俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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その21/クライマックスフェイズ・先制攻撃

眼を閉じる。

深呼吸する。

変身は完了。手元の星型弾のチャージも完了。いつでも放てる。

前には桃色の魔法少女。

近くには【気配遮断】した彼がたぶんいる。

白猫も爪を研いでいる。

 

騒がしくなってきた。彼らが来る。

 

ドアが、開いた。

と同時に、工場の入り口側全面が吹き飛んだ。

 

……やりすぎじゃない?時生は一瞬そう思ったが、なりふり構っていられる場合じゃない。

魔法少女のトレジャーとしての力は絶大とはいえ、敵のほうが圧倒的に数が多いのだ。

 

「よっしゃあ!行くぞ!」

「あ、はい!」

 

砂煙の中、チャージしておいた星型弾を手当たりしだいに打ち込む。当たってる感触はわからない。

そんな中虎次郎が駆けていくと同時に、詠唱する。

 

「――魔法少女ミーティアブレイク・セカンドフォーム!!!」

 

背中には天使のような白の翼が生え、スカートは膝までのロングに。武装をピンクの鉄骨に変え、力強く踏み切りジャンプ、そうして体にひねりを入れて、おそらく敵がいるであろう場所に力強く横に薙ぎ払う。

 

「先手必勝っ!!!【スマッシュ】!!!」

 

――瞬間、ヤンキー数人が見えなくなる所まで飛ばされた。

 

 

 

 

【スマッシュ】。

シンプルにして強力な接近用アクティブスキル。効果は単純、鈍器で当てた相手を吹き飛ばす。

通常ならせいぜい十メートルかそこらだが、魔法少女化による強烈な身体強化と破壊力に優れた鉄骨なら相手を即退場させることができる。

その代わり、弱点もある。

 

(よしよし、動きが止まった……この隙に攻撃されたらあたし()は避けられない(ねえ)から()

 

砂塵が晴れる。爆発、いきなり消えた仲間、立て続けに仲間がやられたのを見て動揺が走るヤンキーたち。それを見て内心安心する虎次郎。

弱点は二つ。現状、横薙ぎのモーションでしか発動できないこと。

そして、攻撃後に大きな隙が存在すること。

強いが、実際けっこう使いづらい上に、難点があった。

 

(この弱点、けっこう知られてるんだよ()……》

 

かつてのハメられる前の虎次郎は、この弱点があることを結構しっかり仲間たちに言っていた。そうしたほうがいざというときにカバーに来てもらえると考えた自分は間違ってはなかったと思うが、今裏目に出ている。

倒れ伏すヤンキーたち。だが、思ったより倒れている人数は少ないし、何しろ。

 

「――よう、虎次郎。まさかお前がここにいたとはなあ」

「……あたし()たちがここにいることわかってた?その表情でわかるよ」

「まあ、八割がた、な。まあここまで爆発物仕掛けてるとは思ってなかったけどよ。前線にいた鉄砲玉どもがやられちまった」

 

鉄色のバット、トレジャー《バッドバッドバット》を担いだ金髪ツーブロック、西浦。そして。

 

「その横にいるのがあたし()をこうした財団の野郎でいいんだよな?」

「その通りです。まあ、餓鬼の喧嘩ですから、本気は出しませんけど契約なのでねえ」

 

白衣を着た190cm近い怪人、塙。

 

「契約……?」

「ま、その辺はどうでもいい。おいお前ら!この桃色は無視してあの蒼色を潰せ!」

 

硬直していたヤンキーたちが一斉に動き出す。中央にいた虎次郎を無視して、奥へ奥へと。

 

「……あたし()を無視するの()。なら当然、ボスから潰す!」

「おっと。作戦の都合上俺は温存だ。星沢、行けるな?」

「わかりました。リベンジ、やらせてもらう」

 

突撃せず、西浦の傍に控えていた男が動き出す。オレンジと黒のボーダーのニット帽、目つきの悪さ、虎次郎には見覚えがあるような、ないようなという感じだったが、とりあえず鉄骨を薙ぎ払う。

 

「――【スローモーション】」

 

スライディングで下に潜られて回避される。虎次郎はそのスキル名を聞いてやっと思い出す。

学校の屋上、時生と初めて出会ったときの。セカンドフォームを切らざるを得なかったスキル持ち。

 

「そうか、お前は、あのときの――!」

「そうだ。あのときはこの帽子もしてなかったし、気づくわけないか。その俺だ。新兵器も持ってきた。今度はしっかり時間切れまで戦い切ってやるよ」

 

 

 

 

ヤンキーたちは最初の攻撃があったにも関わらず、人数は舞由野戦より多かった。ざっと三十人程度だろうか。

しかし、時生は余裕があった。星型弾を撃ってはいるが、その必要が無いんじゃないかと思えるほどに、仲間が強い。

 

「起動。起動。起動」

 

向かってくるやいなや爆発物をばらまいて起動しまくる文人はもちろん凄いのだが、何より目を引くのが。

 

(ミケ、強くない!?)

 

――なんか白い物体が、高速で動いている。としか時生は思えなかった。

もともと猫という生き物の跳躍力は自分の身長の五倍、最大二メートル弱は跳べるという。

さらに走ったときは人間と遜色ない速度が出る。それに身体強化が合わさったらどうなるのか。

 

「遅いですわ!」

「なっ……がっ

踏み切って、跳躍。敵の肩に乗ると同時に硬化魔法を付与した爪で顔、主に目の近くを切りつける。そしてそのまま頭に駆け上って次の相手めがけて跳躍。

 

「くっそ……あの猫をどうにかしろ!」

「動物にだけ気が散って、俺もいるンスよ?」

 

それを繰り返すだけでどんどんヤンキーの動きが硬直していく。そうして止まった所にグレネードが投げられ、爆破。

ミケに注意がいくせいで、自分に【気配遮断】をかけるのも楽になる。まさしく、圧倒というほかなかった。

そして同時に時生は合点がいく。

 

(……きっと、虎次郎先輩たちは俺の加入無しでも西浦たちを倒せるように頑張ってたんだ)

 

 

そもそも自分の加入が想定外。三人でどうにかしようと元々はしていたはず。

それを実感しながら、自分も襲いくる敵に星型弾を投げていく。

三人とヤンキーたちとの戦況は、圧倒的優勢だった。

 

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