俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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その22/クライマックスフェイズ・連撃の果て

鉄骨を横に薙ぐ。が、それは下に潜られ、躱される。それが続くなか、虎次郎は思考を回す。

鉄骨とバールでは一目瞭然な武器の間合いの差がある。それを使うことで相手、星澤を近づけさせないことはできている。

しかし確実に全て躱される。【スマッシュ】なんて使いようがない。明らかな千日手。

 

(……試してみるかな)

 

少し跳んで、下方向に角度をつけて薙ぎ払う。星澤は少し目を見開き表情を険しくするが、ジャンプすることで難なく躱される。

これはもう、どうしようもない。セカンドフォームを維持した状態で戦っても、ダメージを与えられないだろう。

相性が悪すぎる。このままだとただ人格矯正を受け続けるハメになる。

 

「……セカンドフォーム、解除」

 

持っていた鉄骨はバットへ。スカートもミニになって背中の翼も消える。

 

「戻したか。なら近づいて戦わせてもらう」

「……来いよ!」

 

正直さっさと倒して西浦と塙に打撃を入れたい。が、思ったより強い。虎次郎は歯噛みする。

表情には焦りが浮かぶが、できることは試しながら戦うだけ。

だいたいのスキルには発動条件やデメリットが存在する。ならあの【スローモーション】の弱点は何だ。

近づいてきた星沢に対してバットの連撃を入れる。大振りなさっきまでとは違い、手数を多くして右、左と振るい続けるが、全て躱されていく。

 

「発動できる時間に、間隔があると思ったが、違うか……!」

「【スローモーション】にクールタイムは無い。だから近接戦なら無敵だ」

「そんな都合良い訳ねえだろ!!」

 

星沢はニヤっと笑う。もちろん無敵発言はブラフだ。気にしてはいけないし、弱点を戦いの中いちいち言うやつはいない。

振るわれたバールを避け、応戦しながら考える。なぜ、あの屋上では当たった?

たぶん、単純だ。避けられようが無い全体攻撃なら避けられないだけ。

なら、なんで今は避けられている?相手の実力が良くなったのか?違うだろう。

 

「それなら、こういうのはどうだっ!」

「――っ!?」

 

横に振るったバットをそのまま放り投げ、左脚で腹に蹴りを入れる。それは寸前バールでガードされるも、大きくノックバックさせる。

その隙にバットを拾い上げ、仕切り直す。これで理解できた。

 

シンプルな話、意識外からの攻撃には弱い。

攻撃を食らうときに自動発動しているのではなく、マニュアル。極端な話、不意打ちなら倒せる。予想外の攻撃ならガードされるが当てることはできる。

なら、どうとでもなる。自分の仲間は、そういうのが得意だ。

 

「……何笑ってんだ」

「いやいや、勝ち筋が見えてきただけ」

 

ただ、後ろに控える彼らが怖いが。どうにでもなるだろう。

 

 

三分後。

 

文人のグレネードが爆発音とともに最後の集団を打ち倒す。

その瞬間、全員が動き出す。

 

「よし、全員倒しましたわ!行きますわよ!」

「わかった!チャージ……」

 

ミケが叫び、時生がそれに追従する。

 

「文人!!来い!!」

「っ……まずい、か?」

 

虎次郎が仲間に向けて叫び、星沢が苦渋の表情を浮かべる。

 

「……【気配遮断】」

 

文人が、消える。

 

「それじゃあ、塙サン。作戦通りに」

「わかりました。やりましょう」

 

西浦と塙が動く。

 

状況が動く。

全員がわかっていた。ここが、勝負の分水嶺。

 

 

ミケと、西浦が駆ける。来る方向は違えども、目指すのは同じ。虎次郎と星沢の所だ。

西浦は何かの魔法を自らのバッドに付与しながら、ミケは西浦に比べて長い距離を脚力を強化しながら向かう。

 

三メートル、二メートル、一メートルと彼らが近づきながらも、星沢と虎次郎の殺陣は終わらない。

星沢の注意をそらさないために、虎次郎はこれまでで一番の連撃を加えていく。

蹴り、殴り、フェイント、今までの人生で培ったその喧嘩殺法を遺憾なく発揮する。

星沢はそのラッシュに対して防戦出来ていた。が、それは【スローモーション】を全力で使っての話。

他からの横槍が確実に入るというのに、意識が他に割けない。その現実に、星沢の表情を苦いものに変える。

 

そして、虎次郎の期待通りに。

 

――文人が、動く。

小規模の魔法グレネード。そのキーワード遠隔爆破式のそれを、文人は星沢の足の踏み込みに差し込むように投げたのだ。

【気配遮断】による攻勢は絶対に反応することができない。そう、それは、この場にいる全員が

 

「――【看破】」

 

そうである、はずだったのに。

どこからか来た風魔法によって、投擲したモノの軌道がブレる。

文人が目を見開く。それは今まででありえざる光景だったから。

【気配遮断】は発動さえすれば絶対に妨害されない。それを崩した。誰が、やった。

 

 

その瞬間、文人はあることに気づく。

 

 

目があった。あの白衣の異形に。

丸眼鏡の向こう側、細長い目が愉悦に染まる。

 

しかし、だ。ここまで来たらやるしかない。

ベストとは言えずともベターに。

本来の軌道からは逸れた爆弾は、起動するしかない。

 

「起動っ……!」

 

瞬間、二人を巻き込んでそのまま爆破、虎次郎の小さな体と星沢の体が同時に宙を舞う。

星沢は虎次郎の連撃に意識を逸らされていた。けれど、虎次郎は仲間のならここでやってくれると予測していた。

それゆえ、両者の反応速度には、違いが出る。

 

「ーーセカンドフォーム!!!」

 

翼を生やす。その翼は飾りではない。

セカンドフォーム由来の空中遊泳術。それは虎次郎の体をすぐに安定させ、鉄骨を振るう準備を整える。

空中ならば星沢は絶対に回避行動は取れない。どう【スローモーション】を発動しても逃れられない。

 

ここで、流れを、変える。横の大振りを、叩き込む。

 

「【スマッシュ】!!!」

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