更新頻度に関してですが、三日更新→一日休み→三日更新……のサイクルでいこうと思います。そのほうが能率良く書けると思ったので。
ということで今日は二話連続更新です。
妙なことになったな、と時生は思った。どうしてこいつらが覚醒しているんだろう。おかしいだろ。
しかし言ったことは取り返せないし、取り返す気もないんだ。こっちは空に飛べる分、四体一でも有利だ。後方に飛びながら、星型弾をチャージ、投射する、が。
「田中ァ!」
「うっす!」
今までなら間違いなく当たっていた距離。だが、一声かけられると避けられる。さっきとはまったく違う。スキルの恐ろしさを、身を持って感じる。
けどやれることは一つ。後方移動しながら星型弾を回転チャージ、ぶち抜くだけ……!
「佐藤!」
「はいっす!」
「よし、大丈夫だな!躱せる、躱せるぞこれは!」
二射目。また横っ飛びでかわされる。
とりあえず、とりあえず投げろ。当たるまで投げれれば……!
しかし三、四と投げていくが、すべてかわされていく。
「いけます、いけますっすよこれ!」
「でも、避けてるだけじゃ……」
「よし、お前ら!球用意だ!」
投射を避けながら、ヤンキーたちが土魔法で球を作り出していく。まずいまずいまずい……!
今までは不意打ち、もしくは当たることを良しとした特攻だった。だから避けられるような経験はなかった。それが時生の思考に焦りを生む。
「うっし!一気に投げろ!!」
「「「うっす!」」」
前方四方向からの一斉投射。虎次郎なら全部バットで跳ね返せるかもしれない。文人ならそもそもこんな事態にはならなかっただろう。
しかし、彼は彼の仲間のような実力を持たない、ただの新米魔法少女。避けれる道理は、ない。
魔法少女は、地に落ちる。
★
走馬灯のように、思考が走る。
痛い、というのはあまりなかった。魔法少女の服は瞬間的な痛覚の軽減作用がある。
だけど、それ以上に、恐い。
今にも追撃しようと四人が走ってくる。男が、四人。
このまま、起き上がれずに殴られたら?一瞬頭によぎる。ゾクッとする。息を飲む。
どうしたら、どうしたらどうしたらいい。恐怖が恐怖を、そして恐慌を呼ぶ。
そうだ、虎次郎なら、いや、でも、頼れない。甘えられない。でも、どうしたらいい!?
俺は、俺は、俺は、
「落ち着け!!時生!!」
――っ!?
どこかから聞こえた貴方の声、それが時生の負の思考を止める!
「狙うべきは誰かを考えろ! 死中に活だ!」
誰を狙うべきか。あの超反応は何によってもたらされるか。
自明だ。あの【チームワーク】とかいうスキルだ。それを使っているのは。あのモヒカン――山田に他ならない!
でもどうする?当てられるのか?いや、当てるなら方法はある。それこそ、死中に活だ。
時生は体に身体強化を巡らせる。弱いけど無いよりマシだ。
そしてそのまま駆けてくる奴らに衝突するように、走り出す!
「なっ――」
「おおおおおお!!」
破れかぶれな単純思考。当たらないなら近づけばいい!
右手に持ったステッキ、その上部の星は走りながらも回転を増す。
そのまま近づいてゼロ距離、ステッキを左から右へと振るい、腹に向けて投射する!
「シュー……トッ!!」
もともと遠距離でも人を吹き飛ばす威力があったそれ。ましてやゼロ距離で攻撃されれば、言うまでもない。
モヒカンの体はくの字に折れ、斜め30°に吹き飛んで意識を消し飛ばす!
「あ、兄貴ぃ!」
「くそっ……よくも!」
「か、仇を!」
何かを言っているが、とにかく距離を取らなきゃいけない。時生はモヒカンを吹き飛ばしたまま、勢いを殺さないようにそのまま走り、飛んで反転。
もう一度チャージしておいた星型弾をそのままぶち当てる!
「シュート!」
「がっ……」
【チームワーク】を失ったヤンキーに、もう星型弾を避けることはできない。まずは一発!
「くっそ……」
「もう一発……シュートッ!」
続けて二発。もう、もう大丈夫。チャージしながら気を緩めかけたそのとき――
「せめて、一発!!」
「っ!?」
最後の一人が、土球を投げてくる。寸前に迫ったそれを、なんとかギリギリで回避して……
「シュート!!!」
最後の一撃を、放つ。それはラストのヤンキーの腹にしっかりとぶち当たり、吹き飛ばした。
★
終わった……?
時生は、地面に降り立つ。戦闘が終わったことが信じられなかった。大丈夫?伏兵とかいたりしない?
じっくり周りを見渡して、何も起きないことを確認すると。
――し、死んだかと思った……。
その場にへたり込む。無理もない。彼はもともと私闘とは縁無かった高校生。緊張が抜けてしまったのだ。
特に最後の命運を分けた特攻。虎次郎の声援があったとはいえ、よく自分はアレをやったな、と自分でも信じられない心境だ。
心臓はものすごくバクバクしてるし、手汗も酷い。やばい。これは帰ったら風呂入んなきゃだめなやつ。
そんなことを考えながら、深呼吸をして、呼吸を整える。そうしていると。
「……」
「せ、先輩……?」
虎次郎が、近づいてくる。彼は時生のほうに近づくと、
「っ……せ、先輩!?」
「よかったっ……マジでよかったっ……」
――抱きしめられる。
虎次郎の胸に、時生の頭が埋まるような感じだ。突然のハグに時生は動揺を隠しきれない。が、すぐにわかる。虎次郎の心臓もかなりバクバクしていることを。そっか、見てる側も。
「もう、駄目じゃねえかと思った……心臓に悪いよお前……」
「……はは、ごめんなさい。っていうか、声めっちゃ震えてますけど……」
泣いているのだろうか、いやいやまさか。歴戦のヤンキーがこんなことで泣くはずが無いし……。
「うっせーー!お前が焦らせんのが悪いんだからな!!つーかこの体の仕様だし!!こうやって抱きしめてんのも!!」
「え、本当にそうなんですか……」
「あ、いや、な、泣いてねえからな!?」
虎次郎が慌てて取り繕う。泣いてたんだな。本当に、この人はかっこよくてかわいいな。
なんか、戦ってよかった。時生はそう思えた。心から。
「そういえば、文人は……」
「適当にここら一帯走った後、ミケ載せてこっちに来てるらしい。まあ、あまりにやりすぎたやつは少し治してやるのがヤンキーの義理だしな」
「はっ……そうか、優しいなあお前らは」
「!?」
虎次郎が抱きしめるのをやめて、声のしたほうを二人して振り向く。そこにはそこらへんに落ちていただろうバットを杖代わりにして、立ち上がろうとしているモヒカンがいた。
「おっ……お前……」
「いやいや……もう、戦う余裕はねえ。現にこうしてはいるけど足が言うこときかねえし、腹の骨がズキズキ痛む。で、その桃色のお前はなんだ?なんかヤジとばしてたけどな」
「――龍岡、虎次郎。慧海高校前番長だ」
虎次郎が宣言すると、モヒカンは目を丸くする。
「ええ?あの”殺人バット”か……ずいぶん可愛らしくなったもんだな。まじか?」
「嘘は言ってねえ。残念ながら」
「ってことは、お前らの戦うべき相手っていうのは今の番長、西浦の野郎か。なるほどなあ……」
モヒカン、山田一晴は天を仰ぎ、言葉を選んで、告げる。
「西浦の野郎は、気に食わねえ。ヤンキーのリーダーってのは仲間を指揮して、守る存在だってのに、あいつは駒かなんかとしか思ってねえように思うんだわ。だから、頼むぞ」
「……わかった」
「無事にあいつを倒せたときには……この舞由野の奴らと俺は、お前の傘下に入ってやる……だから、負けんじゃねえぞ」
そう告げて、前のめりになって彼は倒れる。意識を保ってるのは、魔法少女の二人だけ。
「そうだ……倒さねえと、いけねえな」
そう呟く虎次郎の横顔が、時生の脳裏に妙に残った。
二話目は19時15分に出します。