俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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その19です。どうぞよろしくおねがいします。


その19/帰り道エンカウント

どうするか。この荷物諸々を傷つけるわけにはいかないし、やはり逃げるのが手だろう。

 

「まあまあ、ちょっと話聞けって。俺の名前は西浦哲夫。慧海の現番長、この前は舎弟が世話になったな」

「……」

「なにもここでボコるわけじゃねぇ。だから、とりあえず話聞け、な?」

 

だが、後ろを別のヤンキーに取られている。踵を返すのは難しい。やはり、ここは変身するしかないか。表情を固くする。

 

「おうおう。なあんか聞いてた話と違うなあ。なんつうか自信がついてるみてえだ。確か襲われて何も動けなかったっていうのは違ったのか?」

「……何が、用ですか?」

 

舞由野と戦ったことが見破られている……?いや、それはどうでもいい。仲間たちに連絡は入れても……ここまでこられはしない。単純に遠い。なら、とりあえず対話をしてみるしかないか?時生が疑問を呈すと、哲夫は口角を上げる。

 

「ああ。そうだな……単純に話してみたかったっつうのもあるが。そうか、用か。簡単にいうなら、スカウトってところか」

「――は?」

 

こいつは何を言っているんだ?頭に血が昇る。哲夫はそのまま語り続ける。

 

「俺の下に来い。蒼の魔法少女。俺のもとに付けば、色々と歓待してやるよ」

「お断りします。俺はあの人と一緒に戦うって決めたので」

「――元に戻れる可能性があるって言ってもか?」

「!?」

 

元に戻れる可能性。それは願ってもやまないこと。虎次郎と時生が、戦う理由。

 

「今俺のところにはステッキを渡した財団の研究員がいる。そいつとのアポをとってやろう。ついでに戦力になるなら悪い扱いはしねえ。なんなら俺の右腕にしてやったっていいぜ?」

「そんなの、どうとでも言える……敵の言うことを信じられるか」

「ああ、なら信用させてやろう。――おいお前、あいつに連絡入れろ」

 

時生の後ろにいるヤンキーに哲夫が命令する。そのヤンキーはスマートフォンを鳴らすと、何かを喋ると変化が起きる。

――哲夫の横の空間が割れ、人が現れる。

それこそが財団職員であることの証明。高難易度で知られる空間魔法が一つ、テレポートの実行。

 

「……こんばんは、魔法少女。ワタシこそが財団職員の一人。塙淳と申します。以後お見知り置きを」

 

190cm近いのではないかという背丈に、不釣り合いな痩せ型。異様な猫背に丸眼鏡。ニヤッと笑ったときに見える輝く白い歯。白衣を着て、首に財団のであろう職員証を提げた男。その全てが、時生には不気味に見えた。

 

「なあ、塙サンよ。ここに魔法少女がいるわけだが、それを元に戻すことってのはできんのか?」

「まあ、弊社の技術なら出来るでしょう。まあ、ワタシは下っ端中の下っ端、出来るのはそれが出来る人との縁を繋ぐことぐらいでしょうが」

「元に戻りたいんだろ?なら、こっちに来たって別にいいじゃねえか、時生君」

「っ……なんで、名前まで」

「お、カマかけだったが当たったか。行方不明の噂が立ってたから、もしかして、と思ったんだがな」

 

駄目だ。何から何まで相手の手のひらの上。もしかして自分が今日ここに来ることまで予測してたんじゃないか、そんな疑念すら呼び起こさせる。

 

「俺が望むのは単純だ。力。人を率い、戦い、その果てに大魔術師を超える。その覇道のなかにお前を加えてやる。どうだ、非凡な人生が待ってるとは思わないか?」

答えなんて、決まっている。

 

「確かに、俺は平凡(モブ)でした。非凡さに憧れもした。でも、最初に出会ったのはあの人なんだ」

「それってひな鳥の刷り込みと同じじゃねえか。それはお前の意思だって言えんのか?ここで選び直したらどうよ」

「……あの人と、仲間と過ごしたから、今の自分があるんだ。だから――」

「それ、せいぜい一週間ぐらいだろ?浅い仲じゃねえか」

「……自分の能力をしっかり認めてもらえて、嬉しかったんだ」

「俺だって能力は認めてるさ。じゃねえと右腕にしてやる、なんて言わねえよ。どうだ?こっちに来ちまえよ」

 

ああ、もう。こいつは、いちいち人の言葉の揚げ足取りやがって。

 

「うるせえな!!刷り込みがどうとか浅い仲がどうとか!!俺は平凡な人間なんだよ!!そんな浅い理由でころっと落ちるような奴なんだよ!!お前みたいにいちいち理屈と利益で物事考えてねえわ!!」

 

絶叫。ここまで叫ぶのは自分の人生でもわりと珍しいかもしれないなあ、と頭の冷静な部分で考えながら、頭の沸騰している部分で言葉を紡ぎ続ける。

 

「それに!!お前らみたいな悪人面した奴らの仲間になるより!!可愛いロリと猫のいるほうの仲間んびつくに決まってんだろ!!男がいつだって守るのは可愛い子のほうだ!!違うか!?違わねえよな!!」

「っ……ははっ、なるほどな。あいつの絆す力っつうのはホントにバケモンだな。それじゃあプランBだ。お前ら――」

「変身っ!!」

 

哲夫が命令するよりも、時生の体に六つの蒼い星が纏わるほうが速かった。変身した時生は荷物を持ったままあ圧倒的スピードで飛び上がり、空へと消えていく。

 

「……追いますか?ワタシも専門とは言えないまでも、複数の魔法を組み合わせれば飛行くらいは出来ますが」

「いや、いい」

 

哲夫が嗤う。

 

「今度そのままぶっ潰して、無理矢理にでも配下にするだけだ」

 

 

 

玄関前に着いた。ここまで疲れる帰路は初めてだった。そもそもヤンキーに絡まれるようなことが無い人生を送ってきたし、なんでこうなった、ってところはある。

まあ、でも。幸か不幸かここで確定した事がある。

すなわち、あの西浦哲夫を潰せば、それと同時に、あの塙という男からステッキの情報を得られるということ。これなら、自分たちが元に戻るための手がかりを手に入れられるかもしれない。

あいつらを、倒せさえすれば。

 

「……」

 

だけど、本当にうまくいくのか?

話してみて敵がかなり頭がキレることがわかった。学業のほうはどうだか知らないが、少なくとも戦術眼とかはあるのは確かだろう。基本行き当たりばったりな虎次郎とは違ってしっかりと計画を練るタイプに時生には見える。

 

「これ、本当に覚悟して戦わないと負ける可能性高いよな……」

 

虎次郎とともに戦う。その覚悟も自信もある程度ついた。けれど、やはりなんだか不安が残る気がする。

 

「まあ、いいや。今日あった事はみんなに伝えるとして……魔法少女ミーティアレイン・デイリーフォーム」

 

変身を解いて、チャイムを鳴らすと少ししたあとに扉が開く。時生の母が出迎えてくれる。

 

「おかえり」

「ただいま……」

「ご飯にするから。って……」

「どうかした?」

 

なんだかまじまじと見られている気がする。親のこんな視線は初めてだ。

時生の母は、真顔で親指を立てる。

 

「……その服、いいね」

「えっ」

「そうか、ゴスロリ……ありね。今度買って着せてみようかしら……」

「ちょっと、お母さん??」

 

これはまた着せ替え人形にされることが増えるんじゃないか?

時生は将来を危惧した。

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