泣き顔が見える。
両手を伸ばし、船のようなものに手を伸ばし泣き噦る。
その手は届かない....
次に見たのは医務室の天井だった。
あの日から既に3日経っていた。
あの後は、忍田さんが必要な書類を持ってきて説明をしてくれた。
内容は、この組織のこと。トリオンから始まり近界民のこと、トリオン兵や近界についてなどだった。
説明が終われば、忍田さんはお見舞いの品だとさが錦を置いていってくれた。
今日は、医者の検診を受けた後に迎えが来て基地内を案内してくれるらしいが...
コンコンコン
「どぞー」
「あ、どうも。あなたが瀬賀さんですか?」
「そういう君は?金髪ストレートでもなければ、訛りの強い首切りでも無いなら恐竜率いるか?それでも無いなら弓番えてドヤ顔してろや第三位ィ」
入ってきたのはサイドを残しオールバックにした前髪が特徴で、わずかに赤みの強い茶髪に、薄い青の目の少年。
「えぇっと、初対面の筈なんだけど....
俺の名前が、迅悠一です。よろしくお願いします。」
苦笑いしながら、右手を差し出してくる。
ここでようやく、今日視た未来の登場人物に気付いた
あぁ、彼を視てたわけか
「基地が玉狛の方にあるんで、少し歩きますが大丈夫ですか?」
何も答えない俺を不審がったのか、迅と名乗った少年はこちらを心配する素振りを見せつつこちらを伺う。
「あぁ、大丈夫。俺の名前は聞いているだろうけど、改めて名乗らせて貰うよ。俺は瀬賀、瀬賀美琴。瀬戸際の佐賀にある美しい琴で瀬賀美琴だ。」
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これは基地に向かう途中での一幕。
「忍田さんから聞いたんですけど、瀬賀さんも俺と同じで未来が視えるんですか?」
迅の話を聞いた限りでは、迅の副作用は特定の未来に至るまでの過程をも視ることが出来るらしい。
これに対しての俺の副作用とは似て非なるものなんだが、迅の言う通りなら上層部も勘違いしているって事か。正す事は簡単。だが、勘違いさせたままっていうのも美味しい展開なのでは無いだろうか。
「瀬賀さん?」
「あぁ、すまんすまん。迅とまるっきり同じって訳じゃないが、視る事は出来るよ」
嘘は付いてないから大丈夫。
「なら、聞いておきたいんだ。遠征隊について何だけど」
遠征隊といえば、忍田さんの話にも少し出てきた部隊のことだろう。
近界を調査し、近界の技術を交渉等により入手する部隊であり、今回は同盟国が攻められている為にに援軍に出た部隊を指すのだろう。
「迅はどう視えたんだ?」
迅の話を整理すれば
戦争に参加すれば、遠征部隊は全滅に近い結果になること。
参加しなかった場合は、同盟国が滅びその戦争がこちらの世界にも広がること。
その事を伝えた結果、遠征部隊は戦争に参加。その部隊の中には迅の師匠がいたらしい。
「迅がどうこう悩む必要はないんじゃないか?
結局、同盟国に対して援軍に行く必要はあるんだ。その時点で参加しなかった場合の事を考える必要はない。それに戦争に行くんだ、生死が関わるのは当然だろう?
もっと気楽に副作用を使って良いんじゃないか?」
「そう....ですよね...」
その後は特に話をするわけでも無く、迅は俯いており話が出来る雰囲気ではなかった。
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「瀬賀さん、あの川の上に建ってるのが俺たちの基地だよ。」
迅の指差す方を見れば、川の上に建つ建物。忍田さんに聞いていた通りであれば、あの建物は元々河川の調査を行う為の建物だったらしい。所謂中古物件。
迅は自分より先に扉に近づき扉を開ける。
「ようこそ、ボーダーへ」
「あぁ、これから頼むよ。
迅はこの言葉に呆けた様な顔をするが無視して中に入る。
「あー!!誰よアンタ!ここが何処だか分かって入って来てるわけ!?あんまり勝手な事をするようだったら、今すぐここでぶっ飛ばすわよ!!」
「迅、チェンジだ。この世界は俺に適してない。」
入ってみれば、関係者の子供と思われる少女がおり、目が合うと同時に騒ぎ出す。叫び声というより怒号の方が相応しいような叫び声を無視しつつ、迅に振り返りギブアップ宣言をする。その間も、小さな少女からの叫び声は聞こえているが当然無視する。
「あははは....小南、彼が城戸さんの言ってた新入りだよ。
瀬賀さん、彼女の名前は小南桐絵。ボーダーじゃ現在最年少だけど、トリオンを用いた戦闘じゃ実力派折り紙付きだよ」
「くぎゅうううううううううううう。満足か?ロリっ子。」
「はああああ!?何よアンタ!いきなり現れたと思ったら新入りだし!いきなり真顔で変な声出すし、ホント何なのよ!!」
「釘宮病(くぎみやびょう:Kugimiya Disease)は、釘宮ウィルス過敏性大脳皮質炎(Kugimiya Virus Hypersensitive Cerebral Corticalitis)と呼ばれてきたが、全脳に病変の及びうる原因不明の内因性変性疾患とも考えられるようになってきている。一般的な症状は、先程のように『くぎゅううううううう!』と叫びだし、幼女に罵って貰いたくなるらしい。最悪のケースでは失神する。全世界人口の1/3が、既にこの病を患っていると言われている。治療方法は現在の医学力をもってしても発見されていないという。」
「ぇ...そ、そんな病気があったの!?それより、さっきアンタが叫び出したって事はアンタもそのく、釘宮病に患ってるっていうの!?」
「あぁ、因みにN型だ。」
なんでこの少女は信じてるんだ?迅の方を見ても、あいつ笑ってやがるな。顔を伏せつつ笑ってやがる。少女は戸惑いまくって、俺の肩ぐわんぐわんしてるし迅は爆笑。我ながらカオスだな....
「ん?なんだ、瀬賀くん来てたのか...どういう状況なのか、先に説明をして貰って良いだろうか」
少女の叫び声に泣きが混ざって来たタイミングで、奥の扉から忍田さんが出て来た。
「ま、マサヒロさん....」
バタン!
扉は閉められた。
「迅、今すぐどうにかしてくれ」