「いっつも悪いな、樹」
「気にすんなって、俺と俊の仲だろ?」
その日、俊也は足の定期検診の為に病院へ向かうべく、樹の車に乗っていた。
「それと帰りにガンダムベース寄るんだったな」
「ああ、夏フェスで手に入れたものを精製しておこうと思って」
「何だ、パーツでも当たったのか?」
「いや、ガンプラ一式分」
「お前もか」
「お前もって、樹もなんだ」
「俺のはエコプラのエクストリームだったが、お前は?」
「同じくエコプラのカテドラル」
「へぇ〜、カテドラルねぇ………えっ?カテドラル!?」
予想外の名称に驚いた樹は運転中なのに思わず俊也の方を向いてしまう。
「樹!前!」
「おわっと!?」
幸い直ぐに前を向いたので事故にはならなかったが*1、二人は冷や汗を流す。
「しっかりしてくれよ、樹」
「今の俺が悪いのか!?」
「いや、樹は運転手じゃん」
「でもよ、いきなりカテドラルなんて言われたら驚くわ!」
実は俊也も樹もカテドラルガンダムをちゃんと見た事は無い。
あくまで過去に存在したという話と、実際に見た事があるという人物が再現した作例を古い模型雑誌で見た程度である。
しかし、その派生機であるシュヴァルツリッターやディナイアルは大会映像に実際動いている姿を見せているのでちゃんと実在したようだ。というか、GBNでもシュヴァルツリッターを再現しているダイバーがいるらしい。
「にしてもカテドラルとはまたとんでもないもん混ぜてやがったな、運営………」
「ホントだよ………しかも未発見のお宝のランダム配布で手に入れたから余計に驚いたよ」
「運が良いな………そんなもん普通に見つけてたらビルドライジングのケイみたいに追っかけ回されたろうに」
「それな」
「そういや、ケイと言えばまたやらかしてやがったな」
「いきなりトライエイジ見つけるし、元ユーロチャンプをフォースに入れてるしな」
「いや、それも驚いたが、俺が言ってんのはお前がガンスタにあげて話題になってたやつの方」
「ぶほっ!?」
カテドラルの件の仕返しのつもりか、樹は的確に俊也の急所を突く。
「あ、あれはシラヌイさんにハメられたんだって!」
「まさかあのクオンのあんな顔が見られるとは思わなかったがな」
「ほんと樹はクオンちゃん苦手なんだな」
「ヴァルガ民で苦手じゃねぇやつは亡者かチャンプくらいなもんだ」
そうこうしている間に車は病院に到着する。
「今日は軽い検診だからすぐ終わるんだろ?」
「そのはずだよ」
車から降りた俊也は電動車椅子で移動し、樹もその後ろを歩く。
そんな時だった。
「先輩、良かったですね、術後の経過が順調で」
「順調とは言っても杖無しの生活には戻れそうにないのだからあまり変わらないわ」
二人の隣を日本フィギュア界でも有名なコンビである白銀美南と篠宮梨恵の二人通り過ぎていった。
「あれって白銀美南と篠宮梨恵だよな?」
「だな………彼女も足を痛めたって聞いてたが、同じ病院だったんだな」
今まで同じ病院に通っていながら全く接点が無かった俊也ではあったが、何故かあの二人の事が気になっていた。
「でも、あの声、何処かで聞いた事あるような………」
「テレビのインタビューか何かのやつじゃねぇのか?」
「いや、ほんとつい最近の事だと思うんだけど………」
「もしかしてGBNで会ってたのかもな」
「まさか………」
樹の言葉を否定はしてみたものの、結局思い出せずにそのまま検診へと向かうのであった。
***
検診を終えた二人はその足でガンダムベースへとやってきた。
「さて、まずは射出成形機だね。空いてるといいんだけど………」
二人がビルダーズゾーンの射出成形機の所へやってくるとそこには先客がいた。
「あら?貴方達はさっき病院で」
「こんにちは!」
「どうも」
「こんにちは」
それは病院ですれ違った篠宮梨恵と白銀美南の二人だった。
「貴方達も射出成形機に用が?」
「ええ………それにしてもかなりのライナーの量ですね」
今は美南が射出成形機を使っているのだが、取り出されたライナーの量が普通ではなかった。
「この前GBNのイベントでアイテムを手に入れたから早速成形してみたのだけれども………」
「この形状から察するにAGE-3関連か?にしては見た事の無いライナーだな」
樹がそのライナーを手に取ってみるが、そのパーツは見覚えの無い形状をしたライナーだった。
「それ、アニメ未登場ウェアのライナーなんです」
「は?アニメ未登場って言うとラグナ、タングラム、グラフト、ザメルガのウェアか!?」
「はい、そのセットが当たりまして」
「白銀さん、凄い運ですね………というか、お二人もGBNをプレイしているんですね」
「ええ、私は自分の足でまた歩けるから、とこの子に誘われて始めたのだけれども、私もすっかりハマっちゃってね」
そう言って梨恵は自身の松葉杖を見せる。
「俺も同じようなものですよ。こんな足になって色々諦めていた所にコイツがGBNを紹介してくれまして」
「へぇ〜」
「面白い縁もあるんですね!」
「あっ、自己紹介がまだでしたね。俺は灰原俊也、こっちは親友の大森樹です」
「私達の方は自己紹介は不要かしら?」
「日本フィギュアスケートの新星・白銀美南と元選手で現在はトレーナーの篠宮梨恵だろ?ニュースを見てないやつは兎も角、知らねぇやつの方が少ないだろ」
「あはは………有名になったらなったで大変なんですけどね」
お互いの紹介が済んだとこで美南のライナー成形が終了する。
「やっと終わりました!」
「そりゃ丸っと4機分のライナーだもんな」
「篠宮さんも使うならお先にどうぞ」
「あら?いいの?」
「俺達も丸っと1機分なんで時間が掛かりますから」
「ならお言葉に甘えて」
そう言うと梨恵はパーツデータの入ったメモリを射出成形機にセットしてパーツを成形し始めた。
すると、美南は俊也と樹に気になっていた事を訊ねた。
「そういえばお二人はお仕事何されているんですか?」
「ん?俺達か?俺はしがない電化製品店の店員で、俊はカメラマンさ」
その“カメラマン”という言葉に梨恵がピクリと反応する。
「カメラマンさんなんですか!?凄いですね!」
「カメラマンって言っても雑誌用の風景写真やちょっとしたイベントに呼ばれる程度のものだよ」
「コイツ、GBNでもわざわざガンカメラまで作ってカメラマンやってんだぜ?」
「うん?GBNでカメラマン、ですか?」
何処かで聞いた事ある話だなぁ〜、と美南が梨恵の方を振り返ると、梨恵は俊也の事を見て固まっていた。
「先輩?」
「あ、貴方………もしかしてグレイ?」
「えっ?何でって………もしかしてクーリエさん?」
「「ええええええええ!?」」
まさか以前遭遇してフレンド登録を交わした相手とリアルでバッタリ遭遇していたと知って驚く俊也と梨恵。
「えっ?もしかして灰原さんが例の先輩が言ってたカメラマンさんだったんですか!?」
「世の中、ほんと狭っ」
こうしてグレイこと俊也とクーリエこと梨恵は意外な形で再会したのであった。
という事でリアルで遭遇してしまった
この後一体どうなるのか?それは………次回に続く。