「よか、よか!今期は未来有望なトレーナーばかりたい!もしかしたらユウリも負けるかもしれんと!それが今から楽しみたい」
そう笑ってジュリさんにあくバッジを手渡すマリィさん。どこか満足げだ。ヨハル(ヤユイ)、私、ジュリさんと結構負けてるはずなのにガラルの未来が有望な方が嬉しいとは、心が広い人間である。すると観客席(金網の向こう側)の私の方に目を向けてジュリさんに向き直るマリィさん。
「昨日のダフネとは親友でライバルだと聞いたと。ライバルは大事たい。あたしもユウリやラウラっていうライバルがいたからセミファイナルトーナメントまで辿り着けたんよ。今年のセミファイナルトーナメント、誰が勝ち上がるか楽しみにしてるとよ」
そう笑って、マリィさんは私達を送り出してくれた。
そんなこんなでスパイクタウンから出て9番道路にやってきた私達。次の目的地はキルクスタウン、本当なら北上に海上を進めばすぐなのだが…
「私達は自転車やなみのりを覚えているポケモンがいないから9番道路を北上することをできないんだっけ」
「はいそうです。なので一度ルートナイントンネルを通って8番道路から北上する必要があります」
「あの上り下りするところかあ…きつそうだなあ」
「最近ガラルに来たのに詳しいんですね?」
「観光パンフレットぐらい見てるよ?」
そう笑うジュリさんだが目は笑ってない事から突っ込んでほしくないらしい。いつものガバか。
「あそこは入り組んでいるので担当のジムリーダーの目が及ばない場所があるかも。警戒して損はないね」
「…ジムリーダーの目が及ばない。つまりは…」
「まあ、プラズマ団が活動しやすい場所だよね」
そう聞いて、拳を握りしめる。シュバルツは私からポケモンを奪う時、戦力になると言っていた。もしかしたら、クワガノンとアーマルドを持っているプラズマ団がいるかもしれない。ヴァイスの時の様な無様はしない…!
「決意を決めてるところ悪いけど、本当に危なくなったらどんな手を使ってでも私はダフネを連れて逃げるからね」
「…その時は私を置いて…」
「話聞いてた?絶対嫌だからね」
「はい…」
ああ、この人は私を絶対見捨てないのだな、と実感する。これは、無茶なことはできませんね。
「サマヨールかあ…可愛いけど、戦力としてはどうかなあ。ゴースト単タイプだとちょっときついしれいかいのぬのを手に入れる保証もないしなあ」
「よくわかりませんが、手持ちはビビッと来た子たちだけでいいと思います」
そんな会話をしつつ野生ポケモンを避けて隠れながら移動する。そしてはしごを降りて、周りから陰になっている場所に来たときだった。
「ガマゲロゲ!マッドショット!」
「「っ!」」
梯子を降りた瞬間を狙われた何者かの攻撃に、咄嗟に横っ飛びで避ける。遺跡の陰になっているそこには、側に目つきの悪いガマゲロゲを控えさせた二人の男女がいた。くろいマスクとフードで顔を隠した、灰色の上着の下に黒い戦闘服を着込んだ、Pのエンブレムが特徴的なお揃いの姿。間違いない、プラズマ団だ。
「プラーズマー!お前たち、ジムチャレンジャーだな!」
「貴方の大事なポケモン達、置いて行ってもらうわよ!」
「プラズマ団…!」
「ほんとに出る奴があるか、この馬鹿!」
「「誰が馬鹿だ!」」
さっきのは冗談だったのかブチギレたジュリさんの言葉に怒るプラズマ団二人。ガマゲロゲは男のポケモンだったのか、女の方がネットボールを取り出す。…まさか、それは…!?
「生意気な奴は思い知らせてやるわ!シュバルツ様からいただいたこの強力なポケモンでね!行きなさい!」
投げられたボールから出てきたのは、クワガノン。見間違えるはずがない、私の手持ちだったクワガノンだ。クワガノンも私を見て目を見開く。まさか、本当にこんな形で再会するとは…!
「やってしまいなさい、クワガノン!」
「やるしかないか、ゴビット!ダフネも早く…ダフネ?」
「クワガノンを返しなさい……返せ!グソクムシャ!であいがしら!」
強いポケモンを出しただけで優位に立ったと思っているプラズマ団の馬鹿達の横で突っ立っていたガマゲロゲを殴り飛ばす。それに二人して驚いているうちに、渾身の力で跳躍し飛びかかった。
「ボールを、渡しなさい!」
「なっ、なっ!?ひ、人のポケモンを奪うのは犯罪なのよ!?」
「お前たちが言うなあああああああ!」
「お、お前!相棒から離れろ!」
「アンタの相手は私だ!ゴビット、シャドーパンチ!」
ジュリさんが男とガマゲロゲの相手をしているのを横目に、女に掴みかかってボールを奪い返さんと暴れまくる。その言葉だけはお前たちに言われたくない!しかしあっさり蹴り飛ばされ、何とか立ち上がって肩で息をしていた女はオロオロしているクワガノンに怒鳴り始めた。
「なにしてんのよ!こんなガキ、さっさと痛い目に遭わせなさい!ほうでん!」
そう指示をするが、クワガノンは動かない。それどころか、ふらふらと立ち上がった私を庇うように前方に浮かび、視線を向けてきた。……今でも、私を信じてくれるんですか。
「なんで、先日もちゃんと言う事を聞いてトレーナーをボコボコにしたのに、なんで言うことを聞かないのよお!このグズ!役立たず!」
そう喚き散らしてネットボールを地面に叩きつけ、懐を漁り出すプラズマ団の女の隙を突いてネットボールを回収、あっと女が声を漏らす前にクワガノンを一度ボールに戻しながら近くの柱の影に移動すると女はムーランドを繰り出してきた。ガマゲロゲと同じでなんか目つきがきつい。
「ちょっ、シュバルツ様のポケモンを返しなさい!ムーランド、はかいこうせん!」
「このクワガノンは、私の手持ちです!ジュリさん、ゴビットの裏に隠れて!クワガノン、ほうでん!」
そして繰り出し、渾身のほうでんが構えていたムーランドと、プラズマ団二人に炸裂。ガマゲロゲには効果はないが、指示はできなくなった上に、ムーランドをまひさせてはかいこうせんを停止させた。ジュリさんもどうやら無事なようだが、相変わらずの威力だ。私のクワガノンが帰ってきた…!
「きっさまあ…!ガマゲロゲ!クワガノンごとやってしまえ!ドレインパンチ!」
「私達からポケモンを奪うのなんて、許されないのよ!ムーランド、きしかいせい!」
二人してクワガノンに同時攻撃してくるが、忘れてはならない。これはマルチバトルだ。
「ジュリさん!」
「うん、ゴビット、クワガノンとスイッチ!あはは、現実だとこんなこともできるんだ!」
クワガノンとゴビットの位置を交代、ドレインパンチときしかいせいを何ともないと言った顔で受け止めるゴビット。ガマゲロゲとは相性はクワガノンゴビット共に悪いが、私のクワガノンの火力は相性が悪かろうが関係ない。
「ガマゲロゲにむしのさざめき!」
「ムーランドにばくれつパンチ!」
ガマゲロゲに翅を羽ばたかせた衝撃波が、ゴビットの目の前にいたムーランドに渾身の拳が炸裂。二体は吹き飛ばされ、目を回して戦闘不能となった。
「や、やばい!逃げるぞ相棒!こいつらは捨て置け!」
「え、ええそうね!こんな弱いポケモンなんかいらないわ、捨ててやる!」
そんなことを言いながらガマゲロゲとムーランドを回収することもせずにボールを投げ捨て、逃走を図るプラズマ団の二人。だがそんなことは許さない。
「逃がしませんよ、でんじは!」
「がああ!?」
「こ、こんなガキにぃ!?」
ほうでんだと瀕死のムーランドやジュリさんたちを巻き込んでしまうかもしれないのででんじはを飛ばし、二人は身体が痺れて倒れ伏す。そこにやってきたのは、ぽっちゃりした体型のサングラスが似合う男性だった。
「何か騒がわしいと思って様子を見に来てみれば…お前たちは、プラズマ団!まさかこの8番道路に潜伏していたとは…貴女方は、ジムチャレンジャーですか?まさか、この者達を…?」
元キルクスジムリーダー、マクワさん。どうやらこの8番道路の担当だったらしく、痺れたままその存在に震えあがるプラズマ団を見て目を丸くしている。…あ、不味い。忘れてました。
「あ、人にポケモンの技を使うのは犯罪でした…」
「ダフネ、前科があるとはいえまたやったのか…いや止めなかった私も悪いけどさ」
「いいや、プラズマ団に襲われて撃退したというのならこれは正当防衛だ。むしろ僕が間に合わなくて申し訳ない。このプラズマ団のことは僕に任せて君達は先を急ぎなさい。次のジムリーダーは…タイプ相性すらものともしない、そんな人だ。武運を祈っているよ」
そうマクワさんに見送られ、私達はお言葉に甘えて先を急ぐのだった。……正当防衛とはいえ、トレーナーに攻撃を与えることに躊躇すらなくなっていた。怒りのせいとはいえ、少しは戒めないといけないですね。でも、そんなことよりも…
「おかえり、クワガノン」
この再会を、喜ぶことにしよう。
言うことを聞くふりをして少しでも前線に出てダフネと再会したかったクワガノンが帰ってまいりました。
・ダフネ
ようやくクワガノンを取り返して感無量な主人公。怒りに身を任せてトレーナーに直接攻撃するほど、我を忘れると凶暴になるけど、我に戻ると反省する癖がついた。
・ジュリ
プラズマ団と戦うとは決めたけど、危険なことにはできるだけ首を突っ込まないことにしているゲーム脳。ダフネは絶対暴走するだろうなあ、止めないとなあと思ってる。ゲームの8番道路で迷子になったことがあり苦手。
・マリィ
将来有望なトレーナーが次々と現れて自分たちを思い出して嬉しいジムリーダー。負けず嫌いなので何時か本気でリベンジするつもり。
・マクワ
8番道路担当マイナージムリーダー。複雑な8番道路を巡回していたが、それを見越して身を隠しながら通りすがりのトレーナーを襲っていたプラズマ団には気付かなかった。ガマゲロゲとムーランドを保護した。
・プラズマ団したっぱ
手持ちは全部奪ったポケモン。その中でも特別強いポケモンを無理やり従わせており、負けるとボールごと手放して逃げに徹する外道の中の外道。現在はジムリーダーでも巡回しにくい道路やワイルドエリアを起点に強奪を続けている。
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