そんなわけで今回は次回の続きから。VSマリィ戦。楽しんでいただけると幸いです。
マリィと名乗った少女に連れられてやってきたのは、六番道路名物のディグダ像前。そして思い出した、マリィってあれだ。エール団に応援されてる子だ。タオルにこの子が描かれていたから見覚えがあったんだ。いい子そうだからあの蛮行はエール団が勝手にやってることなんだな。向き直ったマリィの第一声は、「あたしと戦ってほしい」だった。うん、知ってた。
「一応聞くけど…なんで?」
「あたし、極力あくタイプだけでジムチャレンジに挑んでたんだけど、フェアリータイプ対策に一匹だけあくタイプじゃなくて…ここまでむしタイプだけでジムチャレンジを突破してきたラウラ選手とあたし、何が違うのか知りたいと!」
「といっても、使ってないだけで俺も蟲だけど虫タイプじゃないの持ってるしなあ。あくタイプ使いか、俺がむしタイプ使いと知っての挑戦か?」
「むしろ、苦手なタイプに勝ててこそ、じゃなかと?」
「それもそうだな、気に行った!見たところ三匹しかいないみたいだし3VS3でいいか?」
俺の得意タイプを知らずにエスパーで挑んだビート、俺の実力差を知りながら自分の実力を試そうと挑んできたユウリ、好きなタイプでどこまでごり押せるか挑んできたモコウのどれとも違う、俺のポケモンを知りながら自分が勝てると信じてるマリィ。なるほど、エール団に応援されているのも分かる気がする。
▽ポケモントレーナーの マリィが 勝負を しかけてきた!
「なら俺も、こいつの試運転をさせてもらおう!行って来い、ドラピオン!」
「行って、ズルッグ!」
野球のように豪快なフォームで繰り出されたのは、あく・かくとうタイプのズルッグ。対して俺が繰り出したのは言うことを聞くようになったはずのドラピオン。相性は不利だが、このドラピオンなら問題ない。しかしこのサソリの様なフォルム、美しい。ドラピオンの雄姿に恍惚していると、マリィが仕掛けてきた。
「負けると不機嫌になるからね……ま、あたしが負ける訳ないけど!ズルッグ、ずつき!」
「つじぎりだ」
繰り出されたずつきを、両手による十字を描く斬撃が連続で炸裂。一撃目で弾き、二撃目で吹き飛ばす。このドラピオンが使うと攻防一体の極致となるこの技。よし、ちゃんと言うことを聞いてるな。しかし相性が悪すぎたのか、普通に耐えられてしまう。なら効果抜群を狙おうか。
「尻尾を振るって距離を取れ!ミサイルばり!」
「下に避けてけたぐり!」
両手尻尾の爪を光らせて複数同時に放ったミサイルばりを、体勢を低くして地面を駆けて懐に飛び込むズルッグ。でもいいのか?そんな前に出て。
「クロスポイズン!」
「なっ!?」
地面を叩き割る毒を纏った両腕の振り下ろしがズルッグに炸裂、戦闘不能になる。まだ体力がありあまっていたはずのズルッグが一撃で落とされたことに驚愕するマリィ。
「俺のドラピオンは俺の手持ち四体と三日三晩戦っても衰えなかった驚異のパワーファイターだ。蹂躙されてくれるなよ?」
「くっ、グレッグル!」
次に繰り出されたのはどく・かくとうのグレッグル。さっき言ってたあくタイプじゃない手持ちはこいつか。同じ毒タイプとはいえ、かくとうタイプはドラピオンはあまり得意じゃない。まずは様子見だな。
「ミサイルばりだ」
「ふいうち!」
ふいうち、確定で先手を取れる技。跳び上がってからのアッパーカットが炸裂し、それによりドラピオンの意識が一瞬途切れた。ポケモンの世界でも、顎というのは急所なのだ。ドラピオンの首が据わってなければ脳震盪でも起こしてただろう。だが、近づいたな?
「こおりのきば」
「グレッグル!?」
首に叩きつけられた拳が離れる前に、冷気を纏った牙で噛み付くドラピオン。逃がさないという意思の宿った目は怒りに満ちている。主に俺に対しての。悪かったって。お前の雄姿に見とれてたんだ許して。
「クロスポイズンだ」
冷気で凍り付いたグレッグルに、急所に当たりやすい交差した斬撃が炸裂。地面に叩きつけるドラピオン。しかし氷が砕けた物の、グレッグルの目にはいまだに闘志の炎が宿る。愕然としていたマリィもそれを見て気を取り戻したのか、熱い指示を出してきた。
「こんな強敵…終わっちゃうのつまらん!だからネバっちゃうよ、あたしたち!リベンジ!」
「っ!?」
サイトウ戦でも嫌というほど味わった。喰らった攻撃の分倍返しする渾身の一撃がドラピオンのどてっ腹に炸裂。強烈な衝撃で地面が揺れる。それでもドラピオンは倒れない。やっぱり、こいつはタンクとして最高だ!
「これぐらいで倒れるようなら、三日三晩も戦っていないんだよ!ミサイルばり!」
「どくばりで迎撃して!」
再び放たれる六筋の光弾。グレッグルは口から吐き出す紫色の針で迎撃していくも、捌ききれずに一発、二発と胴体に炸裂。その体が揺らぎ、戦闘不能になる。
「がんばれ、モルペコ!オーラぐるま!」
「クロスポイズンで迎え撃て!」
最後に繰り出されたのはモルペコ。ハムスターの回転車のようなエネルギーを纏って突撃してきたので、クロスポイズンで迎撃。一瞬拮抗するも、弾き飛ばすとドラピオンは急接近、驚くモルペコに迫る。
「でんきショック…!」
「こおりのきばだ!」
そして空中で逃げ場のないモルペコの放った電撃を物ともせずに冷気を纏った牙で噛み付き、戦闘不能にした。交代なしで倒すという、ビート戦以来の圧勝だった。
「一匹だけでマリィに勝つなんて…すごい、強すぎる…」
「今のはドラピオンのスペックでごり押した様な物だけどな」
「でも、そいつ捕まえたのはラウラ選手なんでしょ?あたし、強いあくタイプは見慣れてるけどそのドラピオンは別格…アニキといい勝負できるかも」
「アニキ?」
「あたし、スパイクタウンのジムリーダー…ネズの妹なんだ。このモルペコもアニキからもらったポケモン」
「なるほど、だからあくタイプ統一か」
言われて納得する。じゃあそのマリィのサポーターであるエール団は…考えない様にしよう。
「で、タイプ相性の覆し方だったな。今回はドラピオンのあく技がマリィのかくとうタイプ二体にあまり通じない事だったが…使い方次第だ」
「使い方次第?」
「威力が弱い技でも弾いて体勢を崩すぐらいはできるってことさ。あと、スピードだな。どんなに苦手な技でも避けてしまえば関係ない。だから俺から教えられるのは、怯ませること、応用力、すばやさの重要度だ。あくタイプには詳しくないけど、怯ませることに関しては十八番のはずだ。マリィのチームでもそこそこやれるだろうさ」
正直、サイトウの時点で詰んでいる気がするが。いや、サイトウは搦め手に弱いからあくタイプならそこを突ければいけるかも…?するとマリィは合点が行ったのか、顔を輝かせる。
「なるほど…参考になったと、ありがとうラウラ選手」
「他人行儀じゃなくていいぞ。ライバルなんだからな」
そうだ、ドラピオンを使った申し訳なさから教えてしまったけど、マリィはビートやユウリ、モコウと同じくセミファイナルトーナメントで戦うかもしれないライバルだ。もしかしなくてもやってしまったか?
「うん…じゃあラウラ!あたしはラテラルジムに挑んでくるけんね。あんたも気張って残りのジムを踏破するったい!」
「お、おう。マリィの応援はなんだか元気が出るな。その応援があればポケモン達も頑張れるさ。今度戦う時も容赦しないぞ」
「望むところったい!」
そうして俺達は別れた。マリィはラテラルシティにとんぼ返り、俺も続こうとして…周囲の惨状が目に入る。ドラピオンが暴れたせいで穴ぼこだらけになっていた。ギャラドスかなにかかな?
「…ここ、一応道路だからな。直さないと…」
ディグダ像に攻撃が当たらずにすんでよかったと心底胸を撫で下ろす。そうして補修を終えた俺は次のアラベスクジムを目指すべく、ルミナスメイズの森に足を踏み入れるのだった。虫ポケモンがいるか楽しみだ。
マリィの口調はポケスペのサファイアを参考にしました。あってるかな?今回はちょっと難産でした。
・ラウラ
ドラピオンで俺TUEEEしたけど申し訳なさの方が大きかった小心者。初めて使うドラピオンを扱いきれてない上に、ドラピオンが勝手に動いたことによりモルペコの撃破に繋がった体たらく。マリィは友達兼弟子っぽいライバルという認識。教えたことはこの世界でバトルをして学んだこと。
・マリィ
むしタイプに挑むはずがドラピオンで全タテされてしまった不運なアイドル。エール団が見てたらブチ切れてたけど、本人は強敵にワクワクしていた。ラウラから苦手なタイプの対処法を聞かされたためパワーアップ。ラウラは友達兼ライバル。実はモコウとも戦ってボコボコにされており、ユウリ共々リベンジを狙っている。
割と真面目に、ゲーム本編のマリィがどうやってサイトウとポプラを撃破したのか凄い不思議。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。