ポケットモンスター蟲【本編完結】   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。お気に入り数700を越えましたありがとうございます!

今回は胸糞注意回。新たなライバル登場です。楽しんでいただけると幸いです。


VSウォーグル

「森なのに虫が一匹もいないとかふざけんなよマジで!」

 

 

 ブチ切れながらルミナスメイズの森のフェアリーポケモンたちを退け、ズンズン進む。森だからと期待してたのに、虫ポケモンの影も形も無い。隠れているだけかもしれないが、間違いなくいて一種類ぐらいだろう。いるのは未だによくわかってないフェアリータイプのポケモンだけだ。…フェアリータイプと言えば、次のジムもフェアリータイプだ。正直よくわかってない。

 最強のタイプであったはずのドラゴンの技を無効化するとかいうチートで、ドラゴンには効果抜群の天敵。あくタイプとかくとうタイプにも効果抜群を取れ、逆にはがねタイプとどくタイプに弱い。あと、むしタイプのわざがいまいち通らない。…正直、ドラピオンがいて五分五分と言ったところだろう。

 

 

「邪魔するな!」

 

 

 飛びかかってきたベロバーを、頭上のバチュルがエレキネットで雁字搦めにして放置する。暗い森の中で襲ってくるポケモンをなんとかできているのはバチュルがいるおかげだ。そして、森の出口に差しかかろうとした時だった。

 

 

「参りました、霧で空を飛ぶことも叶わないとは」

 

 

 バサッと、翼を広げて、彼女は降り立った。ウォーグルに肩を掴まらせた、黒髪をポニーテールに纏め、フライトスーツを身に着けた長身の少女だった。大きく開けられた胸元には、ひこうタイプのユニフォームが見えるところから見てジムチャレンジャーらしい。彼女は俺に気付くと見下した目でこちらを見やり、俺がチビなせいで見上げる形になる。

 

 

「おや失礼。小さすぎて見えませんでした。ふむ?ふむふむふむ…その格好、もしや貴方がラウラ選手?むしタイプなんて糞雑魚で矮小な存在で勝ち残った運がいいだけの話題のジムチャレンジャーですよね?」

 

「あ?」

 

「おや失敬。そんな糞雑魚の虫さんに負けるジムリーダーの方が弱いんでしたね。そうですよね、そうじゃないと虫さんたちで勝ち残るなんて無理ですしね?」

 

 

 開口一番、思いっきり貶してきた彼女の言葉にカチンとくる。むしタイプが何だって?糞雑魚?矮小な存在?言ったなこいつ。さすがに頭に来たぞ。俺のことをチビと言ったのはどうでもいいが、むしタイプを貶されるのだけは許せねえ。

 

 

「てめえ、表に出ろ。その蟲の底力を見せてやんよ」

 

「ここは表ですけど、まあいいですよ、この私、ひこうタイプ使いのムツキにボコボコにされて現実を思い知ってください!」

 

 

▽ひこうつかいの ムツキが 勝負を しかけてきた!

 

 

「行って来い、テッカニン!」

 

「力の差を見せつけなさい、オンバーン」

 

 

 ウォーグルをボールに戻して繰り出されたのは、ひこう・ドラゴンのオンバーン。対して俺が繰り出したのはテッカニン。明らかに不利だが、やるしかない。何故かムツキは地べたに座っているが、そんなの知ったことではない。

 

 

「つるぎのまい―――」

 

「エアスラッシュ」

 

 

 何が起こったのか分からなかった。奴の攻撃は、速すぎた。一撃の風の刃で、テッカニンは戦闘不能になっていた。テッカニンなら容易く避けられると、慢心していた。

 

 

「なっ…」

 

「速さに自信があったようですが、こちらもオンバットの頃から育ててますので練度はかなりのものですよ。そんなこともわからないとは…せっかくなので交代しましょう。見せつけなさい、フワライド」

 

「ッ…オニシズクモ!」

 

 

 唯一空中戦ができるテッカニンを失ったのはでかい。それでも、ここの木々を利用して空中殺法ができる身軽なオニシズクモを繰り出す。対して余裕綽々のムツキが繰り出したのはフワライド。まずは一勝をもぎ取らないといけない。

 

 

「アクアブレイク!」

 

「フワライド、いつものです」

 

 

 最大火力で突撃、水飛沫を上げてフワライドの姿が見えなくなる。やったか!?

 

 

「アハハ、そんな間抜けな顔でどうしたんですか?もしかして勝ったとでも?」

 

「なに?」

 

 

 水飛沫が収まった時、そこにフワライドの姿はなく、あるのは影のみ。オニシズクモと共に慌てて上を見やるが、そこにはいない。なんで…?と思った次の瞬間だった。

 

 

「ゴーストダイブ、です」

 

「なっ!?」

 

 

 慌てて前を向くと、オニシズクモの足元まで移動した影からフワライドが飛び出してきてオニシズクモを強襲。強烈な一撃が叩き込まれ、ダウンする。馬鹿な、オニシズクモだぞ?なんでこんないとも簡単に…そして思い至る。ポケモンの世界で絶対なる力。レベルの差というものに。

 

 

「…お前、どれだけ鍛えたんだ…?」

 

「私は賢いので開会式後ワイルドエリアに籠りまして。私のポケモン達の練度(レベル)は数値にして60を優に超えています。貴方の弱小雑魚蟲ポケモンでは太刀打ちできるはずがないのです。遊んでやりなさい、ルチャブル」

 

「くっ…ドラピオン!」

 

 

 ならばと、俺の手持ちの中で最もレベルが高いであろうドラピオンを繰り出す。こいつで駄目なら…そう、頭に過るも頭を振って嫌な想像を掻き消す。蟲を馬鹿にされて、このまま負けてたまるか!

 

 

「ドラピオン、ミサイルばりだ!」

 

「ルチャブル、とびひざげり!」

 

 

 牽制として放ったミサイルばりによる爆撃の中を駆け抜け、ひざを叩き込んでくるルチャブル。まけじとドラピオンは身体を捩り尻尾を前に伸ばして受け止め、返しに腕を振りかぶる。

 

 

「クロスポイズンだ!」

 

「フライングプレス」

 

 

 しかし、斬撃の交差が炸裂する瞬間。ルチャブルの姿が消えた。いや、慌てて上を見やると、頭上の濃霧の中に、ルチャブルは跳んでいた。そして急降下のボディプレスがドラピオンに炸裂。森の地面にクレーターが生まれた。なんて速さと威力だ…!?

 

 

「大丈夫か、ドラピオン!」

 

「たたみかけなさい、つばめがえし!とびひざげり!」

 

 

 ふらつくドラピオンに、容赦なく鋭い爪の一撃が顎に決まったかと思えば零距離からの膝が胴体に叩き込まれて吹き飛ばされるドラピオン。あの巨体が、いとも簡単に吹き飛び戦闘不能になった光景に、理解が追い付かない。俺の手持ちを総動員したポケモンだぞ?それが、こんな簡単に…

 

 

「っ…マルヤクデ!」

 

「次です、シンボラー」

 

 

 もうほとんど負けが確定していたが、俺は諦めない。マルヤクデを繰り出すと、ムツキはエスパー・ひこうタイプのシンボラーを出してきた。エスパーにはむしは効果抜群だが、生憎とマルヤクデはむしわざを覚えてない上に、ひこうタイプで等倍にされている。じり貧だった。

 

 

「ほのおのうず!」

 

「サイコキネシス」

 

 

 放ったほのおのうずも、焼け石に水とばかりに掻き消されたばかりか、マルヤクデの体が持ち上げられ、地面に叩きつけられて戦闘不能になる。最後のバチュルに伸ばした手が、震えていた。

 

 

「最後はでんき・むしのバチュルですか。でんきは怖いですね~下手したら負けてしまいます。行きなさい、ウォーグル(相棒)

 

 

 大袈裟に怯えて見せるムツキが不敵な笑みを浮かべて繰り出したのは、さっき肩を掴ませて飛んでいたウォーグル。バチュルと同じ、ブラック&ホワイトから登場したポケモンの一体だ。その、ワシボンからの進化条件はレベル54。明らかに、格上だった。

 

 

「バチュル、エレキネット…」

 

「ブレイククロー」

 

 

 弱点であるはずのエレキネットを真正面から受けながらも、突撃しその右足で飛び蹴りの様にバチュルを押し潰すウォーグル。速すぎた、見えなかった。

 

 

「なーんて、この程度の練度で私のウォーグルに勝てる訳ないんですけどね。思い知りました?私のひこうタイプのポケモン達の強さ。自由に空を駆る翼!制空権という絶対的アドバンテージ!そして圧倒的な速さ!ゲフッ、ゴホッ!?」

 

 

 なんか興奮して捲し立てていたムツキが突如吐血してウォーグルの翼に背中を擦られていたが、俺はよたよたと戦闘不能になったバチュルを抱き上げ、その場で立ち尽くす。

 

 

「ガハッ!?…さ、さすがに興奮しすぎました…貴方、弱すぎる虫けらの癖に人を殺す気ですか…でも目障りな虫を思いっきり叩きのめすことが出来ました。私は満足です。ところで地図とか持ってます?私、スマホロトム持ってなくてどっちを目指せばいいかもわからなくて…」

 

「…アラベスクタウンに行くなら北だ」

 

「なんと、ありがとうございます!ではでは、むしタイプで頑張って勝ち残ってくださいね?貴方みたいな雑魚には無理でしょうが。応援はしてあげます、弱い人間が足掻く様を見るのは面白いですので」

 

 

 俺に礼とも思えぬ礼を言ってムツキはウォーグルに肩を掴まらせ、空を飛んで去って行った。そのまま立ち尽くす。…俺は、チャンピオンでもジムリーダーですらないただのトレーナーに、負けたのか。

 

 

 目の前が真っ暗になった。




アニポケにおけるシンジタイプのライバル枠、ムツキの登場。ラウラの初敗北でした。そろそろこんなキャラを出して挫折させる時期かなと。

・ラウラ
ルミナスメイズの森の詐欺にいきり立っていたら、蟲ポケモンや尊敬しているジムリーダーたちも馬鹿にされた上で初の敗北を味わった主人公。レベルという概念を思い出したが時すでに遅し。ポケモントレーナーとしての自信と蟲ポケモンへの信頼を粉々に破壊された。煽られると冷静さを失うなど、過去に何かあった様子。ちなみに手持ちのレベルは40前後。

・ムツキ
ですます口調の、本人は自覚してないナチュラルクズ。傍若無人な性格ながらも病弱で歩く事すら困難でウォーグルに掴まって移動する。そのため辛抱強い代わりに、自分と違って歩いたり色んなことが出来るのにポケモンバトルが弱い輩を見下しており、特にひこうタイプとは正反対なむしタイプが大嫌い。
 空を自由に駆るひこうポケモンに憧れて親にも内緒でワシボンと共に病院から抜け出した後、ローズ委員長に見込まれてジムチャレンジに参加することにした。ビートと違ってローズに心酔もしていなければ感謝もしてない。ちなみにフライトスーツを着ているがコスプレである。
 野生ポケモンとの戦闘でレベルを上げに上げまくってから遅れてジムチャレンジに参戦した。レベルを上げて物理で殴れを地で行くタイプ。レベルのことを「練度」と呼び、それこそ全てだと断じているため、技の応用とかは苦手。名前の由来はムラサキツユクサと某最強のライダー、自作小説の主人公の名から。見た目と口調は似てるけど性格は真逆。


・ウォーグル♂
とくせい:するどいめ
わざ:ゴッドバード
   ブレイククロー
   フリーウォール
   ばかぢから
もちもの:なし
備考:ずぶとい性格。打たれ強い。ムツキの相棒。親から与えられたポケモンでワシボンの頃から一緒にいる。もっぱら移動手段として使われる。レベル65。

・オンバーン♂
とくせい:すりぬけ
わざ:エアスラッシュ
   ばくおんぱ
   ぼうふう
   りゅうのはどう
もちもの:なし
備考:ずぶとい性格。体が丈夫。オンバットの頃から育てられた初期メンバー。先鋒として数多のポケモンを屠ってきた。レベル62。

・フワライド♀
とくせい:かるわざ
わざ:ゴーストダイブ
   そらをとぶ
   シャドーボール
   ちからをすいとる
もちもの:なし
備考:やんちゃな性格。駆けっこが好き。フワンテの頃から育てられた初期メンバー。ゴーストダイブで敵を翻弄するのが得意。レベル60。

・ルチャブル♂
とくせい:じゅうなん
わざ:フライングプレス
   つばめがえし
   とびひざげり
   とびはねる
もちもの:なし
備考:れいせいな性格。ものをよく散らかす。地上を空を舞うように駆け抜け、スピードで翻弄して強力な一撃で落とすムツキの手持ち随一の実力者。レベル64。

・シンボラー♀
とくせい:マジックガード
わざ:サイコキネシス
   エアカッター
   リフレクター
   ひかりのかべ
もちもの:なし
備考:さみしがりな性格。気が強い。ダブルバトル用に捕まえたポケモン。レベル60。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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