俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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今日は短めです。毎度お気に入りとかありがとうございます。
顔見せ回です。


その8/イケメン怖い

《人の心》を持つ白猫、ミケのスキルたる【即日配達】は金銭さえあれば万能となりうるスキルである。

その万能さを、時生は今実感していた。

ソファーの前にあるテーブル。そこにあるのは。

 

「お寿司……!」

「好きか?」

「好きです!」

 

ソファに座る二人の魔法少女。目の前にある日本国民のソウルフードに目を輝かせる時生。それを保護者のようにふっと微笑みながら見る虎次郎。どちらも日常姿に戻っており、時生は結局着替えずに例のセーラー服。虎次郎はジャージの上を脱いでTシャツに長ジャージの姿である。

 

「はむはむ……やっぱこれは美味しいですわ……!」

「食い過ぎんなよ……」

「もちろんですわ!それでは、ちょっと味に集中しますので!」

 

テーブルの少し横に設置された猫ハウスに籠もり、日本の猫を狂わせる魔法のようなペーストおやつを食べるミケ。虎次郎がたしなめているが、しっかり聞いているかはわからない。

 

「まだ食べちゃ駄目ですか?」

「いや、まだあいつが来てねぇからな。って……」

 

ガチャガチャ、と扉の鍵をいじる音が聞こえ、続けてドアが開く音が鳴る。どうやら虎次郎の”舎弟”が来たらしい、と時生は身構える。

 

「ただいまッスー!」

「おう、おかえり」

 

そうして、現れたのは青年。紺色のブレザーと灰色のズボンを着ている。それは時生が通っているよりワンランク上の高校の制服じゃなかったか。

髪は亜麻色と呼ばれるような色をしていて、パーマがかかっている。顔は良い。人を警戒させない大型犬のような雰囲気を出しながら、時生に近づいて言う。

 

「君が新しい”魔法少女”ッスね! おれは鬼無瀬文人。どうぞよろしくッス!」

 

このコミュ力。身長も高い。

男の自分と比較して、勝ててる所がない、と時生は思った。

 

 

 

 

そうして三人は寿司を食べ始めた。が、時生は文人の衝撃が尾を引いていた。

顔がいい。背が高い。つまり総じてハイスペック。

これはしっかりしないとこいつに雌堕ちさせられるのでは?という疑問さえ湧いていた。

おかげで寿司の味にも集中できない。

ニコニコしながら食べている文人の方に目を向ける。ちなみにL字ソファは上から見ると底辺の方が長くそちらの端のほうに時生が、もう一つの辺と接するほうに虎次郎が座り、もう片方のほうに文人が座っている。

 

「いや、美味しいッスね!」

「まあ、チェーン店のお安い寿司なんだけどな。これは俺のおごりだ」

「え?そうなんですか?」

「おう」

 

これはミケのおごりだと思っていた。時生も文人も少し目を丸くしている。

 

「いちおうこの魔法少女の武力を何かに活かせないかと考えてるもんでな。バイトとしてちょっと色々してるんだよ」

「へー……」

「あ、そういうことにするんスねアニキ」

「?」

「いや、それより……文人、最近どうだ?」

 

そういうものもあるのか、とまた一つ賢くなった時生だが、少し文人の言うことに気にかかる。が、虎次郎は話を変えてしまう。

 

「そうッスね。学業とかは順調ッスよ」

「おう。なら良かった」

「で、ヤンキーたちのことッスね」

「聞かせてほしい」

「……ついに、学校間のヤンキー抗争が始まるっぽいッスよ、アニキ」

「ほんとか!?」

 

玉子の寿司を食べながら驚く桃色少女。文人が続ける。

 

「慧海高校をアニキをハメた後にまとめたあいつは、ついにあの舞由野高校に手を出すっぽいッス」

「舞由野高校……!」

 

時生も聞いたことがあった。この地区の五つの高校で、一番偏差値が低くヤンキーが多い荒れている高校だ。

 

「それ、けっこうヤバいんじゃ……?」

「まあ、わりとヤバい。舞由野高校に強いスキルを持ってるやつとかはいないはずだからそのまま勢力併合されて、強化される可能性がある。が、これがチャンスだな」

「そうッスね」

「というと……?」

「このタイミングで、俺たちが襲って一気に潰す」

「ええ!?」

「一気に潰さないと、あいつら何も信じねえからな……全員まるごとわからせる必要がある」

 

時生ははじめ驚くが、よく考えてみればそうだなと思い直す。虎次郎をハメてまで権威を求める人ならば、もし一人の所を襲って勝ったとしてその話をもみ消しそうだ。

 

「うし。時と場所はおいおい聞く。ありがとな」

「はいッス!」

 

褒められて、まるで犬のようにニコニコしている。幼女に褒められて嬉しがる姿はちょっと特殊な性癖に見えて、少し時生は困惑する。

 

「ふぅ……で、なんか話す話題とかあるか?」

「虎次郎先輩って行き当たりばったりな所ありますよね……」

「うっせ。交流深めるにはこれが最善だと思ったんだよ」

 

苦笑いしながら言う。虎次郎もそこが自分の欠点だとはわかっているようんで、否定せずに悪態をついた。

しょうがないな、という表情をした文人が言葉を発す。

 

「交流ッスか。その……時生さん?は変身前は男なんスよね」

「そうだね。って、いうか文人……さん?は今高校の何年生?」

「文人。呼び捨てで良いッス。今は高1ッスね」

「そうか、同い年か……」

 

同い年ということを聞いてさらに完全スペック負けを実感、遠い目をする蒼の少女。

 

「その制服って確か染春のだよね……?」

「そうっすね」

「勉強とかできるんだな……すごいな……」

「ははは、照れるッスね。そこまでじゃ無いッスよ」

「そこまでじゃないってことはないだろ。お前確か学年四位とかだったろ」

 

謙遜する文人に対し虎次郎がツッコミを入れる。時生の目はさらに遠くなった。

 

「完璧超人じゃん……こわ……」

「そういう時生さんは?」

「いやいや比べれるほどよくもないです……」

 

この高スペックの後に紹介させるとか嫌味か貴様。と内心思ってもいたが、もう時生は完全に萎縮しきっていた。この男こわい。

そんな調子の会話を聞いて、虎次郎が笑う。

 

「いいじゃん。仲良くなれそうだな」

「そうッスね」

「そうですかね……」

 

ニコニコの文人。語気が弱まってる時生。二人が無事交流できてることに安心した虎次郎は、話に参加していなかったミケに声をかける。

 

「ミケ!」

「んにゃ!?あ、あたしとしたことがあまりの美味しさに放心を……って、なんですの?」

「俺のおごりで、もう少し寿司デリバリー頼めるか?」

「いいですわよ!でもせっかくの仲間増えた祝ですもの!あたしも半額出しますわ!」

 

そうして【即日配達】が実行。もう一つ出現した寿司に、一同は舌鼓を打つのだった。

 

 




・高校

御剣区の五つの高校の内訳は、

・進学校である御剣高校
・普通レベルの高校である慧海高校
・ヤンキー多め。偏差値低め。舞由野高校
・魔法エリートを輩出する才門大学附属高校
・お嬢様学園。葉雪学院

魔法少女二人が慧海、文人が御剣。
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