好きなカードをGXに持ち込みたかった話   作:とある決闘者

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これ関係ない話なんですけど、私ってデッキになんのシナジーもない二つのシリーズを組み込んでるの好きなんですよね。
表ではトゥーン、裏ではサクリファイスを使うペガサスみたいな。


モンスターカード『E・HEROマン』

 

 カード/デッキを信じる心ってやつを信じるか? 

 前世の俺だったら「そんなのは漫画やアニメの世界だけ」と一笑に付していただろう。しかし、ここはアニメの世界。カードを信じる心と言うものは実際に存在する。

 カイザーこと丸藤亮は初期手札が毎回チート染みていたことからサイバー流積み込み術なんて言われてネタにされていたが、この世界では積み込みでも、チートでも、いかさまでも何でもなく、デュエリストの実力として評価される点なのだ。

 

 デッキを信じてデュエルをする。カードを大切にする。そうやってデッキと共にデュエリストが成長していく事でカードには精霊が宿る。最初から精霊が宿っている例外もあるけどね。キスキルとリィラみたいな。

 ちなみに、カードの精霊が見えるか否かと言うのは人間の資質によるものであり、どれだけカードを信じて大切に扱っていようと見えない人間には精霊を見ることは出来ないし、逆にカードをどんな風に扱っていようと精霊を見ることが出来る人間も居る。

 話が逸れたが、カードの精霊と言うのはデュエリストとデッキが築いた信頼の証のようなものだ。積み重ねた信頼が精霊と言う形をとっているのだ。

 

 さて、そんなデュエリストとデッキの絆の具現化とも言うことが出来る精霊が、そのデッキから離れたらどうなるか? 答えは簡単だ。

 

「行け! フェザーマン、フェザーブレイク! バーストレディー、バーストファイヤー!」

「いわあああああああああああああああああああああああああく」

 

 ユキト LP0

 十代  LP4000

 

 世界を構成する法則の一つである「確率」によってデッキは支配され、デッキが回らなくなる。

 

 回らないときは回らないものだ。

 

 

 ★

 

 

 時は少し戻り、無事デュエルアカデミアへと入学する権利を勝ち取った俺は、フェリーに乗ってデュエルアカデミアのある島へとやって来ていた。

 

「はぁー……実際にこの目で見ると、こりゃ凄いね」

 

 アニメの中で何度も見たデュエルアカデミアの校舎が目の前にそびえたっている。校舎の大きさもそうだが、この島全部がデュエルを学ぶためだけの施設であると考えると、そこら辺の大学なんて目じゃないくらいの規模である。

 ここでこれから3年間生活することを考えるとワクワク……してくるんだけど……これからこの島を中心に起こる世界を巻き込む事件の事を考えると、同時に気が重たくなってくる。

 

 遊戯王GXは俺も当然観ていた。

 デュエルを心から楽しむ少年、遊城十代を主人公とし、彼が世界滅亡の危機を回避していく。闇のゲームや命がけの決闘(デュエル)を繰り返すうちに精神をすり減らしていく十代の姿は当時小学生だった俺にはとても見て居られるものではなかった。

 それはともかく、これから先にこの世界で大事件が起こることを知っている。それでいてわざわざ戦いの中心となるデュエルアカデミアに入学する必要はない。それでも俺はここに入学することを選んだ。だって、ここで巻き起こる事件は世界を巻き込む大事件だ。どこに居たって死ぬ可能性がある程の事件。それならいっそ、心に従ってデュエリストとして生きることにしたのである。

 ちなみに、俺と十代が同年代だという事は分かっている。10年位前に海馬コーポレーションがカードを宇宙に送ってどうたらってニュースを確認しているからな。その時の俺と十代の年齢を考えれば、恐らく同時期にアカデミアに入学することになるだろう。

 

『おー、凄いね~。火山まであるよ!』

 

 学校から配られた専用のPDAに入り込んだキスキルがメッセージを送って来る。

 

『あれ、活火山らしいぞ』

『マジ? とんでもない所に学校が建ってるんだね』

 

 ホントにとんでもない話である。

 

『……マスター、制服似合ってるよ』

『あ! そうだった! マスターかっこいいよ!』

『おう、さんきゅー』

 

 二人が褒めてくれた制服姿。着ている服の色は赤。つまり俺はオシリス・レッドに配属されることになったわけだ。

 やはり一次試験の筆記が響いたのだろう。この学校の筆記試験における国数英理社の主要5教科の配点は3割。転生者としての利点が全く生かされない配点である。そして、残り7割は当然デュエルモンスターズことマジック&ウィザーズ。デュエルモンスターズの科目はさらに歴史科目、カード科目、戦術科目などに細分化されている。

 バニラモンスターのフレーバーテキストなんて知ったこっちゃないぞ……。うん。もう終わった事だ。合格したから何の問題も無い。

 

「ようこそ、デュエルアカデミアへ。歓迎するノーネ、新入生の諸君。これから講堂で説明会があるノーデ、指示に従って下サーイ」

 

 おや、あれはGXの名物教師、クロノス・デ・メディチじゃないか。こうやってアニメに出て来た人に実際に会うと、色々と実感しちゃうね。

 

 ……あ、そうだ。

 

『おい、説明会中にPDAのマナーモードを切ってアラーム鳴らしたりするなよ?』

『……はーい』

『…………しないよ?』

 

 わざわざ文章でのやり取りで『……』を使ってくるあたり、予め釘を刺して置いて良かったかもしれない。

 

『それじゃあ私達はそれが終わるまで遊びに行ってくるね! なんだか暇そうだし』

『……私も。留守番は任せた』

『はいよ』

 

 留守番ってなんだろう? 

 どうやら二人はその言葉通り、どこかに遊びに行ったようだ。

 

 彼女たちが言う「遊びに行く」と言うのは世の女の子たちがするようなショッピングやゲームセンター等ではない。そもそも彼女たちは精霊。現実世界に実体化出来ない彼女たちはそういったリアル世界での遊びに興じることは出来ない。

 そんな彼女たちが行く場所はインターネットのバーチャル空間。真の姿は二人組の女怪盗だが、表の姿はバーチャル配信者。そんなモンスターの精霊だからか、彼女たちは電子機器に入り込むことによって現実世界に干渉することが出来る。そうやって様々ないたずらをやったり、ネット回線を通じて様々な経験をしていたりしていた。

 この間はあるゲームのモデルデータを引っこ抜いて、そのキャラの服を自分に合わせて遊んでたりしていたな。

 

 二人がどこかに行った事を確認した後、俺は引率の教師の指示に従って講堂へと歩いていくのだった。

 

 

 ……

 

 

 あー……そういう感じかぁ……。

 

「それじゃあ俺とデュエルしようぜ! あ、俺の名前は遊城十代! お前は?」

「あ! はい、桜幽鬼兎です。遊城先輩」

「十代でいいぜ。ほら、早く早く!」

 

 講堂での説明会の後、これから我が家となるレッド寮に到着すると、先輩たちが準備していてくれたのか、質素ながら子供ならみんな大好きであろう料理と共に、新入生歓迎会が催された。その一環で歓迎会余興デュエルをすることになったのだが、そこで俺はある人物に声を掛けられた。

 島に向かうフェリーや説明会の会場でも見あたらなかったと思ったら、すでにこの島に居たようだ。

 遊戯王GXにおける主人公、遊城十代がそこに居た。彼は今二年生。俺の先輩という事になるらしい。つまり、次に起こる事件は……光の結社か。三幻魔の事件はもう終わっていたようだ。そう言えば1年前にキスキルとリィラがやたら騒いでいた日があったような気がする。結局3人でゲームしてたら忘れてしまっていたけど。

 

 デュエルスペースはレッド寮前の空き地。

 レッド寮の敷地には最新式の設置型ソリッドビジョンシステムも、夜でもデュエルが出来るナイター設備も存在しない。そんなレッド寮前の空き地であるが、夕方とは言えまだ完全に暗くはなっていないくらいの時刻。まだなんとかデュエルが出来るだろう。

 

「さ、お前のデッキの力を俺達先輩に見せてくれ、新入生!」

「はい!」

「「デュエル!」」

 

 ユキト LP4000

 十代  LP4000

 

「先行はユキトからでいいぜ?」

「それでは遠慮なく、ドロー!」

 

 相手は十代。彼の操るE・HEROはこの時代としては珍しい特殊召喚を中心とした展開力に優れるデッキだ。油断したらあっという間に高レベルHEROが融合デッキから飛んでくるだろう。

 デッキの要は魔法カード『融合』。こいつの発動を阻止するのが試合の展開を左右するはずだ。

 

「あ゛……」

「ん? どうしたんだ?」

 

 カード/デッキを信じる心ってやつを信じるか? 

 

 ユキト 手札

 Evil★Twins キスキル・リィラ

 落とし穴

 魔法の筒

 貪欲の壺

 大嵐

 サブテラーの継承

 

(こ、これは……近年稀に見る盛大な手札事故……)

 

 40枚のカードを良く切って上から5枚のカードを引く。そうすると1ターン目から使うことが難しいカードしか来ない事だってある。こういった事態を俗に手札事故という。

 確率によって支配されている普通の世界ではこういった事故が起こるからカイザーが操るサイバー流積み込み術はチートだなんだと言われる程滅茶苦茶なのだ。言うまでもないね。

 だがここは遊戯王の世界。俺だって5歳の時に貰ってから10年間欠かさず使い続けたデッキとの絆はしっかりと育んでいる。キスキルとリィラというカードの精霊も憑いていることだしな。だが、今はその二人がここに居ない。

 

(そう言えば説明会の時にどっか行ってから帰って来てないなあいつら……。とりあえず、トラップを伏せてこのターンを凌ぐしかないか)

 

「リバースカードを2枚セットしてターンエンド」

「へへ、いいのか?」

 

 そう言われたって、これ以上どうしようもないんだもん(泣)。

 

「俺のターン、ドロー! 手札から大嵐を発動!」

「げげっ!!」

 

『大嵐』

 魔法カード

 フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 

 俺の手札にもある魔法カード、大嵐。その効果は単純だが、とても強力なカードだ。本来ならマジック・ジャマーや魔宮の賄賂、今の状況なら神の宣告を使ってでも発動を無効にすべきカードである。

 

「さらに、融合発動! 手札のフェザーマンとバーストレディを融合!」

 

 魔法カード『融合』

 ①:自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

 先ほど考えていた警戒すべき魔法カードを発動されてしまった。様々な融合の組み合わせを持つE・HEROデッキとはいえ、1ターン目から融合と融合素材のモンスターカードを初期手札にしっかりと握っているのは流石と言わざるを得ない。

 

「来い! マイ・フェイバリットカード! E・HEROフレイム・ウィングマン」

 

『E・HEROフレイム・ウィングマン』

 融合モンスター/レベル6/ATK2100 DEF1200

「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」

 このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。①:このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

「これは……」

「行け! フレイム・ウィングマン! フレイム・シュート!」

「うわっ!」

 

 ユキト LP4000→1900

 

 くぅ……、流石は十代が操るHEROデッキ。

 だが、このターンを凌げばまだ何とかなるかもしれない。俺のデッキにはキスキルとリィラをサーチするカードもあれば、そのサーチするカードをサーチするカードだって入っている。さらに強欲な壺や天使の施しでEvil★Twinを持って来られれば、手札のキスキル・リィラだって召喚することが出来る。そうすれば十代相手にパワーで押し負ける事はそうそうない。

 

「まだだぜ! 速攻魔法、融合解除を発動する!」

「……うそーん」

 

『融合解除』

 速攻魔法カード

 ①:フィールドの融合モンスター1体を対象として発動できる。その融合モンスターを持ち主の融合デッキに戻す。その後、融合デッキに戻したそのモンスターの融合召喚に使用した融合素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を自分フィールドに特殊召喚できる 。

 

 十代のフィールドにフレイム・ウィングマンの融合素材として墓地に送られたE・HEROフェザーマンとE・HEROバーストレディが復活する。

 

『E・HEROフェザーマン』

 モンスターカード/レベル3/ATK1000 DEF1000

 

『E・HEROバーストレディ』

 モンスターカード/レベル3/ATK1200 DEF800

 

「バトルフェイズ中の融合解除によって召喚されたフェザーマンとバーストレディにはまだ攻撃権が残っている! 行け! フェザーマン、フェザーブレイク! バーストレディー、バーストファイヤー!」

「いわあああああああああああああああああああああああああ」

 

 ユキト LP1900→0

 

 こんなデュエル、色々酷過ぎて膝を付くしかないわ。

 

「あー、えーっと。ま、まあ、そう言う時もあるよな!」

 

 この頃の十代に「ガッチャ! 楽しいデュエルだったぜ!」と言わせなかった俺は逆に凄いんじゃないだろうか。あの十代がフォローに回っている……。

 

「十代先輩……また今度デュエルしてもらって良いですか?」

「おう! デュエルの申し出ならいつでもウェルカムだぜ!」

 

 こうして俺と十代とのファーストデュエルは幕を下ろしたのだった。

 我ながら情けない終わりである……。

 

 

 ……

 

 

「ユキト、さっきのデュエルじゃ全然わからなかったからさデッキ見せてくれよ!」

「いいですよ、はい」

 

 俺以外の新入生と先輩たちによる余興のデュエルを何戦か終わらせ、俺達は食堂へと戻って料理に舌鼓を打っていた。そこで同席となった十代と話をしている。

 

「へ~、キスキルとリィラか~見たことないモンスターだな!」

 

 十代が俺のデッキのエースモンスター達を見ていると、ポケットに入れたPDAからキスキルとリィラが飛び出してきた。

 

『ユキト、ただいま~』

『…ただいま』

「おお! もしかして、ユキトのカードの精霊か! すげぇ!」

 

 十代は俺と同じようにカードの精霊を見ることが出来る人間だ。当然、精霊化した二人を見る事が出来る。

 

『あれれ? もしかして君、私達の事が見えてる?』

『…びっくり。ユキト以外にも見える人がいるなんて』

「おう! 俺は遊城十代! よろしくな!」

『よろしく!』

『…こちらこそ』

 

 今まで俺以外に話すことが出来る人間が居なかったからか、二人は十代と随分話がはずんでいる様だった。

 

「そうだ、俺の相棒も紹介するぜ! ハネクリボーだ!」

『……くりぃ』

「あれ? なんか元気ないな、相棒。何かあったか?」

『ほんとね、なんだか何かを警戒してるみたい』

『…どうしたんだろう?』

 

 ああ! 伝説! 

 

 今まで姿を見せていなかった十代の相棒、『ハネクリボー』がその姿を見せてくれた。だが確かに、なんだか様子がおかしいようにも見えるが、その原因は分からない。

 風邪でもひいたのかな? 

 

 

 

 

 

 十代は気が付かない。

 ユキトのデッキの半数近くのカードが影になって認識できなかったことに。

 認識できなかった事すらも気が付いていない事に。

 

 その違和感を感じ取っていたのは、ハネクリボーだけだったのかもしれない。

 

 

 




キスキル『やっぱり、ユキトは私達が居ないと何も出来ないのよね~』
リィラ『…ユキトのそういう所が可愛いんじゃん』


影……一体ユキトのデッキに組み込まれているカードはシャドー何なんだ……?
という訳で、記念すべき十代戦でした。ワンキルするオリ主はよく居るけども、ワンキルされるユキト君はオリーシュの資質をもつ。
ちなみに、Live☆Twinの姿ではユキトの事をマスターと、Evil★Twinの姿ではユキトと呼んでいます。
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