俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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その7/蒼色魔法少女の魔法(後編)

下に降りた時生とミケは、広い公園に来ていた。

ミケはかなりワクワクが止まらないといった感じで、時生は今も困惑していた。

晴れた午後、木々に囲まれた開けたところに来た時生は、ミケに問う。

 

「どういうことなんだ?」

「いや、あなたの魔法少女の性質を考えると、ここに来たほうがいいと思ったんですわ」

「そうか、で、その特徴っていうのは、見当ついたんだよね?」

「そうですわ!たぶん、あなたの力は――魔力弾ですわ!」

「魔力弾?」

 

魔力弾。魔力に固体としての性質を付与して、飛ばす能力。確かに創作じゃよく見かけるが、魔法として体系化はされていなかったはず。そう思った時生は疑問をミケに返す。

 

「どうしてそう思ったん?」

「ミーティアレイン……流星、雨。そこから考えると、何かを飛ばすのが自然ですし、無属性とも言えるこの魔法はかなり現代的な魔法少女らしいのでは!?」

「なる、ほど。どうすればいい?」

「こう……星型の固体を作るイメージでやればいいんと思うですわ!」

 

いまいち腑に落ちないまま、言われた通りにイメージを固める。星型の、魔力。

星。蒼い、流星。

その時、時生は何かがカチッと嵌った感覚がした。

 

「できる。これなら、いける」

 

持っているステッキの上部から、蒼色の星が生成される。人の頭ぐらいの大きさをしたそれは、空に浮かび激しく回転する。

 

 

「ちょっ……待っ」

 

無我夢中になってる魔法少女は、白猫の静止に気づかない。そのままステッキを振るい、蒼の星型弾を放つ。

 

「シュート!」

 

宣言すると、星型弾は蒼色の軌跡を残しながら目にも留まらぬ速度で直進し、進行方向にあった木にぶち当たり、へし折れる。

破壊された木の上部が、地に落ち、大きな砂埃を上げる。わりと大きな音がした。

やってから、事の大きさに気づく。

 

「……これ、大丈夫?」

「……いや、ちょっとまずいかもですわ」

 

ミケと、時生は、そのへし折れた木を見て硬直する。そして、青褪める。こういうときの損害賠償とか、わからない。どうすればいいのか。そんなことが頭の中に巡っていく。

 

「い、いちおう生物ですので、回復魔法が効くかも知れませんわ!?」

「そ、そうなの!?、ごめん、じゃあ、ちょっと、任せて、いい!?」

「え、ええ、任されましたわ!?」

 

パニクる一人と一匹。あわあわしながら、時生は自らの変容を確かに感じていた。

 

魔力弾を撃ったそのとき、何かが嵌った。

それが何かは、彼にとって形容しがたいのだけれど。

あの瞬間、自分が戦う存在だと正確に定義されたような気がした。

言い換えるならば、その瞬間、自分は真に魔法少女――戦うヒロイン――になったのだと。

そう、ステッキにわからせられた気がした。

 

 

 

 

「ふー……疲れましたわ」

「いや、ほんとにごめん……」

「いいんですの。むしろ室内でやらなかっただけよかった、と考えましょう」

 

ミケと時生は公園のベンチに座って休んでいた。

へし折れた木は、身体強化(弱い)を使った時生がなんとか持ち上げ、回復魔法で接合したことでどうにか元に戻った。

ひと安心はした二人だが、肝心の訓練はそれから進んでなかった。

 

「ここから、どうしますか……」

「そうですわね……今日は正直休んでもいいと思うのだけれど、でももうちょっと訓練したほうがいいですわよね」

「そうだね……」

 

かなりだるげな様子な猫と魔法少女。肉体的な疲労というよりかは、精神的にかなり疲れたのだろう。特に時生は魔力弾で木をへし折った張本人だし、使える魔法がない焦りもあった。

 

「でも、自分の魔法が見つかってよかったですわね」

「ほんとに。でも、これ戦いに使いものになるの?」

「たぶんなりますわ。あの速度、あの威力……並の魔法使いでは成せませんわ」

「そっか……じゃあ、もうちょっと頑張ってみるか!」

「わかりましたわ!じゃあ、あたしも付き合いますわ!」

 

こうしてやっていったならば、ステッキの真実、ひいては変身解除に貢献できる。それをミケの言葉を聞いて実感した時生は、立ち上がり伸びをする。それにミケも追従し、ベンチから降りる。まだまだ星型弾の仕様も全然わかっていないし、頑張ろう。そう、時生は思った。

 

「場所は変えますわ。ここから少し遠くに野球グラウンドがあったはずですわ!」

「最初っからそこでやればよかったね……」

「いや、木が折れるほどの威力が出るとは思わないですわよ」

「まあね……」

 

時生とミケは、並んで歩き出す。そこには確かに笑みがあった。

その後ろから、声をかける人物が一人。

 

「おつかれ。頑張ってるっぽいな?」

「えっ!?」

 

桃色の髪のボブカット。

その人物は、もうひとりの魔法少女、虎次郎。今はデイリーフォームらしく、赤いジャージを着ている。

時生の驚いた表情を見て、サプライズ成功に満足したのか、口角を上げてにやっとする。

 

「ちょっと気晴らしに運動してたら見かけて、な」

「え、あ、はい」

 

急な登場。しかもちょっと気まずくなってから。この状況、どう話せば良いのか。少し口調に動揺が入っている時生をよそに、ミケが虎次郎に声をかける。

 

「そうですわ!虎次郎さん、時生さんの訓練を手伝ってはくれませんか?」

「ん?おう、いいけど。結局魔法少女としての特徴ってなんだったんだ?」

「魔力弾ですわ!さっき撃ったら木が折れちゃいましたの!」

「おっと、それは大丈夫だったのか……?」

「大丈夫でしたわ!回復魔法で元通りでしたわ!」

「それならよかったけどよ……気をつけろよ?」

「えへへ、そうですわね?」

 

ミケを挟む形で三人で歩いている状況。片方の二人の話の盛り上がりについていけていない時生だったが、虎次郎とミケ、その二人の間に確かな絆を感じて時生はどこかほっこりする。二人ともご機嫌でよかったよかった。ちょっと疎外感も感じるが、別にいいか。

そう思いながら、二人と一匹は球場に向かった。

 

 

 

 

所変わって球場。時間は昼食が早かったこともあり、まだまだありそうだ。

デイリーフォームを解除し、桃色の魔法少女衣装を纏った虎次郎が外野側に。時生がバッターボックスの方に立つ。ちなみにミケはベンチで座っている。

 

「よし、色々確認していくか。まずは射程からだな」

「わかりました!」

 

蒼色の、星。

正確にイメージし作りだしたそれを、外野センターめがけて解き放つ。

 

「シュート!}

 

蒼色の尾を引きながら一直線したそれは、その半ばで消え去った。

 

「……端までは届きませんでしたね」

「いや、でも十分じゃねえか?大体百メートルぐらいか、後衛からぶっ放すには十分だ。んじゃ、次はリチャージっていうの?弾と弾の時間間隔見てくか」

「オッケーです」

 

星型弾、再充填。もう一度生成かけて、同じセンター方向に撃つ。

 

「シュート!んで、もう一回……」

 

再々充填。もう一度作りだしたそれを投射。

 

「うん。間隔は……連射はできないとしても、まあ十分なぐらいか。三、四秒に一発ぐらい?」

「そうですね」

 

魔力弾のチャージをしながら会話に応える時生。虎次郎は外野で軽く屈伸しながら言う。

 

「よし。それじゃ、ちょっと実践的にやるか。俺がこの一塁三塁間を適当に動くから、狙って当てれるように頑張れ」

「えっ……先輩にあたっても大丈夫なんですか?」

「安心しろ。俺にはこれがあるから」

 

そばに置いてあったバット化したステッキ。それを虎次郎は拾って肩に乗せる。

 

「たぶんこれで打てば魔力弾も消えんだろ」

「ああ、なるほど」

「んじゃ、いくぜ!」

 

虎次郎は高速機動を開始する。車か何かかという超人的スピードで往復する魔法少女に、時生は狙いがつかない。

絶え間なく魔力弾を放ちながら叫ぶ。

 

「いや、ちょっと、これ、きついですよ!」

「上位の魔術師はこんぐらいの身体強化普通にやるからな!飛んでないだけマシだろ!」

「ええ……」

 

あっけらかんと笑って言う虎次郎。

レベルの違いに軽く辟易しそうだったが、諦めないで撃ち続ける。生憎FPSは得意だったし、と自分を奮い立たせるが、現実になると正直きつい。

数十分が立ち、疲労がきつくなってきた頃、その一射は起きた。

 

「いっっけ……」

「ん……?」

 

移動していた地点に合うように撃たれた偏差射撃。まぐれか練習の成果か、確実に避けられないそれに対して虎次郎はバットを振り抜く。

その攻撃を受けた蒼の星型弾は、()()()()()()

 

「は……!? あ、やべえ、避けろ!!」

「え……?」

 

バットに当たった星型弾は元の勢いをさらに増して反転、蒼とピンクの二重螺旋の軌跡を描きながらバッターボックス……時生の方に向かう。

当然虎次郎に当てることに意識を割いていた時生が躱すことはできず――

 

星型弾は彼に衝突。

そしてベンチのほうまで吹っ飛んだ。

 

 

時生は、目を開ける。

気がついたら、日が落ちかけ、ベンチに横になってた。そうとしか彼は思えなかった。

少し痛む腹を押さえながら、起き上がる。

 

「うう……」

「……大丈夫か?」

『大丈夫ですわ?』

 

隣に立っていたのはジャージに戻った桃色の魔法少女で、ベンチに横になっている足元にいたのが白猫。彼らが時生を気遣う言葉をかける。

 

「あれ? 俺……どうしてたんだっけ」

何が、どうなって、ここにいるのか。時生は訪ねる。申し訳なさそうな顔をした虎次郎が目に入る。

 

「いや、お前の星型弾が飛んで、当たりそうになったからバットを振ってかき消そうとした」

「けれど、結局はそうはならずに威力が増して反転。それにぶつかって時生さんは気絶。ちょっと傷も負ってたので回復しましたわ」

「なる、ほど」

 

確かに投射して当たった!と思った次の瞬間から時生は思い出せない。強化される前でも木がへし折れる威力。とはいえ。

 

「高高度から落下しても気絶なんてしなかったのに……」

「それだけ強力だったってことだな」

「でも、なんでそんな威力に……」

「それはあたしの予想ですけれど、おそらく合体技ですわ!」

「合体技……」

 

なるほど。確かに虎次郎と時生は同じ衣装、色だけ違う魔法少女だ。それなら確かにセットで使えてもおかしくはない。むしろありがちとも言える。けれど。

 

「使いみち、難しくない……?」

「そうだな。基本的に俺は前線で殴って、お前が後方から支援だしな。合体技を使うとして、その時は俺がフリーになってないといけないし、乱戦の中器用に打ち返せるかっつーと……まあできるけど練習がいるだろうな」

「ですよね。失敗したら誤射ですし」

「並の敵ならたぶんそのままの星型弾で行動不能にできますわ」

 

合体技は確かにロマンだとは時生は思うし、三人ともきっと感じているはず。しかしそれを実践で使えるかというと、そうでもないような気がした。

むしろ考えることが多くなる分余裕がなくなってきつくなるような気さえした。

 

「っていうことで、まあ、封印、だな」

「わかりました」

 

合体技の処遇が決まった。しかし、もう暗くなってくる頃合い。練習するのは駄目かな、と思っているとふと時生が思いつく。

 

「……そういえば、こうして昼から練習してますけど、むしろ夜のほうが訓練には適してるのでは……?」

「いや、それはやめたほうがいい」

 

否定する虎次郎。時生に向かって首を振って続けて言う。

 

「夜が遅くなると単純に治安が悪くなる。ヤンキーも増えるし、何より警察の補導がやばい。警察、このご時世に適応して武力が強くなってっからな……それに」

「それに?」

「……なんでもない」

 

言いよどむ虎次郎。それを無垢な瞳で見つめる時生。少し会話が途切れるが、ミケが意地が悪い声で口を挟む。

 

「実はですね、時生さん。虎次郎さんはあなたのちょっとした歓迎会を夜に開くつもりだったんですわ!」

「ミケ!?それは内緒だっつたろ!?」

「いいじゃないですの〜」

 

ニヤニヤしながら言うミケ。とっさに虎次郎は彼女を捕まえて懲らしめようとしたが、するっと避けられ、逃げられてしまう。

 

「そういうことですわ! 帰りますわよ!」

 

猫……にしても速い足で駆け去っていくミケ。おそらく身体強化を使ってるのだろう。

残された虎次郎と時生。虎次郎が、ぶっきらぼうな声で言う。

 

「ミケもああだしな。行くぞ、時生。俺の舎弟……文人との顔合わせもあるしな」

 

そう言って背を向け歩き出す虎次郎。そこには照れが見え隠れして。

 

「……はい!」

 

時生は少しくすって笑って、ベンチから降りて彼の背中を追いかけた。

 




Q.ミケ野外で喋ってるけど変な目で見られない?

A.(まだ体系化されてないけど)戦時中の大魔術師とかは動物に知性を与えることができたという話もあり、何より摩訶不思議なスキルがある。だから珍しくはあれど異常ではない。
その魔術やスキルと《人の心》の差別化は隠された第二効果でなされるのです。
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