「もう!横島さんはどいてください!」
そんな横島を突き飛ばし、おキヌはマミの正面に立った。
「マミちゃん、落ち着いて。ね?そんなことしちゃ駄目だよ」
「……」
ゆっくりと近寄るおキヌに、マミは動かない。
「マミちゃん。隣座るね」
刺激しないようにと、おキヌはゆっくりと隣に座り、手をまわしマミを横に抱きしめた。
おキヌは静かにマミの銃を確保する。
「ね。大丈夫だから。落ち着いて。ね?」
「…………」
おキヌはマミの事情は知らされていない。ただ、それでも、凄まじいまでの思いに押しつぶされそうなのは理解できた。
だからこそ、抱きしめる腕にぎゅっと力を込める。
「私……」
俯いたマミがぽつりと、口を開いた。
「私、両親とドライブしていた時、事故にあったんです……。車はぐしゃぐしゃで、私は大怪我をしてて……。そこにキュウべぇが現れたんです」
赤い目を瞬かせ、静かに問いかける影……。
「どうしたいのかっていわれて私、生きたいって願ったんです。……生きたいって、願ってしまったんです!お父さんもお母さんも近くに居たのに……。まだ生きていたかもしれないのに!私、自分のことしか考えられない駄目な子なんです!」
慟哭するマミをおキヌはさらにぎゅうと抱きしめる。
「意識が朦朧としてたのでしょう?そんなときに冷静な事は考えられないよ。マミちゃん……自分を責めちゃ駄目」
「……せめて魔法少女として、人の役に立てればって頑張ってきたけれど、どうせ魔女になって迷惑かけるなら、いっそのことここで……」
「ねえ、マミちゃん。見せたいものがあるのだけれどちょっといい?」
泣き崩れるマミを抱き留め、おキヌは静かに囁いた。
*****
マミの自宅。
応接室の独特なテーブルを前におキヌは準備する。
「それはキャンドル?」
「ええ。じゃあ、点けるね」
薄暗い中、火をともされたキャンドルから光が渦巻き溢れた!
びょうううと、灯ったキャンドルから二人の人影が浮かび上がる。
「マミ!」
「なっ!うそ……。お父さん、お母さん?」
それは交通事故で死んだマミの両親だった!
「マミ。私の不注意で事故を起こしたばかりに、済まなかった」
「理由はどうあれ、あなただけでも助かってくれて、本当に嬉しいのよ」
白装束の二人は優しくマミを抱きしめる。
「1人で寂しいのに、よく頑張ったな。お前は自慢の娘だ」
「う、うわぁーん!」
堰き止めていた感情の全てを、マミは泣き叫び解き放ったのだった!
*****
「辛いのはわかるけれど、こっちにこようなんて思わないでおくれ」
「ずっと見守っていますからね」
「お父さん、お母さん!私、頑張ります!」
キャンドルは燃え尽き、煙を揺らす。
そして微笑みながら二人の姿は薄れゆき、姿を消した。
「今のは……」
「幽霊を呼ぶキャンドルなの」
マミの視線におキヌは小さく微笑む。
「持っていってあげなさいって、美神さんが」
「えっ……」
「あんなに険悪だったのに、信じられないよね」
おキヌは思い出しつつ、クスクスと微笑む。
*****
その日の朝。美神除霊事務所、応接室。
「おはようございます」
「お、おはよう」
珍しく起きている美神に、おキヌは首を傾げる。
美神は雑多な物の山積みなテーブルの前で、落ち着かなそげにソワソワしていた。
「このコマみたいなのはなんですか?飾り?」
「それはグリーフシードっていって魔女の卵の様なものなの」
「!」
びくりと手を引っ込めるおキヌに美神は笑いかける。
「その状態なら危険はないわ。むしろ魔法少女には必要なものなのだけどね。ここにあってもしょうがないから、処分しようと思って」
視線を泳がせる美神を、おキヌは怪訝な顔で見つめた。
「これ、どうしたんですか?一等茶葉?ダージリン?」
「わ、私と横島クンは珈琲党だし。おキヌちゃんはお茶じゃない?紅茶はいらないかなって」
「?」
「お歳暮でもらったものだけれど、いらないものでしょ?だから処分しようかなって」
「…………」
「ほ、ほらっ、あの娘!巴マミ?紅茶好きっていってたし?」
わたわたと言い訳を続ける美神に、おキヌは目を細める。
「み、か、み、さーん?」
「!」
にんまりと見つめてくるおキヌに、美神は苦虫を潰す。
「もう!そんなんじゃないの!廃品処分なだけなの!」
顔を真っ赤に染めながら、美神はがなり立てた。
「今度会ったら、謝ってくださいね?大人なんだから」
「もう!おキヌちゃん、そーゆーんじゃないのよ……」
揺れる瞳を下げ、美神はぽつぽつと語りだす。
「私も中学生のときにママが居なくなって、一人ぼっちになって。寂しくって辛くって……そんな時にインキュベーターが現れて、ひどい目にあったのよ。他人事じゃないのよ……あのマミって娘」
当時を思い出すのだろう。美神の表情は暗い。
「私の場合、なんとかしてノーリスクで願いを叶えようと質問攻めにして秘密をしゃべらせて、契約はしなかったのだけれど」
「流石美神さん……」
「あの娘、契約の経緯が経緯だけにインキュベーターに依存しきっちゃってるから、魔法少女の秘密に耐えることができるのか心配だわ……」
美神は視線を下げ、唇を噛む。
「い、今のは内緒よ?あとこのキャンドルも、もってって!」
はっと顔を上げた美神は、テーブルの上の物をざらざらとおキヌに押し付たのだった。
*****
「美神さんは口ではいろいろいうけれど、困ってる人をほっておいたりはしないわ。厳しいことをいうのは、GSのトッププロとして責任感が強いからなの。マミちゃんも、魔法少女として戦いを続けているから分かるでしょ?」
「はい。私、すっかり誤解してしまって……謝らなくっちゃ」
「ふふっ」
しゅんと縮こまるマミを、おキヌはしっかりと抱きしめた。
*****
夜。美神令子除霊事務所。
「ただいまー!」
「おかえり!おキヌちゃん、マミちゃんどうだっ……」
おキヌの声にバタバタと走ってきた美神は、マミを見つけて固まった。
「……こんばんは。お邪魔します」
おキヌの後ろでおどおどとしていたマミは、小さく挨拶をする。
「……なにも知らないのに、生意気いってすみませんでした」
マミは美神に大きく頭を下げた。
「…………」
あまりのことに固まる美神だったが、痛いくらいのおキヌからの視線は気づいていた。
「わ、私も言い過ぎたわ!もう、水に流しましょ!おキヌちゃん、ご飯にしてよ!マミちゃんも食べていきなさいよね!」
「今準備しますね」
「私、手伝います!」
うーむ。おキヌちゃん、恐るべし……。和やかに解決したその場をコソコソと見ていた横島は唸っていた。
「横島さんは、今晩ご飯抜きですね」
そんな横島におキヌからさらりと死刑宣告が告げられる。
「サーセン!マジ、サーセンシタッ!」
慌てた横島はスライディング土下座を決めるのだった。
あ、ご都合主義っぽいんですけど、このキャンドルがGS36巻、リポート3「賢者の贈り物!!」からになります!
ご都合で引っ張て来たんで、ご都合主義なんですけど!(テヘペロ!
おキヌちゃんの美神美化フィルター!