俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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初戦闘ラストです。

更新頻度に関してですが、三日更新→一日休み→三日更新……のサイクルでいこうと思います。そのほうが能率良く書けると思ったので。

ということで今日は二話連続更新です。


その15/初戦闘(後編)

妙なことになったな、と時生は思った。どうしてこいつらが覚醒しているんだろう。おかしいだろ。

しかし言ったことは取り返せないし、取り返す気もないんだ。こっちは空に飛べる分、四体一でも有利だ。後方に飛びながら、星型弾をチャージ、投射する、が。

 

「田中ァ!」

「うっす!」

 

今までなら間違いなく当たっていた距離。だが、一声かけられると避けられる。さっきとはまったく違う。スキルの恐ろしさを、身を持って感じる。

けどやれることは一つ。後方移動しながら星型弾を回転チャージ、ぶち抜くだけ……!

 

「佐藤!」

「はいっす!」

「よし、大丈夫だな!躱せる、躱せるぞこれは!」

 

二射目。また横っ飛びでかわされる。

とりあえず、とりあえず投げろ。当たるまで投げれれば……!

しかし三、四と投げていくが、すべてかわされていく。

 

「いけます、いけますっすよこれ!」

「でも、避けてるだけじゃ……」

「よし、お前ら!球用意だ!」

 

投射を避けながら、ヤンキーたちが土魔法で球を作り出していく。まずいまずいまずい……!

今までは不意打ち、もしくは当たることを良しとした特攻だった。だから避けられるような経験はなかった。それが時生の思考に焦りを生む。

 

「うっし!一気に投げろ!!」

「「「うっす!」」」

 

前方四方向からの一斉投射。虎次郎なら全部バットで跳ね返せるかもしれない。文人ならそもそもこんな事態にはならなかっただろう。

しかし、彼は彼の仲間のような実力を持たない、ただの新米魔法少女。避けれる道理は、ない。

 

魔法少女は、地に落ちる。

 

 

 

 

走馬灯のように、思考が走る。

痛い、というのはあまりなかった。魔法少女の服は瞬間的な痛覚の軽減作用がある。

だけど、それ以上に、恐い。

今にも追撃しようと四人が走ってくる。男が、四人。

このまま、起き上がれずに殴られたら?一瞬頭によぎる。ゾクッとする。息を飲む。

どうしたら、どうしたらどうしたらいい。恐怖が恐怖を、そして恐慌を呼ぶ。

そうだ、虎次郎なら、いや、でも、頼れない。甘えられない。でも、どうしたらいい!?

俺は、俺は、俺は、

 

「落ち着け!!時生!!」

 

――っ!?

どこかから聞こえた貴方の声、それが時生の負の思考を止める!

 

「狙うべきは誰かを考えろ! 死中に活だ!」

 

誰を狙うべきか。あの超反応は何によってもたらされるか。

自明だ。あの【チームワーク】とかいうスキルだ。それを使っているのは。あのモヒカン――山田に他ならない!

でもどうする?当てられるのか?いや、当てるなら方法はある。それこそ、死中に活だ。

時生は体に身体強化を巡らせる。弱いけど無いよりマシだ。

そしてそのまま駆けてくる奴らに衝突するように、走り出す!

 

「なっ――」

「おおおおおお!!」

 

破れかぶれな単純思考。当たらないなら近づけばいい!

右手に持ったステッキ、その上部の星は走りながらも回転を増す。

そのまま近づいてゼロ距離、ステッキを左から右へと振るい、腹に向けて投射する!

 

「シュー……トッ!!」

 

もともと遠距離でも人を吹き飛ばす威力があったそれ。ましてやゼロ距離で攻撃されれば、言うまでもない。

モヒカンの体はくの字に折れ、斜め30°に吹き飛んで意識を消し飛ばす!

 

「あ、兄貴ぃ!」

「くそっ……よくも!」

「か、仇を!」

 

何かを言っているが、とにかく距離を取らなきゃいけない。時生はモヒカンを吹き飛ばしたまま、勢いを殺さないようにそのまま走り、飛んで反転。

もう一度チャージしておいた星型弾をそのままぶち当てる!

 

「シュート!」

「がっ……」

 

【チームワーク】を失ったヤンキーに、もう星型弾を避けることはできない。まずは一発!

 

「くっそ……」

「もう一発……シュートッ!」

 

続けて二発。もう、もう大丈夫。チャージしながら気を緩めかけたそのとき――

 

「せめて、一発!!」

「っ!?」

 

最後の一人が、土球を投げてくる。寸前に迫ったそれを、なんとかギリギリで回避して……

 

「シュート!!!」

 

最後の一撃を、放つ。それはラストのヤンキーの腹にしっかりとぶち当たり、吹き飛ばした。

 

 

 

 

終わった……?

時生は、地面に降り立つ。戦闘が終わったことが信じられなかった。大丈夫?伏兵とかいたりしない?

じっくり周りを見渡して、何も起きないことを確認すると。

――し、死んだかと思った……。

その場にへたり込む。無理もない。彼はもともと私闘とは縁無かった高校生。緊張が抜けてしまったのだ。

特に最後の命運を分けた特攻。虎次郎の声援があったとはいえ、よく自分はアレをやったな、と自分でも信じられない心境だ。

心臓はものすごくバクバクしてるし、手汗も酷い。やばい。これは帰ったら風呂入んなきゃだめなやつ。

そんなことを考えながら、深呼吸をして、呼吸を整える。そうしていると。

 

「……」

「せ、先輩……?」

 

虎次郎が、近づいてくる。彼は時生のほうに近づくと、

 

「っ……せ、先輩!?」

「よかったっ……マジでよかったっ……」

 

――抱きしめられる。

虎次郎の胸に、時生の頭が埋まるような感じだ。突然のハグに時生は動揺を隠しきれない。が、すぐにわかる。虎次郎の心臓もかなりバクバクしていることを。そっか、見てる側も。

 

「もう、駄目じゃねえかと思った……心臓に悪いよお前……」

「……はは、ごめんなさい。っていうか、声めっちゃ震えてますけど……」

 

泣いているのだろうか、いやいやまさか。歴戦のヤンキーがこんなことで泣くはずが無いし……。

 

「うっせーー!お前が焦らせんのが悪いんだからな!!つーかこの体の仕様だし!!こうやって抱きしめてんのも!!」

「え、本当にそうなんですか……」

「あ、いや、な、泣いてねえからな!?」

 

虎次郎が慌てて取り繕う。泣いてたんだな。本当に、この人はかっこよくてかわいいな。

なんか、戦ってよかった。時生はそう思えた。心から。

 

「そういえば、文人は……」

「適当にここら一帯走った後、ミケ載せてこっちに来てるらしい。まあ、あまりにやりすぎたやつは少し治してやるのがヤンキーの義理だしな」

「はっ……そうか、優しいなあお前らは」

「!?」

 

虎次郎が抱きしめるのをやめて、声のしたほうを二人して振り向く。そこにはそこらへんに落ちていただろうバットを杖代わりにして、立ち上がろうとしているモヒカンがいた。

 

「おっ……お前……」

「いやいや……もう、戦う余裕はねえ。現にこうしてはいるけど足が言うこときかねえし、腹の骨がズキズキ痛む。で、その桃色のお前はなんだ?なんかヤジとばしてたけどな」

「――龍岡、虎次郎。慧海高校前番長だ」

 

虎次郎が宣言すると、モヒカンは目を丸くする。

 

「ええ?あの”殺人バット”か……ずいぶん可愛らしくなったもんだな。まじか?」

「嘘は言ってねえ。残念ながら」

「ってことは、お前らの戦うべき相手っていうのは今の番長、西浦の野郎か。なるほどなあ……」

 

モヒカン、山田一晴は天を仰ぎ、言葉を選んで、告げる。

 

「西浦の野郎は、気に食わねえ。ヤンキーのリーダーってのは仲間を指揮して、守る存在だってのに、あいつは駒かなんかとしか思ってねえように思うんだわ。だから、頼むぞ」

「……わかった」

「無事にあいつを倒せたときには……この舞由野の奴らと俺は、お前の傘下に入ってやる……だから、負けんじゃねえぞ」

 

そう告げて、前のめりになって彼は倒れる。意識を保ってるのは、魔法少女の二人だけ。

 

「そうだ……倒さねえと、いけねえな」

 

そう呟く虎次郎の横顔が、時生の脳裏に妙に残った。

 

 




二話目は19時15分に出します。
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