俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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難産でした。よろしくおねがいします。


その17/休日は外に出たくなかった。

虎次郎から休みをもらった時生。朝から彼が何をしているかというと。

 

「……」

 

カーテンすら開けてない部屋。ぼさぼさの髪。ベッドの上で握りしめるはコントローラー。モニターの画面には照準と銃。トリガーを引いて敵をヘッドショット、キルを取る。

 

「なんか修羅場ちょっとくぐったからか、すごい調子がいい……」

 

へへへ、と陰キャくさいにへら顔を浮かべながら、自画自賛をする。そう、彼は魔法少女になったとはもともとはオタク気味のモブ。外に出るはずなどなく、こうしてFPSをこなしているのだった。

 

「平均キル数が上がってるし、なんかパニクることが少なくなった気がするし……」

 

魔法少女になってよかったかもなあ、と思う。そのぐらい割と嬉しい。さあさあ次の試合だ、と意気込んでいると、スマホに連絡が届く。

 

「誰だろうな……」

 

通知欄の人物は、虎次郎。これは、無視するわけにはいけない。次の試合をキャンセルして、スマホを手に取る。メッセージだ。

 

『休みのところすまん。ちょっとその……今日遊びにいかねえか?』

 

息を飲む。外に、出たくないなあ……と。正直時生は家でごろごろした気持ちがいっぱいだ。しかし虎次郎だし……どうしようか……。

そう悩んでいると、追加でメッセージ。

 

『ほら、あの、色々と女体化して面倒なこと多いだろ?それのアドバイスしてくれる女の友人紹介するって話あったよな?それ」

「あったっけ……?」

 

思い返す。そういえば、本当に最初あった時に言っていたような言ってなかったような。それなら行く理由になるか……と重い腰を上げて着替えを始める。

 

『というか新しい魔法少女の顔がみたいってうるせーんだよこいつ!頼むから来てくれ』

 

……大丈夫かな。時生は不安になった。

 

 

 

 

一番近場の最寄り駅の御剣駅。そこそこ大きいが、大きいだけでわりと周りにはなにもない。そこで十二時に待ち合わせということらしい。

服装はパーカーとジーンズ。ミケに見繕ってもらったボーイッシュファッション。髪は気に入ったポニーテールにしている。

というか魔法少女生活のせいて日付感覚が鈍っていたが、今日は土曜日だったらしい。だからわりと人の行き来が多い。

 

「そろそろ来るかな……?」

 

駅構内の入り口、スマホをいじりながら、壁によりかかって待つ。と、なんだかかしましい声が聞こえる

 

「いやあ、やっぱ可愛いねぇ」

「おい、だから手を離せ。恥ずかしいだろうが」

「幼馴染だし、周りからみたら実質姉妹じゃん?」

「中身を考えろ中身を」

「世界基本外身だと思うんだよねえ!」

「お前は……お前は……」

 

女の子二人組。一人は見知った桃色魔法少女。デイリーフォームのいつもの革ジャン装備。そしてもうひとりは身長高めのモデル体型、茶色の髪は長く、艶がある美人だ。白のトップスに、ハイウェストのジーンズが足の長さと細さを際立出せる。

 

「お?」

「あ」

 

目が、合う。瞬間、彼女の目がきらっと輝いたような――

 

「可愛い!貴方が、噂の魔法少女だね!」

「うぇ!?」

 

虎次郎の手を離して、近づいて来て彼女は時生の手を取る。もともと女性慣れをしていない時生は赤面する。距離が近いのはヤバい。

 

「いやいや、確かにそうですけど……えっと、その」

「ねえねえ、名前は?」

「あ、えっと、宮地時生、です」

「おい、明日羽。困ってるからやめてやれって」

 

虎次郎が制止する。その声色にはかなり呆れが混じっている。そうだね、と虎次郎の言葉に答えた彼女は、改めて時生に向き直る。

 

「はじめまして。龍岡虎次郎の幼馴染、吉里明日羽です。よろしくね、時生さん」

「あ、はい、よろしくおねがいします……」

 

いきなりの美人の登場、その圧力にちょっと気後れするなか、時生にさらに爆弾発言が投げかけられる。

 

「あ、わたし面食いの全性愛者(パンセクシャル)なので。付き合ってあげてもいいよ?」

「!?」

 

時生は絶句した。

 

 

 

 

「いやあ、魔法少女っていうのはいいねぇ!可愛い外見!しかも中身は初心な男子ときたもんだし?」

「耳元でささやくのやめてください……」

「あれえ?魔法少女のことは大声で言っちゃあ駄目なんだよねえ?」

「くっ……」

 

電車内。向かっている場所は虎次郎のアジトもある中央区。そこの中心街を散策する予定だ。ドアの前で(見た目)女子三人で集まっている中、小さな声で彼らは話していた。

 

「俺のことはどうでもいいんですよ……明日羽さんのことを教えて下さい」

「あらあら、お姉さんのこと気になっちゃう?」

「同級生だろうが、明日羽」

 

虎次郎が白い目でツッコミを入れる。多分昔からこういう関係性なのだろう。明日羽がニヤニヤしながら話し出す。

 

「そうね……と、いってもただの虎次郎の幼馴染だけど」

「ただの……?それはねえだろ。葉雪学園反風紀委員会No.3」

「えぇ……それ言っちゃうの?つまんないの」

「ちょっと待って。ちょっと待って?」

 

葉雪学園の反風紀委員会とは。時生はそのパワーワードを聞いて会話にストップをかける。

 

「えーっと……えーっと?それはなんですか?」

「葉雪学園は絶対的お嬢様学園。ゆえに持ち込める物とかは絶対的権力を持つ生徒会と風紀委員会に制限されているわけ。それに対抗するために生まれたレジスタンスね!」

「そんなものが……あるんですか……なんか、葉雪の闇を知っちゃった気が……」

「ぶっちゃけ俺魔法少女になる前に一回その抗争を見たんだけどな、ヤバいぞ。物理的な魔法とかはそこまで飛び交ってはいないんだけど、精神関連のスキルがいたるところで発動している感じでな。まさしく女の戦いって感じだったな」

「いやいや、そこまででもないよ。慧海高校とかの争いのほうがヤバいと思うけど……」

「それは価値観の相違、隣の芝は青いってやつだっつーの。正直百人のヤンキーよりお前の全性対象魅了スキルのほうがヤバいと俺は思うぜ?」

 

二人ともヤバいと思うな、とは言えない時生だった。

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