今回はナックルシティ路地裏での激闘。楽しんでいただけると幸いです。
ポケモンを鍛えつつ、ワイルドエリアを抜けてナックルシティに辿り着いた私達。結構無茶して服がボロボロなので、ブティックに寄って服装を一新する。ジュリさんはジップアップパーカーとフリルミニスカンツとお洒落に、私は元の服装の色違いを着揃えた。やはりブレザーが落ち着くのだ。
「ジュリさんはまたパーカーなんですね」
「うん、太陽の下だとこれがないと眩しくて…私、夜型だからさ」
「ゴーストタイプと仲がいいのはそれで…」
そんな雑談をしながら駅の上の広場で昼食にする。ポケモンセンターで買って来たサンドイッチだ。いつもカレーばかりなのも飽きが来るので他のものが食べれるときは優先したい。手持ちたちも全員出して、きのみを与える。ちょっとした憩いの時間だ。
「ヘラクロスの筋肉のケアってどうすればいいんでしょう…」
「そりゃマッサージとか?」
「なるほど。ラウラさんに蟲ポケモンの手入れの仕方を聞いた方がいいかもですね」
「お兄ちゃん、蟲にだけは詳しいからねー」
そんな事を話しながら食べていると、広場の片隅で一人の女の子がこちらを見ていることに気付く。古びた服装で、何か言いたげにこちらを見つめている。
「孤児でしょうか?」
「…ううん。ちょっと待ってて」
ジュリさんが席を立ち、1人で少女の元に歩いて行き、何やら二言三言話すと、何かを受け取って戻ってこようとして立ちどまり、こんな台詞が聞こえてきた。
「ああ、最後に。この手紙を渡すだけでいいの?」
「……元気でねって伝えて。お願い…」
「任された。貴女こそ、元気でね」
ジュリさんがそう言うと不思議なことが起こった。少女が満足げな笑みを見せたかと思うとその姿を煙の様に消したのだ。あまりのできごとに震える私に歩み寄って両肩を押さえるジュリさんを見上げる。
「え、ええ!?」
「もちつけ、じゃない落ち着いて。あれはただの幽霊、OK?」
「OKじゃないです、幽霊を見ちゃったんですよ!?なにもらったんですか!?」
「ただの手紙だよ。本当なら二年前に渡せたはずの手紙を渡せなくて泣いてたからね。私が持っていくことにしたんだ、アラベスクタウンまで」
「…平気なんです?」
「いや、ゴーストタイプがいるのに今更。人間の死後ポケモンになったとか、ゲンガーがピクシーの死後の姿って話もあるぐらいだよ?」
「ただの都市伝説じゃないですか!?」
「あんな可愛い本物なら大歓迎だよ。怖いよりはいいでしょ?」
「それはそうですが…」
呪われたりしないですよね…?とジト目で睨むと、ジュリさんは古びた手紙をつまみながらタハハと笑う。その瞬間、風が吹いて古びた手紙がジュリさんの手から放れてしまった。
「しまっ…」
「追いかけましょう!」
風に吹かれる手紙を追って階段を駆け下り、路地裏に入る。そこには、のそのそ動く巨大な影があった。
「ダストダス…!?」
「こんなところに…!?」
見れば、ダストダスの頭部のゴミ袋に手紙が引っかかっていて。ダストダスはその巨体で私達を見下ろすと、のしのしと奥へと消えて行き慌てて追いかける。
「またプラズマ団の、ですかね?人に慣れていましたが!」
「多分、プラズマ団に感化されて、容姿とかも理由で逃がされたポケモンだね。不気味とか汚いとか、そんな身勝手な理由でポケモンを捨てる人も多いって聞いたよ!私達に興味も持たないのがその証拠だよ、あのダストダスは人間に絶望してるんだ。でも取り返さないと、あの子に示しがつかない!ゴビット、その場でメガトンパンチ!」
追いかけながらゴビットを繰り出し、メガトンパンチを空ぶらせるジュリさん。もはや様式美だ。
「そこ!じだんだ!」
そして地響きを起こしてダストダスの脚を強制的に止める。するとダストダスは明らかに怒った様子で振り向き、口から毒に塗れたごみの塊を飛ばしてきた。
▽ダストダスの ヘドロばくだん !
「ミミッキュ!」
爆裂するヘドロの塊をミミッキュのばけのかわで受け止めるジュリさん。しかし勢いは殺せず、その小さな体は吹き飛ばされてしまってジュリさんに受け止められくたっとなるミミッキュ。続けてゴビットが飛びかかるも、鋼の爪を出した腕で叩き落されてしまう。メタルクローか。
「イオルブ!サイコキネシス!」
▽ダストダスの たくわえる !
▽ダストダスの のみこむ !
私もイオルブを出して応戦するも、体を膨らませてあっさり回復してしまい、返しで伸びてきた腕の先端に生えた鋼の爪でイオルブが叩き落されてしまう。
「ならば、グソクムシャ!であいがしら!」
「ゴビット、メガトンパンチ!」
回復されないように一撃で落とすべくグソクムシャを繰り出し、目を合わせて頷いたジュリさんのゴビットと共に同時に強烈な物理攻撃を叩き込むも腕と拳はダストダスの体に沈み込んでしまい、鋼の爪で殴り飛ばされる。あの変幻自在の体、強すぎる。かといってイオルブのサイコキネシスじゃたくわえるとのみこむで耐えられてしまう。
「こんなの、畳み掛けるしかないじゃん!じだんだ!シャドークロー!」
「ですね!アクアブレイク!サイコキネシス!」
じだんだで揺らしたところにその体を大きく抉るシャドークローとアクアブレイク、そしてとどめのサイコキネシスが襲いかかるもダストダスは三回たくわえてそれら全てを受け止め、のみこむで回復。返しにヘドロばくだんを四連射で飛ばして反撃。ミミッキュ、ゴビット、イオルブ、グソクムシャはヘドロに包まれて毒に侵され、倒れてしまう。アブリーはどくが苦手だし、ヘラクロスの物理は沈み込んで効かない。ダストダスは完全に怒り狂ってる、万事休すか…?
「くっ…こうなれば、メガシンカで…!」
「プルリルのみちづれで…!」
ロックブラストであの体全部吹き飛ばす!と私達が最終手段を取ろうとした、その時だった。路地裏の上からまよなかのすがたのルガルガンが落ちてきたのは。
「ちょうはつ」
上から響く誰かの声。ルガルガンが指を立てて動かすとさらに怒り狂い、両腕の先端に鋼の爪を出して腕を伸ばしてくるダストダス。
「がんせきふうじ」
それを、腕ごと空中に出現させた岩石で押し潰して防ぎ、岩石を飛び越えて飛びかかるルガルガン。ダストダスは腕を引きちぎって先端に鋼の爪を出して振りかぶり、ルガルガンの腹部を大きく抉るが、ルガルガンの赤い目は輝いていて。
「カウンター」
文字通りカウンターで振るわれた拳がダストダスの顔面を一撃で吹き飛ばし、戦闘不能にするとひらりと宙に舞った古びた手紙を手に取った人物がいた。
「お姉さんたち、これが欲しかったんでしょ?」
そこにいたのは13歳ぐらいの黒いパーカーでフードを被った子供で、赤い目がきらりと光る。その手にはダイマックスバンドがはめられていることからジムチャレンジャーだと分かる。少女は屋根から飛び降りるとルガルガンに受け止められ、地面に下ろされた。
「ありがとうルガルガン。はい、これ。もう失くさないようにして。あの子が悲しむよ」
そう言ってフードを外して真剣な目で見上げてくるその顔は、あどけない金髪を短く切り揃えた少女のものだったが、その目に宿る覇気は本物で。私達はその迫力に押されて無意識に後ずさる。
「な、どうしてそれを…」
「ヨハルが話しかけようとする前にお姉さんが話しかけちゃったから私が出てきたんだよ。まさかすぐ失くしかけるとは思わなかったけど」
ヨハル?と首を傾げる私達。この少女とは別人のことらしいが、出てきたとはどういうことだろう。
「それについてはめんぼくない…」
「じゃあね。お姉さんたち」
「ま、待ってください…貴方は一体…?」
ルガルガンをボールに戻して立ち去ろうとする少女を思わず引きとめると、ビクッと反応した少女は先程までの不敵な様子を全く感じさせないおどおどした態度で振り返って。青い目と目が合った。
「え…?」
「わ、私はヨハルで…さっきまで私の代わりに喋っていたのはヤユイと言って…えっと、えっと、ごめんなさい!」
呆然とする私達を置いてピューと走って大通りに出て行くヨハルと名乗った少女を見送って、私達は顔を見合わせる。
「二重人格…?」
「です、よね…?」
とりあえずとダストダスをモンスターボールに入れて捕獲した私は、マスター道場の先輩であるマイナークラスのジムリーダーに連絡しながらも少女のことで頭がいっぱいだった。…また、会う気がする。
実はユウリが回収してなかった手紙イベント。
・ダフネ
普通にホラーは苦手な主人公。プラズマ団に解放されたポケモン達の現状を目のあたりにして怒りが募る。謎のトレーナー、ヨハルに興味津々。
・ジュリ
原作イベント回収されてないな…と瞬時に理解したダフネの同行者。幽霊がなんぼのもんじゃいこちとら呪ってるんだぞと言わんばかりに平気。自分の知ってるポケモンにもいない二重人格のトレーナー、ヨハルに興味津々。
・ヨハル
ルガルガン使い(?)のジムチャレンジャー。ヤユイというもう一つの人格を持つ、青い目の気弱な少女。名前の由来は某ホラーゲームの主人公+「
・ヤユイ
ルガルガン使いの凄腕トレーナーにしてヨハルを守る、赤い目の別人格。特定の条件下で表に出る。名前の由来は某ホラーゲームの主人公+「
・ダストダス♂
とくせい:あくしゅう
わざ:ヘドロばくだん
メタルクロー
たくわえる
のみこむ
もちもの:なし
備考:おだやかな性格。とてもきちょうめん。プラズマ団に感化されたトレーナーがせめてもの食うものに困らない様にとナックルシティの路地裏で解放されたポケモン。塵で形成された変幻自在の体で敵対者を圧倒する。人間に対して絶望していたが、ダフネの知り合いのジムリーダーに引き取られることに。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。