数日後。美神、マミ、おキヌはとあるオフィスビルの一室にいた。
その視線の先には。
「おおおおおおおっっ……」
不気味な圧をまき散らし、不吉に唸る光る人影が漂っていた。
「あれが悪霊……」
目を見開いたマミは息を呑む。
そんなマミの横顔をおキヌは心配そうに見る。
美神さんはマミちゃんの気分転換になるっていってたけれど、悪霊退治が気分転換になんかなるのかな……。おキヌは首を傾げた。
「人は強い負の感情を抱えたまま死ぬと、その魂は闇に捕らわれて悪霊となるの。ああなったらもう、生前の記憶も人格も関係無く、ただただ暴れるだけの存在よ。成仏させるにはもう、力づくしかないわ」
「……」
とあるブラック企業の自殺した社員の魂は場に溢れていた瘴気を吸収し、一般GSでは手に負えないものとなっていた。
「ぎゃあああああぁぁぁっ!」
悪霊はゆらゆらと漂っては、奇声を発し気まぐれに暴れまわる。
そんな悪霊を見つつ、美神は眼を細めた。
「でももし。もし……自分がああなってしまったとしたら、力づくでも止めてもらいたいって思わない?」
「!」
静かに語る美神の言葉に、マミはハッとする。
かつて人だった悪霊の退治をお仕事とするGSと、魔法少女だった魔女を生きるために倒す魔法少女を重ねることで、私の罪悪感を無くそうとしてくれているんだ……。
マミは俯き、ぎゅっと目をつぶる。
美神さんには助けてもらってばっかりだ。ここまでしてもらって、クヨクヨしていられないわ!
「私が退治してみます!」
マミの開いた目の瞳は、決意に輝く!
「え?ん?なに?この音楽……」
マミの反応に驚いた美神とおキヌは、どこからか流れてくる軽快な音楽に目を瞬かせる。
そんな二人をよそにマミは音楽に合わせてステップを踏み、可愛くジャンプ!
マミの足に、腰に、手にと次々と光るリボンが巻き付き、衣装が変わっていく。くるりと着地したマミは茶色いベレー帽、白いシャツ、コルセットに黄色いスカートという魔法少女への変身を完了していた。
「……?!」
あまりのことに驚き固まる美神とおキヌを前に、マミはスカートを翻しさらにくるりとステップ。いつの間にかその手に持った銀色の長いマスケット銃をバトンのようにくるくると回転させつつ振り回し、その銃口を無造作に悪霊に向けた。
カチャ、ターン!
「おおおおおおおおっ…………」
銃声とともに悪霊の額に風穴が空く!悪霊は呻きつつ消え崩れる……。
「なっ、あのレベルの悪霊を一発で?」
「あ、はい。私の作る銃はマスケット銃なので、一発しか撃てないんです」
驚愕に固まるおキヌにマミは、はにかみながら答えた。ぽいと捨てられたマスケット銃はリボンに戻り宙に消える。
「え、いやそうでなく……」
「あのレベルの悪霊を一撃?鼻歌まじりに、小踊りしながら一撃……」
「……」
凄まじい表情でブツブツ呟く美神を、マミは首を傾げ不思議そうに見やった。
「ちょっと張り切りすぎちゃったわね。お茶をどうぞ!」
かちゃり。
魔法の残滓で創り出したティーカップに湯気立つ紅茶を差し出されて、二人はますます動転した!
「え?紅茶?なんで?わけわかんない……」
それでも。これだけの強さのくせに触媒不要……?経費0円っ!つ、使えるっ!!
美神から沸き起こる不穏な気配におキヌは眉をよせ、震えていた……。