今回はそんなアンカーショットが活躍する話。楽しんでいただけると幸いです。
「とりあえず、あてはあるんだよね」
四つ目のジム以降に挑むには手持ちが四体居ないと駄目らしい。すると「あてがある」と一度スパイクタウンの外に出たジュリさんについていく。辿り着いたのはスパイクタウンの前に広がる9番道路。一部氷海と繋がっているため海風が凍える程に寒い道路だ。夜になりかけなのも相まって、さらに寒く感じる。薄着だとだいぶきつい。
「それで、なにを探してるんです?あてがあると言ってましたが」
「くさ・ゴーストのダダリンってのがいてね。ここらへんにいるはずなんだ。ワイルドエリアに戻るよりいいでしょ?」
「まあそうですが…しかし寒いですね。春とは思えない寒さです」
「同感。ゲームじゃ寒さまでは分からないからなー…あ、今の無し。聞かなかったことにして、OK?」
「よくわかりませんが、はい」
時折出てくる謎の言葉は相変わらずだけど、ゴーストポケモンに関しての知識は凄いのだこの人。私は好きな蟲ポケモンの知識さえ危ういので素直に尊敬する。そんなことを考えながら草むらに入る私達。
「多分この草むらに…いたいた」
草陰から覗いたジュリさんの視線の先には、名前の通り舵輪と錨に海藻が巻き付いた様な不気味な姿をしたポケモンがいた。あれがダダリン…戦えるのか?と思っていたら捕食しようとしたのか襲いかかろうとしていたヒドイデを、舵輪の中心から藻と一体化した鎖を伸ばす事で先端の錨を振り回したことによる凄まじいサイズとリーチの攻撃で叩き潰したことで、思わず退いてしまう。こ、怖すぎる…!
「あの技はアンカーショット。はがねタイプのわざだけど特性のはがねつかいでとんでもない威力になっているダダリンの専用技だよ。今回は一撃で叩き潰したけど、本来はゴーストタイプ以外を拘束して逃げられないようにする技だから気を付けてね」
「恐ろしい技ですね…」
「ダダリンはあの巻きついている海藻が本体なんだ。舵輪と錨はあくまで海に沈んだ藻屑。でもあれはさすがに近づきたくないな…どうしよう」
考えてみれば、ジュリさんの手持ちはミミッキュ(アンカーショットが効果抜群)、プルリルとゴビット(くさタイプが効果抜群)とダダリンが天敵だったらしく分かりやすく攻めあぐねている。…しょうがないからここは手伝おう。
「手伝います。グソクムシャ、であいがしら!」
出すと同時に先制攻撃。しかし攻撃を喰らったダダリンは影の中に沈んで消えてしまう。これは…!?
「ゴーストダイブだ、気を付けて!」
「気を付けろと言われましても…だ、ダイビング!」
ならばとこちらも出現させた水たまりに潜って隠れる。すると移動した影から飛び出し錨を振るうダダリンだが標的がいないことで空ぶったところにグソクムシャが背後に浮上。効果抜群じゃないとはいえそこそこいい威力の一撃が叩き込まれて怯むダダリン。
「グソクムシャ、シザークロス!」
両腕を振り上げ、交差上に叩き込むグソクムシャ。しかし、それは舵輪で受け止められ、巻き付いていた海藻がひとりでに動き出してグソクムシャの両腕に絡み付いてきた。こ、これは…!?
「もしかして、ギガドレイン…!?」
両腕を拘束し、じわじわと体力を奪って回復して行くダダリンに、グソクムシャは両腕ごと振り上げて振り回すがその海藻は頑丈な様で引きちぎれない。さらに一本海藻を伸ばして、強烈な勢いで叩きつけてくるダダリン。みずタイプも入っているグソクムシャにはきつい。
「パワーウィップまで…技構成はほぼ完ぺきだね。…ん?気を付けて、アンカーショットが来る!」
「そんな…!?」
そして解放されたかと思えば鎖が伸びて錨が振り回され、遠心力を利用しグソクムシャの両腕を胴体ごと拘束、影の中に沈み込んでいくダダリンに引き摺られていくグソクムシャに、思わず手を伸ばす。
「グソクムシャ!」
「ミミッキュ、グソクムシャを助けて!シャドークロー!」
ジュリさんがミミッキュを出して下の触手を伸ばして助けようとしてくれたが、グソクムシャは影の中に完全に姿を消してしまい、次の瞬間ミミッキュの足元に移動した影から凄まじい勢いで空中に飛び出しミミッキュを突き飛ばしたダダリンが、空中で回転して拘束されたグソクムシャを振り回し、勢いのままに鎖をさらに伸ばして地面に叩きつけ、グソクムシャは戦闘不能。錨から解放されたグソクムシャをボールに戻し、勝ち誇るように目の様な羅針盤をクルクル回転させて笑うダダリンに怒りが募る。
「よくも…!ヘラクロス!」
「なりふり構ってられないか…!かげうち!」
月光で伸びた影から先制攻撃するミミッキュを、攻撃を受けて仰け反ると同時に海藻を伸ばしてパワーウィップが叩き込まれ、それを避けて隙だらけなミミッキュにアンカーショットが襲来。ミミッキュは直撃を受けて倒れてしまう。
「ゴビット!シャドーパンチ!」
「ヘラクロス、メガホーン!」
ゴビットの撃ち出した実体を伴った拳の幻影も、ヘラクロスの突撃も影の中に潜って避け、ゴビットの背後から飛び出して一撃を叩き込むとアンカーショットを飛ばし、ヘラクロスの振るった角に引っ掛けて巻き取って引き摺り、ヘラクロスの両腕と角に海藻を巻き付かせるダダリン。回復しようとでもしたんでしょうが、見つけた。最大の勝機…!
「ヘラクロス、気を引き締めなさい!メガシンカ…!」
これしかなかったとはいえ、倒れてから最初のメガシンカを発動。パンプアップした両腕と二本に増えた角に巻き付いた海藻がちぎれ、大きく後退しながら目の羅針盤をぐるぐる回転させて混乱を露わにするダダリンの実体部分…舵輪に、拳を構えるヘラクロス。何が言いたいのかを理解する。
「そうか、ゴーストタイプでもそこなら…!ロックブラスト!」
連続で高速発射される岩の弾丸。それを、パワーウィップを振り回して迎撃するダダリン。やはり実体がある上に木製らしいあの舵輪は急所らしい。狙いどころとしてはいいわけだ。
「タネマシンガンで牽制しつつ、メガホーンで突撃!」
両腕からタネマシンガンを乱射し、角を輝かせて突進するヘラクロスに、パワーウィップを器用にクルクル渦の様に回転させてタネマシンガンを弾いていたダダリンはたまらず鎖を伸ばし、振り回して遠心力の伴った錨の一撃…アンカーショットを飛ばしてきて、メガホーンとかち合い大きく弾かれる。しかし、射程距離までついた。本来なら効果はないのだけど、実体のあるゴーストポケモンなら例外なはず…!
「インファイト!」
バキャア、と。舵輪が殴り壊された音がした。崩壊していく舵輪を本体である海藻で必死に縫い止めるダダリンに、輝く角が振り下ろされる。
「メガホーン、です!」
ドグシャッ。先程のヒドイデの二の舞の如く、角に叩き潰されたダダリンは崩壊した舵輪のせいで見るに堪えない姿になっていた。ギガドレインで体力を回復していたおかげかまだ瀕死ではないけど瀕死寸前である。何というか……ごめんなさい?
「やりすぎました…?」
「…アハハッ、ゴーストタイプを力ずくで倒すなんて、ダフネらしいというかなんというか…笑うしかないじゃん、これ」
笑いながらもダークボールを構えて歩み寄るジュリさん。
「ねえ。私の手持ちになったらその舵輪、直してあげようか?」
ジュリさんがそう言うと、海藻をソッと伸ばしてボールのスイッチに触れ、自ら捕獲されるダダリン。どうやら渡りに船だったらしい。
「…とりあえず、スパイクタウンの宿屋にでも泊まってダダリンの舵輪を修理しようか」
「私も手伝います。さすがにやりすぎたと思うので…」
「あ、この子ダフネがトラウマになったみたい。震えてる」
「あんな怖いポケモンに怖がられるのはちょっとショックです…」
若干ショックを受けてげんなりしつつ、夜道を戻って行く私達。そして宿に着いた私達を、1人の少女がフードの下から覗く赤い目で睨んでいたことを、疲れていた私達は知る由もなかった。
舵輪と錨はあくまで海の藻屑らしいのにポケモンとして一緒に納めるモンスターボールが一番の謎。
・ダフネ
ゴーストポケモン相手に物理で叩きのめした主人公。知識はラウラ程じゃない。ダダリンの容姿は苦手。
・ジュリ
昔見たホラー映画を思い出すのでダダリンがゲームの時からお気に入りなゴースト使い。予想外に自分の手持ちがダダリンに弱すぎて笑った。
・ダダリン
とくせい:はがねつかい
わざ:アンカーショット
ゴーストダイブ
ギガドレイン
パワーウィップ
もちもの:なし
備考:やんちゃな性格。暴れるのが好き。ヒドイデを叩きのめしていたりなど、9番道路を牛耳り実質支配していたぬしポケモン。海藻が本体。自身の要ともいえる舵輪を破壊してきたダフネがトラウマ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。