エタってないです。
エタって無いんですよ、ヘタってたんです。
「さ、みこっちゃん。まずは敵の出方から見ていこうか、最初は適当に攻撃して良いよ。どうせ、敵もこっちを舐めてるから何もしてこないよ」
「わかってるよ。最初から本気でやるのは、上級者を相手にする初心者だけデショ?」
「まさに、今のみこっちゃんのことそのままじゃん」
『おーい、2人とも。イチャイチャするのは良いけれど、時間は有限なんだから早く準備をしてくださいよー」
先にトレーニングルームの中に入っていた迅の呼び掛けが聞こえた瞬間に、ヒロの纏っていた空気が変わり、表情は無に、空気は冷たく凍り付いていた。
「オーケー、美琴」
「ん?」
「敵は生かして帰すな、土に還せ」
「....おっけー」
了承はしたけど、本気で嫌がっているのがわかる。
わかるけど...そんなに嫌がるのか。
取り敢えず、ヒロは放置しルームに入る。ルームの中では既に迅がトリオン体に換装しており、孤月を片手に構えていた。
「遅かったね、瀬賀さん。取り敢えず換装しておいたら?」
「すまんね、俺の敵....変...身っ!!」
ばっちりキメポーズを決めて換装を行うが、それを見る迅の瞳は酷く冷たいものだったが気にしない。
「瀬賀さん、別にキメポーズしなくても換装は出来るし、俺の敵ってなに?」
「俺の敵ってなに?か、ふん。おいおい、空気の読めない事は言うなよ。俺の事は狐さんって呼びな」
「え、多重人格か何かなの?」
迅の反応を見るからに、本気で知らないようだ。ってか、多重人格ってなんだよ。
「かー!つまらん!ノリが悪いだけじゃなく、知りもしないとは思わなかった!そのまま死ねぇい!」
唾を吐き捨てるような真似をした直後に、迅に向け走り出し大振りの袈裟斬りを放つ。だが、迅は何も無かったかの様に避けて距離をとる。
「甘いよ、狐?さん。そんな大振りじゃ当たらないし、何より攻撃は読み易い」
「よく言うよ...それにもう、その呼び名じゃなくて良いわ。それで?攻撃してこないってことはヒロが言ってた様に舐めてるってことだよな」
迅を煽れば、驚いた表情を見せるが、すぐに顔を引き締めて無言で孤月を構えた。
それを見送れば、次にヒロから通信が入る。
『美琴、取り敢えず大振り攻撃を続けて。敵の動きを観察する、美琴も見て覚えて。ある程度攻撃したら疲れたフリをして、敵の攻撃を誘って。ルームの中じゃ死なないし、何より欠損してもすぐ元に戻る。今は沢山死んで、必ず殺せ」
『おっけー、隊長』
「迅、君が攻撃してこないなら此方から行くぞ」
返事はしてこなかったが、睨む様に此方を見てくる迅に再び突撃する。
横薙ぎ。袈裟斬り。振り上げ。振り下ろし。etc...
迅は孤月で受ける訳でもなく、全てを紙一重で避ける。反撃はせず、本当に息が上がっている訳じゃないのに、息苦しく感じ肩で息をする俺を見下ろじつつ口角を上げた。
「瀬賀さん、想像以上に動けてますね。まさかそんなに動けるとは思ってなかったよ、昔何かスポーツでもやってたの?」
『美琴、準備はいいよ』
『おっけい』
「そう...だなぁ...、ダーツとかかな」
言い切ると共に、孤月を思いっきり迅に向かって投げる。
流石に驚いたのか、初めて孤月で受けようとしていた迅に対し、俺は酷く落ち着いていた。
『美琴、今!』
ヒロの合図と同時に、迅に向かって飛び出し
『そこ』
孤月を消して、迅に無手の状態で振りかぶり、振り下ろすタイミングで呼び出した。
「っち...」
「流石に負けたりはしないですよ。俺の副作用がそう言ってる」
振り下ろした直後に、迅の持っていた孤月が俺の身体を貫いていた。
「いやぁ、本当に流石ですよ。2人掛りと言えども斬られるとは、思ってなかったです。これは俺も見逃してましたね」
「見逃したんじゃなくて、信じてなかったんだろうよ。完全に斬ったと思ったのに、返す刃で刺されるとは思わなかったわ」
「それは手厳しい...でも、決して舐めてた訳じゃないです」
「へいへい、次は見学に徹するから小南と模擬戦してくれよ」
迅の返事を聞かずに、ヒロに小南を呼んでくるように頼んだ。
迅は俺を見ながら考え込んでおり、返事をする前に小南がやってきたが少し違和感がする...
「減った?何か薄い?(髪)」
「減った?薄い!?誰の何処を見ていってんだぁぁぁああああ!!」
「髪だよ、胸は元から無いだろ」
「お前を殺すっ!!」
小南が怒りに任せて両手に構えた孤月を振ってくるが、それを全て紙一重に避けていく。
横薙ぎ、袈裟斬り、振り上げ、振り下ろし。振り下ろしたタイミングで、前に出て両腕を斬り落としてヘッドバットを喰らわせる。
「いったぁ...中身が少ないと威力が上がるな」
「そんなことより、さっきのラッシュに対する避け方...もしかしてだけど俺の動きだった...?」
「おっよくわかったな。俺より迅の方が戦い慣れてる気がしたんだ、対人戦にな。んで、せっかく自分より優れた使い手がいるなら見て覚えた方が俺の為になる。
それで頼みがあるんだ。小南も何時迄も遊んで無いで聞いて欲しいんだが、迅と小南で模擬戦10本やってくれないか?」
これに対し、迅は少し怪訝そうな表情をしていたが彼ならやってくれる筈だ。
「それが、瀬賀さんの役に立つと?」
「あぁ、詳しい話や説明は他の人の前でしよう」
迅との話の最中に、頭を押さえていた小南が復活し詰め寄って来る...に対しヘッドバットで迎え撃つ。
「「痛った」」
トリオン体で痛みなんて無い筈なのに、2人して仰反ってしまう。小南が逸早く立て直し再び詰め寄って来る。
「はぁ!?なに!何なの?!どうしてまた頭突きされたの!?」
「頭突きじゃない、ヘッドバットだ」
「知らないわよ!それにこんな仕打ちされてるのに、どうして私がしなきゃいけないのよ!」
「怖いの?新人の前で、無様に、ボロボロに、なりながら負けるのが!怖いんですかぁ?」
「上等!迅の次はあんたよ!首洗って待ってなさい!!」
煽れば煽る程に扱い易い、コイツは本当に大丈夫なのか...?
「首洗う暇があったらシャワーでも浴びてゆっくりしてるよ」
「みこっちゃん真面目にやってね...?」
「わかってるよ」
ヒロの冷たい声を聞き冷静を取り戻す、ヒロの方を見ない様にして観戦できる場所へと戻ることにした。