その日、グレイはとあるイベントの予行演習として水中用装備を新調し、そのテスト為にとあるディメンションの沿岸部エリアにやってきていた。
「こいつを使うのは久しぶりだな」
そう、この日グレイが使っているガンプラはファインダーアストレイではなく、ザクウォーリアベースの改造機であるザクスナッパー。そのザクスナッパーに水中用装備ダイバージャケットを取り付けたダイバーザクスナッパーなのだ。
何故今回はこのガンプラなのかというと、ファインダーアストレイにスケイルシステムを搭載したスケイルジャケットというのもあるのだが、スケイルシステムは元々浅い海域で使用するのが前提の装備であり、アストレイ系の機体は高水圧に耐えられる構造をしていない為、今回は別の機体としてこのザクスナッパーが選出されたのだ。
そして、このザクスナッパーだが、元々はグレイが一番始めにGBNへのログインに使用していたザクウォーリアの改修機で、装甲強度や耐圧性能等を強化した酷環境取材用のガンプラであり、今回のような水中用装備を取り付ければ水中撮影も難なくこなせるであろうというガンプラだ。
「さて、ならダイバージャケットのテストといきますか」
まずは脚部のホバーシステムで沖まで出るとある程度の深度があるのを確認してホバーシステムを切る。
すると、ダイバーザクスナッパーはホバーでの支えを失い水中へとダイブする。
「水深50………これぐらいなら余裕か」
まずはスケイルシステムでも問題無く潜航出来る水深で慣らし運転をするグレイ。
補助推進装備として持ち込んだシャチ型の改良したスケイルシステムを搭載した手持ちタイプのブースター・ダイバーオルカ。その左右の鰭にあたる部分に取っ手が付けられており、それを握る事で移動するのだ。これは他のガンプラにも貸し出す事が可能で、水中で推進装置をやられたガンプラ等を救助する等の使い方もできる。
「オルカも問題無し………ならもう少し深く潜ってみるか」
そのまま水深を100まで下げ、各ギミックを操作して異常が無いかを確かめる。
「うん、問題無し………サブアームも関節軸に金属棒を使ったから強度も動きも異常無し。オルカのスケイルシステムも大丈夫だな」
そして、水深150………もう少しで深海というところでバックパックに装備していた二枚盾を展開し、その盾に仕込んだシステムを起動させる。
「ゲシュマイディッヒ・パンツァー起動」
そう、それはフォビドゥンガンダム系列の機体が有するミラージュコロイドの発展技術の一つでミラージュコロイド粒子の磁場を形成し、それによってビームを曲げる偏向装甲。それの応用で自機の周囲に水圧を緩和させるフィールドを展開する事からフォビドゥンブルー、ディープフォビドゥン、フォビドゥンヴォーテクスと連合の水中用モビルスーツの基礎となったというシステムだ。
このダイバージャケットにはそのゲシュマイディッヒ・パンツァー(以後G・パンツァーと記載)が搭載されており、ジャケットの耐圧追加装甲やザクスナッパー自体の強化装甲によってフォビドゥン系列以上の耐圧性能を有しているのだ。
このガンプラ、連合のG・パンツァー、ZAFTのザク、民間のスケイルシステムと地味にC.E.世界の三種の技術系を統合したという面白い状態だったりする。
「動作問題無し………けど、やっぱエネルギー食うな、これ」
フォビドゥンブルーはこのシステムのみで潜航を行おうとしてエネルギー切れでペシャンコになったというのは有名な話だ。
「帰ったらエネルギーパック増設した方が良さそうだな」
そんなことを考えつつG・パンツァーを切り、浮上しようと上を見上げると奇妙なガンプラがそこにいた。
「あれは………ペンギン?」
そのガンプラはペンギンを思わせる黒と白にカラーリングされたガンプラで、ガンダムタイプと思われるヘッドパーツにペンギンの頭部を連想する嘴のついたフェイスガードを装着しており、腕の部分には胴体から伸びるペンギンの翼のようなフィン。膝の少し上の辺りまでを覆うずんぐりとした胴体外装。唯一脚のみが足鰭ではなく脚そのものがGNソード改のような刃の部分がクリアパーツの剣のようになっている事を除けばペンギンにしか見えない造形をしていた。
そんなガンプラに思わず水中カメラを参考に作った耐水圧用水中ガンカメラを向けると、そのガンプラもザクスナッパーに気付いたようで静かに音も立てず近付いてきた。水中故に見え難いが緑の粒子が出ているところから察するにこのガンプラはGNドライヴ搭載機のようだ。
『あら、こんなところに観客だなんて珍しいわね』
そのガンプラのダイバーであろう少女のような声に少し驚きつつもグレイは少女の問いに答える。
「こんにちは、ちょっとこの装備のテストがしたくて人気の少ないここを選んだんだけど、先客がいたみたいだね」
『ええ、ここは静かだから偶に泳ぎにくるの。でも、別に私のプライベートビーチという訳でも無いから自由にしていて構わないわ』
「それはどうも………俺はグレイ。見ての通りカメラマンだ」
そう言ってグレイは水中ガンカメラ向ける。
『私はクーリエ。グレイ、カメラマンと言ったわよね?』
「ああ」
『なら私の舞を撮ってくださる?』
そう言ってクーリエはグレイから離れるとガンプラを水中で踊らせる。
その舞はまるでフィギュアスケートを思わせるようで、水中という三次元のフィールドを自由に舞う姿はモチーフとなっているペンギンならではとも言えた。
そんな舞をグレイはしっかりとガンカメラに納め、後日編集して送ると言えばクーリエはグレイにフレンド申請をして去っていった。
「クーリエか、面白い娘だったな」
クーリエの舞は心から自由に自分の見せたい自分を表現しているようで、グレイの心に強く印象に残ったのであった。
今回のはガンダムマスカレイドオフです。
通常のマスカレイドはまた後に登場します。