今回はラウラ視点でお送りします。楽しんでいただけると幸いです。
今季ジムチャレンジが始まって以降、ひっきりなしに途切れることなく訪れるジムチャレンジャーの相手をする忙しい毎日が続く日々。週一の定休日しか休みがないが、まあ充実していたそんな午後。夕暮れ時。また一人のチャレンジャーを撃退すると、朝からずっと続いていたチャレンジャーが来るのが止まった。
「今日の挑戦者はこれで終わりか?」
「はい、少なくとも予約されていたチャレンジャーは今ので最後です。お疲れ様でした、ラウラさん」
「みんなの方が年上だからそんなに畏まることはないぞ、ソウタ」
「年下とは言えジムリーダーですし…」
「とりあえず今日はここまでにしよう。みんなにお疲れ様と言っといてくれ」
「わかりました。お疲れ様です」
ヤローさん時代からここに努めるポケモンリーグから派遣されたジムトレーナーの一人、ソウタからの報告を聞いて一息つく。今日はもう休んでいいとして…ユウリは確かダンデさんに呼ばれて遅くなるって言ってたな。暇だしターフタウンをぶらつくか。
「ダフネとジュリは今頃ヨハルと一緒にアラベスク辺りだろうか…」
黄昏時のターフタウンの公園への道を歩きながら、先日ニュースにもなった、俺自身が推薦状を渡した二人を思い出す。ダフネはまたシュバルツと戦って惨敗したらしいが、大丈夫だろうか。電話でモコウに聞いた限り結構落ち込んでいたそうだが…モコウも自信がない令嬢モードになってたし、心配だ。後ろからついてくる輩に気を配りながら歩みを進める。この時間、この辺りは人通りも少ない。誘い込むとしたら今か。
「…さてさて、お三方。隠れてないで出てこい。せっかく
「…なぜわかった」
その名を呼ぶと現れたのは、長い白髪で忍者の様な黒装束に身を包んだ覆面の男三人。以前のプラズマ団の首魁ゲーチスの側近、ダークトリニティ。姿も見せず俺を尾行する三人の気配からしてこいつらだとは思っていたが、マジか。こいつらがいるってことは、忠誠を誓っているゲーチスがグレイとやらの正体なのか?
「昔、姿を隠して俺を観察していたポケモンを探す機会があってな。気配に敏感なんだ。それにプラズマ団の情報は仕入れている。三人も尾行してくるならお前たちだと思っていたぞ」
「ふん、わざわざ人気のない場所まで来るとはありがたい」
「それとも我ら三人を相手にできるとでも?」
「笑止!今の我等はグレイ様より賜りし伝説のポケモンを持っている。ジムリーダーとて相手にはならん」
そう言って、まさかのマスターボールをそれぞれ一つずつ取り出すダークトリニティに驚愕する。一人一匹伝説を持つ、だって…!?しかも貴重なはずのマスターボールが三つもあるなんて、どこから仕入れた?
「一つ聞きたい。グレイ様ってのはつまり…お前たちの仕えるゲーチスのことか?」
「なんのことだ?ゲーチスなどという名前は知らん」
「我等はグレイ様に忠実な僕、ダークトリニティ」
「それ以上でもそれ以下でもない」
「は?」
……えーっと、つまりどういうことだ?ダークトリニティがゲーチスの事を知らない、だって?この世界のプラズマ団はゲーチス以外に作られたとでも言うのか?いや、それはあり得ない。なら考えられることは…一つしかないか。
「…洗脳、か。グレイとやらもゲーチスと同じでロクな奴じゃないらしい」
「なにをごちゃごちゃと……コバルオン」
「訳の分からんことをほざくな…ビリジオン」
「………やれ、テラキオン」
そして繰り出されたのは、まさかのイッシュ三剣士。悪には与さないはずの正義のポケモン達だ。なんでプラズマ団なんかの手中に、イッシュ地方で捕まえたのか…!?
「カンムリ雪原にてグレイ様の采配により発見、捕獲したこのコバルオン。アイアンヘッド」
「グレイ様よりいただいたマスターボールにて捕獲したこのビリジオン。リーフブレード」
「他の強奪したポケモンとは一味も二味も違うぞ、テラキオン。いわなだれ」
「「「我等プラズマ団の最高戦力、貴様一人に宛がわれたことを光栄に思え」」」
こちらはまだポケモンも出してないのに、ダイレクトアタックを仕掛けてくるダークトリニティ。それにしても最高戦力、ね。カンムリ雪原にコバルオン達がいることは初耳だが、つまりこいつらを押さえればプラズマ団の戦力の大半が失われるわけだ。
「…フェローチェ」
それぞれの三剣士の背に乗ったダークトリニティの放った三種の攻撃が同時に、俺が今の今までいた場所に炸裂。大爆発が襲うが、そこから少し離れた場所に俺はお姫様抱っこされる形で退避していた。常に持ち歩いている虎の子、フェローチェである。
「なに…?」
「おいおい。俺を襲撃するんなら、戦力ぐらいちゃんと下調べしておけよ。さもないと…」
さらにネットボールとプレシャスボールを取り出して両手で投擲。腕組む筋肉が目立つ巨体と、小柄ながらも鋼鉄に身を包んだ蟲が並び立つ。フェローチェにお姫様抱っこで抱えられる俺は、奴等から見たら屈強なボディーガードに囲まれるどっかの令嬢にも見える事だろう。わっるい笑みを浮かべてみせる、いわゆる悪役令嬢だ。
「火傷じゃすまないぜ?ゲノセクト、テクノバスター」
「……コバルオン、ファストガードだ」
放たれた光線を光の防壁で防いでみせるダークトリニティ。噴煙に包まれるが、それは悪手だぞ。
「マッシブーン、グロウパンチ!」
「っ、……テラキオン、インファイト」
「ビリジオン、せいなるつるぎ」
防壁が解かれた瞬間を突いて噴煙の中に飛び込み、拳を振るうマッシブーンに咄嗟にテラキオンが猛撃を繰り出して相殺、そこに斬りかかるビリジオンの刃を、テラキオンの相手をしている右拳とは反対側の左手の人差し指と中指で挟んで受け止めるマッシブーン。片手真剣白刃取り。伊達にユウリのザシアンと何度も戦ってるわけじゃないぞ。
「コバルオン、せいなるつるぎだ」
「ゲノセクト、ニトロチャージ!」
刃を抜こうと引っ張るビリジオンと、顔面を鷲掴みにされて暴れるテラキオンを巻き込む様にしてコバルオンがせいなるつるぎを放って来たが、炎を纏ったゲノセクトが割り込んで妨害。
「フェローチェ、コバルオンにとびひざげりだ!」
さらに俺を抱いたまま、跳躍したフェローチェのライダーキックがコバルオンに炸裂。大きく蹴り飛ばして石柱にブチ当て、崩れ落ちた石柱の下敷きになるコバルオンとダークトリニティの一人。…あれって文化遺産だっけ?まあいいや。
「テラキオン、いわなだれ…」
「ゲノセクト、テクノバスターで薙ぎ払え!マッシブーン、ばかぢから!」
仲間がやられたことにも意を介さず、マッシブーンに頭部を掴まれながらもテラキオンが虚空から岩雪崩を放ってくるが、テクノバスターでそれを分解。マッシブーンがテラキオンを掴んだまま地面に叩き付け、背中に乗ってたダークトリニティを地面にサンドイッチにして戦闘不能にする。
「くっ…ビリジオン、インファイトでひきはがせ…」
「フェローチェ、とびはねるだ」
マッシブーンに刃を掴まれながらも前足で猛攻をしようと試みるビリジオンだが、俺を抱いたまま跳躍したフェローチェの踵落としが首に炸裂。マッシブーンから解放されたビリジオンは戦闘不能になって引っくり返り、乗っていたダークトリニティが頭から地面に叩きつけられる。
「ぐっ……おのれ、伝説ポケモンがこうも簡単に…?化け物め…」
「おいおい。化け物は失礼だろ。こんなにかっこ可愛い蟲達に失礼な」
「お前のことだ、ぐふっ。無念……」
そのまま気絶するダークトリニティ最後の一人。さて、こいつらをとっ捕まえて警察に連れてって情報を吐かせるとしますかね。すると、無人なはずのここに向かってくる足音が聞こえた。ターフタウンの住人か?と公園の入り口に目を向ける。
「さすがだ。伝説三匹を相手にして完勝とは。いやいや、恐れ入った」
「お前は…?」
そこにいたのは、右半分が白で左半分が黒の、中央にプラズマ団のエンブレムが描かれたローブを身に纏った20代前半と思われる若い男。顔立ちがムカつくぐらいに妙に整っている、いわゆるイケメンであるその男は頭まで服と同じ配色の髪をNを彷彿とさせる短さに切り揃えていて、ハイライトの消えた金色の目を妖しく光らせて不敵な笑みを見せながら、妙に落ち着いてしまう声色、いわゆるイケボで名乗りを上げた。
「私の名はグレイ。君とは仲良くできることを願うよ。ご同輩?」
ついに本格登場、謎に包まれたプラズマ団の首魁グレイ!なんと100話以来の登場となります。前回で疑惑を広げて一気に出すスタイル。
・ラウラ
もはや伝説ポケモン三体がかりでも止められないジムリーダー。メジャージムリーダーになったばかりだが吹っ切れた後の本気の試合で現在二位のビートに勝利していることから強さは相変わらず。フェローチェたち、本気の三体を使ったラウラを倒せるのはユウリだけ。
・ソウタ
ターフジムのジムトレーナーで元々ヤローのジムトレーナーだった少年。自分より年下だが自分たちと戦いジムリーダーにまで成り上がったラウラを尊敬している。ラウラのマネージャーも務めている働き者。
・ダークトリニティ
プラズマ団におけるN及びゲーチスの側近、だったはずの三人組。気配を消すことができるがフェローチェを相手にしたラウラには看破されてしまった。忠誠を誓っていたゲーチスの名を忘れ、グレイに忠誠を誓っているなどラウラの知っている彼等とは食い違った部分がある。グレイの指示でコバルオン、ビリジオン、テラキオンを捕獲し使役している。
・イッシュ三剣士
コバルオン、ビリジオン、テラキオンのこと。いずれもカンムリ雪原に生息している個体。ソニアに足跡が発見されルミとホップの手により捜索され研究されていた。ケルディオという弟子ポケモンがいる。正義の剣で悪を斬る伝説のポケモンだったはずだが、マスターボールで捕獲したダークトリニティにより悪の手先に。ユウリどころかラウラでさえ、カンムリ雪原での存在すら知らないポケモン達のはずだが…?
・グレイ
新生プラズマ団、通称灰色のプラズマ団の首魁。20代前半と思われる男性。爪先から天辺まで白と黒で半分ずつカラーリングされた、まさに名は体を表す特徴的な姿を持つ。目の色はポケモン世界でも割と珍しい金色。ラウラが「ムカつくほどのイケメン」と称する妙に整った顔で、妙に落ち着いてしまうイケボの持ち主。マスターボールを複数持っている疑惑や、ラウラさえ知らないポケモンの所在を知っている、ダークトリニティを洗脳した疑いもあるなど得体の知れない不気味な男。ラウラをご同輩と称するが…?
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。