「私もダフネさん達に同行する」
一夜明け、いざキルクスジムに行こうと準備していると、最後に起きたヨハルがそう言った。思わず顔を見合わせる私とジュリさん。
「えっと…いいの?私達、これからキルクスジムに挑むんだけど…ヨハル、じゃなくてヤユイはもうバッジ手に入れたんだよね?」
「二人で連続で挑むので結構時間かかりますよ…?」
「ヤユイから話は聞いた。強くなるために手伝ってくれるんでしょ?それに………友達、だから」
最後だけ恥ずかしそうに俯いて言う姿に、ちょっとグッと来た。ジュリさんも同じようで私と同じく胸を押さえてる。その気持ち、すごいわかる。
「それに急ぐ旅じゃないし…どうしたの?」
「い、いえ不覚にもときめきまして…」
「反則だよそれは…」
「?」
首を傾げるヨハル。私、末っ子だけど妹がいたらこんな感じなのだろうか。するとぴくっと誰かに呼ばれたように反応すると青い目を閉じて再び開けると赤い目に、ヤユイに変わっていたヨハルに睨まれる。
「ヨハルに手を出したら許さないからね…」
ジュリさんと二人してブンブンブンブンと首を横に振る。ヤユイはジトーッと睨んできていたけど納得したのか目を瞑ってヨハルに戻った。
「や、ヤユイがごめんなさい…」
「大丈夫ですよ。気にすることないです」
「さすがに慣れてきたしね。じゃあ、そろそろ行こうか」
ジュリさんの言葉に頷き、私達三人はホテルを後にした。
そんなわけで私が一番手でジムに挑むことになったのだが。
「殺す気ですかああああああ!?」
全方向から不規則に襲いくる暴風が吹き荒れる中で露出している落とし穴を避けながら進むという苦行に落ちまくっていた。以前の岩やら氷やらのジムリーダーのギミックをそのまま使っているとはヨハルに聞いてましたけど、これは進ませる気ないのでは?落ちたら下に待機しているひこうポケモンが回収してくれるので安全ではあるみたいですけど。
「しかも、ジムトレーナーも風を利用してきて妙に強いですし…」
不規則な風を感知できるのか、風の流れを利用して空中攻撃を仕掛けてくるジムトレーナーにだいぶ苦戦した。きずぐすり足りるだろうか。ジムリーダーのムツキさん、昔は母親のキリエさん共々育成の鬼とか呼ばれてましたがトレーナーも強くできるんでしょうか…。
「でも、ようやくたどり着きましたよ!」
『本日のキルクススタジアム第一の挑戦者は、背番号064!ご存じ、メガシンカ使いにして蟲の女王の後継者、ダフネ選手!対するはジムリーダー、ムツキ!4VS4のシングルバトルです!』
なんとかジムミッションをクリアしてバトルコートに辿り着くと、ユニフォームの上から羽織ったロングコートと長いポニーテールをはためかせるムツキさんが待っていた。
「ラウラの後継者とは実況もいいセンスですね。私を打ち負かしたライバルの後継者とは。しかしジムトレーナーとの戦いを見せてもらいましたが蟲ポケモンだけで私のジムに来るとはいい度胸です。地を這う蟲では大空を舞うひこうタイプには敵わないと思い知らせてあげます!」
▽ジムリーダーの ムツキが 勝負を しかけてきた!
「大空を舞え、フワライド!」
「お願いします、グソクムシャ!」
ムツキさんはフワライド、私はグソクムシャ、ききかいひでひこう技を回避できるグソクムシャなら相手できるはずだ。
「であいがしら!」
「おいかぜ!」
「っ!?」
渾身の一撃が、おいかぜで威力が減衰してフワライドに当たり、軽く掃われる。この風の勢いでは、突撃する技が悉く威力が下がる上に、あちらのすばやさが上がる。いきなりきついのですが!
「手も足も出させずに終わらせましょう!そらをとぶ!」
「いきなりですか…!?」
以前、兄さんに連れられて見に行ったセミファイナルトーナメントで生で見たことがある。通称エレベーター戦法。ゴーストダイブと繰り返して、相手に何もさせずに蹂躙するムツキさんお得意の戦術…!空からの襲撃をバックステップで避けるグソクムシャだが、そのまま影の中に沈み込むフワライド。どうやって止める…!?
「避けても無駄ですよ!ゴーストダイブ、そらをとぶ!」
「グソクムシャ、アクアブレイク!」
落ちてきたところを見計らって攻撃を繰り出すも、落下速度の伴った一撃の余波で吹き飛ばされ、攻撃することもままならない。だけど、水は撒いた。あとはあの、繰り返したことによる粉塵を利用すれば…
「ダイビング!」
空に舞い上がったところで、こちらは水たまりに潜り込む。落ちてきたところで標的がいないことに気付いたムツキさんはゴーストダイブすることをやめて、アクアブレイクの影響で水たまりだらけのフィールドを注視した。
「むっ、やりますね。このまま続けていたら私はさらに標的を見失っていたことでしょう」
「すぐ止めてくるとはさすがはジムリーダー。だが甘いです!」
その瞬間、フワライドの真下に移動した水たまりから凄い勢いで飛び出してしがみ付くグソクムシャ。その戦法の攻略法はラウラさんが教えてくれました!
「っ…振り放しなさい!シャドーボール!」
「その前に決めなさい!アクアブレイク!」
シャドーボールを受けながら、渾身の一撃が気球の様なその顔面に炸裂、大きくへこませて地面に叩きつける。同時にダメージを受けて戻ってくるグソクムシャ。よくやりました、さすが兄さんの相棒です。
「やられました…どこまでも、あのラウラを思い出させてくれるチャレンジャーですね……ですが、そう簡単に勝たせませんよ!ルチャブル!」
繰り出されたのはひこう・かくとうのルチャブル。あのラウラさんのドラピオンを圧倒したことは今でも覚えてる。ならば、こちらも出し惜しみはしない。
「いきますよ、ヘラクロス!メガシンカ!」
「来ましたか、メガシンカ。ですが私のルチャブルの相手になるとは思えませんね!つばめがえし!」
「メガホーン!」
寒空の下に繰り出すと同時にメガシンカ。右腕の先端を光らせて地を駆け突撃してきたルチャブルの一撃を、メガホーンで受け止める。そのまま、両手両足を鋭く振るってくるルチャブルと、角で受け止めて行くメガヘラクロスの攻防が続く。ひこう技だけは受けてはならない。
「ロックブラスト!」
「フライングプレス!」
一瞬の隙を突いて放った岩の弾丸は天高く跳躍されて回避、急降下してくるルチャブルにロックブラストを撃ち続けるも、急降下の勢いで砕かれて意味をなさない。
「ヘラクロス、全速力で退避!」
「遅い!」
そして隕石の様な一撃が落ち、爆風がここまで届いてきた。何という威力。だがしかし、メガヘラクロスの蒸気の噴出を利用したスピードを侮られては困る。
「何と…!?」
「ヘラクロス!両手でロックブラスト!」
腹ばいに着地して隙だらけだったルチャブルに岩の弾丸が連続で放たれ、腹ばいに跳ねて回避するルチャブルだったが圧倒的な数の弾幕がそれを許さない。全身を岩の弾丸で撃ちのめしていく。
「とびはねる!」
「なっ!?」
しかし、あと一撃で決まると思われたその時、こちらのロックブラストを足場にしてヘラクロスに向けて跳躍してくるルチャブル。天高くではなく、前方に真っ直ぐ!?
「ヘラクロス、メガホーン!」
「つばめがえし!」
やられた。メガホーンと接触する瞬間、つばめがえしの勢いを利用して下に曲がり腹部に鋭い一撃が炸裂。元の姿に戻り、崩れ落ちるヘラクロス。なんて技の使い方だ。破天荒すぎる。だがしかし、ヘラクロスはルチャブルを追い詰めるいい仕事をしてくれました。
「グソクムシャ!であいがしら!」
最速の一撃が瀕死寸前のルチャブルの顔面に炸裂、殴り飛ばす。これで3-2。まだまだここからです!
相変わらず滅茶苦茶強いルチャブル。ムゲンダイナを圧倒した実績は伊達じゃない。
・ダフネ
ヨハルの可愛さに打ちのめされた主人公。ムツキの戦いは過去に見たことがあり、対策は全部ラウラ譲り。今回の切札はヘラクロスでもクワガノンでもない。
・ジュリ
ヨハルの可愛さに打ちのめされたダフネの親友。新しい同行者が出来てちょっと嬉しい。初めて出会うラウラ以外のゲームには存在しないジムリーダーに興味津々。
・ヨハル/ヤユイ
ダフネたちに同行することにした二重人格。二つの人格揃ってダフネとジュリを友達だと認識している。ムツキはルガルガン、マニューラ、アマルルガと相性的に負けるはずがなかった。
・ムツキ
久々登場、ひこうタイプのジムリーダー。ジムミッションは前任のものを流用している。落とし穴を避けさせるのではなく、最初から落とし穴を全部見せて風に落とされないようにするジムミッション。ジムトレーナーも自ら鍛えており、全体的に難易度が高いジムとなっている。
ジムリーダーとしての戦法はおいかぜを利用した圧倒的攻撃の嵐。普段は猫を被っているがバトルとなると容赦がなくなる。特に蟲使いには個人的に負けたくないから大人げなく制限ありきの本気である。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。