最悪を想像し震える三人の視線の先、土煙の薄れていくそこには……。
狂った魚のように、びちびちと黒くて蛇のような体をくねらせつつ地面を齧る魔女と。その脇でマミを押し倒している横島の姿だった!
「横島さんっ!」
横島のファインプレーに、おキヌ達は歓声を上げる!
「う、ううん……。あいたた、ええと……」
強い衝撃に一瞬気を失ったマミは、小さく首を振りながら状況確認のため視線を走らせる。
その目の前には、巨大な蛇のような黒い魔女。これが本当の姿だったのだろう。そして、横島が突き飛ばしてくれなければやられていた……!
「あ、あのっ!横島さん、ありがとうございます……」
「はーん。こらもう極上やでー」
「って、なんかやられてる?!」
横島は押し倒したマミに思い切りセクハラ中だった!
「だぁぁっ!」
おキヌが思わず、ずっこける!
「もう!どいてください!」
「アウチッ!」
マミに突き飛ばされて横島は正気に戻る。
「俺としたことが思わずやりすぎてしまった……。って、いつの間にやらそそり立つ、黒くて逞しいアレはナニ?」
横島は茫然としていた……。
*****
暫し前。お菓子の魔女最深部。
華麗に使い魔を撃退するマミに三人の娘が目を輝かせる後ろで、全集中の激しい呼吸でマミをガン見する不審者がいた!
「ちち……しり……ふともも……。けしからん!まったくもってけしからん!」
激しく動いているため、豊かな胸がたゆたゆと跳ね、ひらひらとスカートは翻り、むっちりと白い太腿が露わとなる!
「こんなん見させられて、理性を保てる男がいるものかっ!」
凄まじい表情で横島が凝視する先で、マミは使い魔を殲滅し、魔女へと対峙する。
*****
ギャー!
マミの放った弾丸が魔女を見事に倒した!
「ふう。ちょっと苦戦したわね。みんな、大丈夫?」
魔女を退治したマミが、にっこりと振り返る。
「流石だね、マミちゃん!」
そんなマミに爽やかな笑顔の横島が近づく。
「あっ!」
その時。横島はなにかに躓き、不幸にもマミに倒れ掛かる!
ドスン!
「あいたたた……。ん?この柔らかいものは、なんだろうー?」
なんと!横島はマミを押し倒した格好となり、その豊かな胸をわしづかんでいたのだ!
「きゃっ!ちょっと!横島さん!」
「あっ!ごめん!全然悪気はなくて、不幸な事故なんだっ!」
「わかったから、どいてください!」
マミは顔を真っ赤に染め、両腕で胸を隠す。
もう!横島さんのエッチ!
トゥンクン!マミは胸の鼓動の高鳴りに、思わず俯いてしまう。
「横島さん!事故だからしょうがないけどマミちゃんに謝ってくださいね!」
「うーん。まぁ事故だからしょうがないよ」
「うん。事故だもんね。仕方ないかなって」
これにはおキヌ、さやか、まどかも苦笑い。
「ははっまいったなっ!マミちゃん。ごめんね?事故で仕方なかったとはいえっ!」
横島は爽やかに、倒れているマミに手を差し伸べるのだった。
*****
「これだっ!完璧な計画だ!これを『ラッキースケベ極楽大作戦!!』と名付けよう!ふはは!俺、超天才かも!今日から横島モリアーティ忠夫と名乗るしかあるまい!」
妄想から正気に戻り下種な心情をダダ漏らす横島だったが、前の三人はマミに注目していて気付かなかった。
「いかん。あの弱そうなやつ、やられてしまう!急がねば!」
「ティロ・フィナーレ!」
黒い蛇のような魔女がマミに伸びる横で、横島は残像を残しつつ高速移動し、ジャンプ!
「流石だね!おっとおー!」
横島はルパンダイヴの勢いのまま飛び込んで、魔女の前からマミをかっさらう結果となるのであった!
*****
「レガーレ・ヴァスタアリア!」
無数の黄色いリボンが黒い魔女に巻き付き、ぐるぐる巻きにする。黄色い芋虫のような姿となり激しく暴れてはいるものの、しばらくは動きは封じることができそうだ。
そのマミの足元には、同じように首から下をリボンでグルグル巻きにされた横島が転がっていた。
「堪忍やー!仕方なかったんやー!」
「さてと」
「巴マミ!」
どうしたものかと魔女を見やるマミに、到着したほむらが声を掛けた。
「あっ」
「あなたとは相性が悪いから手を出すなといったはずよ」
「え、ええ。そうなんだけど……」
マミは気まずそうに視線を下げる。
「どいてちょうだい。私がやるわ」
「ちょっ……。私も悪かったけど、そういう言い方もないでしょう?」
「なんでもいいから早くどいて」
ほむらの態度にマミの眉が上がる。
「悪いけど後輩に守られるのは性に合わないの!私の落ち度だもの。私がやるわ!」
「ちょっと!」
マミは無数のマスケット銃を出現させて、一斉射撃を行う!
「全身くまなく削り撃つ!パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!」
「ちょっ!まってよ!」
射撃での攻撃でダメージを受けるのは魔女だけではない。魔女を拘束しているリボンが先に破壊されることになるのだ。再生能力の高いこの魔女は、拘束が解かれれば多少の攻撃などものともせず暴れまわるだろう。悠長に削ることなどできやしない。
ほむらは盾を発動させようと身構えるが、怪訝に眉をよせた。魔女が固まっている?
魔力波動を探ると、魔女の下に小さな珠が輝いていた。
(止)キイィィィィン!
横島が霊波刀でリボンを斬り裂き、手の自由を確保。文珠を放り、発動させていたのだ。してやったりと、横島がにやりと笑う。
「とどめよ!ティロ・フィナーレ!」
マミは再び砲台を出現させ、魔女を砲撃!
キン!
魔女の落としたグリーフシードが地面に刺さり、魔女結界は崩壊したのだった。
*****
「今度こそ!やったー!」
さやかとまどかがハイタッチを交わす。
「マミちゃん、おつかれさま!」
「……」
「ごめんなさい。ちょっとあぶなかったです」
労うおキヌと物言いたそげなほむらに、マミは眉を下げて謝罪した。
「まあまあ!とりあえずゆっくりしよ?」
「あの……」
「美神さんが待ってるわ!事務所でお茶にしましょ?まどかちゃんとさやかちゃんも一緒にどう?マミちゃんのケーキ、とっても美味しいのよ?」
「わーい!」
おキヌの提案に、さやかとまどかが歓声を上げる。
「あのーここに居ますよ?横島が居ますよ?」
首から下をリボンでぐるぐる巻きにされた横島が、街路樹の枝に吊るされ蓑虫のようにぶらぶら揺れていた。
「あのー。おーい」
「………」
少女達はそれこそ蓑虫を見る目ような目でソレをちらりと一瞥し、スタスタと去っていく。
「ままー!あのひと、へんだよー!」
「しっ!見ちゃいけません!」
そんな横島を取り巻くように野次馬が集まってきていた。
「木にぶら下がる不審者はどこですか?!」
そうした人々の誰かが通報したのであろう。少女達と入れ替わりに現れた警官らに、横島は顔を歪ませた。
「くっ。連日連行されるわけにはいかん!」
霊波刀でリボンを斬り裂き、自由の身となる。
「おい!君っ!」
「サイキック猫だまし!」
「うおっ!」
「行く先も解らないないまま、自由になれた気がしたーっ!」
逃亡者は警官らに目くらましを食らわせ、吠えながらターボエンジン全開に大きく逃げ去った!暗い夜の帳の中へと……。
*****
美神令子除霊事務所、応接室。
「あ。おキヌちゃん、おかえり!大丈夫だった?」
「ええ。強かったけど魔女はやっつけましたよ」
「うん。それもなんだけど……」
美神の視線の先、テレビではニュースの現場中継が流れていた。
『――先程、突如出没した不審な霊能力者によって、街は不穏な空気に包まれており……』
「うわぁ。最近物騒ですね」
「そうなのよ。だから気を付けてよね」
眉をよせる二人は、その不審者の正体に気づかなかった。
おまけ☆コーナー!
「よう!俺、メカ千空!今回は美神の武装がまど☆マギで……」
良いこのみんなに解説番組なそのとき。
「ちょっと~~!そんな解説、私がやるわよ~~!」
不審な人物が乱入した!
「あうあう!よう~~!私、メカ冥……」
そして!さらなる人物達!
「馬鹿かっ!科学といえば儂、儂といえば科学じゃろうが!ゴホン!儂ことメカカオ……」
「おたくらフライングかましてバカなワケ?!だいたい序列的に私に決まってるでしょ?!あら!私がメカエ……」
「君達!醜い争いはやめたまえ!ただでさえ大変な世の中なんだぞ?仕方ない。ここは平和の象徴のような私が勤めよう。あー私がメカ唐……」
そうして乱入した人々の引き起こしたあまりの騒動に、スタジオが騒然となる!
――しばらくおまちください――
すかさず画面は、豊かな森林に流れる広大な河。そこを航行する大きな船という景観に切り替わるのだった……。
****
「あいつら、なにやってんのよ……」
眉をよせた美神は、額を押さえた。