今回はついに襲来プラズマ団。楽しんでいただけると幸いです。
「大丈夫でしょうか、モコウさん」
ジュリさんと共にヨハルと受付で合流し、労っている中、ふとモコウさんが心配になってきた。私達に三連続で負けてメンタルブレイクしているところを襲われたら一溜りもないんじゃなかろうか。
「そういや襲われるかもしれないんだったっけあの人…気にせずボコボコにしちゃった」
「ヤユイもすっかり忘れてたみたい…」
「ええ……」
全くこの二人は……しかしどう考えても今が狙い時だ。シュバルツがモコウさんを襲撃するとして、そのチャンスを私達で作ってしまったことになる。モコウさんは大丈夫だと言っていたが、心配だ。なにせドジっ子で有名なジムリーダーなのだから。
「今日だけ、モコウさんの試合を見守りませんか?」
「それがいいね」
「もしかしたらヴァイスも来るかもだから、賛成」
「もし本当に来ても無茶はしないでくださいね?」
とりあえず、恨みが未知数でなにしでかすかわからないヨハルとヤユイに釘を刺しておく。とりあえず観客席に戻るとしますか。
客席に三人で戻ってくると、オロオロするサタリアと対峙したモコウさんがダバーッと涙を流して泣きながらバトルしていた。三連続で負けて、サタリアにも負けると絶望したのだろうか。しかし泣きながらバトルするとは前代未聞だ。その割に初手からエレキブルを出してボッコボコにしてるが。サタリア、でんきタイプ統一だからエレキブルと相性悪すぎるんですよね。
「大丈夫そうですね?」
「泣きながら圧倒するのはもはやギャグだね」
「ヤユイのせい…なのかな?」
「私は接戦だったのでジュリさんとヤユイが悪いと思われ」
「ヌケニンを知らない方が悪い」
まったく悪びれないジュリさんに苦笑いを浮かべる。そしてエレキブルを倒されることなくサタリアに完勝したモコウさんが目に見えて元気を取り戻し、とぼとぼとサタリアが去りゆこうとした、その時だった。
「むっ?どうした?」
同じく戻ろうとしていたモコウさんが電話を取ってその内容に顔をしかめた途端、サタリアが出て行こうとしていた出入り口から発生した黒い霧の様な物がバトルフィールドを覆い隠したかと思えば、晴れたそこには複数人の男女がサタリアを取り囲むように現れていた。ざわつく観客席、鬼の形相で賊の一団を睨みつけるモコウさん。
「ダフネ、あれって…」
「ヴァイスじゃない、けど…」
「このタイミングで来ますか、シュバルツ…!」
ほとんどが特徴的な揃いの服だが、サタリアの腕を捻り上げて拘束している1人だけ黒ずくめの戦闘服の様な物を身に着けマスクで顔を隠した頭に軍帽を被っている男だった。間違いない、私が出会った時のと同じ格好のシュバルツと、プラズマ団したっぱだ。10人は超えていて、各々がボールを構えている。
「…ポケモンを虐げ、見世物にして楽しんでいる愚民の諸君!ごきげんよう。私はプラズマ団幹部、シュバルツ。ジムリーダーモコウが我が物顔で使役している伝説ポケモン、レジエレキを解放すべく推参した」
観客席に向けて綺麗な一礼をするシュバルツ。どよめく観客席だが、マスコミを通じてこの情報は外にも伝わっているはずだ。何が目的なんだ…?
「貴様ら…白昼堂々よく姿を現せたな。狙いは我だろう。その子を解放しろ」
「断る。ようやく人質にできそうな、全てのポケモンが戦闘不能になったチャレンジャーが現れたのだ。この隙を逃すはずがないだろう」
繰り出したままだったエレキブルと共にシュバルツを睨みつけるモコウさんだが、シュバルツはサタリアの腕を捻り上げたまま放す気配がない。したっぱは出入り口と観客席を見張るように散開する。これじゃ迂闊に飛びこむこともできない。
「我々が求めるのはただ一つ、レジエレキの解放だ。この娘と交換条件と行こう。実力で叩きのめしてもいいのだが、伝説の強さをなめてかかった結果が先日の部下の損失だ。確実に手に入る方法を取るのは当然だろう?」
「っ…モコウさんがお前たちの言う事なんか聞く物か!」
「おっと。黙っておいた方が身の程だぞ、未来あるチャレンジャー。お前の未来は我が相棒の気分次第だ」
暴れるサタリアさんを押さえる様に、繰り出されたゴルバットが鋭い翼を首元に突きつける。なにか、なにかできることはないか?
「レジエレキを渡して、その子が解放される根拠は!」
「ないな。だが、渡さないままだとこの娘の未来はないと知れ。お前を随分と慕っている様だったが、見殺しにしても我々は一向に構わん。我々が単なる小悪党の残党だと思われるのも癪なのでな。もちろん、エレキブルが少しでも動いてもアウトだ」
「くっ……」
苦虫を噛み潰した様な顔で、クイックボールを取り出しスイッチを入れることなくシュバルツに投げるモコウさん。シュバルツはボールを受け取り、バチバチ放電するそれを手袋をはめた手で握り中を確認すると不愉快そうに頷いた。
「レジエレキに放電させて私が感電したところで取り押さえるつもりだったのだろうが残念だったな。この手袋は絶縁体だ。我がボスの情報網に抜かりはない。帰るぞお前たち」
「…そう簡単に逃がすか。アンカーショット!」
踵を返して去ろうとするシュバルツたちに、隣でジュリさんが叫ぶ。何事かとプラズマ団のしたっぱたちがこちらに意識を向ける前に、ゴルバットの影から鎖に繋がった錨が飛び出てシュバルツに炸裂、サタリアを解放させて大きく吹き飛ばした。解放されたサタリアを、咄嗟に飛び出したエレキブルが回収。モコウさんの元に戻る中横を見ると、不敵な笑みを浮かべたジュリさんがいた。
「ジュリさん?」
「念のため、くろいきりが出た時にダダリンを出しておいたの。まさか、フィールドを移動する影までは警戒を怠ったみたいだね」
「さすがです!」
「シュバルツ様!?貴様たちの仕業か、よくも!」
こちらに気付いたしたっぱたちがレパルダスやヤブクロン、ホイーガなどを出す中、私とジュリさん、ヤユイに変わったヨハルが手すりを乗り越え観客席からフィールドに飛び降り応戦する。
「グソクムシャ!であいがしら!」
「ダダリン!パワーウィップ!」
「ルガルガン!カウンター!」
そしてしたっぱを一蹴し、他のしたっぱを二人に任せながら、私はダメージから建て直したシュバルツへ肉薄する。反対側からはモコウさんがライボルトを繰り出しメガシンカさせながら迫っていた。
「シュバルツぅうううう!」
「レジエレキも返してもらうぞ!」
「モコウに勝ったチャレンジャー共か。グレイ様から賜った作戦の邪魔はさせん、ランプラー!」
憤怒の目を浮かべたシュバルツが繰り出したのはランプラー。その周囲に炎が渦を巻く。これは…!?
「れんごく!」
次の瞬間、シュバルツを覆うように発生した炎の輪が、爆ぜた。咄嗟に私を庇ったグソクムシャと、突撃していたメガライボルトが大きく吹き飛ばされる。ただの一撃で、グソクムシャとライボルトは戦闘不能になってしまった。だらんと崩れ落ちるグソクムシャの下から這い出しながら、その威力に愕然となる。いくらなんでも強すぎる。
「怒りで冷静さを失った結果が、いらぬポケモンの
つまり、あの強さのモコウさんを優に倒せる実力があるぞと、そう言いたいわけか。だけどまだだ、私はまだ、あの時の様に負けてはいない…!
「ヘラクロス、メガシンカ!」
「ゴルバット、エアカッター」
ヘラクロスを出してメガシンカした途端、襲いかかる幾千もの風の刃。メガシンカ中を狙って放たれたそれは瞬く間にヘラクロスを戦闘不能にしたどころか、私の髪を斬り裂き観客席の壁にまで切り傷を刻んだ。見れば、モコウさんの繰り出したパルスワンとストリンダー、エレキブルもモコウさんとサタリアを庇ったのか大きな切り傷を負って倒れていた。今の一撃で、ジムリーダーのポケモンが全滅…相性不利なのに、なんでこんなにも……
「うん?見覚えがあると思えば以前救済した女か。懲りずに挑むか、身の程を知ることだな。さて、我らが決して遊び半分の組織ではないとこれで愚民どもに証明できたかな?我々は本気でポケモン救済を目指している。痛い目を見たくなければ、ポケモンを解放することだ。ではそろそろお暇させてもらうとしよう。あやしいひかり」
そしてゴルバットからスタジアム全体を包み込む光が放たれ、目を開けるとそこにプラズマ団の姿はなかった。私はまた、敵わなかった……
ポケスペの悪党の幹部モチーフなシュバルツ。そりゃあ強いよね。
・ダフネ
念願のシュバルツと再戦できたが手も足も出なかった主人公。残りのポケモンを繰り出すことすら臆してしまった。
・ジュリ
抜け目がない転移者。不意打ちはできたけど、想定外な実力のシュバルツに驚く。
・ヨハル
ヴァイスではなかったためしたっぱを担当。ボコボコにしたが逃げられてしまった。
・モコウ
サタリアを人質に取られレジエレキを渡してしまったジムリーダー。サタリアとのバトルでメンタルは回復したものの、シュバルツに手も足も出ず敗北したところを大衆に見られてしまう。
・サタリア
再戦しに来たらモコウが泣いて、オロオロしつつも戦って普通に負けたチャレンジャー。手持ちが全滅したところを付け込まれて人質にされてしまい自分を責めた。
・シュバルツ
前日に確認して作戦を決めて、ダフネたち三人娘は普通に勝ち抜いたためサタリアを人質に襲撃したプラズマ団の幹部。自身の実力に絶対的な自信を持ち、伝説相手でも立ち回れると確信していたがムツキ相手はしたっぱたちまで守りきれず失ってしまい、それを反省して人質作戦に移行した。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
掲示板回は
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これまで通り作者の采配で
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短い頻度で(ジム戦一つぐらい?)
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長い頻度で(ジム戦三つぐらい?)
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もういらない