り出したバスケットボールを相手に向けて全力で投げる。それは顔面に突き刺さり、最後の一人を沈黙させる。

 

「……よし、大丈夫ッス」

「よくやった文人、で、大丈夫か?」

 

虎次郎が、時生に向かって手を差し出す。時生はそれを手に取る。

 

「……最後、決めれなかったです」

「大丈夫だ。初めてでこれはいい。最初はみんなこんなもんだ」

「今、すごい、心臓バックバクです。死ぬかとおもった……」

「あっはっは。いや、わかる。手すごい汗だもんな」

「言わないでください……」

 

そのまま、手を引かれて立ち上がる。

 

「さて、次が本番だ。この調子で、いけるな?」

「はい!」

「それじゃあ、ミケに連絡入れてこいつらどうにかしてもらうっす。俺達は廃工場に向かうっすよ!」

 

裏路地から、ヤンキーたちを置いて出る。そうだ。浮かれるな自分、と自分を律して、三人は動き始めた。

 




目が覚めるヤンキーたち。不思議と直ってる傷。そして頭の近くには「次は無い」という書き置きが……

Q.文人どっから物取り出してんの?
A.そういうトレジャーです。詳しくは次回。
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