俺氏魔法少女、変身解除できないんだが。   作:蒼添

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その1の誤字がめちゃくちゃ多くてほんっとうに申し訳ないです。
誤字報告してくださったかた本当にありがとうございます!

茶髪天パ高身長インテリ男子高校生とのコミュ回です。


その9/二人きり、何も起こらないはずがなく

事の発端は、夕食を食べ終わった後のこと。

 

「あー……お前は、ここには泊まらないんだよな」

「そうですね。先輩と文人……はここに泊まってくんですよね」

「そうだな。だから間取り2LDKってところもあるし。んじゃ、帰るんだよな。飛ぶのか?」

「いや、普通に電車で帰ろうと思います」

「おう。じゃあ……文人、駅まで送ってってやれるか?中身男とはいえ、女が出歩くには辛い時間帯だからな」

「わかったッス!」

 

と、いうことでちょっと気後れする彼と時生は帰る事になり、玄関を出た。廊下を二人で歩き、エレベーターに乗る。

 

「いや……ありがとう、ございます」

「いやいや、別にいいんスよ」

 

文人の笑顔は張り付いたように変わらない。それがこの青年の完璧さを表しているようで、怖く感じた。

少し無言が続き、エレベーターは一階のエントランスに着く。

 

「……ところで、なんスけど」

「な、何か……?」

 

降りて、おもむろに文人が話題を振る。マンション特有のまとめて置かれている郵便箱の横、彼は時生の顔も見ずに言う。

 

「……虎次郎の兄貴のこと、どう思ってるんスか?」

「え、いや、どうって……」

 

時生は、手を口に当て、足を止めて少し考える。どう、か。出会ったばっかだし考えたこともなかった。あの桃色の魔法少女のことを、今一度思い浮かべてみる。

 

「乱暴な物言いは多いけど、理不尽なことは言わない。なんか隠してる部分も見えるし、支えたくもある。うん。好き、好感は持てると思う」

「……好きッスか。ふぅん」

 

瞬間、時生の進行方向を文人が手で遮り、ドンと音を鳴らして壁につく。

時生は驚いて文人のほうを郵便箱を背にして向く形になり、目と目が合う。

 

この状況を端的に言い表すなら、壁ドンである。

いきなり警戒していた相手から壁ドンされた時生は、人生最大級に思考が止まる。

 

「……ふぇ!?」

「魔法少女だからって少しいい気になってんじゃないっすよ……」

「ひ、ひぃ!?」

 

先程とまでは打って変わって、威圧的な文人の姿に時生はめちゃくちゃにびびる。頭のどこかの他人事な部分が人ってこんなに高い声出るんだ〜と謎に感心している。

 

「あの人にとっての後輩は俺一人でいいンスよ、ね」

「……うぅ」

 

元がヘタレモブな時生に言い返す

ことはできなかった。そうか、これから虎次郎のチームにはふさわしくないとか言われんのか……きつい……と口撃に対して予測防御を張っていたが。

 

「そう、俺の虎次郎兄貴に、そう色目を使わないでもらいたいっす」

「……んん!?」

 

少々予測外であった。独占発言。牽制。まさか、まさかコイツは。

 

「ふ、文人は、虎次郎先輩のこと、ど、どうお思いで?」

「……このまま雌堕ちするしかなかったら、俺が貰う。そう思ってるッス」

 

が、が、ガチのやつだーーー!!!!!!

内心時生は絶叫した。いや、まさか、そう、元男に欲情する輩なんているとは思ってなかったから。こんな、こんな身近にガチの男が。

 

「え、いや、その気持ちはいつから……?」

「最初っから敬愛はしてたっすよ?でも生憎男に欲情をする体質じゃなかったっすから。せいぜいずっとそばに仕えたいな、ぐらいっすよ」

 

重い!!!!!

こいつはやべえ、精神汚染もないってのにこのガンギマリっぷりはやべえ、時生の頭はもういっぱいいっぱいだった。

 

「でも、ああも可愛らしくなったんなら、それはもう、嫁にもらいたくなっても仕方ないっすよね?まあ本人は戻りたがってるし、俺のこの想いは二の次で元に戻るのに協力してるわけっすけど」

「……

 

クレイジーサイコじゃねえか!!!!

もう、なんというか、時生には絶句しかできなかった。というか目の前にいるコイツが怖くてしゃあない。あいにく自分が雌落ちする原因にはならなさそうだけど、それより放っといたらまずいきがする。

 

「つーことで、まあ、仲良くやっていきましょうっすね? 時生」

「あ、はい……」

 

文人のにっこりとした笑顔。もう、こいつこわい……だめ……。

 

「か、壁ドン……?」

 

突然の第三者の声。まてよ、この声、聞いたことある、というかついさっきまで……

二人はその方を向く。

 

「い、いや、なんというか、お前ら、そういうことに、なんの、速いっつうか、大胆だな?」

 

目を泳がせ、顔を赤らめながら、何も見てないよって感じに手を振っている、その桃髪の人は。

 

まぎれもなく、さっきまで話題に上がっていた虎次郎本人で。

 

「な、なんでここに……?」

 

文人の絞り出したような声。それにしどろもどろに答える。

 

「いや、一応、さ。こう、同じ仲間になるわけだから、な? 俺が仲取り持っていかないとなあ、って思ってたんだよ。で、二人で話できるよう送り出したはいいけど、ちょっと不安になったから、散歩ついでに、ちょっと、ついてこうかな、と」

「……」

「で、ついてきたら、まさかこうなってたもんだから、びっくちしちゃってな? すまんな、情事中に」

「いや……こうなったのは、そう!偶然ッス偶然!こう、転びかけただけっす!」

 

壁ドンをやめて必死の弁明。声と表情から焦りが伝わる。しかし、それは逆効果だ。

 

「いや……そんなに焦るってことは、やっぱそういうこと……なのか?」

「違うっすよ!!!!」

「まあまあ、うん。わかったわかった」

「わかってないっす!!!」

 

虎次郎の表情、というか目が生暖かいものに変わる。もう虎次郎には何言っても無駄だろう。

 

「まあ、うん。時生も今の所男に戻りたい感じらしいし……そこのところ、ちゃんと気使えよ。それじゃあな……」

「まって!!!兄貴!!!違うから!!!」

 

静止を聞かず、軽めに身体強化を使ったのかかなり速く階段を駆け上がっていく虎次郎。

残されたのはあっけにとられて動けなかった蒼色の髪の魔法少女と、哀れなイケメン。

 

「あー……うん。えっと……」

「……」

 

なんかとぼとぼしてる文人。さっきまでの威圧っぷりが嘘のようだ。結局の所文人の自業自得ってことは間違いないのだが。

少し、時生も同情してしまった。

周りを見渡すと、マンションの人用だろうか、自販機が置いてあったので、財布を取り出して小銭を入れる。

 

「うん。缶コーヒー、あげるよ……」

「……うっす……」

 

座り込んでいる文人に渡し同じように座り込んで、時生は目線をあわせる。あっけにとられてる間にふと気がついたのだが、自分が虎次郎となんやかんやで恋仲になどなるはずがない。なら、話せるはずだ。

 

「どうして、あの人のことが好きなのか、聞いていい?」

「はあ……いや、まあ、単純な話っすよ。命を救われたんス」

「命を?」

「詳細は省くっすけどね」

 

助けられた。凡庸に、一般的に過ごして行きてきた時生には馴染みのない感覚だった。その恩がどれだけ大きいのか、想像もつかない。

 

「だから、好き?」

「救われたときはあの人男ッスから、シンプルに敬愛ッスよ。けれど人柄はあの頃からほとんど変わってない、優しい人だったすよ」

「へー……」

「だからこそ、聞くッスよ」

「ん?」

「……時生は、あの人の重荷にはならないっすよね?」

 

どきり、とした。今、時生自身はそうなっているんじゃないか、と。確かに戦えるようには頑張ってる。しかし、未だ魔法で人を撃ったことなどない新米の魔法少女なのだ。うまく戦える、自身は無い。

 

「ああ、いや、そうッスね。最初っからそう言えば良かったッス。兄貴は優しい。だから時生は戦えなくても責めはしないッスよ」

 

確かにそうだった。虎次郎はそういう所を気遣ってくれた。戦い方を教える、とも言ってくれた。

 

「俺は、兄貴のことを敬愛してるッス。だからこそ、あの人と共に戦うのなら、重荷になるような真似はしてほしくはないッス。ましてやそんな重荷になって、魔法少女っていう同類同士であの人に一番親しい人になったんなら……虫唾が走るッス」

「……」

「だから、甘えんじゃねえッスよ」

 

身にしみる、言葉だった。

 

「さ、駅まで行くッスよ。缶コーヒーありがとうッス」

「……いや、こちらこそありがとう」

 

文人は立ち上がって歩き出した。

文人や虎次郎のような、強い人になれるだろうか。いや、ならなければと想いつつ、文人についていこうと立ち上がった。

 

 

「……つーか誤解のこと、どうすれば良いんスかねえ……」

「どうしようも、ないんじゃない……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・魔法適性って何よ。
それもミームとイメージに支配されている。熱血キャラは火属性だし、クール系は水。ここで重要なのが他人からの印象であって、実際の性格とは関係がない。めっちゃ魔王っぽいやつが実はメンタルよわよわでも闇属性だし、見てくれが勇者っぽいやつが自己中心的な邪悪でも光属性です。

これに起因した”魔術師としての明確な成長”については、いつか本編中に出ます。たぶん。
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