今回はバトル無し。また落ち込んでしまったダフネ回。楽しんでいただけると幸いです。
あれから一日経って。ポケモン研究所襲撃事件以来の大事件となったプラズマ団の起こした襲撃事件のニュースは瞬く間にガラル中に広がった。特に、メジャークラスのジムリーダーがプラズマ団の幹部に手も足も出ず敗北したことが世論を呼んだ。恐らく、シュバルツの狙いはレジエレキの他にも、自分たちはジムリーダー相手でも負けないことのアピールだったのだろう。それは見事に成功し、ダンデさんの責任問題が追及されるなどといった放送がスマホロトムのテレビで流れるのを聞きながら、私は無気力にラテラルタウンの路地裏でテントに引き籠もっていた。
「ダフネ。落ち着いた?」
「…駄目みたいだね」
外からジュリさんとヨハルの声が聞こえてくるが、出る気にはなれない。前回敗北してからヨロイ島で鍛えて、メガシンカを得て、ラウラさん達ジムリーダーに勝利して、ジュリさんやヤユイといった競い合える友人と出会えて、強くなったはずなのに。何一つ通用しなかった。テレビによると既にモコウさんは立ち直ってジム営業を再開させたらしい。批判殺到しているだろうに強い人だ。そんなことを寝袋に包まりながらボケーっと考える。
「…兄さん、大丈夫かなあ」
思いっきり身バレしている状態でプラズマ団の幹部を倒すべく乱入して惨めに敗北した挙句、ポケモンが奪われていたという事実まで大衆の面前で露見されたのだ。私も傷心状態で遠慮なくマスコミに群がれて、ジュリさんとヨハルに助けられてここまで逃げてきたのだ。実家にマスコミが来ていることは想像に難くない。
「ヘラクロス…ごめんなさい…」
ポケモンセンターで回復したとはいえ、自身の強さに自信を持っていたプライドをズタズタに引き裂き、心身ともに追い詰められボールの中で背中を向けて落ち込んでいるヘラクロスに誠心誠意謝る事しか出来ない。ロックブラストで対抗しようとしていたとはいえ、シュバルツのゴルバットの強さは分かっているのに怒りでメガシンカを優先した私の落ち度なのだ。グソクムシャも気にしているのか何か言いたげにこちらを睨んでいた。己のポケモン達に顔向けもできない。本当に駄目なトレーナーだ…
「ハア……うん?」
そう落ち込んでいると、外から騒がしい声が聞こえてきた。
「ちょっと落ち着いて…」
「あーもう、じゃあかしい!」
次の瞬間、扉を蹴り破って来たかと思えば両手を突っ込んで私を寝袋から引き摺り出す様にして外に引っこ抜いてきた。目を丸くして見上げれば、ぜーはーぜーはーと荒い息を吐いているジュリさんがいた。焚火の明かりで顔が陰になっていて怖い。いつものぽやんとしている様子からは考えられない姿だ。
「な、なんですか…?」
「なんですかじゃありません!人一人引っこ抜くのにどれだけ疲れるかわかってるのかな!?落ち込んでいる暇があるなら立ちなさい!私はね、一回挫折したからって逃避するお兄ちゃんみたいな人間が大嫌いなの!」
怒髪天と言った勢いでがなるジュリさんのらしくない姿に臆してしまう。ラウラさんって逃避したことあるんですか…?でもそんなことよりも、放っておいてほしい。
「お願いですから落ち込ませてくださいよ…この数週間の努力がまるで通じなかったんですよ…?そりゃあ無気力にもなります…身の程も知らずに挑んで返り討ちにされて、ポケモン達にいらぬ重傷を負わせた愚か者なんです、私は…」
「ヨハルみたいに失ったわけじゃないでしょ!まだ、生きてる!あの攻撃は間違いなく殺しに来ていた。なのにジムリーダーのモコウさんはともかく、ダフネのポケモンは生き抜いたんだよ?たしかに強くなってるんだよ、間違いなく!ただ単に実力が足りなくて負けただけ!一回や二回自分の信じた強さが通用しなかったぐらいで諦めるな!」
実際に二回ほど負けてこのザマなのだが。そう言ったらジュリさんは怒るだろうか。怒るだろうなあ。
「駄目なんです、あの絶対的な力に、私は勝てないと、勝てるわけがないと臆してしまって、戦うことを諦めてしまった。まだ、アブリーたちはやる気だったのに。私はまだ、戦えたのに。レジエレキを取り返せたかも知れなかったのに…私の心が、シュバルツに負けてしまったんです。そんな自分があまりにも無様で、悔しくてたまらない……」
あの場でイオルブを出していれば、既に禁じているけどトレーナーへのさいみんじゅつでシュバルツを取り押さえられていただろうし、アブリーならしびれごなで、クワガノンならほうでんで、何とでもできたはず。なのに私は、臆してしまった。
「悔しい、だけどそれ以上に怖い。身近にヨハルという当事者がいるから、その話を聞いてしまったから。あのまま戦っていたら、死なせてしまうんじゃないかって」
ああ、最低だ。せっかくできた友人を理由にしてしまった。体育座りして落ち込むと、頭に軽い衝撃。涙目で頭を擦り見上げれば、ジュリさんではなくヨハルだった。
「ねえ。アーマルドを…貴方の子供の頃から一緒に過ごしたポケモンが、奪われたんだよね?クワガノンも。あのシュバルツに」
「え、ええ…」
「アーマルドを諦めるの?」
「っ」
真剣な声色で告げられた言葉が心に刺さる。それは…忘れていたわけじゃない。ただ、考えないようにしていた。
「今もアーマルドはダフネと再会するために頑張っているかもしれないのに、そのダフネが諦めるの?」
「そ、そんなこと…でも怖いんです、怖いんですよ…!」
「怖いのは分かるよ。私も、ヴァイスにまたルガルガン達を殺されるかもしれないって恐怖を持っているからわかる。だけど、だけどね。それ以上に許せないの。ポケモンの命を、私の大事な友達の命を奪っておいて、悪びれもせずに笑っていたあの女が許せないの。ダフネは違うの?」
「…私は」
許せるはずがない。家族も同然と言えるクワガノンとアーマルドを奪われて、許せるわけがない。でも、弱い私じゃ今度は失ってしまうかもしれない…そう頭を抱えていると、ヨハルの雰囲気が変わった。ヤユイになったらしい。
「怖いよね。許せないよね。だから強くなるの、最強を目指すんだ。もう誰も奪われない強さが欲しいから。ねえ、お姉さん。一緒に強くなろうよ。友達なんでしょ、ヨハルも私も。ジュリも。一人じゃないならいくらでも強くなれるはずだよ。あの時、1人でシュバルツに立ち向かったけど…私達にも頼ればよかったんだよ」
それは…そうだ。したっぱを蹴散らして、三人がかりで挑めば、勝てていたかもしれない。だけど、あの時考えていたのは…怒りの他に、恐怖があった。私の時みたいに二人のポケモンが奪われたらっていう恐怖が。だからしたっぱを二人に押し付けて、1人で挑んで…返り討ちにされたんだ。
「でも、でも…私の問題に貴方達を巻き込むわけには…」
「私とヨハルはヴァイスと決着を付けないとだから、もう巻き込まれてるよ」
「なーに今更言ってるの。前に言ったでしょ、プラズマ団相手だろうが手伝うって」
そう言う呆れ顔のヤユイとジュリさん。…ああ、この友人たちは私と一緒に戦うつもりだったんだ。それを無視して一人で突っ走っていたのは、私か。
「相手の強さは分かった。ならそれをあっさり越えるぐらいに強くなればいい。知らないの?お兄ちゃんが言っていたけど、蟲って成長が早いんだよ?あんなやつの強さなんて頑張ればすぐに超えるよ」
そうジュリさんが笑いながら言うと、私の腰に付けられたボールから次々と出てきて私を取り囲む私のポケモン達。ふんすっと鼻息(?)荒く羽ばたくアブリー、腕を掲げて頷くグソクムシャ、ふわふわ浮かんで体全体で頷くイオルブ、顎を激しく開閉させてやる気を見せるクワガノン、そして……ガッツポーズをして不敵な笑みを浮かべるヘラクロス。……ああ、落ち込んでいてポケモン達のことも見ていなかったんだな、私。
「…はい、やってやりますよ!私はシュバルツを絶対に許しません!奴を倒すために…みんな、力を貸してください!」
「そう来なくっちゃね」
「私が強くなるためにも手伝ってもらうんだからね。……ヤユイは素直じゃないなあ」
ラテラルタウンの路地裏で、目標新たに三人で拳を掲げ、五匹のポケモンが唸りを上げる。この恐怖にも打ち勝って、次こそは必ず勝利して見せる!
こういう心理描写回は毎度のこと難しい。
・ダフネ
圧倒的な実力差の敗北で鬱になってた主人公。友人二人とポケモン達の心意気を見て奮起する。だがしかし恐怖はそう簡単にぬぐえない。
・ジュリ
うじうじするダフネに生前の兄を思い出してブチ切れたダフネの親友。キレたら別人の様になる。シュバルツの攻撃は明らかに殺す気満々だと察した。
・ヨハル/ヤユイ
ポケモンを失うかもしれない恐怖を誰よりも分かっている二重人格。落ち込むダフネを放っておけないぐらいに友情を感じている。
多分次は掲示板回。もういらない言ってる人もいるけど望んでいる人多数みたいなので書きまっせ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
掲示板回は
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これまで通り作者の采配で
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短い頻度で(ジム戦一つぐらい?)
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長い頻度で(ジム戦三つぐらい?)
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もういらない