魔法科高校の禁書目録   作:何故か外れる音

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入学編 Ⅳ

 

例えば発火能力(パイロキネシス)を利用する際、深真は某クエストのメラ系統や某ファンタジーのファイア系統といった他世界の火魔法を参考にする。

 明かりの無い暗闇を模索する様に能力の使用方を調べる事も当然あるが、この方法を選択するのは稀な事だ。

 基本的には他所の能力を技を参照して、能力の可能性を調べている。

 

 通学中の空いた時間を記憶漁りに使い深真は第一高校の校門を潜る。

 一年E組の教室に入り中を軽く見渡すと、達也たちの姿が目に入った。

 美月とエリカは兎も角として、朝の稽古に行った達也が居る事に驚く。

 と言っても感情を表に出すような事はせず、家を出るのが遅かったかと反省しつつ、深真は自分の席を探す。

 シバとシバタの席が近くに位置しているのを見ると、五十音順の作用が少なからず働いているのだろう。

 

 案の定、達也の席の一つ後ろが深真の席だった。

 

「オハヨー」

「おはようございます」

「……誰?」

「遅かったな、姉上」

 

 エリカ、美月、謎、達也の順に声を掛けられ、深真は挨拶を返す。

 そして自然と、こちらを誰何した男子生徒に視線が集中する。

 エリカにド突かれている様子を見るに新しくできた友人といった所だろうか。

 

「レオ、紹介するよ。こちらは俺の姉の司波深真だ」

「お、おう。サンキュー、達也。西城レオンハルト…です。その、達也のお姉さんが一体何用で…?」

 

 慣れない言葉遣いをしているのが否めないレオを見て、何か勘違いしていると四人は察した。

 達也か深真が勘違いを訂正するより先に、エリカがレオを指さしながら笑いだした。

 

「なっ、なんだよ!?」

「エリカちゃん、そこまで笑う必要はないんじゃないかな……?」

 

 笑われる理由が分からず困惑するレオを庇う様に美月がエリカを窘める。

 わざとらしく腹を抱えはじめたエリカの頭を深真は押さえつけた。

 

「勘違いしているようだから今の内に正しておくぞ。レオ、俺と姉上は双子のようなものだ」

「あーっと、つまり?」

「同い年の同級生、と言えば良いか?」

 

 要点を抑えていて要領を得ない達也の説明に困惑したレオだったが、分かりやすく達也が教えてくれた事で理解すると、大きなため息を吐いた。

 安堵と苛立ちが混ざり合わせた器用な溜息を。

 前者は友達になったばかりの姉に失礼を働いたのではと心配したことに対してで、後者は特に理由もなくエリカにド突かれた事に対してのモノか。

 心を落ち着ける様に呼吸を整えたレオは、仕切り直しをしようと深真とエリカの方を向くと言葉を失ってしまった。

 

「………なにやってんだ…?」

 

 深真の長い後ろ髪に襲われているエリカの構図を見て、レオはどうにかその一言を絞り出す。

 角度的に視界に捉えていた達也と美月は何も見ていないとでも言うように、レオから目を逸らした。

 何があったらこんなことになるのだろうかと疑問を抱いてしまうのは仕方無い。

 

「三つ編みを解かれましたので、お仕置きをしている所です」

 

 楽し気に聞こえる声と悲鳴の様な声を出すエリカを背に振り返った深真が簡潔に答えた。

 長い髪を器用に動かしてエリカを拘束し続ける様を見ても理解できずにおり、意味が分からないと頭を抱えたのは正しい反応だろう。

 

「あー、仕切り直させてもらうぜ。俺は西城レオンハルト、得意魔法は硬化魔法だ。レオでいいぜ」

 

 理解する事を放棄したレオが、改めて自己紹介をした。

 因みに、彼の進路志望は警察の機動部隊や山岳警備隊といった身体を動かす職種。

 高校入学の時点で自分の進路を決めているレオに、深真は素直に感心した。

 魔法師の能力や資質が進路と密接している為、進路を定めるのが速いのは常識となっているので不思議ではないのだが、何も決めていない深真からすればレオの様な人間は感心するに当たうる。

 

「司波深真です。深真でいいですよ。名字だと達也と被って分かりにくいですから」

「分かった。それで、得意魔法は?」

「そうですね……強いて挙げるなら、電撃系の魔法を得意としています」

 

 そう答えながら、深真は少し強めの電気マッサージを施す。

 逃げ出す事も出来ずにいるエリカの悲鳴を後ろにして深真はレオに笑顔を向けた。

 

 その姿にレオがビビったのは言うまでもない。

 

 

 ◇  ◇

 

 

 一年E組の担当カウンセラーとなった小野遥先生主導の元、オリエンテーションが行われた。

 と言っても、第一高校のカリキュラムと施設に関するガイダンスに一通り目を通した後、選択科目の履修登録を行って終わりである。

 

 この後は授業見学の時間となっている。

 本格的な魔法教育が始まるのは高校からであり、魔法の授業に関しては馴染みの薄いモノばかり。

 公立の塾で魔法の基礎を手解きし、魔法師の資質があるか見極める機会が与えられているとはいえ、専門的な授業となると戸惑いを覚えるのも無理はないだろう。

 それを少しでも緩和するために、実際に行われている授業を見学する時間が設けられているのだ。

 

 因みに、今日と明日の二日間、見学の時間は設けられている。

 

 授業選択を終えた達也たちに着いて行く形で工房や闘技場などを見学して回り、放課後になると深真は一足先早く帰宅した。

 荷解きが一つも終わっていない現状を改善するためである。

 事情の説明は達也に放り投げたが、あの優秀な弟の事なので上手く取り計らってくれることだろう。

 

 総重量の関係から乱雑に積まれた荷物群を睨みつける。

 

 冗談でもなく目からビームを発射しそうな気がした所で、深真は荷物を睨みつけるのをやめた。

 そして、座標移動(ムーブポイント)を用いて一つの荷物を目前に移動させた。

 

 転移させられた荷物は、一メートル四方の箱だった。

 見るからに金属でできている箱には『完全自律型人形:上海』と刻まれている。

 某Projectのアリスを題材として、深真が造り上げた人形である。

 

 四葉家での軟禁生活は、その大部分を自由な時間で占めていた。

 前提条件が異なる超能力を魔法の分野で調査しようとするものだから、結果として自由にできる時間が増えてしまった形だ。

 彼らが、深真の超能力の研究方法を模索している間、深真は自己鍛錬の他に、図画・工作に励んでいた。

 未元物質(ダークマター)を材料として兵器群を造る事を図工と呼んでいいのかは甚だ疑問ではあるが。

 

 ファイブオーバーを造る事を目的として始まり、兵器群のコアとして活動する事を目的として造られたのが、この『完全自律型人形:上海』である。

 尚、兵器群がない場所では家政婦人形として大活躍してくれる。

 

 この人形の心臓部分には、かの一日を三五時間生きる大天才が開発したマルチフォーム・スーツに組み込まれたコアを参考にして作りあげた代物が内蔵されている。

 魔法や超能力ではなく、科学力で作りあげられた物を参考にしたため、開発に五年近く掛かった。

 完成に漕ぎ着けた時には既に中学生の年齢になっていた。

 

『シャンハーイ』

 

 金属箱の上部に埋め込んだコントロールパネルを作動させ、箱を開くと一体の人形が鳴きながら飛び出してきた。

 心なしか、目元が泣いている様に見える。

 

 前もって準備しておいた小さな掃除用具を渡すと、深真が何を求めているのかを考えるように首を傾げる。

 人間らしく振る舞う人形に満足そうに深真が頷くと、上海はもう一度鳴いて部屋の掃除を始めた。

 

(家政婦人形が作りたかったんだっけ……?)

 

 フワフワと浮きながら天井や壁に付いた埃をはたき落としていく上海の後姿を見ながらそんな事を思う。

 あくまでもファイブオーバーの心臓部分を担う人形だと再確認して、深真は次の荷物に手を付ける。

 

 ただ、兵器群の心臓として働く時間より、家政婦の様に働く時間の方が圧倒的に長いのもまた事実であり、そのことを再認識した深真は小さく息を吐いて見せるのだった。

 

 

 ◇  ◇

 

 

 第一高校の最寄り駅の名前は、何のひねりもなく「第一高校前」である。

 そんな事を今一度確認した深真は、左腕に抱き着いている深雪に目を向ける。

 すると幸せそうな深雪と目が合うので、小さく微笑んで深真は現状を確認する。

 

 先に帰った深真の事情に一定の理解を示すも、深雪は深真に一緒に登校する事を望んだ。

 更に、引っ越しの荷解きが終わったら一緒に帰宅したいとも要望を出した。

 その二つの要求を深真が呑むと、不機嫌さを隠さなかった深雪の機嫌はあっさりと直った。

 

 深雪がくっついて離れない事は予想外ではあったが、姉弟ともに幸せそうな雰囲気を纏う深雪に頬を緩ませていた。

 見る人が見れば、美少女に抱き着かれて喜んでいる女子生徒に見える構造だが、今この場には見知った顔しかいないため、その心配はない。

 

「たつやく~ん!」

 

 現実逃避するように昨日の事を思い出していた深真は、達也の名を呼びながらこちらに走ってくる生徒会長の姿を認めた。

 

「………うわぁ」

 

 客観的に見て恥ずかしい呼び声と共に、真由美が軽やかに駆け寄ってくる。

 ひくような声を出したのは、駅で合流したE組メンバーの三人のうちの一人であった。

 最寄り駅から第一高校までの道は一本道であり、その道の途中でこんなイベントに遭遇すれば目立つモノだ。

 

「達也くんオハヨ~。深真さんと深雪さんもおはようございます。大変仲が良さそうですね」

「はいっ!おはようございます、会長」

 

 仲が良く見えると言う言葉に更に気を良くした深雪が、珍しく前に出た。

 深雪の挨拶に続く様に姉弟も挨拶を返すと、他の三人もまた、引きながらではあるが丁寧に挨拶を返した。

 

 いつの間に仲良くなったのだろうと考える深真を他所に、真由美が登校メンバーの一員に加わった。

 深雪に用があるらしく、深真の左腕が解放された。

 深真が先頭、達也・深雪・真由美が真ん中、エリカたちが後ろの順で、第一高校を目指すことになった。

 

「お昼はどうするご予定ですか?」

 

 生徒会の話をしたいと言い出したかと思えば、お昼の話にシフトチェンジした。

 思い出すのは昨日の昼食時間の事だ。

 

『深雪が一緒にお昼を摂りたそうにこちらを見ている。仲間に入れますか?』

 

 一科の連中が口を挟んできた結果、一科と二科の間で問題が起こることを回避するために『はい』を選択することは叶わなかった。

 深真としては問題にしても構わないのだが、弟妹の事を思えばその選択は選べない。

 

「もしよかったら、生徒会室でお昼をご一緒しない?ランチボックスでよければ、自販機があるし」

 

 昨日の事を思い出していたのは深真だけでなかったようだ。

 各々が苦々しい表情を見せたのを見て、事情を察したのだろう真由美がそう提案した。

 

「生徒会室にダイニングサーバーが置かれているのですか?」

 

 昨日の様な確執を回避でき、尚且つ一緒にお昼にできる魅力的な案に乗るよりも先に、深雪が呆れて見せた。

 空港の無人食堂や長距離列車に配備されている自動配膳機が生徒会室に設置されているのだ。

 余り動じることのない深雪がこのような反応を見せていしまうのは仕方ない。

 

「深雪さんを勧誘している手前、こういったことはあまり言いたくないんだけど、遅くまで残って作業する事がありますから」

 

 バツ悪げにしながらも、真由美は深雪の勧誘を続ける。

 

「それに、生徒会室なら達也くんたちが一緒でも問題ありませんし」

「……問題ならあるでしょう。副会長と揉め事なんて嫌ですよ、俺は」

 

 内心、真由美の主張に賛同していると、達也がそう切りだした。

 主に深雪と真由美の二人で会話が進んでいたので、達也が口を挟んだことに驚く。

 生徒会関係の事で口を挟むつもりはないとでも言いたげだった事もあったからだ。

 

「いつの間に副会長と揉めているのですか……」

「待ってくれ姉上。まだ、何も問題を起こしちゃいない。入学式の日に睨まれたんだ」

「あぁ…()()ですか」

 

 真由美と一緒に居た一科生の男子生徒が達也を睨みつけていた事を思い出し、あれが副会長だったのかと納得した。

 さも当然の様に、生徒会副会長を()()呼ばわりした深真に、美月たちがドン引きした。

 

「あはは…はんぞーくんもそんなに悪い子じゃないのよ?信じられないかもしれないけど」

 

 はんぞーくんは誰だ、とみんなの心の声が一致した。

 話の流れ的に、副会長の事を指しているのだと考えられるが、それが正しいとは限らない。

 

「はんぞーくんは部室でお昼にするから大丈夫よ」

 

 達也の心配事は無縁なモノだと分かった所で、深雪と達也は生徒会室でお昼にすることが決定した。

 エリカたちも誘ったのだが、きっぱりと拒絶され断念。

 深真もエリカたちに便乗しようとしたのだが、深雪に捕まる形で生徒会室送りとなった。

 

 話がまとまると、楽し気で軽快な歩みで、真由美は先に学校に向かって去っていく。

 そんな彼女の後ろ姿を見送る一年生の足取りは、決して軽いモノではなかった。

 

 




『七草真奈美』が私の予測変換に登場しました。
誰だと思い、真由美の自己紹介タイムを覗いてみると、七草真奈美なる人物が自己紹介していました。

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