――そうして、舞由野高校のヤンキーたちは襲われた。
先に慧海高校の独断部隊を潰し、蒼色の魔法少女・時生による不意打ちをかます。その結果、ヤンキーの一人がぶっ飛ばされる事態になった。
パニックになりかけるヤンキーたち。しかし、そこにリーダーのモヒカンの指示が入る。
「ぼさっとしてんじゃねえ!!敵襲だ!!武器持って突っ込むぞ!!」
その太い声が響き渡ると、ヤンキーたちは我を取り戻し武器を担ぐ。まだモヒカン自身は気づいてはいないが、彼の統率技術は既にスキルの粋まで達しようとしていたのだ。
「相手の攻撃は単体遠距離、威力は高いが全員一気に潰されるほどじゃねえし近接戦は不得意と見た!!人海戦術で近づくぞ!!」
時生の星型弾は確かに威力が高い。が、一人ずつしか潰せない以上、その殲滅能力は低い。先程の戦いは五人だったが反撃をもらってしまった。ましては二十人なら言うまでもない。時生の表情が苦いものに変わり、手に汗が握る。
一人一人、星型弾をチャージして撃ち出し潰していくが、焼け石に水。七人程度が吹っ飛ばされたが、まだ十数人残っている状態で入り口にいる時生への接近を果たす。
「へへ……何がなんだかわからねえが、喰らえ魔法少女!!」
「っ!!!」
先頭のヤンキーが、大きくバットを振りかぶる。時生がステッキを盾にして耐えようと思ったそのとき。
「一人で来るわけないじゃないッスか。馬鹿ッスね」
瞬間、ヤンキーたの足元から何かが爆発した。
★
「なあ、強い奴の特徴って知ってるか?」
グラウンドでの魔法訓練の休憩中、ベンチに座って水を飲んでいた時生に、虎次郎が声をかける。
「いや、そりゃあたくさん実践経験がある人、とかじゃないんですか?」
「いやいや。それはそうだけど、もっと明快な特徴があるんだよ」
明快な特徴。いきなり言われてもあまり思いつかなかった。時生は首をひねりながら、答える。
「……単純に、強い魔法属性でもあるんですか?」
「そんなんでもない。魔法属性は極めりゃなんでも強いからな。いいか、強い奴っていうのは魔法とトレジャーとスキル、それのシナジーが強いんだ」
「なる……ほど?」
「たとえば俺の魔法少女じゃなかった頃の話なら、身体強化で近づいて、接近戦のスキルで殴って、遠距離からの攻撃は《バッドバッドバット》で弾き返す。こういうふうにコンボが組めるほうが、強い」
「なるほど……スキルやトレジャーに弱点があっても、それを別ので補強するとか、長所同士をかけ合わせて強くするとかそういうことですか」
「そうそう。で、こういうのに限っては……文人のシナジーは、ある意味俺のより
★
ヤンキーたちは、まるで状況がわからなかっただろう。なにせイケイケで攻め込んでたら、急に全員が吹っ飛んでいた。さらに言えるのは、気がついたら突然目の前に好青年と呼べる人物が出現していたということ。
「な……何が起きた!?クソッ……立て、お前ら!」
モヒカンが号令をかけるが、彼自身も少なくはないダメージを負っていた。それでも統率を忘れないあたり、このモヒカンはリーダーとしての素質がある。が、文人はそれを嗤う。
「いや、まさかこんなにもいいリーダーがいたとは。正直びっくりッスよ。でも、もうお前らは詰んでるッス。起動」
「っ!?」
モヒカンの横、壁際まで吹っ飛ばされていたヤンキーの足元で、また爆発が起きる。
「さて、種明かしでもするっすかね。おれのスキルは【気配遮断】。言葉を口に出すか、攻撃が成功するまで認識できなくなる能力ッス。起動」
今度はモヒカンの後ろ。倒れこんでいたヤンキーたちが吹っ飛ぶなか、文人は朗々と語り続ける。
「おれの魔法は道具作成。予め魔法を宝石や符に込める魔法っすね。最初のは時限式魔法グレネードで、高威力の魔法を無詠唱で発動できるっす。そして今爆発してるのはキーワード式で爆発させる符ッスね。お前らが魔法少女に集中している間に撒かせてもらったッス」
「クソッ……バカにしやがって!」
立ち上がったヤンキーの一人がバールを持って襲いかかりそれを縦に振るう。が、それは文人がどこからか取り出したゴルフクラブで受け止められる。
「おれのトレジャーは《インベントリ》。生物以外ならなんでも入って取り出せる異空間ッス。だから色々な物を限界越えて投げられたンスね。起動!」
振るわれたバールをそのまま弾き返し、すかさず左手で符を展開。襲ってきたヤンキーの腹に貼って起動、小規模な爆発を起こして吹っ飛んでいく。
そして、まさしく悪役のように、不気味に笑う。
「わかったッスか?もう勝ち目なんて無いんスよ、モヒカンさん」
「外道がっ……お、お前ら、あいつをやるぞ!!」
爆発に巻き込まれ、残ったのはモヒカン含め五人。全員学ランはボロボロ、肌にも怪我が多いが、その目には闘志が宿っている。
それを文人は嘲笑する。
「いやあ、でももう俺がこれ以上やっちゃったら本来の目的にそぐわなくなっちゃうんスよね〜。だから、ここは逃げさせて貰うッス」
瞬間文人は《インベントリ》から煙玉を取り出し起動、目をくらましてるうちにバイクのエンジン音を響かせ逃走。煙が晴れるころには何もいなくなっていた。
「……あいつ、絶対ツブしてやりましょうね、モヒカンの兄貴」
「そうっすね!あれは喧嘩道にそぐわねえやつっす!」
「とりあえず仲間を助けねえと……」
「いや、待て!!」
戦闘終了。残ったヤンキーたちが思い思いの言葉を叫ぶなか、モヒカンは叫ぶ。
「魔法少女!!何処行った!?」
え、と呟いたヤンキーの体が蒼い星によって吹き飛ぶ。残りの四人が、その発生源を確認する。
――宙に浮かぶ、蒼色の魔法少女。
「やりやがったな……あの野郎……」
モヒカンは姿をくらました理屈を即座に理解する。【気配遮断】だ。
あれは、他人に対しても使えるのだ。
能力の説明をしたのも、注意をそらすため。たぶん、他人に多く見られてる対象にはスキルを使えないであろう。
だが、それだけでは疑問がある。
「なんであの男の爆発の後から攻撃しなかった?二人がかりなら俺達を潰すのは余裕だったろうが」
魔法少女は、答える。
「……単純な話、あなたより強い奴と俺は戦う必要がある。それなのに不意打ちだけで倒して、それが経験になるとは言えないと思った。だからこそ――真っ向勝負を挑みたかった。だからそう仲間にお願いした」
あの桃色の魔法少女。優しくて、強くて、かっこよくて、かわいい、あの人に並び立ちたい。
そう願った時生の言葉を聞いて、モヒカンは笑う。
「は、ははは。これでも四対一だぜ?それで真っ向勝負か。俺達がスキルを持ってないとはいえな。――舐められたもんだなあ、お前ら!?」
「「「うっす!!!」」」
叫び、仲間が答える。あの爆弾男にしてやられた怒り、仲間をやられた恨み、そして真っ向勝負を望んだ魔法少女への敬意。それがモヒカンの中の何か……スキルを結実させる!
「魔法少女!名ぁ名乗れ!」
「――魔法少女ミーティアレイン、宮地時生」
「モヒカンこと山田一清以下三名!いくぜ!【チームワーク】!!」
モヒカンに名前をつける気もなかったし、文人をここまで外道にする気もなかったし、戦闘が三話に伸びるとも思ってなかった。どうしてこうなった。