俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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放課後デート

『ちょっとね、紹介したい場所があるんだけど』

『場所ですか?』

 

夜の自宅。ベッドでスマホをいじっていると、虎次郎の幼馴染・吉里明日羽から連絡が来る。あの日のショッピングから初めて来た連絡だ。

そういえば女子とこうやって連絡とるなんて初めてだな……とちょっとドギマギしつつ返事を返す。

 

『そう。場所。君は知っとくべきだと思う。だからお姉さんとデートをしよう』

『そういうこと言うのやめてください。ちょっと変な感じになるじゃないですか』

 

 

デート。デートかあ……女子と二人っきりなんて全然無いな、と思うが、よく考えたら最近は結構虎次郎と二人のことがある。それを考えたらデートという言葉には緊張しなくても……いや中身同性はノーカンか。と思考が脳内でぐるぐる駆け巡る。即興で返事してるけどこれでいいのか?悩む。

 

『あれ?嫌?』

『嫌ではないです。明日羽さんが知るべきって言ってるなら知るべきなんでしょうし、行きます』

『そっかあ。良かった。明日の夕方5時、千真田駅前でどうかな?』

『了解です』

 

ここまでメッセージでの会話を続けた後、スマホのスリープをする。

ふう、と息を吐いて、目を瞑る。うん。

 

(女子と二人っきりかあ!)

 

心の中でちょっと叫ぶ。こんなこと初めて。いくら女体化が進んだからって嬉しいものは嬉しい。

いや、何を着ていけばいいんだ?わからないけど、楽しみだ。胸がうずく。

そしてそのまま眠りにつく。少しいい夢を見た。

 

 

 

何を着てけばいいのか、とか思ったけれど、よく考えてみれば持ってる服が少ない。

ゆえに。

 

「あれ?またその服?」

「いや、本当に手持ちの服少ないんですよ……」

 

千真田駅構内。連絡をとりながらやっと合流する。

夕方、彼女と合流する。パーカーとジーンズ、髪はポニテでまとめる。また同じ服を着ているというのはちょっと気恥ずかしい。

そして明日羽が着ているのは。

 

「制服……ですか?」

「そうだね。というか一応今日平日だし?」

「あ、そういえばそうでしたね」

 

この前時生が着ていた白色のではない、紺色のセーラー服。

まさしく女学校って感じである。その明日羽自身のスタイルの良さも合わさって、まさしく高嶺の花感が出ている。

まあ、その実中身はアレなのだが、それを差し引いてもちょっとドキドキする。

 

「なんだか放課後デートみたいだねえ、時生くん」

「……つ、都合いいときだけ男扱いすんのやめてください」

「あーら、ちょっと照れてる。これじゃあ雌落ちまではまだまだ遠いかなあ!」

 

からからと明日羽が笑う。でも雌落ちまで遠いというのは違う。なぜなら元の男の自分だったらもっと何も話せなくなっていたと思うし。

 

「葉雪って寄り道とか大丈夫なんですか?」

「普通の生徒はしないけれど。まあ、反風紀委員会として、ね?」

「積極的に道を外していく、と」

 

それは校則的に大丈夫なのだろうか、と思うけれど。そういうの気にする人じゃないんだろうし、本人がいいならいいか。

校則違反に関しては不干渉の立場で。

 

「まあまあ。じゃあ、行こうか」

「あ、そうですよどこ行くんですか?」

「店の前についてからのお楽しみ!」

 

いたずらっ子のように笑って、鼻歌を唄いながら彼女は歩き出す。時生は苦笑しながらそれについていく。

この人にはなんか敵いそうにない。黙ってついていく。

 

人賑わう構内を歩いていって、外に出る。

雑多なビルが立ち並ぶ道を歩くなか、急に明日羽が足を止める。振り返って彼女が告げる。

 

「ここだね!」

「ここ……?」

 

彼女が指をさす。そこの店を見る。

ちょっとお嬢様学校の生徒が行くとは思えない、そこは。

 

「……メイド喫茶?」

「いえす」

「……ええ?」

 

困惑する。なぜメイド喫茶? 明日羽がニヤニヤしている。こういうところなんだか虎次郎さんに似ている。

時生は考える。なんの目的で?

 

「どういうことです……?」

「いやいや、単純。一人で入るのは心もとないからねえ」

「貴方みたいな人が心もとなくなるわけないと思うんですけど」

 

どういうことだ。絶対トラップがある。考えろ。

問題なのはわざわざ自分を連れてきたこと。それならこのメイド喫茶は普通のではないはず。

なら。

 

「……中に入ったら俺がメイドにされるとかそんなことないですよね?」

「どうしてそんな発想になるの!?」

「いや、この分野に関しては信頼できないので……」

「ひっどいなあ!」

 

明日羽が吹き出して、時生の体をバシバシ叩く。笑ってないで己の身を省みて欲しい。自分は正しい発想をしている。

一頻り腹から笑った彼女は、時生の発言を否定する。

 

「いやー……さすがにそんなことは無いよ。まあちょっと裏はあるけれどね」

「そうですか……裏はあるんですね」

「まあね。入るよ!」

「え!?」

 

ちょっとまってまだ覚悟ができてない。そう思うが無情にもそのまま明日羽が時生の手を引いて入店してしまう。

 

「「「お帰りなさいませ、お嬢様」」」

 

「お、おう……」

「いやあ、やっぱいいねえ!」

 

響き渡るキャストたちの声。時生はビビる。いくら女になったからって女慣れはしていないのだ。

固まる時生に対して、明日羽は手慣れた様子で入店手続きをしていく。

 

「それでは、こちらの席へどうぞ!」

「ありがとう!」

「あ、ありがとうございます……?」

 

店員メイドの指示に従って席に移動する。経験値が無さすぎる。この店にいる間どういう態度でいればいいんだ自分は。

動揺しながらキョロキョロと周りを見渡す。案外に上品な店だ。クラシカルで、メイド服も丈が長いクラシカルスタイルだ。橙色の照明がいい味を出している。

明日羽が見かねて小声で言う。

 

「別にそこまで緊張しなくていいよ。そこまで過激なわけじゃないから」

「そ、そうですか……」

 

そう言われたってというところはあるけど、少し落ち着きが戻る。深呼吸。深呼吸。

そんでもって着席。これからどうすればいいのだろう。

とりあえずメニューを開いて見ている。物価が高い。

そう思っていると、声がかかる。黒髪がきれいなメイドさんだ。

 

「ご注文はお決まりですか?」

「あ、えーっと……」

「パンケーキとカフェオレで」

 

時生が言いよどむ中、さらっと明日羽が答える。まだ考えてない……。

顔を明日羽のほうに向けると、アイコンタクトが通る。

 

(ここのパンケーキは美味しいよ)

(あ、はい)

「じゃあ……同じものを、お願いします」

「……はい。パンケーキがお二つ、カフェオレがお二つですね」

「あ、はい」

「それでお願いします」

「かしこまりました」

 

礼をして去っていく。笑顔がきれいだ。

ふう、と一息つく。しかし、まだこれといって厄ネタというか、裏が見えていないのだが。

 

「……普通のいいメイド喫茶ですね。なんだか美人さんも多いですし」

「でしょう?いいところなんだよねえ。行きつけなんだ」

「そうですか……」

 

まあ、普通のところならそれはそれで。楽しめばいいか。

料理が来るまで雑談をする。主にあの戦闘とかについて。

 

「苦戦した相手が中1だった……?」

「そうだったんですよ。びっくりしました」

「……わたし行けばよかったなあ。そういう子は多分魅了が特攻だから」

「あー……」

「中1なんて性の目覚め前の初心な男子ならイチコロだったと思う。魅了は回避もできないし」

「なるほど……」

 

確かに……と思ったが魔法少女相手に手加減なく殴れる相手。効くのか?と疑問に思う。

それだけ星沢には末恐ろしさを感じる。あれは正直大物の器だ。

そんな話をしていると、店員さんが料理を持ってきてくれる。

 

「お待たせしましたっ……て」

 

ピンクの髪。低い身長。その表情は普段見たことない笑顔。

クラシカルなメイド服がとそのロリ感が合わさってとてもかわいく見える。

そう、店員は。

 

「……虎次郎さん?」

「んっ……くくっ……ひぃっ……」

 

硬直する魔法少女二人。

明日羽はひたすらに笑いをこらえていた。

 

 

 

全てが終わった後、夜。虎次郎のアジト。

 

「てめえなあ!!てめえなあ!!」

「ああああ!!悪かったって!!だからそのこめかみぐりぐりすんのやめて!!」

 

明日羽がめちゃくちゃ虎次郎に怒られている。手もでてるし顔も真っ赤。相当恥ずかしかったようだ。

その様子を見ている時生。未だ何がなんだかな時生は質問を投げる。

 

「えーっと……つまり虎次郎さんはここで働いていた、ってことでいいんですか……?」

 

虎次郎がピタッと明日羽をいじめる動きを止める。そして観念したかのようにため息をついて話し出す。

 

「……そうだよ。そこで働いてた。バレたくはなかったんだが……」

「いやいや、虎次郎秘密主義だからさ、今後のこともあるしバラしといた方がいいかなあって」

「お前は黙ってろ!!」

「ああああ!!!」

 

またぐりぐりを始める虎次郎。叫んでいる明日羽はどことなく笑顔。きっと役得とか思ってるんだろう。

それにしては不可解な点がある。

 

「でも……どうやって?こう、戸籍とか、履歴書とか……」

 

魔法少女になって、それを証明するのは難しい。どうやったのだろうか。

 

「いやあ、それについてはな……」

「わたしが説明しよう」

 

明日羽が語りだす。もちろんこめかみには虎次郎の手が添えられたまま。

 

「うちの学校には反風紀委員会なる組織があるのは知ってると思うんだけど」

「いつ聴いてもなんだそれって感じですけどね」

「そのなかのNo.2、”斡旋屋”と呼ばれている人物がいてね?」

「なんとなく話が読めてきました……その人が斡旋しているわけですね」

「そう!うちはバイト禁止だからね!」

 

人材派遣を行う生徒。そりゃあ反風紀だ。ろくでもなさそう。

 

「その人のことをわたしが虎次郎に紹介して、バイトと相成ったわけだよ」

「ちなみに、あの場にいたメイドはだいたい葉雪の生徒な」

「まじですか……え、で戸籍とかは?」

「魔法」

「ええ!?」

 

極悪人じゃないか。ヤのつく職業の娘さんだったりしないのか?

明らかに表情が固くなっていたのか、明日羽がフォローを入れる。

 

「まあ、悪い子じゃないよ?いや、本当に、マジで」

「明日羽さんがフォローを入れると逆に不安になるんですけど……」

「だからひどくない!?」

 

明日羽が叫ぶが、なんとなくこの人にはこの扱いが妥当な気がする。

そんな様子を見て、虎次郎が告げる。

 

「……まあ、そんな事情があったってわけだ。俺のポケットマネーはそこから出してた。まあ、お前もなんかあれば”斡旋屋”を頼ればいい」

「紹介するからね!」

「あ、はい……」

 

できれば頼ることにはならないほうがいいなあ、と思う時生だった。

 

 

 

 

 




とりあえず閑話で出したい情報は出しました。
ここからどうしようかな……
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