好きなカードをGXに持ち込みたかった話 作:とある決闘者
私もね、持ってるんですよ。精霊の宿ったカード。
え?何のカードかって?
それは増殖する(ry
斎王琢磨は思案する。
「運命の輪に、付かず離れずの愚者と法王。それは十代とエド・フェニックスの二人を意味する。そして、愚者に寄りそうストレングス、ティラノ剣山。運命を動かすのは一体……」
デュエルアカデミアに在籍する3人の人物に思いを馳せる。
「ん?」
斎王は違和感を感じる。
確定していない未来を示すかのように未だ束のままのタロットカード。
斎王は一番上のカードをめくる。
「なっ」
引いたカードは愚者のカード。
本来なら存在しえない2枚目の愚者のカードだった。
☆
俺は未だかつてない絶望と対峙していた。
「☆♪#!&*★〇▲◇X!?!?!?!」
『ユユユユキト、早くどうにかして!』
『……見失った』
「ななななな、何とかしてくれよ二人とも!」
『無茶言わないでよ! アレだけはどうしようも出来ないわ……』
『……かといって、全てを忘れて日常を過ごすものまたムリ』
その絶望の名は……イニシャル・G。
黒光りする躯体に人間の意識の隙間を縫って視界に入ったり入らなかったりする絶望の代名詞。その名を呼ぶのも恐ろしい……。
「そうだ! 救援を呼ぼう! トメさんとか強そうだ」
『そ、そうね! 確かにあの人なら何とかしてくれそうだわ!』
『……賛成。方針が決まったら即行動すべきよ。というより、早くこの場から撤退すべき』
よし、方針は決まった。そうと決まったら購買部に行ってトメさんに助けを求めよう。トメさんがGに対して無力だったとしても、Gに対する兵器があそこならあるかもしれない。
どちらにしても、購買部に行くのは吉だ。
財布とデッキ、ついでにデュエルディスクを持って部屋を出た俺はある人物と遭遇した。
「……ッ。斎王……先輩」
「桜 幽鬼兎君、だね」
斎王は今、アカデミア3年生に編入してきた生徒という事になっている。そんなこともあり、念のため、年上に対する対応は忘れない。
(ふむ。彼も精霊と触れ合う能力を持つ者か。それに……)
「何か、御用ですか?」
「ユキト君、私とデュエルをしましょう」
斎王とのデュエル。
それは俺の遊戯王GXトラウマ連合の一員だ。彼、もしくは彼に連なる光の結社の人間とデュエルし、敗北した人間は斎王を神かのように崇め奉るようになってしまう。
彼の洗脳の怖い所は斎王を称える事以外の意思はほとんど元の人間と変わらないという所だろう。いっそ全て忘れて斎王を妄信するくらいの方が視聴者としては不気味さを感じなかった。仲間が少しずつ敵側に取り込まれていくのは遊戯王あるあるだが、遊戯王で最も怖い所だろう。
「す、すみません、先輩。今ちょっと急いでまして……」
そんな斎王とデュエルするなんてあり得ない。
十代や剣山は謎の力で斎王に取り込まれることは無かったが、俺もそうとは限らない。斎王に取り込まれるか否かと言うのは精霊の宿ったカードを使っているか否かと言う訳ではないのだ。その証明に、万丈目はいち早く斎王サイドに取り込まれてしまった。
普通メンタルの俺に斎王の洗脳に抗う自信はない。キスキルやリィラは(おそらく精霊としての力が)強い精霊ではあるが、守ってくれるかどうかは……わからん。
となれば、俺に出来るのは斎王とのデュエルを受けない事。これに尽きる。
「君は私のデュエルの申し出を断ることは出来ませんよ」
「何故です? 何かメリットがあるとでも?」
不可解なことを言うものだ。
彼とデュエルする事で、俺に一体なんの良い事があるというのか。何もないだろ。
「今、あなたは道に迷っている」
「何?」
「先の知れぬ闇。影に隠れた存在によって、あなたは今、脅かされている」
「……」
まさか……。
「私なら、あなたが求めている答えにつながる道を探すお手伝いをすることが出来ます」
知っているのか……?
「あなたの未来、私が占って差し上げましょう」
Gがどこに居るかを……
斎王はヤバイデュエリストだ。平気で「流石斎王様です。さすさい」をやらせるくらいヤベー奴だ。だが、同時に未来を見通す能力を持った超凄腕占い師であるというのもまた事実。
『ユキト、やめておいた方が良い。こいつからは嫌な感じがする』
『……うん、碌なことにならないよ』
(わかっている。わかっているが……)
こいつにGの居場所を占ってもらえれば、ヤツに対する対処の方法も増える。
だ、だが……洗脳が……いや、でも……まあ? 斎王に洗脳されても命の危険があるデュエルと言う訳でもないし……。最悪、十代がこの事件を解決してくれたらまた元通りだ。
Gをここで対処できなかったら、十代が破滅の光事件を解決した後でもG事件はこのままの可能性もある。
二つの可能性を天秤にかけた俺は……。
・・・
「「デュエル!」」
ユキト LP4000
斎王 LP4000
デュエルを受けることにした。
「俺のターン! ドロー!」
ん? なんだ、この手札は……。
決して事故っているわけではない。だが、これは様子がおかしい。
何にしてもこのデュエルに勝つだけだ。
「ユキト!? 斎王とデュエルしたら駄目だ!」
「十代先輩……」
騒ぎを聞きつけてか、翔と剣山を引き連れた十代が俺に忠告をしてくれる。だが、デュエルはもう始まっている。それに……。
「わかってますよ、先輩。それでも、俺は聞かなきゃならないことがあるんです」
「ユキト……そうか! 絶対勝てよ!」
「はい!」
十代の激励を受け取った俺はデュエルを続行する。
「終末の騎士を通常召喚!」
『終末の騎士』
効果モンスター/レベル4/ATK1400 DEF1200
①:このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。デッキから闇属性モンスター1体を墓地へ送る。
「終末の騎士の効果で、デッキからEvil★Twin リィラを墓地に送る。さらにフィールド魔法Live☆Twin チャンネルを発動!」
『Live☆Twin チャンネル』
フィールド魔法
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。①:自分または相手のモンスターの攻撃宣言時に、自分フィールドの「キスキル」モンスターまたは「リィラ」モンスター1体をリリースして発動できる。その攻撃を無効にする。②:自分・相手のエンドフェイズに、自分の墓地の「キスキル」モンスターまたは「リィラ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻す。自分フィールドにモンスターが存在しない場合、デッキに戻さず手札に加える事もできる。
これで、終末の騎士が相手に破壊された後、エンドフェイズにリィラを回収することが出来る。
「リバースカードを1枚伏せて、ターンエンド」
「私のターン。アルカナフォース0-THE FOOL を召喚」
『アルカナフォース0-THE FOOL 』
このカードは戦闘では破壊されず、表示形式を守備表示に変更できない。
①正位置・逆位置を選択するカード効果が発動した時、相手プレイヤーが好きな方を選択することが出来る。②正位置・逆位置によって、2種類の効果を得る。●正位置:このカードを対象にする自分のカードの効果を無効にし破壊する。●逆位置:このカードを対象にする相手のカードの効果を無効にし破壊する。
「このカードはあなた自身を示すカード」
「俺が愚かだとでも言いたいのか?」
「いいえ、愚者のカードにはその名の通り愚かと言う意味もありますが、別の見方をすることが出来るのです。あなたの運命はあなた自身が選択する。THE FOOLが場に居るとき、正位置と逆位置の効果の選択は相手が選ぶことが出来ます。さあ、選択を」
「(THE FOOLの効果は破壊耐性……だが、厄介なのはアルカナフォースの効果を相手に決めさせる能力。こっちに押し付けられて自分で除去できなくなるのは面倒だ。となると……)逆位置を選択する」
俺の宣言と共に、斎王の頭上で回転していたTHE FOOLのカードは逆位置でぴたりと止まる。
「逆位置のこのカードは希望、よい旅、精神的な目覚めなどの意味を持ちます」
「ほーう、そりゃいい事だ」
「しかし、この運命を辿ることが出来るのは私の導きに従ってこその運命です。今からそれを実際に見てもらいましょう。魔法カード強制転移を発動」
(くっ、やはりモンスター入れ替えのカードを握っていたか)
『強制転移』
魔法カード
お互いはそれぞれ自分フィールド上のモンスター1体を選び、そのモンスターのコントロールを入れ替える。そのモンスターはこのターン表示形式を変更できない。
「私はTHE FOOLを選択」
「俺は終末の騎士だ」
強制転移によって俺のフィールドにTHE FOOLが終末の騎士と入れ替わるようにしてやって来る。
「終末の騎士でTHE FOOLを攻撃!」
「(伏せた攻撃の無力化を使うか? いや、まだデュエルは序盤。1400ポイントくらいくれてやる)うぐっ!」
ユキト LP 4000→2600
終末の騎士がTHE FOOLに切りかかった衝撃が俺にまで到達する。だが、THE FOOLはその効果によって破壊されない。
「さらに私はメインフェイズ2で運命の予見を発動」
『運命の予見』
魔法カード
自分フィールド上に存在するモンスター1体が戦闘で相手モンスターを破壊できなかった場合、このカードはメインフェイズ2にのみ発動する事ができる。手札から「アルカナフォース」と名のついたレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。
「手札からアルカナフォースⅠ-THE MAGICIANを召喚します」
『アルカナフォースⅠ-THE MAGICIAN』
効果モンスター/レベル4/ATK1100 DEF1100
正位置・逆位置によって、2種類の効果を得る。●正位置:魔法カードが発動された時、そのターンのエンドフェイズ時までこのカードの元々の攻撃力は倍になる。●逆位置:魔法カードが発動する度に相手は500ライフポイント回復する。
「あなたの場に居るTHE FOOLの効果で、THE MAGICIANの効果は私が決定します。逆位置を選択」
「逆位置? 俺に有利な効果だ」
頭上に現れたTHE MAGICIANは先ほどと同じように逆位置で停止した。
「私のターン、つまり私があなたの運命を主導している限りあなたは良い未来へと導かれるのです。リバースカードを1枚セットしてターンエンド。どうぞ、あなたのターンです」
引っかかる言い方をしやがる。それはつまり、俺のターンになると運命は……。
「俺のターン、ドロー」
「リバースカードオープン、逆転する運命。フィールド上に存在するアルカナフォースの正位置効果と逆位置効果を全て入れ替えます」
「やはり……」
逆転する。
『逆転する運命』
罠カード
フィールド上の「アルカナフォース」と名のつくモンスターの正位置効果と逆位置効果を入れ替える。
逆転する運命の効果によってTHE FOOLは正位置へ、THE MAGICIANも正位置へと回転する。
「まずい! これじゃあユキト自身であの厄介なカードを除去できなくなっちまった!」
十代の言う通り、THE FOOLが正位置の効果を得たことによって俺のカードの効果によって除去することが出来なくなった。
「正位置の愚者のカードは流れ者、浮浪者、間違った道を行くという意味があります。これはあなた自身によってあなたの運命が導かれた場合の未来を示しています」
斎王は俺に何かを告げるように、厳かな雰囲気をまといつつ話し続ける。
「ですが、私と共にあればそんな運命も全て逆転することが出来る。丁度今起こった事と逆にね」
「俺は……」
「光は全てを導く。あなたの内に潜む影すらも照らし出して、正しい未来へとあなたを導くでしょう」
俺は……勝てない? 斎王に? 自分の運命に? そんなこと、あってはいけない。
「うん?」
怪訝な表情をする斎王。
「な、なんだありゃ!」
声をあげる十代。
影が……蠢く。
「斎王、アンタは言ったな。光が影を照らし出すと」
「ええ」
「違うな、間違っている。光が強ければ強いほど、影は強調される!」
俺は手札から魔法カードを発動させる。
『! 駄目だよ、ユキト! その力は使ってはいけない!』
『……抑えて』
「魔法カード、手札抹殺!」
『手札抹殺』
魔法カード
①:手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。
「俺の手札は3枚。これを全部捨てて、3枚ドローする」
3枚のカードを墓地に送り、3枚のカードをデッキトップからドロー。
捨てられたカードはLive☆Twin キスキル、Live☆Twin リィラ、そしてシャドール・ファルコン。
「墓地に送ったシャドール・ファルコンの効果を発動」
『シャドール・ファルコン』
効果モンスター/レベル2/ATKD600 DEF1400
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:このカードがリバースした場合、「シャドール・ファルコン」以外の自分の墓地の「シャドール」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを裏側守備表示で特殊召喚する。②:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを裏側守備表示で特殊召喚する。
「シャドール・ファルコン? あんなカード、ユキトのデッキに入ってたか?」
「初めて見たカードッス」
『クリィ~!』
「相棒? どうした」
外野が何か騒いでいるが、今は気にしていない。
「シャドール・ファルコンを裏側守備表示でセットする! さらに、聖なる影 ケイウスを通常召喚!!」
『聖なる影 ケイウス』
効果モンスター/レベル2/ATK900 DEF100
このカード名の①②の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。①:このカードがリバースした場合に発動できる。手札から「シャドール」モンスター1体を表側守備表示または裏側守備表示で特殊召喚する。②:このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。手札から「シャドール」モンスター1体を墓地へ送る。このターン中、以下の効果を適用する。●自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力はこの効果で墓地へ送ったモンスターの元々のレベル×100アップする。
フィールドに影と光のモンスターが出現する。
「……あれは……」
『十代』
「アクア・ドルフィン!」
『あれは……破滅の光とも、正義の闇とも違う。もっと別の……異質なモノだ』
十代は気が付く。
ユキトの影の中に蠢く存在に。
その存在から伸びている糸がユキトのフィールドに出ているモンスターと繋がっていることに。
そして、それは何か良くないことが起こる前兆の様で……。
「俺はァ! 手札から
『『ユキト!』』
影に操られている? そんな風にも見えるユキトの目の前に、彼が使役する二人のカードの精霊が姿を現す。
『……抑えて』
『今はまだ、駄目よ』
「俺は……」
魔法カード発動しようとする俺の手を包み込むようにキスキルとリィラが手を握る。
霊体の二人の手によって本当に俺の手が押さえつけられるという事はない。しかし、俺はもう、手に持ったカードをデュエルディスクにプレイすることは出来なかった。
「俺は……俺……は……サレンダー……する……」
俺は右手を手札のあるカードから離し、デッキトップへと置く。
その行為が意味することは、降参。
「え! ユキト君サレンダーしちゃったッス!」
「ああ。でも、二人が止めてなかったら、今頃どうなっていたか分かんないぜ」
俺のサレンダーのコールによってデュエルは俺の負けとなり、ソリッドビジョンも全て消える。
「斎王……俺じゃあアンタには勝てない」
「そういう運命でした。ですが、私と共に来れば」
「でも、俺にアンタは必要ない」
「……そうですか。では、私は失礼します」
そう言うと、斎王は用が済んだとばかりにさっさと離れていく。
「俺に……お前は必要ない……俺が、必要としているのは……俺を、必要としているのは……」
「ユキト!」
「!」
「十代……先輩……」
霧がかかったようになった思考は十代の声によってはっきりとしたものになる。
だが、俺の意識はそこで途絶えた。
キスキル『結局Gはどこに?』
リィラ『……!?』
ちょっと唐突過ぎ感も否めませんが、許してヒヤシンス。
光の破滅編の最後はどうしようかは決めているんですが、過程は全く考えていません。どうしよう……しばらく更新できないかも。
アニメ版のアルカナフォース強すぎてホント草。そして何より斎王自身の特殊能力が強すぎて大草原なんだぜ。
追記
次話更新したんですけど色々とミスしてたんで考え直します