暁美ほむらと鹿目まどかの出会い。
魔女に襲われたほむらをまどかが救ったのだ。それが物語のはじまり。
病弱な転校生で沈みがちなほむらに、魔法少女だったまどかは明るく接し、二人は親友となる。
だがその交流は長くは続かなかった。
最強最悪の魔女ワルプルギスの夜が見滝原を襲来。まどかは街を、人を守るため立ち向かい命を散らす。
「私は鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい!」
親友の亡骸を前にほむらは祈り、魔法少女になった。
まどかの運命を変えるため、ほむらは何度も同じ時間を繰り返すことになる。
そうして繰り返されるループの中で、ほむらは魔法少女の秘密を知ることになるのだった。
――魔法少女は魔女になる。
「みんな、キュゥべえにだまされてる!」
この重大な事実をほむらは疾く魔法少女達に知らせるものの。打ち明けられるその秘密を誰も信じなかった。信じることができなかった。信じたら正気を失うくらいのことだった。正気を失い仲間と殺しあう事態に発展することだったのだ。
ほむらは真実を打ち明ける事を諦め、ワルプルギスの夜打倒を模索する。
そして幾度目か?ついにほむら、まどかの二人は力を合わせワルプルギスの夜打倒を果たす!
だが限界まで力を使い満身創痍な二人の手にするソウルジェムはどろどろと濁りきっていた。このままでは二人は魔女になる。ほむらは、それはそれでいいと思っていた。その時。
かちり。
まどかがほむらのソウルジェムに、グリーフシードを当てたのだった。
濁ったほむらのソウルジェムは、綺麗な輝きを取り戻してゆく……。
「!」
驚くほむらの視線を受け、まどかは微笑んだ。
「ふふっ。グリーフシードがないのはうそ。一個だけとっておいたんだ」
「そんなっ!なんで私にっ!」
「ほむらちゃん。過去に戻れるんだよね?こんな終わり方にならないように、歴史を変えられるっていってたよね?キュゥべえに騙される前の馬鹿な私を、助けてあげてくれないかな……」
「……!」
「それと。私、魔女にはなりたくない……。だから……。おねがい……」
「!!」
震える指を黒い自動拳銃の引き金にそえ。ゆっくりと力をこめ……。
目を焼くマズルフラッシュ。銃声の記憶はなく。
「う……!ううう!ううううー!」
慟哭。
自分が漏らす、その魂の悲鳴が消えなくて。いつまでもこびりついて……。
*****
幾度も自分を救ってくれた親友との、死の間際での約束を果たすため。
――繰り返す。私は何度でも繰り返す。同じ時間を何度も巡りたった一つの出口を捜す。あなたを絶望の運命から救い出す道を。
――まどか。たったひとりの私の友達。あなたのためなら私は……。永遠の迷路に閉じ込められてもかまわない!
そうして。数えきれないほどの繰り返しを行っていたのだという。
*****
「ほむら……。いや、ホムラッチ!おまえずっと一人で腐りきったバッドエンドに抗うリベンジャーズだったんやな!わが胸で慰めてやるぞ!カムヒヤー!」
感極まった横島が涙ながらに両手を広げ泣き叫んだ!
「ほむらちゃん!」
「わ、わたしっ!迷惑かけてごめんね?ごめんねっ?」
おキヌとマミも涙を流しつつほむらに抱き着き、おいおいと泣き始める!
「……」
あまりに周りの感情が激しいと置いて行かれてしまうものだ。ほむらと美神は眉をよせた視線を合わせ、肩を竦めた。
「ほむらちゃん。ひとつ聞きたいのだけど」
「はい?」
美神の問いに、ほむらは目を瞬かせる。
「幾度も繰り返しているといったわね?まどかちゃんが魔女になるのを何回か見た?どんどん大きくなっていったりしない?」
「言われてみれば、そうかも……」
「そう。じゃあ話は終わり。気にしないで」
「はぁ……」
美神は腑に落ちない顔のほむらとの話を打ち切る。
険しい表情を見られないようにと、美神は窓に顔を向け皆へ背を向けた。
*****
「あら、珍しいお客さんなワケ」
小笠原ゴーストスイーパーオフィス、所長室。小笠原エミは来客者と向かい合っていた。
「お久しぶりです。小笠原さん」
「あんたは、えーっと」
「美国織莉子です」
波立つ黒い長髪。褐色の肌に日本人離れした美女である小笠原エミは、色素の薄い長髪を左横に纏めた長身の美少女、美国織莉子へ探るような視線を向ける。
「美国議員。あんたのお父さんは残念だったわね」
「……」
織莉子の父である美国久臣は政治家であった。不正疑惑の末、自殺したのだ。それを非難するいやがらせが遺族である織莉子に向けられているという。
「嫌がらせの事なら警察を頼りなさい。私じゃ力になれないわ」
「!!」
織莉子の後にいた少女がもの言いたげに前に出ようとするのを、織莉子は黙って制した。
「……お仕事の依頼です。あなたの同業者、美神令子さんに関係があります」
「ふうん?令子絡みなの?話をきいてあげてもいいワケ」
エミは目を細めた。
*****
「なあなあ!あんなやつを頼らなくったって、私ときみならうまくやれるだろう?」
長い話の後。
小笠原ゴーストスイーパーオフィスを後にする織莉子に声が掛かった。
声の主は黒のショートカット、制服にハイソックスの少女。呉キリカだ。
「美神令子さんはGSトッププロよ。そして実力のある魔法少女もいるわ。目的を果たすためには、あのひとの助力は絶対必要なの。わかって、キリカ」
小笠原エミはあらゆる黒魔術を使いこなす呪術師。その腕前は日本、いや世界最高のものとなる。美神に対峙できる数少ない凄腕のGSの一人なのだ。
日本最高峰GS美神令子。そして実力ある魔法少女。だが、相手にするのはそれだけではない。不吉な闇を纏ったアレ……。そのあまりの禍々しさに織莉子は身を震わせた。
「!」
織莉子のすまなそうな声に、キリカは慌てる。
「きみがそういうのなら私に異論はないさ!私はきみを全面的に信じているのだからね!」
キリカは織莉子の両手を握り、芝居がかった口調で力説した。
「ふふっ!しっているわ。そして貴女が思っている以上に、私は貴女を信頼しているのよ?」
「!!!」
織莉子の言葉にキリカは目を見開く。
「頼りにしてるわよ?キリカ」
固まるキリカに、織莉子は微笑みかけた。
「……またきみは、そうやって私をからかって楽しんでいるのだろう!まったく人が悪いよ!」
ぎゃあぎゃあとキリカが騒ぐその横で、織莉子は視線を下げる。
――その胸に問え。今の、お前の本当の願いを。
その問いかけを思いだし唇を噛む。
……私の、ほんとうのねがい。
そうだ。私はその願いを叶えたい。どんなことをしても叶えたい!そう、どんなことをしても……!
織莉子の長い睫毛に伏せられた瞳は決意に輝くのだった。
*おまけコーナー*
エミ「冗談じゃないわ!うちは『小笠原エミ除霊事務所』とかダッサい名前じゃなく、『小笠原ゴーストスイーパーオフィス』なワケ!」
タイガー「まったく!急いで直させましたケン」
エミ「折角満を持しての登場なのに、ケチがついたじゃない!」
タイガー「そうですなー。それはそうと、わっしの出番は……」
エミ「あんたを女子中学生と会わせるわけないでしょ?」
タイガー「えっ!」
エミ「こんなご時世だしね。あんた、出禁かもなワケ」
タイガー「ええっ!」
エミ「かわりにピートを呼んでおこうかしら?どうせあんたのこと憶えてる人なんていないわよ」
タイガー「…………」