「蹂躙しますよ、ファイアロー!」
「ファイアロー…!?」
グソクムシャにルチャブルを落とされ、ムツキさんが繰り出したのはほのお・ひこうタイプのポケモン、ファイアロー。二年前の試合では使っていなかったポケモンだ。てっきり、キョダイマックスのアーマーガアと相棒のウォーグルが残りの手持ちだと考えていたのに。
「ですが相性はこちらが上です!アクアブレイク!」
「つばめがえし!」
跳躍して水を纏った一撃を叩き込むグソクムシャ。しかしファイアローは炸裂する寸前で身を捻り右足で強烈な蹴りを見舞ってグソクムシャを蹴り飛ばした。
「くっ、ダイビングです!」
「上空に舞い上がってひのこです!」
上空に舞い上がってひのこをばら撒き、炎上させるファイアロー。その戦法は、見たことがある。ガラルスタートーナメントのラウラさんの試合。ウルガモスで披露していた、通称フレアフィールド。炎上していることで上昇気流が発生し、さらに高く舞い上がるファイアロー。おいかぜとフレアフィールドの上昇気流で気流はもう滅茶苦茶だ。ダイビングで飛び出したグソクムシャが届かない遥か上まで行かれてしまった。
「ブレイブバード!」
急降下の一撃が空中で無防備なグソクムシャに炸裂。効果抜群の一撃を受けた上でフィールドに叩きつけられ、それでもフラフラと立ち上がるグソクムシャ。空中で駄目でも地上なら…!
「なかなかにしぶといですね…つばめがえし!」
「アクアブレイク!」
急降下し、地面に激突する寸前で直角に曲がって高速で襲いかかるファイアロー。その姿はまるで炎の矢。それに対して居合切りする武者の如く水を纏った拳を構えて身構えるグソクムシャ。そして両者が激突する瞬間、斜め上に曲がってグソクムシャの振りかぶった腕を回避し、空ぶってもつれたグソクムシャの頭上から鋭い蹴りが炸裂。蹴りつけられた勢いのまま崩れ落ちるグソクムシャ。
「とりポケモンは打たれ弱いのです、回避訓練は特に力を入れてます」
「…厄介ですね。ご苦労様です、グソクムシャ」
戦闘不能になってしまったグソクムシャをボールに戻し、状況を確認する。おいかぜに、フレアフィールドによる上昇気流。明らかにひこうタイプに有利な場だ。でもこの上昇気流は利用できるかもしれない。
「出番です、気流に乗りなさい、クワガノン!」
クワガノンは特性ふゆう。でんき・むしではあるが宙に浮くことができる。上昇気流を利用してファイアローと同じ高さまで舞い上がる。モニターが上空の様子を映し出し、観客も熱狂している。勝負はここからだ。
「蟲が宙を舞いますか。叩き落としてあげましょう、ひのこ!」
「それはこちらの台詞です!むしのさざめきで掻き消しなさい!」
高速で宙を舞いながらのひのこの雨が襲いかかるも、クワガノンも翅を羽ばたかせた衝撃波でひのこを掻き消しつつ突進、ファイアローに肉薄する。
「ほうでん!」
「当たりますかそんなもの!つばめがえし!」
放たれた電撃を、空を自由自在に舞って軽く回避し電撃が収まったところに鋭い蹴りを叩き込んでくるファイアロー。効果抜群ではないとはいえ、結構なダメージで空中でふらついてしまい、大きくターンして加速するファイアロー。
「とどめです、ブレイブバード!」
「でんじは!」
「っ!?」
直線に突っ込んできたので、遠慮なくでんじはを炸裂させて麻痺を起こし、すばやさの鈍ったファイアローの一撃をひらりと避けるクワガノン。これでもう、あの音速飛行はできない筈だ。
「つばめがえし!」
「ねばねばネット!」
再度、鋭い蹴りが襲いかかるも、それが炸裂する前に粘つく糸の網がファイアローの全身に絡みつく。あれでは満足に羽ばたくこともできない。こうなればこちらのものだ。
「はがねのつばさで斬り裂きなさい!」
「さらにねばねばネット!」
はがねのつばさで斬り裂かんとするも、さらに上からねばねばネットを吹きかけ、拘束を固める。これで翼を満足に振るうこともできず斬り裂くこともできまい。
「振り回して上にぶん投げなさい!」
「ひのこ!」
翼からばら撒くひのこで燃やして逃げ出そうとするファイアローだが、縦横無尽に振り回されてひのこも十分に燃やすことなく周囲にばら撒かれる。そしてついに、糸が切り離され、拘束されたファイアローが空中に投げ出された。これでは避けれまい。
「ほうでん!」
まひして、糸で拘束され、満足に羽ばたくこともできず空中に投げ出されたファイアローに放たれる電撃。空でフラッシュが起こり、黒焦げとなったファイアローが落ちてきてフィールドに叩きつけられた。空から舞い降りて来て勝鬨の如く顎を開いて威嚇するクワガノン。何とか最後の一体まで追い込めた。恐らく最後は、あのポケモンだ。
「あいつのデンチュラを思い出すポケモンですね…いいでしょう、ならば本気でお相手しましょう!風よ吹き荒れろ、その巨翼を持って世界を嵐で包み込みなさい!キョダイマックス!」
手にしたボールを巨大化、天高く放り投げるムツキさん。遥か上空で解放され、アーマーが分離した攻撃用小型ユニット、ブレードバードが八枚飛び交う姿になった色違いのアーマーガアが咆哮を上げる。こちらはまだ、ダイマックスは使わない。
「クワガノン、でんじはです!」
「全て全て天高く吹き飛ばせ!キョダイフウゲキ!」
とにかく麻痺にしようとでんじはを放つも、そんなものものともしないエレキフィールドやら何やらを全てを吹き飛ばす風の一撃に打ちつけられるクワガノン。
「さすがにでんき・むしを一撃とまでは行きませんか…」
「頑張ってください、クワガノン!」
それでもなんとか持ち堪え、キョダイアーマーガアの目前まで舞い上がるクワガノン。少しでもダメージを…!
「ほうでん!」
「キョダイフウゲキ!」
しかし圧倒的な風の一撃で地面に叩きつけられてしまい、戦闘不能になってしまう。しょうがない、クワガノンで勝てればと思っていたが甘くはなかった。切札を切る時だ。
「この子が、今回の切札です!イオルブ!」
「むっ?」
私の繰り出したイオルブに、これが切札…?と分かりやすく顔を曇らせるムツキさん。正真正銘切札です。イオルブをボールに戻し、ダイマックスバンドからエネルギーを溢れさせて巨大化、振りかぶる。
「あまねく全てよ、地に伏しなさい!キョダイマックス!」
通常のダイマックスと異なり、マゼンタ色の雲の上で巨大化、姿を変えるイオルブ。その姿はまるで巨大なUFO。キョダイアーマーガアより上に浮遊するその姿はまるでポケウッドのSF映画に出てくる空中母艦だ。
「終わらせます、キョダイテンドウ!」
「それはこちらの台詞です!キョダイフウゲキ!」
翼を大きく広げて羽ばたこうとするキョダイアーマーガアに下方から音波の様な攻撃が炸裂。その瞬間、ぐらぐらとその巨体を揺らがせ技を発動するどころじゃないキョダイアーマーガア。何が起きた!?と驚愕するムツキさんも片膝を突き、私も増大した重力に何とか耐える。これは中々きついですね…!
「な、なにが…!?」
「ご存じありませんか?イオルブのキョダイマックスワザはキョダイテンドウ。エスパータイプの技が変化した技で、命中率を上げると同時に、一定時間じゅうりょくを発生させる。羽ばたけない鳥など、敵ではありません!」
「くっ…ならばこれはどうです!ダイスチル!」
「もはや無駄です、キョダイテンドウ!」
さらに重力波がキョダイアーマーガアに炸裂。動こうとしたその巨体を、地面に沈めて行くキョダイイオルブ。最終的にキョダイイオルブを見上げて睨み付けていたキョダイアーマーガアは
「こ、こんなことが…」
「蟲を舐めない方がいいですよ?」
両膝を突いて愕然と言った表情のムツキさんに、ドヤ顔を浮かべて見せた。
むしタイプのキョダイマックスの中だと異質だけど結構好きなキョダイイオルブ。
・ダフネ
最悪キョダイイオルブで飛ばせなければ勝てるだろと多寡を括っていたらルチャブルが出てきて結構焦った主人公。でも負ける気はしなかった。ちょっと女王様気質。
・ムツキ
一番屈辱的な地に堕とされるという最悪の負け方をして茫然自失なジムリーダー。新しい手持ちであるファイアローのフレアフィールドはガラルスタートーナメントの際に空飛ぶのに使えそうだな、と自力で習得したもの。自分の知らない蟲ポケモンの強さに負けて本気で悔しい。
・フレアフィールド
ラウラが考案、ガラルスタートーナメントでウルガモスを用いて披露した技術。ひのこをばら撒いてフィールドを火の海にしてほのおタイプの技の威力を上げる他、触れた相手をやけどにすることができる。ムツキはそれに加えて上昇気流でひこうタイプのアドバンテージを上げることに成功した。にほんばれすると威力が上がる。
・ファイアロー♂
とくせい:はやてのつばさ
わざ:ブレイブバード
つばめがえし
ひのこ
はがねのつばさ
もちもの:なし
備考:れいせいな性格。駆けっこが好き。ムツキの新メンバー。冷静に敵の攻撃を回避し強烈な一撃を叩き込む戦法を取る。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。