今回はセミファイナルトーナメント開催、そして始動。楽しんでいただけると幸いです。
あれから一週間近く。今年のジムチャレンジを勝ち抜いた6人が出揃い、セミファイナルトーナメントが開催される運びとなった。プラズマ団の影響で何人ものチャレンジャーがジムチャレンジ期間中にトレーナーをやめていったと聞くが、それでも6人も残るとは。あ、サタリアもいる。無事モコウさんに勝てたみたいですね、よかった。どうやってキバナさんに勝ったのだろう…?私とジュリさんとヨハルとサタリア、あと2人は見覚えがないが、なんか隣でジュリさんがあわあわしてる。
「あわ、あわわわわわ…」
「どうしたんです?ジュリさん。そんなに慌てふためいて」
「……いやー、うん。気のせいだよね、気のせい。こんなところにいるはずないもんね……」
「?」
いつにもまして変なジュリさんに首を傾げる。まあ、ラウラさん失踪の精神的ダメージが減っている様なので何よりだ。すると、私達6人のジムチャレンジャーが集まったバトルコートに現れるダンデさんと、マントを着込んだユウリさん。怒りを抑えているのか堅い表情だ。
「ではこれより、セミファイナルトーナメント開催する!……む?」
ダンデさんが開催を宣言したその時、巨大モニターが灰色の砂嵐状態となり、注目がそこに集まった。二年前にもこんなことあったような……いや、あの時は確かセミファイナルトーナメント後のユウリさんとダンデさんの対決の直前のことだったか。
「ちょっと、ちょっと待って!?」
「おいおい!モニターを見ろよ!」
「なんなんだ、あれ……?」
ざわめく観客たち、何事かと見上げるジムチャレンジャーたちと、ユウリさんとダンデさん。砂嵐が消え、映し出されていたのはPのエンブレム。嫌と言うほど知っている、あのマークは…!ユウリさんとジュリさんの表情に怒りが宿った。プラズマ団…!
『初めまして、かな』
そしてPのエンブレムが雷が落ちた様な無駄にカッコイイ演出と共に消えて、映し出されたのは見たこともない人物。引きのカメラで全身が映し出されたその姿は、右半分が白で左半分が黒の、中央にプラズマ団のエンブレムが描かれたローブを身に纏った20代前半と思われる若く整った顔の男。この場にいる誰もが疑問符を浮かべる。シュバルツやヴァイスじゃない、何者だ?
『愚民の諸君、ごきげんよう。私の名はグレイ。新生プラズマ団の王だ』
一見虫も殺さぬ好青年の様な雰囲気を一気に崩した見下した様な笑顔と共に名乗られたのは、シュバルツやヴァイスが心酔してその名を呼んでいた、プラズマ団の王の名。こんなに若い人間だなんて……悪の組織のリーダーって壮年の人物が多いと言う話だから勝手に40代ぐらいを想像していた。
『さっそくで悪いがシュートシティにいる諸君。君達には私が世界の王となるための生贄となってもらうことにした。チャンピオンと元チャンピオン、ジムリーダーが勢ぞろいしている場所だ。我らが力を示すにはちょうどいい』
「勝手なことを言うなー!」
「チャンピオンユウリとダンデを倒せるわけがないだろいい加減にしろ!」
「そんなこと不可能だ馬鹿野郎ー!」
会場のいたるところから野次が飛ばされる。正直言って同感だ。なにをしようと、チャンピオンや元チャンピオンにジムリーダー全員だけでなく、力及ばずもジムリーダー8人に勝利したジムチャレンジャーが6人もいるのだ。これだけの戦力を相手にして、どれだけプラズマ団の数が多かろうがシュバルツの様な実力者が数人いてもどうしようもないはずだ。
『上空を見給え。我々はそこにいるぞ。そして、その意味を知る者は恐れ戦け!泣き喚くがいい!プラズマ団のもたらす絶望がすぐそこにあるぞ!』
上空を見やる。そこには青空だけ…ではなかった。透明になっていた巨大な何かがその擬態を解いて、姿を現した。それは、鋼鉄でできた灰色の帆船。それが、空に浮いていた。あんなに巨大なものが誰にも気付かれることなく、ここまで来たっていうんですか!?
『我らが拠点にして旗艦プラズマフリゲートだ。一年前にイッシュに災厄をもたらした船…といえば意味がわかるかな?』
その「意味」に気付いたのか、観客に逃げ出すものが現れた。パニックが起これば、その騒ぎは連鎖する。パニック状態となった観客が暴動の様にスタジアムから逃げようと試みる。それは、ジュリさんも同様だった。
「ヤバい、早く逃げようダフネ、ヨハル!」
「う、うん…!」
「えっと、どういうことですか?」
「あの船、プラズマフリゲートは……二年後のイッシュ、じゃなくて一年前のイッシュの一部を氷漬けにした兵器なの!」
「ええ!?」
いや、この二年、奉仕活動ばっかりやっていて世間の噂には疎くて……ということはシュートスタジアムを氷漬けにしようということですか!?
「そ、それは止めないと!」
「無理!街一つ凍らせる兵器だよ!止めるすべなんかない!」
「でもこのパニックじゃ、そう簡単に逃げられないよ…!」
ヨハルの言う通りだ。観客がパニックになったことで出るにも時間がかかる。くっ、プラズマ団があんなすぐそこにいるのに……ここで凍らされるのを待つしかないとは!
『飛んで逃げようとしても無駄だ。空に逃げれば最後、我が戦艦に備えられた砲台が撃ち落とすだろう。座して死を待つがいい!』
「くっそ、ゴルーグでワンチャン乗り込む作戦も無理かあ」
「なにか、何か手は…!」
言うだけ言って映像が消える。考える。空に逃げても駄目。出口はつっかえている。応戦するのも兵器相手じゃ難しい。詰みじゃないだろうか。プラズマフリゲートの主砲と思われる穴に水色のエネルギーが集まって行くのが見える。万事休すか、と思ったその時。中央からよく響く声が上がった。
「みんな、落ち着くんだぜ!」
その声の主は、ダンデさんだった。ユニフォーム姿で、マントを外して投げ捨てて人を殺せそうな目のユウリさんと共にプラズマフリゲートを睨みつけてボールを構えている。まさか、迎え打つつもりですか!?
「ユウリくん、行くぞ!リザードン!」
「はい、ダンデさん!ムゲンダイナ!」
繰り出されたのは、二人の切札ともいえるポケモン。リザードンとムゲンダイナ。それだけでなく、ダンデさんは右手首に装着したメガリングに左手を添えていて。
「バトルタワーオーナーの力を見せてやる!リザードン!メガシンカ!」
するとリザードンは七色の輝きを受けて紫色の光の繭に包まれ、ところどころが鋭利な姿となったメガリザードンに姿を変えた。同時に、日光が照ってくる。特性はひでりか。
「メガリザードンY…!ダンデさん、持ってたんだ…!」
「Y?」
なんかジュリさんが言っていたが意味がよく分からなかった。そして、水色の輝きが最大限に溜まり、プラズマフリゲートの主砲から凄まじい光線が放たれる。それは、シュートシティ全体を飲み込むにはあまりある規模で。次々にスタジアムの端々が凍り付いて行く。もう駄目だ、と諦めかけたが、新旧チャンピオンは諦めていなかった。メガリザードンYとムゲンダイナに飛び乗った二人はスタジアムの上空に浮かび上がり、同時に天を指差した。
「新旧チャンピオンタイムだ!行くぞリザードン、ブラストバーン!」
「私の怒りを思い知れ!ムゲンダイナ、かえんほうしゃ!」
放たれる、二つの炎の柱が光線とせめぎ合う。しかし、互角。相殺するには至らない。こちらはポケモンである以上、体力が消費すれば押し負けてしまう。やはりこれまでか、と思っていたら観客の中からバトルコートに飛び降り、リザードンを繰り出した赤い帽子の少年がいた。同時に黒く青い炎を燃やした姿になるリザードン。アレもメガシンカ…?
「リザードン、メガシンカ。かえんほうしゃ」
「あ、あ、あれは…れれれれれれ!?」
「だ、大丈夫です?」
なんかすごい顔になってるジュリさん。赤い帽子の少年のメガリザードンの炎も合わさり、炎と光線がぶつかり合い、そして。光線の照射が終わった時、シュートスタジアムは無事だった。
ついに参戦伝説の男。
・ダフネ
ほのおタイプもいないし周りに任せるしかなかった主人公。シュバルツがいるであろうプラズマフリゲートへ怒りを募らせる。
・ジュリ
とある理由から限界オタクと化していた転移者。プラズマ団への殺意が高い。赤い帽子の少年の登場で情緒がヤバい。
・ヨハル
ガラガラじゃアレは無理だなあ、と冷静に考えていた二重人格。諦めは早い方。
・ユウリ
ブチギレチャンピオン。前回の掲示板でラウラがプラズマ団に寝返った(?)という情報を得て警察に乗り込んだが、通信からじゃプラズマ団の本拠地に辿り着けず怒りを溜めこんでいた。グレイへの怒りを糧に冷静に新旧チャンピオンで相殺を試みる。
・ダンデ
旧チャンピオンとして会場のパニックを収めて見せたリーグ委員長。メガシンカも使いこなす。実はユウリともどもプラズマフリゲートの事は知ってるのでパニックにはならなかった。
・グレイ
ついに作戦を開始したプラズマ団の王。世界の王になるためにシュートシティをチャンピオンごと凍らせてプラズマ団の力を示す、と豪語するがその真意は…?
・赤い帽子の少年
リザードンを連れた少年。観客としてシュートスタジアムにいた。年は17くらい。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。