「ダフネはすごいね…それに比べて私は…」
「落ち込まないでくださいよ…」
ロビーに戻ったらなんかジュリさんが目に見えて黒いオーラを漂わせて落ち込んでいた。隣のヨハルは横目にジュリさんを見て呆れている。
「ダフネがダイマックスもなしに蟲ポケモンでキバナを倒しちゃったから落ち込んじゃったんだけどどうする?」
「いや、ええと……蟲ポケモンだって頑張れば勝てたんです!ジュリさんのゴーストタイプでも頑張ればいけますよ!」
もうなんか慰められる気がしなかったので適当に言うしかない。するとさらに目に見えて落ち込むジュリさん。こんなめんどくさい人だったのか。
「いや、傍目から見ても完璧な指示だったよ…そっかあ…やったことないけどレート戦でもダイマックスにはあなをほる系統の技だってなんかで見たなあ…」
「れーとせん?ってなんです?」
「レトルトカレーの仲間?」
「あ、いいよいいよ気にしなくて…弱者の戯言だから……ふふふ、ストーリー勢の私が強いわけがなかったんだ……バトルサブウェイを制覇したお兄ちゃんはやっぱりすごいよ、うん…」
意味の分からない言葉が羅列して体育座りまでしだすジュリさん。もう完全に闇の住人である。
「えっと、私がジュリさんをなんとかしておくんでヨハルは試合にどうぞ」
「あ、うん。じゃあ行ってくるね」
私が苦戦した天気に関してはアマルルガがいるので私達の時より楽になる筈だ。そう思いながら私はイオルブのサイコキネシスでジュリさんを運びながら観客席に向かった。周りの客がギョッとした顔で見てくるが、当の本人に歩く元気すらないのだからしょうがない。
しばらくして、ヤユイがジムミッションを突破したというアナウンスが流れ、程なくしてヤユイとキバナさんがバトルコートで向かい合う。
「お前さん、ヨハルと言ったか。最強のジムチャレンジャーと呼ばれているらしいな」
「私はもう誰にも負けない、最強を目指しているので」
「そいつはいい信念だ。なら最強のジムリーダー、キバナ様にその強さ、見せてくれよ!行くぜ、ギガイアス、ガブリアス!」
「よろしく。タチフサグマ、マニューラ!」
すると私の予想と異なり、タチフサグマとマニューラを繰り出すヤユイ。天気は当たり前の様にすなおこしですなあらしとなる。なんで?と思ったが、すぐに答えは分かった。
「タチフサグマ交代、アマルルガ!」
「天気をあられに変えてきたか!凍える寒さだが俺達の熱さは止められないぜ!」
タチフサグマをアマルルガに交代し、天気をあられに上書きするヤユイ。すると黙って試合を見ていたジュリさんが口を開いた。
「多分、ギガイアスとアマルルガ、どっちのすばやさが遅いかわからなかったから交代って手段に出たんだと思う…」
「すばやさが関係あるんですか?」
「うん、場に出るだけで天気を操作する特性のひでり、あめふらし、すなおこし、ゆきふらし、おわりのだいち、はじまりのうみ、デルタストリームは基本的に、後から発動した天気に上書きされるの。だから天候操作特性を持つポケモンは遅い方が有利になる。でもギガイアスもアマルルガも鈍重だから…」
「確実に天気をあられにできる様に交代って手段を使ったわけですね。さすがヤユイ、知識が豊富だなあ」
「ヤユイの強さは天性のセンスもだけど、やっぱりもう負けたくないって勉強した知識の豊富さだよね…私、何も努力して来なかったなあ…」
「他人を理由に落ち込まないでくださいよ…」
また落ち込んでしまったジュリさんからバトルコートに目を移すと、ガブリアスがメガシンカし、マニューラがれいとうパンチで氷のフィールドを展開していたところだった。ああなったマニューラは強い。
「マニューラ、滑走してギガイアスにかわらわり!アマルルガはふぶき!最高火力!」
「ガブリアス、そんな薄氷叩き割れ!あなをほる!ギガイアスはマニューラにステルスロックだ!」
スケートの様にフィールドを高速で駆け抜け、アマルルガが放ったブリザード攻撃の風圧に乗ってさらに速度を上げたマニューラの、水平に構えられたかわらわりがすれ違いざまに炸裂。岩のボディに亀裂が入り、そこから凍り付いて動きが鈍るが尖った岩がばら撒かれ見えなくなる。しかし、空中に浮いたのはともかく凍り付いたフィールドに突き刺さった岩は亀裂で場所が分かるのが救いか。
「マニューラを狙え、ストーンエッジ!」
「アマルルガ、フリーズドライで受け止めて!マニューラはそれを使ってれいとうパンチ!」
放たれた岩の散弾を、氷漬けにして氷柱と化させて受け止める。さらにその氷柱を蹴って地中から飛び出してきたメガガブリアスの攻撃を三角跳びで回避。冷気を纏った拳をメガガブリアスの背中に飛びつきながら叩き込んだ。
「ガブリアス、振り落とせ!ギガイアスはもう一度ストーンエッジ!」
氷結してメガガブリアスの動きが鈍るも、背中から倒れ込んで押し潰そうとするもマニューラは退避。避けた所にストーンエッジが襲いくるも、四本脚を上手く使って滑走し普段以上のスピードを見せたアマルルガの巨体に防がれ、その長い首に飛び乗るマニューラ。
「ガブリアス、ワイドブレイカー!ギガイアス、ストーンエッジ!
「アマルルガ、首でマニューラを上空に吹っ飛ばしてふぶき!マニューラは上空からかわらわり!」
ワイドブレイカーで攻撃力を下げようと試みるキバナさん。ストーンエッジと一緒に襲いかかるも、マニューラはアマルルガの振り上げられた首に乗って跳躍して回避、攻撃はアマルルガが一身に受け止めて、反撃に放たれたブリザードの直撃を受けるメガガブリアスとギガイアス。メガガブリアスは戦闘不能となり、ギガイアスも弱りきったところに空から飛来したマニューラの一撃が叩き込まれ、こちらも戦闘不能。キバナさんがジュラルドンとフライゴンに交代すると同時にアマルルガを戻してガラガラを繰り出すヤユイ。
「アローラのガラガラか…相手にとって不足はねえ!スタジアムごとぶっ飛ばす!キョダイマックスだジュラルドン!」
「ダイマックス、行くよガラガラ!」
ビルの様に聳え立つキョダイジュラルドンと、額に擦った先端に炎を纏った骨を振り回して舞いを踊るガラガラが並び立つ。
「ジュラルドンにダイバーン!マニューラはフライゴンにれいとうパンチ!」
「ガラガラにダイロック!フライゴンはマニューラにはがねのつばさで迎え撃て!」
骨を高速回転させたガラガラの放った炎の渦が氷を溶かしながら、ジュラルドンが聳え立たせた岩盤が激突。ジュラルドンが遅かったようで天気はすなあらしと化す。その下で高速で滑空するフライゴンと、跳躍したマニューラが交差する。目が追い付かない、あの二人は二つの戦いを完璧に把握して指示している。すごいことだ。
「ジュラルドンにダイアース!マニューラは滑走してフライゴンから逃げて!」
「逃がすなフライゴン、はがねのつばさで氷を砕いて逃げ道をなくせ!ジュラルドンはダイスチルで相殺しろ!」
両手で握った骨を勢いよく大地に叩きつけて衝撃波を放つガラガラの一撃を、鋼の一撃で相殺するジュラルドン。激突した粉塵が舞う下で、氷のフィールドを翼で裂きながら追いかけるフライゴンと逃げるマニューラ。なんで逃げて…?と思っていたら、ステルスロックの突き刺さっているであろう亀裂まで接近するマニューラ。
「ステルスロックを蹴ってトリプルアクセル!ガラガラはダイバーン!」
「なに!?ジュラルドン、ダイロック!」
マニューラはステルスロックを蹴って反転、高速回転して三連撃をフライゴンに叩き込んで蹴り飛ばすマニューラ。その上で再び放たれた炎の渦がダイロックを形成しきる前にジュラルドンに炸裂。大爆発を起こし、崩れ落ちたフライゴンと共に縮んで倒れ伏すジュラルドン。ヤユイの勝利だ。……さすがは最強のジムチャレンジャー、ジムリーダー8人に一度も負けないでジムチャレンジを突破するとは……今戦ったら勝てる気がしないなあ。
最強のジムチャレンジャーの名は伊達じゃない。
・ダフネ
天気のことについて新たに学んだ主人公。そろそろジュリがめんどくさい。
・ジュリ
ストーリー勢の転移者。レート戦については動画で見たぐらいの情報しか知らないので、バトルサブウェイを攻略したラウラを素直に尊敬している。
・ヨハル/ヤユイ
ラウラの様にステルスロックを利用することを土壇場で思いつき実行した二重人格。
・キバナ
二連続で負けたがあまり気にしてないジムリーダー。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。