ラテラルジムは予約がいっぱいで、今日は無理そうだったので観戦することにした私達。いくつか試合を終え、ジムリーダーが圧勝している光景を眺めながら、どうやって勝とうか考えていると、とんでもない試合を観戦することとなった。
「…凄い試合ですね」
「ある意味、だね」
「これ試合になってるのかなあ」
ラテラルタウンのジムリーダーはモコウさん。以前、私が凶行を犯した場にもいた、ラウラさんの相棒と言ってもいい人だ。でんきタイプ使い同士の激突。それだけでもすごいことなのだが、なんというか…チャレンジャーの告白の場になっていた。
「私の想いを受け取って!ピカチュウ、10まんボルト!」
「当たってたまるか!?パルスワン、ほえる!」」
チャレンジャーはサタリア。以前、鉱山で戦ったあの手強かったでんきつかいだ。確か、「モコウお姉ちゃんに会うまでに私は強くなるんだから!」と言ってたので、その念願が適った形だろうか。強制的に交代されても、猛攻を浴びせるサタリアに押され気味のモコウさん。でもどこか様子がおかしい。怖がっているというかなんというか。
「この感じ……我は知っている。そうだ、あれはまさにラウラに対するユウリ……!?いや、二年前に好きだと言われたがアレは単なる吊り橋効果で…」
「そんなことないよ!私はモコウお姉ちゃんに恋したんだから!」
「お前には悪いが、イヤだ!我はでんき使いだがノーマルだ!いや、ラウラとユウリは祝福するし我もいつかはと思うが……だが!年下の愛を受け入れるなど何を言われるか分かったものでは……!」
私達は何を見せられているのだろうか。というかこの公然の場で大胆な告白とは。サタリアの愛が凄い。公然の場でいちゃつくラウラさんとユウリさんを思い出す光景だ。モコウさんも愛されてるんだなあ(白目)サタリアは小柄だから受け入れたらロリコン扱いされると思いますけど。
「だったら、私が勝ったら言うこと聞いてもらうよ、モコウお姉ちゃん?」
「喰われる!?」
舌なめずりしながら笑うサタリアに震えあがるモコウさん。愛は強しと言うがやりすぎではなかろうか。ほえるで戻されてもボルトチェンジで戻ってくる堂々巡りになっているのはもう笑うしかない。
「ほえる!」
「あなをほる!」
何度目かもわからないほえるを、穴を掘って避けるピカチュウ。するとモコウさんはパルスワンをボールに戻して代わりにエレキブルを繰り出した。なにを…?
「はっ!ほとんどのポケモンが覚えられる、このジムの対策にぴったりな技を、なにも考えてないと思うたか!我には知識が豊富な友人がいてなあ!エレキブル!しっぽを地面に突き刺してかみなりだ!」
「なっ!?」
その瞬間、尻尾を突き刺し放電した地面が、爆ぜた。衝撃で地面が崩壊し、吹き飛ばされるピカチュウ。宙を舞ったピカチュウに、瓦礫を蹴って肉薄するエレキブル。
「ど、どくどく…!」
「かわらわりだあ!」
モコウさんの指示で毒を纏った尻尾を掻い潜り、エレキブルは強烈なチョップを叩き込んでピカチュウを地面に叩き付け戦闘不能にした。なんて戦術……なんてパワー。チャレンジャー時代に速攻一撃でジムを七つ踏破した実力は衰えてない。その一連の流れを見ていたジュリさんがぼそっと呟く。
「これって、シンジの……!?お兄ちゃんの入れ知恵か」
「知ってるんですか?ジュリさん」
「えっと…昔見たトレーナーが使ってた戦術だよ。多分、同じエレキブルを持ってるからそれでお兄ちゃんが教えたんじゃないかな。でも相当鍛えてないとできないと思う」
「なるほど…」
「…参考になるなあ。地面に直接送るのか」
私とヨハルは普通にすごいその戦術に興味津々だ。モニターを見ればサタリアの手持ちは残りエモンガのみ。対してモコウさんは三匹残している。エモンガが切札とは言ってましたが、これはさすがにきつそうだ。
「エモンガ、エレキボール!」
「我に憧れてでんきポケモンを使っているようだがまだまだだな。エレキブルの特性はでんきエンジン!でんき攻撃は効かん!」
「ッ・・・あ、アクロバット!」
エレキブルの特性を知らなかったのか、でんき攻撃でエレキブルをパワーアップさせてしまうサタリア。焦りに焦って唯一の打点なのであろうアクロバットで対抗するが、エレキブルに顔面を鷲掴みにされ地面に叩きつけられてしまう。
「かみなり!」
そしてしっぽを突きつけられ、強力な雷撃が叩き込まれてエモンガは撃沈。目を回し、戦闘不能となった。残りの二匹を引き出せずに敗北したサタリアはその場で立ち尽くす。
「残念だったな。その程度の実力で我に勝とうなど100年早いわ!」
「…………まだ、愛が足りないんだね…」
「い、いやそういう訳ではないが。むしろ多すぎるというか…」
「私、頑張るから。次まで待っててね?」
「お、おう…」
何故だろうか。勝ったはずなのに絶望したかの様に顔を引きつらせて立ち尽くすモコウさんと、ニコニコ笑顔でフィールドを離れていくサタリアを見ていると、勝敗が逆に見えてしまう。なんというか、ご愁傷様です。いや、おめでとうございます、かな?
「…しかしどうしましょうか。モコウさん、強すぎます」
「私はゴビットがいるからなんとかなりそうだけど。…地面すら砕く雷はちょっと不味いか」
「電撃の威力が強すぎて岩や氷の盾じゃ簡単に砕かれそう…どうしよう、ヤユイ」
三人してうんうんと思考の海に溺れる。でんきタイプはじめんタイプしか弱点がない、最強と名高いタイプだ。試合中にも言っていた通り、あなをほるなどをじめんタイプの技は大概のポケモンが覚えられるが、それをああも対策されるとどうしようもない。ついでに言うと私のポケモンは誰も覚えてない。単なる実力勝負になりそうだ。
「あの高威力の電撃をどうにか防がないと勝ち目がなさそうですね」
「……私は、思いついたかな」
「…私も、なんとかなりそう」
見れば、楽しそうに笑うジュリさんと不敵に笑う赤い目のヨハル…ヤユイの二人。何か思いつける手段と頭脳があるのが羨ましい。私、天才だって兄にさんざん言われてるけど、割と凡人なのである。知識もそんなにないし、単に蟲ポケモンに好かれる才能しかないただのトレーナーだ。知識が豊富なジュリさんとも、とにかく強いヤユイとも明らかに差がある。
「唯一の勝機だったあなをほるを攻略された時点でお先真っ暗です…」
「それはドンマイ」
クワガノンはあなをほるを覚えることができて、わざマシンも持っている。だから楽勝かなとか思っていたらこれだ。本当にどうしようか。そんな風に考えて、ふと観客席を見上げた時だった。一番上の立見席に、そいつはいた。
「!?」
怪し過ぎる全身黒づくめの格好に、軍帽を被ったあの姿。あの時と違ってマスクはしてないが、あの眼光、あの帽子。間違いない。何が可笑しいのか笑っているのさえ、許せない!
「シュバルツ!」
「「!?」」
慌てて席を立って、人込みをかき分けて上へ向かう。客がざわざわ騒いで五月蠅い。すると私に気付いたのか、真顔になって後退し出口へ向かうシュバルツを追いかける。私の顔を覚えていたのか、それとも名前を呼ばれて驚いただけなのか、どちらでもいい。なんとしてでも、捕まえる!
「逃がしません!」
「ゴルバット、あやしいひかり!」
「っ、また!?」
スタジアムを出てすぐ追いついたけど、またあやしいひかりを放たれて、混乱が解けた時には逃げられてしまっていた。すると息を切らして追い付いてきたジュリさんとヨハルに問いかけられる。
「はあ、はあ、一体全体どうしたの…?」
「シュバルツって言ってたけどもしかして…」
「…私のポケモンを奪ったプラズマ団の幹部がいたんです。でも、どうしてここに…?」
まさか休暇でジム戦を見ていたとかではないだろうし。なにか、嫌な予感がする。
アニポケのサトシVSシンジの最終戦はいいぞ。
・ダフネ
三人娘の中で唯一勝機が見いだせてない主人公。シュバルツを見つけて追いかけるが同じ手で逃げられる。本人は凡人だと思っているが、ローレルやラウラからしたら普通に天才の部類。
・ジュリ
ゴビットいる上に名案まで思い付いたダフネの親友。モコウの戦術がラウラから教えられたアニポケの奴だな、とすぐわかった。
・ヨハル
作戦もヤユイに任せっぱなしな非力な子。サタリアの告白紛いの言葉に顔を赤くしていた純情娘。
・サタリア
モコウの元まで辿り着きその愛を爆発させたでんき娘。愛は溢れる程あるが実力が足りなかった。
・モコウ
自分はノーマルだと言い張るジムリーダー。ムツキからサタリアの存在を事前に教えられていたが、子供の憧れ程度だと考えていたらこれである。でも相手は欲しいし憧れはする。ジム用の手持ちとしてエレキブルを手に入れた。
・シュバルツ
何故かモコウのジム戦を観戦していたプラズマ団の幹部。なんで彼がここにいるのかはVSメタグロスを参照。ちなみにダフネの事は覚えてない。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
掲示板回は
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これまで通り作者の采配で
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短い頻度で(ジム戦一つぐらい?)
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長い頻度で(ジム戦三つぐらい?)
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もういらない