今回はVSポプラ後半戦。ラウラはトラウマを乗り越えることが出来るのか。楽しんでいただけると幸いです。
生前の俺は、いわゆる引き籠もりだった。ムツキが言った様な心無い言葉に傷つき、高校生になって一学期を終えてすぐに不登校になった、そんな弱い男だった。DSしか持ってないゲームを毎日続け、BWのバトルサブウェイを完全攻略するぐらいにはやりこんだ。そんな孤独な俺の心の傷を癒してくれたのが、蟲たちだった。
中古でゲームを買った帰りにふらりと訪れたペットショップで出会った蜘蛛や蠍といった虫達の動き、生態、容姿。元々デンチュラやペンドラーで惹かれていたとはいえ、現実のそれら全てに心底惚れた。それから俺は蟲に憑りつかれた。親の反対を押し切ってメジャーなものからマイナーなものまで狂ったように蟲を揃えた。そして、不注意とはいえその蟲が原因で死んだ。間抜けな最期だとは思うが、個人的には本望だった。
何の因果か生まれ変わった世界で、現実にいるバチュル達と邂逅した。その時の感動は忘れられない。忘れられないんだ、お前と出会った時のことを。お前と心を通わせて、共に過ごすようになった日のことも…!
「バチュル!!いや、お前は…!」
お前は何時だって、俺の希望なんだ。
ポプラが繰り出したのは、トゲキッス。知らない筈がない、ダイヤモンド&パールから追加された、トゲチックがひかりのいしで進化するしゅくふくポケモン。元ノーマル・ひこうタイプ。現フェアリー・ひこうタイプ。「まひるみ」という害悪戦法を得意とするいわゆるガチポケモンの一体。たまらず、真っ白な頭が思考する、前世と今世で培った情報を集める。
勝てるのか?ひこう使いのジムチャレンジャーに負けた俺が、ひこうタイプを使うジムリーダーに勝てるのか?そう嫌な考えが頭に過るが、フィールドに降り立ってやる気満々のバチュルを見て、頭を振る。いや、違う。そうじゃない、俺はこいつを乗り越えて、このトラウマを払拭する!
「頼むぞ、バチュル!こうそくいどうで壁を這い回れ!」
「トゲキッス、制空権を取るんだよ。フィールド全体にエアスラッシュ」
バチュルがフィールドを高速で駆け抜け、それを追い詰めるように風の刃が放たれる。ポケモンの技に耐える設計のフィールドをズタズタに引き裂いて行くその威力は一発でも浴びれば致命傷だろう。観客に当たらないように観客席の壁にも炸裂し、粉塵が舞う。テッカニンを出す前にバチュルが自分から出てしまったから速度と攻撃力が足りない。仕留めるには、持たせているじしゃくで威力が上がっているエレキネットを真面に浴びせる必要がある。
「糸の先端にエレキネットを付けていとをはく!」
「避けるんだよ!」
ならば趣向を変える。俺の唐突な無茶な注文にしっかり応えてくれるバチュル。糸が付いたエレキネットがスルスルと勢いよくトゲキッスに飛んでいくが、ふわりと上昇することで避けられる。だが、ただ糸を付けた訳じゃない。
「糸を伸ばしながら振り回せ!」
「なっ!?」
遠心力を加えた糸が撓んでトゲキッスに急襲。エレキネットに引っ掛かり電撃が襲いかかる。やったか!?
「止まってしまったねえ。げんしのちからだよ」
「しまっ…」
瞬間、止まっていたバチュルへと岩石が放たれまともに喰らってしまった。吹き飛ぶバチュルに思わず手を伸ばす。いわタイプ、ひこうタイプの技と違って効果抜群の技だ。さすがに終わってしまったかと覚悟する。だがしかし、バチュルは倒れなかった。
「バチュル…!」
ボロボロのフラフラで名残惜しそうにこちらに振り向くバチュル。その目はまだ死んでいない。俺は、相棒を、信じることもできないのか?蟲ポケモンを信じる心も折られたのか?
「否、否!答えは否だ!そうだよなバチュル!」
「ほう、耐えたかい。ちょうどいい、問題をしたそうだからしてやるよ。さてと……あたしの年齢は?二択だよ。88歳か16歳か」
「はあ?そんなの…」
いや待て。ピンクを強要する癖に自分は違う意地悪な婆さんのことだ。これは心理を突く問題。なら答えは…
「16歳だ!」
「あんた…良い答えだよ!」
バチュルの攻撃と特攻がぐーんと上がる。そして、今のがきっかけとなったのか、バチュルの姿が光り始めた。お前は何時だって、俺の希望だ。
「バチュル!!いや、お前は…!」
「連続でエアスラッシュだよ!」
光り輝いたままバチュルがこうそくいどうで駆け出し、風の刃の猛攻を避けていく。そしてその真下に差し掛かった時完全にその姿が変わり、バチバチと帯電して体勢を低く構えていた。その技を、覚えたのか。お前って奴は本当に…!
「デンチュラ!ほうでんだぁああああああああ!」
雷が落ちたかの様な轟音と共に、膨大な電気が放出。真上にいたトゲキッスは避けることも叶わず、電撃が直撃して黒焦げとなり落下。俺達は、トラウマになっていたひこうタイプを完全に打倒した。
「やった、やったぞデンチュラ!」
いつものノリで飛びかかってきたデンチュラの大きな体を受け止める。ああ、お前を頭に乗せることはできなそうだ。それがわかったのか、シュンとするデンチュラ。かわいい。っと、それどころじゃなかった。
「勝った雰囲気でいるところ悪いけどね。眠気覚ましのモーニングティー、ようやく効いてきたようだよ。マホイップ!」
「…デンチュラ、戻れ。行くぞドラピオン、お前も…ありがとう」
ポプラが最後に繰り出したのはフェアリータイプのマホイップ。俺はデンチュラを戻してドラピオンを繰り出すと、ドラピオンは俺の方を向いて不機嫌に鼻を鳴らした。ようやくわかったか、とでも言っているのかな。お前にも、みんなにも、感謝してもし足りない…!
「腹を括ったかい?ちょいと楽しませてもらうよ!」
「行くぞ、ダイマックスだドラピオン!」
そしてマホイップはキョダイマックスを、ドラピオンはダイマックスを発動。巨大なウェディングケーキの様な姿になったマホイップと、巨大化して威圧感が上がったドラピオンが睨み合う。
「あんたらに足りないピンク、あたしらがプレゼントしてやるよ。キョダイダンエン!」
「謹んでお断りさせていただく!ダイアイス!」
クリームのデコレーションの様な攻撃と、巨大な氷塊が激突。クリームを凍らせて砕き、まるで雪の様に散ってマホイップを吹き飛ばす。その巨体がぐらりと揺れ、倒れる。ケーキみたいな見た目だったから咄嗟にダイアイスを選択したけど間違いじゃなかった。
「そこだ!ダイアシッド!」
そして、直撃する巨大な毒流。マホイップはそのまま崩れ落ち、縮んで戦闘不能になった。
「ピンクは足りないけどアンタら、いいトレーナーとポケモンだよ!」
マホイップをボールに戻しながらそう笑うポプラさん。俺は元のサイズに戻ったドラピオンに駆け寄り、Vの字を指で作って突きつけると、ドラピオンは呆れたようにそっぽを向いた。ああ、お前はそう言う奴だったな。駄目なご主人でごめんな。これから、頑張るから。敗北を糧にし恐怖を受け入れ、前に進む勇気を手に入れた。だからもう、大丈夫だ。
「はい、おつかれさま。なるほどね、悪くはない。特にデンチュラとのコンビネーションは目を見張るものがあった。だけどオーディションは不合格。そもそもアンタは虫のエキスパートだ、こんなところで収まる器でもないんだろうさ」
「ああ、俺は虫タイプ以外を極める気はない」
「結果は残念だったけどね、記念にフェアリーバッジをあげるよ」
フェアリーバッジを受け取った俺は、ボールから出て頭に乗っかろうとするデンチュラを窘めながらアラベスクジムを後にするのだった。……重いけど、乗せられないことはない…か?
ラウラ完全復活&ついにデンチュラに進化。心機一転です。
・ラウラ
生前は引き籠もりで蟲を心の拠り所にしていたポケモン廃人。そりゃ普通の人間が蟲を飼っているはずがないよね。蟲ポケモン達を信じることでトラウマを払拭した。奇策の天才ここにあり。ちなみに裏モチーフはポケスペのイエロー・デ・トキワグローブ。ひこう…というか鳥ポケモンのトラウマはブルー。
・デンチュラ♂
とくせい:ふくがん
わざ:エレキネット
こうそくいどう→ほうでん
きゅうけつ
いとをはく
もちもの:じしゃく(バウタウンで拾ったもの)
備考:れいせいな性格。物音に敏感。ラウラと最初に出会ったポケモンにして一番の相棒。実は進化条件をとっくに満たしていたが、ラウラの頭がお気に入りなため進化しなかった。今回、ラウラを勝たせるために進化を決意し、同時にほうでんを覚えた。進化しても頭に乗る気満々。
・ドラピオン♀
姐さん。今回の一件でラウラに完全に懐いたけど素直じゃない。
・ポプラ
ラウラ曰く意地悪な婆さん。吹っ切れたラウラを見て満足げ。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。