「流石にちょっとヤバイわね。西条さん?精霊石弾道ミサイルおかわり大至急よ!?」
活動を始めるワルプルギスの夜を見つつ、美神はトランシーバーに叫んだ!
『令子ちゃん!準備していたものは全て発射した!これ以上は……』
「そうよねー……」
西条の返答に美神は溜息をつく。
「じゃあどうするの?」
『う、うむ……』
西条の苦々しい返答に、美神は目を細めた。
……これは全員揃っても撃破は無理だったかもねー。
アシュタロス戦での切り札、『同』+『期』。あれならばまだ対抗できそうなものであったが、神魔族から借り受けた宝具なしでは厳しい。今回は使えない。
日本に常駐する戦神小竜姫なら、対抗できたかもしれない。
だが。なぜか神族はインキュベーター絡みの案件には手を出さない。現に見滝原市大破壊阻止を理由に助力を願ったが、動いてはくれなかったようだ。
……んーまあ、責任はアッチだし?どうでもいいか。
今回美神は協力者という立場。頂く物はすでに頂いていて結果に対する責任はないため、かなりお気楽ではあった。
「西条さん。プラン2よ」
『令子ちゃん?!』
「こっちの初手があれじゃあもう、討伐は不可能よ」
美神の想定パターンは数十にも及ぶ。当然この現状も想定内。
開幕精霊石弾道ミサイルでの全弾攻撃。これで墜とせればよし。打撃を与えたところを撃破というのが当初のシナリオ。
必殺の初手である精霊石弾道ミサイルを防がれた現状は、下の中といったところか。
美神の判断は早い。
こうなれば討伐ではなく、ワルプルギスの夜が去るまでいかに被害を抑えるかに目標はシフトする。
見滝原市民は有事の際、市内の学校等への避難するところ、すでに強権を発動し市街への退去済み。人的被害の心配はない。まどかとさやかは風見野の避難場所に家族と共に避難していた。万が一への備えとしてシロとタマモが同行している。
ワルプルギスの夜襲来での鹿目まどか生存というほむらの最低条件は、この一手によりすでにクリア済みなのだった。
そう、なにより。あの娘をこれ以上、遡及させるわけにはいかない。この騒動のはじまりは、あの娘の願いが一端なのだから。
望む未来を求め幾度も繰り返すことにより特殊な因果を積み重ね、鹿目まどかは規格外の因果を背負うことになったのだ。
まどかを魔法少女にさせまいとしたほむらの繰り返しによって、よりインキュベーターからマークされる逆効果になってしまったという皮肉な結果……。
だとしても。
……そんなつまらないことは、しらなくていいことよ。
あの娘に罪はない。全てはあいつのせいなのだから!
美神は唇を噛んだ。
「おキヌちゃん、横島クン」
「はい!」
ピュリリリー!
おキヌはネクロマンサーの笛に唇をつけ、演奏を開始する。
「いくよ?おキヌちゃん」
隣に立つ横島の声に、おキヌは小さく頷く。
横島はそんなおキヌの右肩に手をやり、もう片方の手に文珠を構えた。
(響)キィィン!
――お願い、落ち着いて?ね?
珠に字が浮かびあがり文珠が発動。おキヌの想いの込められた笛の音がワルプルギスの夜を中心に、その周囲の使い魔へと響き渡る。
「…………」
ワルプルギスの夜の哄笑が止まり、自由に飛び回っていた影魔法少女もその動きを止めた。
「うし!」
美神はこぶしを握る!
ネクロマンサーの笛が魔女に効果を与えることは、養殖している魔女で実験済み。支配は無理としても精神に影響を与え、誘導することは可能なようだった。
問題はワルプルギスの夜にも通用するか、なのだったのだが。
皮肉にもミサイル群でのダメージがほぼなかったのも幸いだった。痛手を負っていれば精神攻撃の影響は低いものになっていただろう。
前もって設置された数々の巨大な結界板。あとはその並びに沿ってそのまま海上に誘導、退場してもらう。これが次善の策であった。
……おキヌちゃん。
おキヌにはかなりの負担になるだろうが、このまま維持ができれば奇跡的最小限の被害でやり過ごすことができるはずだ。
懸命に笛を吹くおキヌを、美神は心配そうに見つめた。その時。
バシュン!
どこからか射出された白く輝く霊波攻撃がワルプルギスの夜を直撃したのだ!
ワルプルギスの夜に対して、それは本当に小さく全く無力なもの。
それでも。
アハ!アハハッ!
ワルプルギスの夜を覚醒させるには十分だった!
「いいいっ!なにやらかしてくれるのよ!くっそ!誰だか知らないけど、殺す!世界の果てまで追ってでも殺してやる!」
憎しみに顔を歪める美神の絶叫をかき消すように、ワルプルギスの夜は高らかに哄笑をあげ、使い魔の影少女達と共に、その動きを再開させる……。
世界の果てまで追ってでも殺す!
っていわれたこと、あります?(苦笑
→kuo様の意見で小竜姫のとこ修正しました