※2021/4/29 題名をVSヌケニンからVSゾロアに変更しました
何故か朝食を用意してくれていたぬしニャイキングと別れて7番道路を抜け、ナックルシティで昼食を食べて一休みした後、6番道路を進む私達。高低差激しい道を抜け、ディグダ像前に差し掛かった時だった。
「……やっぱり、ついてきてます?」
「……そうみたい?」
「……どこまでついてくるのかなあ」
私とヨハル、そしてスマホロトムを操作するジュリさんがそうぼやきながら背後を覗き見ると、そこにはボロボロの抜け殻の様なポケモンが浮いていた。ヌケニン、ゴースト・むしタイプのポケモンだ。文字通り、ツチニンがテッカニンに進化する際の抜け殻がポケモンになった存在。それが、何故かずっとふわふわついてくる。ナックルシティを出たすぐ後だっただろうか。6番道路を進む中でいつの間にかついてきていたのだ。
「止まったらジュリさんの影に隠れてしまうから手出しできませんし…」
「ラテラルタウンに入る前になんとかしたいね」
「………待って」
すると、スマホロトムを操作していたジュリさんが突き出してくる。見れば、ヌケニンのぶんぷだった。そういえば、ヌケニンと同じゴーストタイプのデスマスとかが生息しているため気にしてなかったけど、見ればワイルドエリアの、ダイマックスエリアにしか出没しないことが分かった。ここに住んでるポケモンじゃ、ない?
「え、じゃあもしかして…」
「この間のダストダスみたいな、捨てられたポケモン…?」
「かといって私達を怖がる様子もないし、襲ってくる様子もないんだよね…どうしよう」
プラズマ団に直接襲われたわけじゃないのに、プラズマ団に感化されてポケモンを捨てる心無い輩も存在する。例えば、形だけで捕まえていたりとか、捕まえたはいいけど好みに合わなかったとか、ポケモンバトルに疲れたとか、プラズマ団に襲われたくないとか、ましてや進化したはいいが気に入らないとか、そんな理由でだ。……このヌケニンのボロボロ具合から察するに、恐らくは…
「だとしたら、このヌケニンはどうしたいんでしょうか」
「何考えているかわからないもんね…」
「でもこの子を連れたままラテラルタウンに入るわけにもなあ」
「その子は君達とトモダチになりたいようだよ」
私達が三人揃ってどうすればいいか困ってると、後ろから優しげな声が聞こえ。振り向くと、肩にゾロアを乗せて白黒の帽子を被った長い緑髪の青年がいた。それを見て目を見開き驚愕の表情を浮かべるジュリさん。
「え、ぬ……?」
「どうしたんですかジュリさん?」
「い、いやなんでも…?」
「お兄さん、誰ですか?」
口をパクパクさせるジュリさんと、私の後ろに隠れて問いかけるヨハル。すると青年は問いに答えることなく、私達の間を抜けてヌケニンに歩み寄った。
「人間とポケモン。初めて外に出た頃は決して理解できなかった数式。君たちはまだその答えが出ていない、けれどその解に向かうトレーナーのようだね……かつて僕が出会ったトレーナーのように」
有無を言わせぬ迫力を醸し出しつつ、ヌケニンを撫でる青年。私達を近づけさせなかったヌケニンもなぜか心を許しているようだ。な、何なんですかこの人は…?トモダチになりたいようだ、と言ってましたが…
「…もしかして、ポケモンの言葉が分かるんですか?」
「このヌケニンは君たちに救済を求めている。プラズマ団の掲げる偽物とは違う、本当の救済を」
「「プラズマ団…!」」
聞き捨てならない言葉に思わず反応する私とヨハル。この人は、プラズマ団についてナニカ知っている…!私たち二人が青年に聞こうとすると、空のモンスターボールを手にしたジュリさんがヌケニンと青年に歩み寄った。青年は温和な笑みを浮かべて離れ、今度は逃げも隠れもせず、むしろ期待を込めた動きでジュリさんを見上げるヌケニン。
「この子は、私達に捕まえてほしい。そう思って、いいの?」
「ああ。僕にも聞こえて来たよ、寂しい、悲しい、そんな声が。君達に期待したんだ。君達の持つ同類の気配を察知したんだろう」
その台詞で納得する。蟲で、ゴースト。私とジュリさんが特に好むポケモンだ。ボールも持たないで近づいたから、追い払われると思ってさっきは姿を隠したと考えれば合点が行く。
「君達から感じるよ、自分のポケモンへの想いを。こんなにも心地いい声はそうは聞かない。よく愛しているんだね、わかるとも」
「…私と、来る?」
青年の言葉に背中を押されたるかの如く、そう言ってボールを掲げるジュリさん。するとヌケニンは自分からボールのスイッチに触れて吸い込まれていった。大事そうに両手で胸前に掲げて優しげな笑みを浮かべるジュリさん。それを複雑そうな、満足げな顔で眺めて笑う青年。
「君たちなら本当のトモダチになれるだろう。そして見せてほしい。君たちとポケモンとのラブを」
「N様~!」
すると、ピンク色の特徴的な髪型をした女性が青年に駆け寄ってきた。どうやら青年はエヌと言うらしい?続けて黄色の髪の女性と、複数の私服を着た男女が続く。女性は白いワンピースを着ていて、まるで女神の様だな、と少し印象に残った。
「やあ。そんなに息を荒らげてどうしたんだい?」
「どうしたんだい?じゃありません!早くポケモンリーグに行かないといけないのに、観光したいと言うからここまで来たんですよ。これ以上待たせるのは印象が悪くなります!」
「そういうことならしょうがない。ではまたね。君達が仲良くなるのを心から願っているよ」
そう言ってぞろぞろとエヌ?を先頭に去って行く集団。不思議な人だったな。それよりも、また驚愕した顔でジュリさんが見送っていたのが気になった。
「どうしたんですか?」
「いや、そりゃあ、いるよなあって」
「知り合いなの?」
ヨハルの問いかけに、少しだけ考えてから自分に折り合いを付けたのか頷き、答えるジュリさん。
「二人は知らないの?あの人、以前イッシュ地方で暴れたプラズマ団の王様だよ」
「「えええええ!?」」
聞かされたその内容に、驚愕するしかなかった。
ラテラルタウンに到着し、ポケモンセンターで休みながらスマホロトムで「プラズマ団 王様」と調べてみるとNという名前と共に彼の顔写真が出てきた。なんでも、ジュリさんも他地方…つまりイッシュ地方にいた時にプラズマ団の起こした白と黒の英雄騒動に巻き込まれたことがあったらしい。そう語った時のジュリさんの目が泳いでいるのが気になったが、Nの顔を知っていたということは事実なのだろう。ネットには、当時のチャンピオンであるアデクを倒して英雄になることでポケモンの解放を謳ったが、プラズマ団に乗り込んだ英雄と呼ばれる一人の少年トレーナーに敗れたとあった。
「…でも、たしかヴァイスはグレイ様と言ってたんですよね。あのNはガラルで暴れるプラズマ団とは関係ないのでしょうか」
「むしろ、敵対しているまであったね。プラズマ団への怒りを感じ取れたよ」
「多分、ガラルのプラズマ団を止めに来たんじゃないかなあ。リーグとか言ってたし、ダンデさんと協力をする気なのかも」
そう言うジュリさんに納得する。昔のプラズマ団の王様、N。怪しいけれど、悪い人ではない気がするんですよね。ヌケニンも警戒してませんでしたし。
「そういえば、ヌケニンはどうでした?」
「やっぱり、衰弱した状態だったよ。暴行の後が見られたってジョーイさんが言ってたよ」
「プラズマ団に無理やり解放された…とかじゃないってことだね」
誰かは知らないが、ヌケニンを捨てたばかりか暴行を加えたであろうトレーナーへの怒りが募る。プラズマ団はきっかけにすぎない、心無いトレーナーもたくさんいる。
「…捨てるぐらいなら、最初から捕まえなきゃいいのにね。現実は、シビアだなあ」
そう言うジュリさんのどこか達観した様子が妙に印象に残った。
以前のダストダスもプラズマ団に襲われたわけでもなく感化されたトレーナーに捨てられたポケモンだったり。
・ダフネ
ヌケニンを捨てるような心無いトレーナーとプラズマ団に怒りを募らせる主人公。Nへの印象は変な人だけどいい人。
・ジュリ
Nの言葉を信用してヌケニンを手に入れたダフネの親友。ゲームでは知ることもできなかったこの世界の現実にやるせない思いを感じた。いるはずないであろうNの登場に、思わず名前を口走ってしまったが、他地方にいたという設定を利用して何とか誤魔化した。
・ヨハル
ヴァイスの様などうしようもない人間を知っている故に、そこまで怒りを募らせてないけど不機嫌になってる子。Nへの印象は変な人。
・N
ポケットモンスターブラック・ホワイトから登場。三年前(BW1時代)のプラズマ団の王様。ゾロアを連れている。ポケモンの声を聴くことができる。ヌケニンを保護しようと思っていたが、ダフネたち三人にかつて出会ったトレーナーと同じ可能性を感じてヌケニンを託すことにした。複数人引き連れてポケモンリーグを目指しているが観光も楽しんでいる。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
掲示板回は
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短い頻度で(ジム戦一つぐらい?)
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長い頻度で(ジム戦三つぐらい?)
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