俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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お気に入り10件超えに感想……ハーメルンすごい。
読んでくれてありがとうございます。そして第二話もどうぞ。


その2/ガール・ミーツ・ガール、ただし中身は男

「あー……まず聞きたいんだけどさ、お前ここの生徒だよな?」

「あ、はい、そうです」

 

慧海高校。時生の通う高校にして現在地。彼はそこの高校の生徒として普通に生活していた。ただ、これからはどうなるかはわからないが。

 

「なら話は早いか。”殺人バットの虎次郎”の名前に聞き覚えねーか?」

「あ、はい、あります。なんでもバット一本でこの高校の番長にまで成り上がった漢の中の漢の先輩って。でも最近失踪したって……」

 

はっ、と時生は気づく。まさか、今目の前にいる魔法少女は。

彼女は苦虫を噛み潰したような顔をしながら、告げる。

 

「そう。それが、俺だ」

「えええええええ!?」

 

時生はご近所迷惑な大声を上げる。聞いた話だと虎次郎という漢は身長190cmを超す大男で、ものすごい強面だったと。それが、こんな自分より身長が低いピンク髪のロリに。

ものすごい、ギャップだ。正直萌える。彼女はその可愛い声で話を戻す。

 

「ったく、うっせーんだよ。で、だ。元に戻る方法は見つかってねー。だから、俺に協力しろ。そのほうがお前にとってもいいだろ?」

「あ、はい、手伝います。正直女のままっていうのも嫌なので。よろしくおねがいします、虎次郎さん」

「おう。それならいい。これから俺のアジトに……」

「あ、いや」

 

時生は彼女の言葉を遮る。訝しげな表情を浮かべる魔法少女虎次郎。

 

「ちょっと、家で夕飯食べなきゃいけないんで」

「……え?」

「いや、夕飯前に変身しちゃって、それで飛び出してきちゃったんですよ、はい。こんなんになっちゃったのも報告しなきゃいけないし」

 

さすがに思春期男子として、この姿は恥ずかしいが、解除できないならもう覚悟を決めて見せるしかない。あと、普通に彼はお腹が減っていた。

 

「……はあ。いや、いいよ。食ってこい――」

「いや、先輩も来てください。話したいことあるなら後で合流は面倒くさいじゃないですか」

「え?いや、それは親御さんに悪いだろ」

「命の恩人ですし。マザコンじゃないですけど、うちの母親のご飯美味しいですよ」

「お、おう。そこまで、言うなら」

 

けっこうこの人押されるのに弱いな、と時生は感じた。いい人なのだろう。

時生は虎次郎の後ろに回って、ステッキを握ったまま抱きかかえる。

 

「ん?ちょっと、何する気だ?」

「いや、飛ぶほうが速いし、人にも見られたくないしいいかなって」

 

なんとなく虎次郎が遠慮しそうだから強引に行ったほうがいいかな、というのもあったが。

案外軽いその体を抱えながら、助走をつけて、飛ぶ。

 

「え、いや、ちょっと、まて、うおおおおおおおい!!!!」

 

夜空に、女児の声が響き渡った。

 

 

夜。といってもまだ人々が寝ない時間帯。時生と虎次郎は家の前に降り立った。

 

「めっちゃくっちゃびびったわ……」

「あはは、すいません。さて、どうしますか」

「どうするって……普通に入りゃあいいんじゃねえの?」

「まあ、そうするしかないですよね」

 

いざ、覚悟を決めて。

ピンポーン、とインターホンを鳴らすと、長い黒髪のエプロンをした美人が出てくる。

彼女は時生達二人を見ると、首をかしげる。

 

「……どちらさまですか?」

「あー、俺だよ、俺。母さん。時生」

「いや、それで通じるわけねえだろ……」

 

どう聞いても詐欺にしか聞こえないセリフを少し恥ずかしそうに彼が言う。虎次郎が呆れた顔をするなか、時生の母はじーっと時生の顔を見つめる。

 

「ん?んー……うん。時生だね。なんで女の子になってるの?」

「通じた!?」

「いや……ちょっと色々あって。詳しい話は中でするから、とりあえず上がっていい?」

「そちらの人は?」

「命の恩人」

「あら。じゃあしっかり料理ごちそうしないとね」

「ど、どうもっす……ええ?」

 

トントン拍子で話が進み、困惑した表情をする虎次郎。この親子に自分のペースを崩されまくっている。

 

「あれ、虎次郎先輩。この服、靴脱げるんですか?」

「ああ……普通に脱げる。ったく、なんだこの展開……」

 

軽く頭を抱える桃色の魔法少女を横目に、靴を脱いで家に上がりリビングにいく。ダイニングテーブルには、既に夕食が用意されていた。

 

「お、麻婆豆腐?」

「そうよー」

 

赤さよりかはひき肉の茶色が目立つ、辛さひかえめの麻婆豆腐。とろみがついたそれは、時生の好物だった。もちろんご飯もほかほかで、中華スープも用意されていた。ふと時生が横を見ると、なぜか虎次郎は黙っていた。

 

「どうしたんですか?」

「いや……久々に、こういう家庭料理食べるなあと思っただけだ。気にすんな」

 

照れるように言う。それはとてもかわいらしくて。時生は少し抱きしめたくなった。

 

「いっぱい食べなさい」

「そうですよ、先輩」

「……ありがたく、いただきます」

 

食卓についた三人は、いただきますをして食べ始めた。

 

「それで、なにがどうしたの?」

 

食べ終わり、だいたいの片付けが住んだあと、時生の母……弥生は訪ねた。

 

「えーっと……最初っからでいいんだよね」

「うん。そうね。始めからきかせてじちょうだい」

「わかった」

 

そこから時生は話し出す。兄から送られてきたもの、入っていた手紙の話、触れたら変身したということから解除に四苦八苦して襲われて助けられたところまで。

 

「なるほどねぇ……」

「おいおい、その兄ってめっちゃ怪しくないか?」

「だよね……」

 

考えた様子を見せる母。怪しむ虎次郎。しかし正直時生にもなにがなんだかわかっていない状況だった。

なんせここまでの急展開、彼自身が一番よくわかってない。そういえば、と時生が虎次郎に尋ねる。

 

「先輩はどうして魔法少女になったんですか?」

「いや……それがな……さっきの襲われたことにも関係するんだけどな」

「どういうことです?」

「簡単に言うと、ハメられたんだよ。うちの校の番長の座を狙うやつに」

 

つまり、と虎次郎が語る。ある日舎弟たちからの贈り物としてダンボールに入ったステッキを渡された。それに触れてしまい、変身。そうするとなにがなんだかわからぬうちに虎次郎失踪の噂が立ち、自分の居場所が無くなってしまったという。

 

「それは……ひどいですね」

「ああ。しかもそいつはどういうことかステッキがこんな呪いのアイテムってことも知ってたらしいからな……計画的犯行ってやつだ」

「つまりそいつを倒せば、何かわかるかもしれない……?」

「そういうこった。それが当面の目標だ」

「へえ……」

「わかってんのか?お前今からそれに協力すんだぞ?」

「え」

 

完全にそんなこと考えてなかった、という顔をする時生。目の前のピンク髪の美少女はため息をつく。

 

「え、って。魔法少女だから戦えるに決まってんだろ?」

「いやいやいや、俺戦った経験なんてないですよ!?」

「魔法少女なんて普通そういうもんだろ。たぶん」

「ええ……確かにそうですけど……」

「大丈夫だ。俺がしっかり教えてやっから」

「虎次郎さん……!!!」

 

テーブルに頬杖をしながら勝ち気な笑みを浮かべる虎次郎。見た目の可愛さとその兄貴っぷりに時生は一瞬で惚れそうになった。そりゃうちの高校の番長になれるわ、とも。

 

「教える……あ、そうだ。アレ教えなきゃだわ」

「何かありました?」

「この衣装の解除方法」

「早く言ってくださいよ!!!それあったら飛ばずに済んだのに!!!」

「いや!!教える前に飛ばれたんだよ!!!」

 

時生は憤る。正直数時間しか経ってないがこの蒼いミニスカは彼にとってきつかった。が、確かに強引だったので何も言い返せなかった。虎次郎は席から立ってステッキを持つ。

 

「魔法少女ミーティアブレイク・デイリーフォーム」

 

そう告げると髪と服装に変化が起きる。元のピンクのミニスカは光となって消え、革のジャンバーとジーンズというメンズっぽいファッションに変わる。髪は元の耳上の小さいツインテからショートボブへと変わり、その髪色のピンクも淡くなった。ステッキは小さく、形を変え、ピンクで星の意匠がついたブレスレットに変わり、虎次郎の左手に装着された。

 

「おお……似合ってますね。というかどこでその技術知ったんですか……?」

「知り合いにちょいマッドな魔道具技師がいてな……解析結果として知れた。もっとも解析できたのは全体の一割ってところだろうがな」

「ほぅ……じゃあ、やってみます」

 

時生も立ってステッキを構え、告げる。

 

「魔法少女ミーティアレイン・デイリーフォーム!」

 

宣言すると青の衣装が光に包まれて消え、女の体にはちょっと大きい藍色のジャージが残る。髪は肩までぐらいに縮み青色は水色と呼べるまでに薄くなった。

 

「おう。大丈夫そうだな」

「やっぱり少し大きいですね……なんか、彼氏のジャージ借りた女の子、みたいになってません?」

「……まあ、そうだな」

 

見た目ロリータな少し虎次郎が頬を染める。どうやら中身にそぐわずうぶなようだと時生は感じたが、口に出したら怒られそうなので言えなかった。仕切り直すように虎次郎が続ける。

 

「まあ、と、ともかくだ、これでだいたいはやるべきことは済んだよな。じゃあ今日は俺帰るから――」

「待ちなさい」

「え?あ、はい」

 

なんと、話を遮ったのは時生の母だった。いつになく真剣な表情を浮かべている。今まで黙っていたのもあり虚をつかれた虎次郎がどもる。

 

「――今日は、泊まっていきなさい」

「え」

「いくら元男だとしたって、こんな夜遅くを出歩くのはいけないわ。不良も多いし」

「いや、大丈夫っすよ。魔法少女ですし……」

「いいから。うちの息子……いや、娘と仲良くしてちょうだい」

「あ、はい……この親子、わりと強引だな……」

 

ただの魔法使いでもない成人女性に気圧される虎次郎。そこにヤンキーとしての威厳はなく、諌められている小学生にしか見えなかった。

 

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