俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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本日二話目です。まだ一話目を読んでない人はそちらからどうぞ。


その16/事後報告通話

初めての戦い。その疲労ははっきり言って尋常じゃなかった。時生自身、体はそこまで疲れてなかったのだがやっぱり精神的な負担が大きい。ゆえに廃工場での戦いが終わった後、時生は自分の家に直帰していた。

 

「つかれた……」

 

風呂から上がり、ミケからもらった青白ボーダーのふわふわパジャマを着込んだ時生は、ベッドに倒れ伏す。正直戦い終わって、モヒカンが喋ってからの記憶があんまりない。残った少しだけの気力でどうにか家に帰って飯を食って風呂に入れただけすごい。時生はそう思った。もう寝たい気持ちでいっぱいっぱいだが、まだやるべきことがひとつある。

枕元に置いてあったスマホが鳴って、それを手に取る。

 

「もしもし……」

『おう。疲れてるところすまんが、事後報告やるぞ』

『まあ一応大事な話ッスから、寝ないで聞いてほしいッス』

『あたしも参加するわね!』

 

聞こえてくる三つの声は、知り合った仲間たち。そう、あの戦闘で何が好転したかを確認しなきゃいけないのだ。

 

 

 

 

 

『それで事後報告するンスけど、悪いニュースと良いニュースがあるンスけど、どっちからが良いッスか?』

「いいニュースで……」

 

こんな疲れてるときは朗報以外聞きたくない。時生は即断言した。とても眠いから声が変になってる自覚さえある。

 

『あー……じゃあいいニュースから聞くか』

『あたしもそれでいいですわ!』

 

虎次郎たちが配慮してくれたのか、いいニュースから聞くことになった。

 

『えーっとっすね、良いことに、確実に慧海高校の全ヤンキーを潰す機会が得られました。しかも自分たちで日程を決めれるっす』

『マジか!?』

『それはどういうことなんですの?』

『もともとヤンキーっていうのは大規模な抗争でもないと全員集合する機会が少ないんだよな。慧海高校の奴らもそうだ。だからこれから起きるであろう舞由野との抗争時を狙ってたんだけど、戦いのタイミングを自分たちで合わせられないから準備とかが面倒くさいし間に合わないときがあるんだよ』

『なるほど……ですわ?というか具体的にどうやって?』

『あのモヒカン……山田一清と交渉して、あの青葉廃工場で決戦する果たし状を彼名義で送ってくれることになったっす。だから決戦場所に細工し放題でもあるッスよ!』

『それはいいニュースだったな。で、悪いニュースは?』

『正確なら悪かったニュースなんすけど……舞由野のヤンキー、あれが全勢力だったらしいッス』

『え゛』

 

虎次郎がものすごい声を出す。何が問題なのか回らない時生の頭ではわからない。

 

「何が問題だったんですか……?」

『いや、抗争の時に慧海のヤンキーが全員集まるって話あったじゃないッスか。それおれ達が舞由野潰しちゃったせいであやうく無くなりかけたってことっす』

「つまり、一歩間違えてたら計画が御破算になってた、と」

『そういうことッス』

『え、まじ?嘘じゃなく?』

『気づけなかったおれも悪いンスけどね。まあ、負傷していた全ヤンキーの治療と引き換えに、さっきの果たし状を出せることになったっすので、気にすることは無いっす』

『まじか……舞由野のヤンキーって聞いた話じゃ数だけは多くて百人近くいるって聞いてたんだけどな……』

『高学歴な奴らがたくさん勉強して魔法強く使える現状ッスから、わざわざヤンキーする奴も少なくなってるみたいっすね』

『おう……そうなのか……』

『まあ、そんなところっすかね。しいていうなら交渉中のヤンキーたちのおれへの目線がめちゃくちゃ冷たかったぐらいっすか』

『あれはヤバかったわね……周り何も口に出してなかったけど』

『まあお前のシナジー断然強いけど断然嫌われやすいからな。けど戦闘で使ってくれるのはありがてえよ。嫌われ役買って出てくれるのもいつも助かってる』

『……こういうところ、なんすよねえ』

「そうですね」

『そうですわね』

『何の話だ!?』

 

あなたの人の良さについての話ですよ、虎次郎さん。そんなことを思いながら少し時生は笑う。

 

『ま、まあいい。ともかくそれなら少し休みを入れよう。決戦まで英気を養ってほしいし、明日あさっては俺たちの活動は無しってことでいいか?』

『わかりましたッス』

『わかったわよ!また動画上げなきゃいけないわね!』

「わかりました……」

『よし、じゃあ事後報告終わり!お疲れ!』

「お疲れさまです……」

 

通話を切る。このままものすごく寝たい気分だったが、時生は自分が歯を磨いていないことに気づく。重い体を引きずって、下の階に降りて歯を磨きに行った。

 

 

 

 

歯を磨き終わって、今度こそ寝るかと思ってベッドにダイブしたとき、スマホに通知が入ってることに気づく。

文人からだ。

 

『寝るところだったら申し訳無いッス。ちょっと謝りたくてこうして連絡してるッス』

『端的に言うと、会った初めての日に言ったこと。虎次郎さんに甘えんなって言ったことについてッス』

『モヒカン……山田一清から交渉中に、戦いの様子は聞いたッス。真っ向勝負で自分に打ち勝ったって』

『おれ、真っ向勝負とか大っ嫌いなんスよ。けれど、虎次郎の兄貴はそういうのを重んじるタイプじゃ無いっすか。だから、言いたくないっすけど、虎次郎の兄貴と並んで戦うのにふさわしいのは時生かな、とか思っちゃったッス』

『少なくとも、お前があの人の重荷にはならない。そう思ったッス。だから謝るッス。ごめんなさい』

『もちろん、あの人のことを一番好きで、尽力してるのはおれッスけどね!』

 

これは、要するに虎次郎にふさわしい人間として、一番近くにいた男が認めるということじゃないだろうか。

 

「あ……やばい、ちょっと泣きそう」

 

目頭を熱くしたまま、目を閉じる。その意識は心地よく眠りに落ちていくのだった。




モヒカン・山田一清については愛着が湧いたのでもしかしたらまた登場するかもしれません。
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